うちのはると私もたいへんお世話になった山本央子先生の「家庭犬トレーニング研修」が奥田先生主宰の行動コーチングアカデミーで開催されます。
日時:2014年9月1〜3日
会場:行動コーチングアカデミー(長野県西軽井沢)
近隣の家庭犬をお借りしてハンドリングを学ぶ、実践的な研修です。今年は見学のみの参加者も受け付けているそうです。
山本先生に教えていただいたことは多岐にわたりますが、とにかく通常のしつけ教室と違うのは、家庭で犬と飼い主が幸せに暮らせる環境を包括的に整えるという視点です。
それは犬の選び方から始まり、家(部屋)の中のセッティングや馴化、環境適応、日常的な対応(正確にはできる限り何もしないこと)や問題行動を未然に防ぐための準備(例:咥えたものを離す練習とか)などです。お座りとか伏せなどを教えるのはそのごく一部でしかありません(というか、お座りとか伏せなら山本先生に教わることもないですね)。
はるとの幸せ満杯の生活も、山本先生のおかげです。
山本先生のような方が増えれば、私とはるのような人と犬も増えることでしょう。
興味のある方は、こちらから。
追加情報:
とある研究の先行研究をレビューしているときに、下記の論文を見つけました。地雷を発見するネズミの訓練をするNGOのスタッフトレーニングの研究です。ペットや動物園・水族館で飼育されている動物行動のマネジメントについては、たとえば Applied Animal Behaviour Science という学術雑誌にはそうした研究報告がよく掲載されていますが、先端的な飼育法やトレーニング法を人に教え、マネジメントする方法の研究も今後進んでいきそうですね。
Durgin, A., Mahoney, A., Cox, C., Weetjens, B. J., & Poling, A. (2014). Using task clarification and feedback training to improve staff performance in an East African nongovernmental organization. Journal of Organizational Behavior Management, 34, 122-143.
「これはなんていう種類の犬ですか?」
散歩してると、よく聞かれる質問です。
「雑種です」という返事に満足する人は少なくて、「柴(犬)ちゃんかしら」とか「チワワの顔してるわよね」とか「イタグレ入ってない?」といったふうに、頼んでもないのに色々推測してくれる人や、「柴犬でしょ、柴犬。でも痩せてるわねぇ」と圧倒的に決めつけてくれる人もいます(笑)。
実ははるの家族を保護してくれたNPOのスタッフによると、はるのお母さんにはパグの血が入っているらしく(確か1/4とか言っていたような....)、だから最初は、ひどい咳をするたびに先祖が短頭種のせいかと心配したり、お腹や肉球、爪の一部が黒いのはそのせいかなと思っていました。でも、後々、お腹が黒くなったのはアレルギーのせいだったらしいこと、咳はどんな犬でもするし、どんな犬でも爪や肉球が部分的に他と色が違うことがあるとわかりました。
そうこうしているうちに、去年の暮れあたりから親子関係のDNA鑑定が話題になっていたので(人の話)、気になって検索したら、犬のDNAを調べて犬種を判定してくれる商品をAmazon.comで見つけ、注文しました。
Wisdom Panel 2.0 Breed Identification DNA Test Kit には、綿棒みたいなのが2本入っていて、それを犬の歯茎になすりつけて細胞を採取します。シリアル番号からユーザー登録し、キットを送り返すと数週間で結果が入手可能になるという仕組みです。
最初、ユーザー登録ではじかれたので、メーカーに問い合わせました。日本の犬には対応していないそうです(DNA鑑定するためのデータベースをつくるさいに日本の犬のデータを集めていない)。だから、結果の正確性は保証できませんとのことでした。
まぁ、せっかく買ってしまったし、採取も終わっていたので、それでもお願いしますと無理を言い、エアメールでの送り先を聞き出して(アメリカ国内であればそのまま郵便ポストに投函できるように宛名ラベルがはってあるのだけれど、それが私書箱のようなコードで書かれているので日本からは送れない)、発送しました。
およそ3週間後、テスト結果が出ましたというメールが届き、さっそくダウンロードしてみると、なんと「はるちゃんはシバとアキタの雑種です」とのこと。パグの「パ」の字もありません。
推定される系統図がこれ。親はシバと何かの雑種と、アキタと何かの雑種。そのまた親にはシバと何かの雑種、アキタと何かの雑種がいるとのこと。
"何かの雑種"のところは「これ」と断定できるだけのデータがでない(閾下)ということで、候補としては、ビーグル以外は聞いたこともない5頭の犬の可能性があげられていました(Jindo, Cesky Terrier, Coton de Tulear, Beagle, Havanese)。
シバはともかくアキタとは。それにパグがでないのは何でだろ。
日本の犬のデータが含まれていないとはいえ、柴犬のデータは含まれているわけだし、日本とアメリカで各純血種のDNAが異なるということはありえるのかな。
まさか犬の写真で判定しているなんてオチではないよね。
その1、その2の番外編です。
せっかくリモコンをつけたので、宅配などの来客があったときにフィーダーが回っておやつが出てくるようにすれば、玄関で荷物のやりとりをしている間、クレートでおやつを食べてくれ、吠えも防止できると考えました。
玄関のチャイム→(リモコンのスイッチをオン)→フィーダーが回り始め→クレートに入る→おやつが食べられる、という随伴性です。
ただし、実験用のペレットフィーダーと違って、魚用餌やり機を改造したフィーダーでは「今でしょ」という瞬間にフードを呈示できません。フィーダーが回り始めてからおやつがあるまで遅延が生じます。そこで、フィーダーが回っているときには電子オルゴールで音楽を流し、これを習得性好子にしようと考えました。
玄関のチャイム→(リモコンのスイッチをオン)→フィーダーが回り始め、電子オルゴールで音楽が流れる→クレートに入る→(音楽が流れている間は)おやつが食べられる、というふうに。
そこでまずは電子オルゴールの音楽を習得性好子にするために、普段おやつを手からあげている"晩酌"の時間を使うことにしました。私が晩酌をしているときに足下にやってきて、お座りし、私の足を前脚でトントンしたら、おやつ一粒もらえるという随伴性が有効な時間帯です。
晩酌を始めるとさっそく足下にやってきたので、電子オルゴール(曲はなぜか「ハッピーバースデー」)をかけてみました。
すると、なんということでしょう(「ビフォー・アフター」のナレーション風に)、はるは急に驚いたような素振りで背中を丸め、その場から立ち去り、部屋の隅っこで猫のように丸まってうずくまってしまいました。こちらを恨めしそうな顔で見つめています(↓ こんな感じで ↓)。
何が起こったのか最初はわかりませんでした。何をそんなに驚いているんだろと。でも、その日も、その翌日も、1週間経っても、2週間経っても、晩酌のときや食事の時間に、今まであんなに安定して自発していたおやつの要求行動が一切なくなってしまいました。
それどころか、私が食事をしようとすると、部屋の隅っこに移動して、ふてくされたかのように寝転がってしまうようになりました。
そうです。晩酌のときに足下に来る行動、おやつを要求する行動を弱化してしまったのです。それも嫌子出現による弱化です。げげげ。
幸いにも、この弱化の効果は場面限定的で、それ以外の行動にはまったく影響を及ぼしておらず、今まで通りに暮らしています。
全く意図していなかった弱化だし、可哀想でもあるし、独り晩酌も寂しいので、電子オルゴールの音の脱感作をしようかなと思いつつ、いったいこの弱化の効果がどのくらい続くのかという興味もあり、まだそのままにしています。
3月の中旬に起きた事件です。その後、オルゴールは一度も流していませんが、5月も終わる今になっても、弱化の効果が持続しています。
友達が来て一緒に食事をしていると、その友達には以前の方法でおやつを要求します。私にも、晩酌の場面以外(ベランダでとか、散歩中とか)では、おやつを要求してきていますから、般化ゼロ。ものすごく鋭角に場面限定的な効果のようです。
一度ある嫌子によって弱化され、自発されていない行動が、その弱化に使われた嫌子を中性化するだけで復活するものなのかどうか。理論的にも興味があります。
学校でジャイアンに大声で脅かされて不登校になったのび太に、ジャイアンの大声に対する不安反応をレスポンデント的に消去したり、ジャイアンの大声からの逃避反応をオペラント的に消去したりするだけで、登校行動は強化し直さなくても再び自発されるようになるのか、というような話です。
また、別の文脈で中性化した(できたとして)電子オルゴールの音が、以前に弱化された文脈に登場したときに、どのような機能を持つのかもよくわかりません。
セラピーでジャイアンの大声に微動だにしなくなったとのび太が、再び学校でジャイアンから大声で脅かされたときにどうなるのかというような話です。
電子オルゴールをタオルなどでくるんで音を小さくして、ほとんど聞こえないようなところから少しずつ大きくしていこうと考えているのですが、そのためにはおやつを安定して食べる機会で、万が一失敗してもいい機会を新しく設定しないとなりません。
またいずれ報告します。
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その1の続きです。はる(うちの犬)は食事を一気に(長くても2分以内で)平らげてしまいます(参照:「完食させる」)。食事の時間を使った脱感作には時間的限界があるので、扉を閉めたままでもう少し長い時間クレート内にいる練習(吠えたり、出ようとして扉をがちゃがちゃしたり、クレートを齧ったりしないで)をするための装置を作りました。
ラットの実験で使う、ペレット(餌)を一粒ずつ呈示できるフードディスペンサーが欲しかったのですが、とても高価なので、一般家庭向けの魚用オートフィーダーを使うことにしました。
ただ、この装置は回転式で、タイマーも一日に数回、一回あたり一回転回るようにしかセットできません。
定時スケジュール(FT)を組みたいので、簡単に外部IOを制御できるArduinoという電子回路キットを入手しました。ArduinoはUSBケーブルでPC/Macにつなぎ、パソコンから制御することもできれば、制御ソフトをArduino本体に書き込み、スタンドアローンで動かすこともできます。
今回必要なのはオートフィーダーのオンオフのみなので、このキットについてくるMOSFETで制御できます。オートフィーダーの手動スイッチから導線をだしてつなぎました。制御用プログラムは、サンプルでついてくるLEDの制御ソフト(ほんの数行)をいじっただけ。一時間かからずに作業が完了しました。
リモコンコンセントにオートフィーダーとArduino用のUSB電源(古いiPhoneのものを流用)をつなげば、リモコンのスイッチを押すとフィーダーが回り始め、もう一度スイッチを押すとフィーダーが止まる装置の完成です。
難しかったのはオートフィーダーの調整です。フードの出口の広さを、窓の空き具合をスライドして変えることで、一度に(一回転ごとに)出てくる量を変えるのですが、開けすぎると一度にドバッと出てしまうし、閉めすぎると一粒も出てきません。一回転するのに10秒くらいかかるので、一粒もでないとフードとフードの間隔が一挙に20秒以上になってしまいます。その間に吠えてしまったら、吠えを迷信行動として偶発強化してしまいかねません。
何度も調整し、フィーダー本体を傾けたりもして、ようやく少し安定してきましたが、何しろ、フードの形も球形ではないので、ばらつきはかなりあります(はるはアレルギーが多いので使えるが少なく、このフィーダーにはナウ・フレッシュ・スモールブリードを使っていますが、アレルギーの問題がない犬なら、もっと選択肢があると思います)。
今のところ、動画のように、フィーダーが回っている間は、一回で落ちてくるフードを食べているので、クレートの扉が閉まっていてもフードを食べる行動が優位で、吠えたり、出ようとしたりはしません。非両立行動の強化の効果です。
うちでは、時々、出張マッサージを頼むのですが、そのときには1時間ほど、このシステムを稼働させています。その日はこれがはるにとっての夕食になります。
先日、途中でフィーダー内のフードがなくなってしまい(私の準備不足です)、そのまま様子を見ていたら、前足でクレートの扉を少し引っかいていましたが、すぐにあきらめ、寝始めました。マッサージ受けながらとはいえ、すぐそばに私がいるので、これはまだ完成形ではありませんが、かなりの進展です。
ただ、この先の展開は思案中です。フィーダーを回しながら、私がそばから離れ、吠えなどがないことを確認しながら徐々にいなくなり(隣の部屋に行くとか)、さらにフィーダーが回る間隔を少しずつ伸ばしていけば、無誤反応で練習を進められると思うのですが、このためには私に時間的余裕が必要です。サバティカルも終わってしまったし。
さて、どうするか…
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ビデオを撮っていなかったのが今となれば残念なのですが、はる(うちの犬)はクレートの中で食事ができませんでした。正確には、クレートの扉が閉じていると、外に出たがり、食事どころではなくなってしまっていました。
扉を開けたままなら、自分から中に入って行き、昼寝をすることもありましたし、あらかじめフードを入れておけば、自分で入って行き、食べていました。
ところが、クレート、私、はるの位置関係で、私がクレートにおやつを投げ入れ、そのまま待っていると、こちらをちらちら見るのですが、近づいてきません。私がその場から離れてしばらくすると、様子をうかがいながらクレートに近づいてきて、後ろ足をクレートの外に残し、“へっぴり腰”状態でクレートに頭を突っ込み、おやつをパクッとくわえると、すぐにクレートから離れます。
擬人的に言えば、まるで餌で誘い込んで捕獲されることがわかって用心している半野生動物みたいな振る舞いです。
クレートでくつろいで過ごせるようにならないと、万が一、怪我や病気で入院したり、災害にあって被災したときに大変ですよと山本先生から言われていたので、なんとかしたいと色々試してきました。
クレートに入れ、扉を閉め、いくら吠えてもほっておくこともしました。3-4時間の消去でしたが、それでも吠えは止まらず、逆に止まらないうちにクレートからだしてしまったので、消去抵抗は余計に上がってしまっているはずです。
クレートに入れ、扉を閉め、私がクレートのそばにいながら無視していれば、やがて吠えるのは止めますが、これではあまり意味がなさそうです。しかも、そのときには中におやつを入れても食べません。クレートに閉じ込められている状況が不安喚起機能を獲得していくばかりです。
そこで作戦を変えることにしました。短期決戦はあきらめ、時間をかけてレスポンデントもオペラントも、扉が閉まったクレートの不安喚起機能をなくすことで対処することにしました。
まずは、クレートに入ってフードを食べる行動の強化です。これはそれまでもできていましたが、機会を増やしました。朝、クレートにおやつを入れておき、寝室から居間に移動してきたら入って食べる。日中、ベランダで遊んでいて部屋に戻ると、クレートにおやつが落ちていて、入って食べる。クリッカーを使ってコマンド遊びしているときに、クレートに入ってクリック+おやつとか、クレートの中でおすわりやふせでおやつとか。これらは全部クレートの扉が開いている状態での練習です。
次に、クレートの扉を閉めていきました。これには朝夕の食事の時間を使いました。いきなり食器をクレートの中に入れてみたらクレートに入って行かなかったので、最初はクレートの扉は全開で、食器を入口から50cmくらいのところに離して置きました(これまで通り)。ここから大凡ですが、様子をみながら1週間に5cmくらいのペースで食器をクレートに近づけていきました。
食器に近づかなくなったり、へっぴり腰になったら距離を一段階前に戻すつもりでしたが、おそらくあまりにゆっくりと進行させたせいでしょう、ステップバックは必要ありませんでした。
数カ月かけて食器をクレートの中に移動し、さらに数週間かけてクレートの隅に移動させ、後ろ足までクレートに入らないと食べられないようにしました。ちなみに、うちでは、「おすわり」させ、「待て」で待たせ、「よし」で食べさせています。なので、この段階で、クレートの中で待てをしています。
次に、クレートの扉を少しずつ閉めていきました。1週間に角度でいえば大凡10度くらい。これを全開(180度)からほぼ犬の肩幅がぎりぎり通るくらい(30度くらい)になるまで、さらに数カ月間かけて進めました。クレートの扉は普段からこの角度を保持していました。だから、上述の色々な練習も、徐々に扉が閉まった状態でするようになっていきました。ここでもステップバックは必要なかったです。
ところがここまでの成功に気を良くし、実は一度失敗しています。うちにはクレートの他に移動用キャリーも常設していて、そちらでも上述の練習を繰り返していました。そこで試しに、「ハウス」で移動用キャリーに入り、おやつで強化した後でキャリーの扉を閉めて「待て」をかけてみました。吠えませんでしたが、前足で扉をぱたぱたしだしたので、すぐに開けました。吠えを自発させたくなかったからです。その後、同じ遊びの流れで「ハウス」のコマンドをかけても移動用キャリーには入らなくなりました。キャリーにおやつを入れておいても入っていきません。扉を閉められた状態の嫌悪性は、これまでの練習で変化していなかったようです。
幸い、移動用キャリーでの経験はクレートには影響しませんでした。なので、クレートでの練習と、扉角30度での食事をさらに数カ月続けました。
そして、その後(ここははるの行動を観察して見極めたわけではなく、単純に時間の経過から、そろそろいいんじゃないかと判断しただけです)、クレートに入り、おすわりさせ、「待て」と言ってから、扉を閉めました。そして数秒後に「よし」。すると、はるは何の問題もないように食事を食べ始めました。クレートのすぐ横で見ていて、食べ終わったと同時に(扉を開ける要求行動が出る前に)、扉を開けて食器を取り出し、扉はそのまま30度で開放しました。
はるがうちに来てから2年近く経過していましたが、初めて扉の閉まったクレートの中で、安心して食事ができた瞬間でした。
その後は、クレートの扉を閉め、「よし」をしてからクレートから離れたり、わざとクレートの扉をいじって物音を立てたり、クレートの扉を閉めてから「よし」までの時間を長くしたり(最長で30秒くらい)と、色々と環境に変化を持たせ、それでも安定して食事行動が自発されています。
ビデオは三月末に撮影したものです。最後の方に、食べ終わった後で食器を取り出し、また追加でフードを入れて食べさせていますが、これは食べている最中に食器を取り出しても、それを守ろうとして噛んだりしないようにするための練習(のつもり)です。山本先生にはローハイドとかを噛ませ、途中で取り上げ、レバーペーストを塗って戻してあげるというやり方を教わったのですが、はるはレバーペーストを与えるとお腹がゆるくなってしまうのでこのように変形してみました。元々、こういうことで噛んだりする犬ではないのですが、予防のために時々、続けています。
なお、この先の練習は私に余裕がなくて進んでいませんが、もっと長い時間、安心して扉の閉まったクレートで過ごせるようなプログラムを検討中です。これも吠えさせて消去するのではなく、無誤反応で進めるように計画しています。また、そのうち報告します。
うちにはるが来て二年が経ちました。おかげさまでいよいよ元気に暮らしています。
去年の今頃は掻き行動を減らそうと四苦八苦していました。40分程度の散歩中でも3−4回座り込み、頭部や前脚の付け根とかを掻いていました。喉元やお腹に赤い発疹ができていることもあり、アレルギーがある犬なので心配していたのです。
今でも掻きますが、頻度はずいぶんと減り、発疹もしばらく見ていません。掻き行動の原因は不明ですが、とりあえずこの一年間は室内環境の改善に重点をおいてきました。基本はダニ、ノミ、ハウスダスト対策です。
以下、この流れで購入したアイテムです。
○SHARP プラズマクラスター25000搭載 加湿空気清浄機 ホワイト系 KI-AX70-W
まずは空気清浄機です。居間に大型、寝室に小型のものを入れました。おかげさまでうちはほとんど無臭です。
○「アレルガード」高密度生地使用 防ダニ 掛け布団カバーなど
アレルゲンテストで羽毛がポジティブとでていたので、布団カバー、ベットカバー、枕、枕カバーなど、すべて同じブランドのもの揃えて購入しました。
ただし、同じブランドの毛布(「衿付きアレルガード毛布」)は失敗。居間で床暖の上で暖まって昼寝したりするのに買いましたが、寒いです(毛がないに近いくらい短いため)。それまで使っていたマイクロファイバーの毛布は、はるの毛がつくと取れにくく、ダニやノミのすみかになりそうだったので変えたのですが、今は元に戻し、その代わり、よく洗うようにしています。
○ふとん専用ダニクリーナー 「レイコップ〜SMART」
最近、ジャパネットでも宣伝していて、売れているようです。韓国製。ルンバと同様、国内のメーカーにやられちゃった感があります。布団の国なのにね。
バラエティ番組で芸人の家でこれを試し、めちゃくちゃ汚れが取れるのを笑いにしているのを観たことがありますが、あれ、やらせじゃないですかね。確かに一回ふとんを掃除しただけで、うっすらとほこりや黒ずみがとれますが、あそこまではいきません。よっぽどほんとうに汚いのか仕込みだと思います。
○その他、ダニ捕りROBO(ロボ) 、ダニ粘着シート、電子ノミとりホイホイ、ダニがいなくなるスプレー、ファブリーズ ハウスダストクリアなど。
このへんのアイテムはかなり怪しいです。ROBO、シート、ホイホイともに、ダニ、ノミが穫れたことがありません。実はいない、という可能性もありますが、以下報告するように、ダニの簡易検査キットでは掃除の効果が測定できているのです。ただし、検査キットは価格が高いので一回しか実施していません。
室内環境がこれで改善されているかどうかですが、以下のアイテムで目視と化学(?)的に、ダニが排除できたかどうかを確認しました。 そうでもしないと限りなく「祈り」に近いので。
レイコップで吸った塵をハンディ顕微鏡で観察していますが、いまだにダニ本体(死骸も含めて)は発見できていません(笑)。ダニチェッカーの方は、上述の対策の前後でベッドシーツの上を対象に検査したところ、確かに変化が確認できました。下の写真がその結果です。ただ、これがどれだけ掻き行動の減少と関係しているのかどうかは不明です。
たとえば、夜寝るときに居間から寝室に移動するとき(その直前はるはたいてい居間で熟睡しています)、立ち上がり、歩いては座って掻き、また立ち上がって歩いては座って掻きを繰り返します。完全にルーチン化している行動パターンで、もしかすると、こうした掻き行動は痒み刺激によって誘発されているわけではないのかもしれません。散歩中の掻き行動も、もしかすると、そうすることで私の注意を引いたり、進行方向から苦手な人や犬が向かってきているときそうすることで接近を回避、遅延したりといった別の機能があるのかもしれません。
部屋を清潔に保つのは人間にとってもメリットがありますからいいんですけどね。
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東京は大雪です。近くの公園にもすでに数センチ積もってます。
はるは大喜び。まさに“犬は喜び 庭かけまわり〜”状態。
何がこんなに嬉しいんだろ。はるの場合、コンクリートに比べて土、土に比べて芝生、芝生に比べて落ち葉の吹きだまりの上を好んで(選んで)、跳ねながら、体を左右に振りながら歩いたり走ったりします。足裏の感触でしょうか、着地したときのクッション感でしょうか。
童謡の「雪」。唄いだしは「ゆーきやこんこ」(ふれふれ、もっとふれの意?)だったんですね。どこかで誤学習したらしく「ゆーきやこんこん」(雪が‘こんこん’と降る様子?)だと思ってました。
恥。
はるはこの後、雪の下からポイ捨てされたスナック菓子らしきものを発見し(強化され)、もう雪に鼻を突っ込んで掘って探しを繰り返しました。へんに強化したくないのでじっと我慢。でも、消去は難しいですね。1時間くらい遊んでましたが、結局3回何か食べるものを見つけてしまい、食べてました。
今日は法政も入試ですね。受験生の皆さま、試験監督の教職員の皆さま、無事に一日が終りますように。
アメリカの獣医師の会である、American Veterinary Society of Animal Behavior (AVSAB) が「罰」を使った躾や訓練に関する声明文をだしていることを以前この記事でご紹介しました。この声明文の日本語訳が掲載されている本があることを、先日、中島定彦先生に教わりました。
内田佳子・菊水健史(2008)犬と猫の行動学--基礎から臨床へ-- 学窓社
さっそく購入して読んでみました。声明文の訳はしっかりしているし、学習理論の章もわかりやすく書かれている本だと思いました。「罰」に対する声明文を読みたいが英語が苦手という方は参照して下さい。ただし、Amazonでは取扱がなく、楽天ブックスにあった(その時点での)最後の在庫を私がいただきましたので(^^)v、現時点では学窓社のサイトで直接注文するのが最短のようです。
この本にはDVDもついていたので観てみましたが、こちらはかなり謎だらけです。
どうも犬の訓練関係の人たちは(Excel-erated Learningで有名なPamela Reidもそうですが)、レスポンデントとオペラントを混同しているか、あるいは私の知らない特殊な理論を用いているようで、たとえば、「おすわり」というコマンドの後におすわりをした後でフードをあげる手続きを「古典的条件づけ」と説明しています(正しくは「道具的条件づけ」もしくは「オペラント条件づけ」です)。
褒め言葉("グー")とフードを対提示することで褒め言葉を二次性強化子(習得性好子)にするという手続きのシーンでは、「順行/逆行条件づけ」の話がでてきて、条件づけられるのはフードが持つ「嬉しい」「大好き」という感情だと説明されています。順行/逆行条件づけはレスポンデント条件づけで用いられる概念ですし、フードが有する無条件刺激としての主な機能は「唾液分泌」です。涎がでることを「嬉しい」「大好き」と比喩として使っているのか、擬人化しているのか、そのような無条件反応を確認しているのか、よくわかりません。
そもそも訓練や躾の文脈で「強化子」について説明しているわけですから、褒め言葉について着目すべき機能変容は、無条件刺激から条件刺激への変化(レスポンデントでの文脈)ではなく、行動を強化する機能のない刺激から強化する機能のある強化子への変化(オペラントの文脈)です。どうもこのあたりがごっちゃごちゃになっているようです。
一箇所だけなら単純ミスかと思うのですが、一貫していますので、何かしらの勘違いか、新(奇)理論かと思うわけです。本文にはそのような混同がみられないだけにいっそう不思議です。
他にも、おすわりを強化せず、ふせを強化する手続きを「シェイピング」と呼んでいたり(分化強化ではありますが、逐次接近して新しいレパートリーを形成しているわけではないので"シェイピング"にはあたりません)して、ツッコミどころが満載です。
その中には、よくよく考えてみると、実験的(基礎的)、応用的(臨床的)、理論的に興味深いこともたくさんあります。
たとえば、上記の褒め言葉もそうですが、習得性好子には、次の(本来の)強化随伴性の弁別刺激となっているからこそ強化力がある場合と、そのようなローカルな随伴性がなくても好子として機能する場合があります。クリッカートレーニングに使うクリック音は前者の例ですし、飼い主は後者の例です。前者の成立要件は明らかですが、後者の成立要件はそれほど明らかではありません。対提示する好子の種類を圧倒的に増やせば般性好子になるだろうと理論的に推察することは可能ですが、実際そうなのかどうかはよくわかりません。前者についても、非常に細かなところ、たとえばそれこそレスポンデントでいうところの順行/逆行のような提示順や時間差の問題がそれほど明らかになっているわけではありません。
どのような習得性好子をどのように作れるかというテーマは基礎、応用、実践で、多くの人が興味を持つところなので(たとえば、自閉症がある子どもに他者との関わりや新しい遊びを習得性好子にするとか、働くことに楽しみが持てない人に楽しみを教えるとか)、一度じっくりと考えてみたいところです。
DVDでは「自発的行動」を教えるという文脈で、椅子に座った飼い主にちょっかいをだしてくる犬を無視し(テレビを観たりしているという体で)、そのうち伏せたら言葉がけとフードで強化するというところがあります。確かに「ふせ」というコマンドをかけていないのでその意味では"自発的行動"ですが、ここで強調すべきなのはむしろ「消去」だと思います。ふせた犬を立ち上がらせるためにフードを遠くに投げ、戻ってきて伏せたらすぐにフードで強化しているので、このままだとそれを繰り返すことになり、いつまでたっても静かにテレビが観られません。この文脈で必要なのは完全な消去だと思います。そうすればそのうち犬も伏せるなり、寝転がるなりして、勝手に("自発的に")休むわけなので。
これは社会的妥当性をいかに保障するかという課題です。訓練の先にある目標(何のために行動を変えるのか)はどこにあるのか(この例ならテレビを観ている間、犬は犬で休んでいてほしい)、そしてその目標を達成するのに最適な訓練手続きは何なのかを検討すべきあり、同じ課題(訓練とその先の目標の不一致)は教育界やトレーニング界にあちこちに散見されますから、おそらくそうした発想を強化する随伴性が業界全体に不足しているということなのでしょう。どのように補完すればいいのか、できるのか、検討すべきなのだと思います。
「観察学習」というチャプターには犬にあくびを教えるシーンがでてきます。残念ながらあくびしか教えていないので、模倣を教えているかどうかはわかりません。犬では模倣、しかも般性模倣が成立すると主張する人も多いようです。本当にそうなのか、そうだとしてそれが生得性のものなのか訓練あるいは自然な学習によるものなのかは、私は不勉強でわかりません。文献はかなりあるようなのですが、実験条件の統制がしっかりできていそうにないので読込んでいないのです。とりあえず、このビデオを観た限りは、"あくび"というコマンドをだしている飼い主が弁別刺激になっているという意味では"観察学習"ですが、それ以上の機能が獲得されているようには見えませんでした。でも、犬好きで犬を飼っている学生が卒論で取り組むことができそうな、面白そうなテーマだと思います。
というわけでDVDにはかなりずっこけましたが、こうした点も含めてご覧になれば逆に勉強になるかもしれません。
台風のような強風や大雨でない限り、うちの犬は濡れるのを気にせずに散歩します。フリーズしてしまうので、レインコートは着せません。拮抗条件づけを何回か試み、ようやく成功し、なんとか着たまま歩けるようになったかと思うと、次の雨のときにはまたフリーズしてしまう、というのを繰り返しているうちに諦めました。濡れるのは苦ではないようなので。
むしろ雨の中の散歩が辛いのは私です。山登り用の雨具を着るので濡れはしませんが、楽しくないし、公園でボール投げもできません。帰ってから雨や泥を濡れタオルで拭くのもかなりの手間です。
だから、雨の日には、気象情報をチェックして、できる限り雨雲の切れめを狙って散歩しています。
そんなときに使っているのが、Yahoo! Japan 雨雲ズームレーダーと、日本気象協会が提供するアプリ Go雨!探知機 -XバンドMPレーダ-です。
雨雲ズームレーダーの方は一時間後までの予想がかなり正確です。雨が降っているときでも、たとえば、あと30分後に20分くらい雨がやみそうだということがわかります。
Go雨!探知機は、現在地を中心とした半径5kmの降雨状態をみせてくれるので、それによって散歩のコースが選べます。公園側は雨だから、雨が降っていない小学校方面に行こうというように。
まったくもって便利な世の中になったものです。
自宅で食事をしていると、はるが足元にやってきて、前脚で私の足をトントンとしてフードを要求します。
最初は、食べ物を欲しがって吠えてしまうことがあったので、NCR的におやつをあげ、吠えるのを減らしました(吠え始める前に、フードを10秒おきくらいにあげる:吠えたらしばらくあげないでおき、十秒くらい吠えなかったらあげる)。
吠えさせ、完全無視して消去するという手もあったのですが、晩酌のときに、右手につまみ、左手におやつをもち、ビールを飲みながらフードをあげるのが心地よく、でも私の気分次第で、あるときにはおやつがもらえ、あるときにはおやつがもらえないという状況で弁別訓練を進めるのは難しいだろうと判断しました。フード提示の間隔を延ばしていこうと考えていましたが、これはできませんでした。でも、吠えるのは止めさせることができました。
ところが、しばらくすると、私がついついテレビとかに夢中になってフードの提示を忘れると、ズボンの裾を噛んでひっぱるようになってしまいました。というか、裾を噛んだらフードをあげるということをやっちまったわけです。これはヤバいというわけで、両立しない行動を急遽教えることにしました。前脚でトントンする行動をシェイピングし、要求行動として機能化しました。
吠えもせず、噛みもせず、二人で平和に晩酌できるようになりましたが、さすがに食事中ずっとフードを提示し続けるのは面倒です。
そこでコングの出番となりました。コングは硬質のゴムでできた円錐形のおもちゃで、中にフードを入れて使います。内部に段差がついています。全体を押しつぶして入口を拡げ、フードを奥までねじこみ、力を抜けば、入口が元に戻ってフードが詰まった状態になります。こうなると、そう簡単にはフードを取り出せないようになるのです。犬は噛んだり舐めたりして一生懸命にフードを取り出そうとしますから、頭を使わせることにもなるし、夢中になるので(VR的な随伴性が設定できるので)、暇ゆえに出現する問題行動を防げるというアイディア商品です。
コングに入れるフードや入れ方を色々工夫することになりました。コングのメーカーが販売しているレバーペーストやおやつには、はるにとってのアレルゲンが含まれているようで、お腹を下してしまいます。そこで、牛タンや砂肝などの乾きもの系を使ってきました。これだと、ちぎり方や差し込み方を工夫すると、かなり長い間格闘させることができます。うまくいけば15-20分くらいは保たせられます。
そのうちに、はるの取り出すスキルも上達しました。特に、コングを宙高く放り投げて床に落下させ、その衝撃で中身が出てくるというパターンを偶発的に学習してからは、噛んだり舐めたりするよりも、この行動の頻度の方が高くなってしまいました。噛んだり舐めたりしていたときには、乾きものがある程度湿って柔らかくなってから取り出し、食べるようになっていたのですが、コング投げをするようになってからは渇いて堅いまま、ほとんど噛まずに飲み込むようになってしまいました。
おそらくこれが消化不良を引き起こすのでしょう。コングを晩に2回以上あげると、次の日のうんちがゆるめになり、続けると下痢し始めるということがわかりました。
そこで、コングにつめるフード探しを再開しました。ピーナッツしか使っていない(砂糖などが無添加の)ピーナッツバターは舐めつきがいいのですが、これもお腹が緩くなるようでした。散歩中、草を食べることがあるのでキャベツを刻んで突っ込んでみましたが、興味なしです。バナナなら食べそうですが、お腹に良くなさそうな情報がwebに見当たるのでやめました。
そうこうするうちに辿り着いたのが、通常のフードを潰して粉末にしたものを水で溶いて半練り状態にし、流し込んで冷凍するというメソッドです。以前から人に聞いたり、webでも見つけていた方法ですが、凍ったものを食べさせるという発想に合点がいかず、なんだかとてもノーテンキでアメリカンな考え方のような気がして見送っていました。でも、試してみると、食いつきもいいし、放り投げずに、舐めたり噛んだりするようになったし、消化不良も起さないし、時間も稼げるしと、良いことだらけでした。
何回か試した後で、コングを大人買いし、1週間ぶんを作りだめできるようにしました。ただし、この段階で失敗が一つ:いつも使っていたMサイズではなく、Sを注文してしまったことです。一回分のフードの量を少なめにしたかったからですが、7個買ったSサイズのコングはすべて同じところ(先っぽの2段目)が噛みとられてしまいました。うちの犬には柔すぎたようです。そこで、再度、Mサイズを注文しました(通常版の赤と強力版の黒をまぜまぜで)。一ヶ月以上経過しましたが、今のところ、赤も黒も壊れていません。
朝食や夕食に使っているのとは別のドライフードに、クッキーやチーズパウダーなどを混ぜ、できるだけ味が毎回異なるように(飽和化しないように)しています。
舌が凍傷になったらどうしようなんて案じていましたが、いらぬ心配でした。
今のところ、これが我が家のコング活用法ワンバーワンです。
淡いピンク色だったはるのお腹が、昨年の今頃からだんだんと茶色くなり、5月には黒ずんだ色合いになっていました。
お母さんにパグの血が入っているということだし、これも成長の証だろうと勝手に思い込んでいたのですが、どうやらとんだ思い込みでした。
連休にAFCに里帰りしたとき、アジリティのレッスンを受けて外から戻ったはるの足をふいていたら、佐良先生のお友達のKさんに「そんなの雑巾でいいのよ」と言われました。
それまではペット用のボディータオルを使っていました。人でいえばウェットティシュです。「なめても安心」とか「弱酸性・低刺激」と書いてあったので、特に気にすることなく使っていたのです。
「そうなんですか」と言いながら、ウェットティシュでお腹を拭きだすと「え、そんなところまで拭くの?」とKさん。周りにいた人たちからも、口を揃えて、拭きすぎだと指摘されました。
そういや、うちの父が、その昔、家族で長年飼っていた金魚のうろこにこけのようなものがはえてきたからと、洗剤をタワシにつけてゴシゴシ洗い、殺してしまったことがあったなと思い出しました。
「最近、お腹が黒くなってきたんですけど、これってもしかすると、ボディータオルのせいですかね?」と不安になって聞いてみると、「そんなのは知らないわよ」とKさん。とても気さくで気のいい方なんです。「でも、うちはいらなくなったタオルを雑巾にしてふいてるわよ」と男前アンサー。
そこで足ふきの行程と道具を見直しました。そもそも芝生や土の公園で遊んだあとは、ウェットタイプのボディタオルでいくら拭いても土の汚れが落ちにくいことが気になっていたので、いっそのこと、お風呂に連れて行き、ぬるま湯の中で足を洗い、タオルでつくった雑巾をお湯に濡らして絞ったもので、体を拭き、足も拭くことにしたのです(その様子はこちらから)。
この方法に切り替えて半年以上が経ち、黒ずんでいたはるのお腹がピンク色に戻りました。
遺伝や成長ではなく、アレルギー反応だったんだね。ごめんよ〜
Kさんには感謝感激です。
アレルギー対策といえば、昨年の夏は「フロントライン」も止めました。塗ると気になって体をあちこちになすりつけ、おそらくそれがどこからか体内に入るのでしょう、次の日から必ず下痢していました。代替策としてアロマ系の虫除けスプレーも何種類か試しましたが、やはり気にして散歩中も草むらに体をなすりつけたりするので、そのうちにやめました。それでも特に問題はなかったです(2回ほど虫に刺されたくらいです)。
食べ物の方は食餌、おやつ、ほぼアレルゲンがはっきりして、下痢をしない食べ物もはっきりしました。これまではなんだかんだで月に1−2回は下痢していましたが、今では下痢をしないで一月過ごせることもあります。フィラリアの薬を飲んだりすると下痢することがありますが、これも薬の種類を変えて、ほぼ大丈夫なものをみつけました。残された下痢の原因は、散歩のときの拾い食いと、私の晩酌につきあわされていつもよりたくさん食べてしまったときです。それでもうちに来て1年めのように、下痢がずっと続いたり、血便がでたりすることはなくなり、ほとんどの場合、次の日には治っています。
今年も健康な年になりますように。
『ザ・カリスマドッグトレーナー〜犬の気持ち、わかります〜』のシーザー・ミランと、区の「犬のしつけ教室」で講師をされていた方には動かせない共通点があります。
それは犬の問題行動の原因を、飼い主の態度(「すぐれたリーダー」としての態度の欠如)や、犬種特性(柴は自由奔放、コーギーは吠えるなど)の“せい”にしているところです。
これは訓練を仕事にしている人にとっては、とても都合のいい理論です。なぜなら、躾や訓練がうまくいかないときには、飼い主の態度や犬の犬種が言い訳になるからです。犬がリードを引っぱり続ければ「頑固たる態度で!」と飼い主を責め、犬が吠え続ければ「この犬種は吠えるんだよね」と言えばいいのですから。
プロであるはずの人たちに権勢症候群の考え方が蔓延しているもう一つの理由は、その方が責任逃れしやすいからだと思います。
そして同じ「罠」は他の理論にもあてはまります。
子犬の頃の「社会化」がその後の発達にとって重要なのは研究からも明らかなようですが、だからといって「この犬は社会化に失敗しましたね」と言われても、それでは訓練の専門家としては役立たずです。「褒めて育てましょう」と言われてうまくいかないときに「気持ちがこもっていません。ワンちゃんに伝わるように褒めましょう」と言われても、どうしようもありません。
飼い主が何をどうしたらいいのかわからない、具体性や反証性を欠いた処方箋しか書けない理論というのは、ポジティブ、ネガティブに関わらず、どちらも言い訳の余地を残しているわけで、これこそがこうした理論(言語行動)が生き残る(維持される)原因ではないかと考えます。
犬と楽しく、幸せに暮らしたい飼い主としての対処法: 躾や訓練の専門家を雇うときには、具体的な助言を求めましょう。「頑固たる態度で」と言われたら、何をどうするのか質問し、実際に見本としてやってもらい、それをまねしてみて、それでいいかどうか確認しましょう。「まだまだリーダーらしからん」などと言われたら、どこが違うのか、どうすれば良いのか、できるようになるまで問いつめましょう。そして、理由を聞きましょう。そのように対応することが、なぜどのように問題行動を減らせるのか。それに答えられず、できるようになるまで教えれないようなら、お引き取り願いましょう。
結局のところ、こうしたサービスの質が向上するかどうかは消費者がそれを求めるかどうかにかかっています。賢い消費者の行動がすぐれたサービスを育てます。飼い犬とどのように暮らしたいかをイメージし、それを実現してくれる訓練士やトレーナーを選びましょう。
科学的な根拠がなく、臨床的にもリスクが大きいのに、権勢症候群の考え方がなぜにこんなにも蔓延しているのでしょうか。
その前に。アメリカの獣医師と動物行動学の研究者がつくる学会、American Veterinary Society of Animal Behavior (AVSAB) では、2008年に権勢症候群("Dominance theory")に関する声明文をだしています。
かつて信じられていたこの理論が間違っていたこと、この理論に基づいた躾や訓練には攻撃行動を増大させるリスクがあること、家庭犬における問題行動のほとんどは誤学習によるものであり、環境設定と報酬(正の強化)を元にした躾や訓練で解決でき、そうすべきであることを主張しています。
ちなみにこの学会では「罰」を使った躾や訓練に関する声明文もだしていています。
科学的、臨床的な研究にもとづいて、「罰」には副作用があり、効果も疑問視されるという理由から、「罰」(主に嫌子出現による弱化です)を使った訓練や躾に反対しています。強化や弱化などの随伴性に関する用語解説まで付いていて、より詳細に「正の強化」(好子出現による強化)と「負の弱化」(好子消失による弱化)を使った方法を推奨しています。
行動分析学の学会ではありません。獣医師会です。
アメリカの獣医師(veterinarians)と日本の獣医師の資格や育成システムの違いは私にはわかりませんが、少なくとも日本獣医師会のwebサイトにはこうした提言や資料が見つかりません。
とはいえ、“AVSAB”を日本語で検索すると、たとえば東京大学獣医動物行動学研究室のwebサイトからAVSABへのリンクが見つかります。まったく無関係ということではないのでしょう。
ここから推察されるのは、アメリカで獣医師になるための教育課程には、強化や弱化などの学習原理を教える科目が含まれているが、日本の教育課程にはそれがないということです(どなたかご存知なら教えて下さい)。
さらに、日本で家庭犬の躾や訓練に関わっている人たちの多くが、最新の(と言ってももう十年以上も前のことなのですが)研究について不勉強だということです。犬の躾や訓練について、権勢症候群の理論をもとに本を書くのであれば、少なくとも前々回の記事でご紹介した論文は読んでおくべきだと思うのですが、そういう形跡は見当たりません。ここでは具体的なタイトルをあげてそういう本を批判することはしませんが、犬を飼おうと思って私が読み始めたほとんどの本にはアルファシンドロームのことが書かれていて、それでいて、元になる研究についての言及もなければ、参考文献の紹介などもありませんでした。
専門家なのに、専門書を読まずに本を書いてらっしゃる可能性が高そうな気配です。
ただ、権勢症候群の理論をもとに訓練を続ける人は、不勉強だからというよりも、その方が仕事がしやすからなのかもしれません。これについては次回に書きます。
AVSABがこういう声明を出さざるを得なくなった背景には、アメリカで一旦は衰退したようにみえた"Dominance theory"が復活傾向にあるからだという見方もあるそうです。
その兆候の一つが、テレビ番組『ザ・カリスマドッグトレーナー〜犬の気持ち、わかります〜』(原題:The Dog Whisperer)の好評ぶりです。シーザー・ミランというトレーナーが主人公のこの番組、私はたまたまHuluで観たのですが、かなり笑えました。
バラエティ番組にありがちな作りなので、どこまでリアルなのかはよくわかりません。視聴者からの依頼で家庭訪問したシーザーが、飼い犬を直接訓練したり(お腹のあたりにチョップを入れたりします)、飼い主を指導したり(「堂々としていなさい」的な助言が中心です)、自分の飼い犬たちに訓練させたり(そのための施設まであります)します。何が笑えるかと言うと、結局飼い犬の行動が変わったかどうかよくわからないケースが多いんですね。依頼した家族から届く後日談のビデオレターは、大抵、「おかげさまで調子いいです。まだまだ完璧ではないですけど」といったコメントがほとんどですし。
どうやらアメリカではこの番組が人気なようで、飼い主がリーダーとしてしっかりするとか、パック(群れ)に犬を戻して矯正するといった訓練メソッドが再度盛り上がってしまい、たまりかねた獣医師会が立ち上がったという構図もあるようです。
AVSABのブログにはそのような形跡も見当たります。たとえば、このブログ記事には、Gail Fisherというトレーナーさんの「Millan’s “television program set back dog training by about 50 years.” 」という発言が引用されていたりします。
犬の攻撃行動や問題行動の原因や対処法について、科学的な知見とそれにもとづいたしつけや訓練の方法を教えるべき人たちがそういう知見を学ぶ機会が少ない(もしくはない)というのが、我が国で未だに権勢症候群の考え方がはびこっている理由の一つだと思います。
でも、シーザー・ミランの人気やアメリカにおける権勢症候群の理論のカムバックからすると、それだけでもなさそうです。
次回、この番外編シリーズの最後には、権勢症候群派だけではなく「正の強化」派でも陥りやすい罠について書いてみます。
自然界に暮らしている狼の群れに、いわゆるアルファというリーダーはいないことを示した研究を前回の記事でご紹介しました。
それでも、権勢症候群を信じる飼い主さんは(あるいは訓練士さんは)、狼にはなくても犬にはあると主張されるかもしれません。
論理が破綻していてあまりに強引な主張ですが、そういう方にはぜひとも『ナショナル ジオグラフィック』を観ていただきたいです。
野生動物の中には確かに闘いによって「リーダー」の地位を獲得する種が存在します。
彼らが獲得するのは主に生殖相手であり、食餌の優先権です。闘いは死に物狂いで、当たり前のように負傷もします(殺すまではしないそうですが)。さらに、一度勝てばそれで安泰ということではないらしく、常に下位の個体からの挑戦を受け続けることになるそうです。
飼い犬と生殖相手や食餌を争う飼い主なんていないですよね。それに、もし犬にもそういう本能があるなら、一度、犬を懲らしめて飼い主が「リーダー」になっても、その後も、ずっと脅して、闘っていかなければなりません。そのような殺伐とした生活を望んでいる飼い主さんがいるとも思えません。
そもそも犬が吠えたり噛んだりする理由のかなりの部分は、不安や恐怖にあると考えられています。このことは拮抗条件づけが成功する確率が高いことからも裏付けられると思います(たとえば、McConnell 著『The Cautious Canine-How to Help Dogs Conquer Their Fears』などを参照して下さい)。
そうなると、飼い主が自分がリーダーであると飼い犬にわからせるために苦痛刺激を使うことは、不安や恐怖などの情動反応を引き出し、攻撃行動を誘発したり、その攻撃行動が苦痛刺激からの逃避や回避によって強化され、繰り返される危険をおかしていることになります。
問題行動への対処法について調査したHerronらの研究では(Herron, Shofer, and Reisner, 2009)、口をおさえたり(“マズルコントロール”)、咥えたものを力ずくて取り出したり、おおいかぶさったり(“アルファロール”)、叩いたり、蹴ったりするといった対応に、最低でも25%以上の飼い犬が攻撃的に反応したことが報告されています。
Herron, M., Shofer, F., & Reisner, I. (2009) Survey of the use and outcome of confrontational and non-confrontational training methods in client-owned dogs showing undesired behaviors. Applied Animal Behaviour Science, 117(1-2), 47-54.
すべての飼い主や飼い犬でそうなるわけではなさそうですが、少なくとも問題行動に対して苦痛刺激を使うことには、問題を悪化させる大きなリスクが潜んでいることになります。
そして、苦痛刺激を使ったそのときに攻撃的にならなくても、問題行動が繰り返されるたびに苦痛刺激を使うことになれば、果たしてそれが望ましい関係なのでしょうか?ということになります。
つまり、権勢症候群の考え方にもとづいた躾や訓練方法は、科学的根拠がないだけではなく、問題行動を悪化させたり、人と犬の関係性を劣化させるリスクの高い方法だということになるのです。
権勢症候群(アルファシンドローム)とは、飼い犬の問題行動(吠えたり、噛んだり、リードを引っぱったり、部屋のあちこちにおしっこしたり、などなど)の原因を、犬が自分をリーダーだと認識している、もしくはリーダーとしての地位を獲得、維持しようとする本能によるものとみなす考え方です。
犬の先祖が狼であり、狼の群れは、闘いに勝つことで決まったリーダーに率いられているという研究がその根拠とされています。
権勢症候群の考え方にもとづいて、吠えたり、噛んだりする問題行動を修正しようとすると、飼い主がリーダーであることを犬に教えて、服従させればよいということになります。そして、多くの場合(専門家であるトレーナーや訓練士さん、権勢症候群の考え方に基づいて書かれた本を読んだ一般の飼い主さん)は、リーダーであることを示すために、犬に苦痛刺激を与えることになります(リードをひっぱって首をしめたり、叩いたり、蹴ったり、おさえつけたり、口を塞いだり)。
野生の動物たちの生活をドキュメントしたテレビ番組などで、私もそうした行動を観たことがあります。群れで暮らしているバイソンのような野牛の雄同士が闘い、気に入った雌と生殖する権利や、食べ物を先に食べる権利を獲得するというやつです。確かに、種によってはこうした行動パターンがあるそうです。
犬の先祖が狼であることは、近年の分子生物学的研究からも確認されています。多くはDNAの類似性による研究です(たとえば『The behavioural biology of dogs』Jensen (Ed). 2007など)。
ところが、狼のリーダーシップ論(アルファ説)は間違いであったことが、すでに1999年に判明しています。もう十年以上も前の話です。
アルファ説の元になったのは『Expression studies on wolves: Captivity observations』というSchenkelの論文ですが、この研究の観察対象は、野生の狼ではなく、捕獲され、人による飼育下にある狼だったのです。
Schenkel(1947)は、ここからダウンロードして読むことができます。
この研究を反証したのが、イエローストーン公園に生息する野生の狼の群れを観察したMech (1999)の研究です。
彼によると、野生の狼の群れは、基本的には夫婦とその子どもが一つの単位で、バイソンのような大きな集団を作ることは珍しく(全くないということではないようです)、そして元々夫婦と親子ですから、リーダーという役割があるとすれば、それはお父さんであり、闘いによって決まるものではないし、お父さんは狩りから持ち帰った獲物を自分が食べるより先に子どもに与えることもあるそうです。すでに夫婦になっていますから、家族という集団で配偶相手を決める闘いも発生しません。
元々は Canadian Journal of Zoology に掲載されたMechの論文は、今では下記のサイトからダウンロードして読むことができます。
Mech, L. David. 1999. Alpha status, dominance, and division of labor in wolf packs. Canadian Journal of Zoology 77:1196-1203. Jamestown, ND: Northern Prairie Wildlife Research Center Online. http://www.npwrc.usgs.gov/resource/mammals/alstat/index.htm (Version 16MAY2000).
捕獲され、本来は一緒に暮らすことがない、血縁関係にない狼の集団を、餌の量や摂食機会が制限された飼育環境におけば、自然環境には起こらない行動が自発されたり、その結果、そうした行動が学習される可能性があることは今から考えると自明の理のようでもあります。しかし、狼の場合、とにかく個体数が少なく、行動観察をすることすら難しいため、なかなか研究が進まなかったようです。
MechがSchenkelの研究も引用して書いた一般向けの本『Wolf: The Ecology and Behavior of an Endangered Species』がとても売れ(12万部以上)、他に狼に関する図書もなかったことから、狼の群れは闘いに勝ったリーダー(アルファ)が率いるのだという誤解が広まり、いまだにその誤解が解けていないというのが現状なのです。このあたりの事情は、Mechによる以下の記事にとてもわかりやすく書かれています。
Mech, L. David. (2008, Winter). Whatever Happened to The Term Alpha Wolf. International Wolf Magazine, 4-8.(この号はここからダウンロードできます)。
「ボスざる」なるものが自然界には存在せず、動物園などの猿山でそのような振る舞いが観察されるのは、餌の量や摂食機会の制限という特殊事情によるものであるという話と近似してますね。野生猿の場合も、自然界には餌が豊富にあるので、そもそも奪合いをする必要がないそうです。詳しくは立花隆『サル学の現在』(平凡社)などをご参照下さい。
とうわけで、権勢症候群の考え方の拠り所となる狼のアルファ説が、科学的な研究によってすでに訂正されているということが、まずはおさえておくべきポイントだと思います。
ところで、今回、エソロジーの原著論文を初めて読んでみましたが、心理学の観察研究に近く、しかも説明概念がほとんどないぶん読みやすかったです。ただ、信頼性確保の手続き(例:観察者間の一致率)がなかったり、観察対象に選んだ群れがどの程度、狼全体の母集団を代表しているのか疑問になったり、そもそも自然場面で観察しているからそれが生得的な行動とは言えないわけで、やはりnature vs nurture(氏か育ちか)の問題は残るなと考えさせられたりはしました。
そもそも視点や興味が異なるのだろうとは思いますが、動物生態学者の人たちが個体の動物の学習に関することも詳しく知っていたら(たとえば行動随伴性について深く理解したら)、きっととんでもなく面白いことが次々とわかってくるのはないだろうかとも思いました。
いやぁ、参りました。のっけから降参宣言みたいですけど。
先月、区の保健所が主催した「犬のしつけ教室」にまたまた参加してきました。
4月にも「犬のしつけ教室」に参加し、このブログで苦言を述べ、提案させていただきました。そして8月にはそのことを保健所の担当者にお伝えしました。
そうした一市民としての動きが果たしてどのような影響力を持つのかを検証するために(も)、同じ保健所が開催する、今年度2回目の教室に参加してきました。
ですが、がび〜ん。
以下、その報告です。
まずは改善されたところから。
前回は2時間枠の前半が講義で後半が相談というふれこみだったのに、最後の最後まで講義でした。保健所の担当者さんにはそのことも指摘させていただきました。
今回は、後半が丸々相談の時間にあてられていていました。前半も約20名の参加者から積極的に手があがり、講師の方もそれに答えていました。
質問された方々は、それぞれご家庭で飼い犬の問題行動に困っておられる様子で、質問からはそれがひしひしと伝わってきました。
質疑応答の時間が十分にとれていたところは大きな改善点です!素晴らしい!!(拍手)
でも残念ながら、それが唯一の改善点でした。
講義の内容、そして相談に対する助言は、はっきり言って、めちゃくちゃでした。
前回とは違う講師の方でしたが、やはり東京都の愛護協会に所属されているらしく、地域で散歩中にポイ捨てされた犬の糞を拾うボランティア活動をされているそうです。それはそれで尊敬できることだと思うのですが、お話は、逐次、こんな感じです。
Qは参加者からの質問、Aは講師の回答、Lは講師の講義からの抜粋(私がメモをとったところ)、()内は私のつぶやきです。
Q: 犬が散歩中、リードをひっぱらないようにするには?
A: 頼りがいのあるリーダーになって下さい。
(これには柴内さんとかいう獣医さんのビデオ教材を使って解説していました。フードを犬の目の前につきだして追っかけさせ、あげくの果てにフードはあげないという驚きのトレーニングビデオでした)
Q: 頼りがいのあるリーダーとは?
A: 胸を張って、威厳のある態度をとって下さい。
(あんたはシーザー・ミランか!←これについてはまたいつか書きます)
L:犬は高いところに登ると自分がえらくなったと思って吠えますから、自転車のかごとかにはのせない方がいいです。
(そんなことより落下の方が危険なのでは?)
Q: 飼い主を噛んだら?
A:「痛い!」と大きな声で言ってびびらせて下さい。そのあと声のトーンを落として脅して下さい。
(ぎょぎょぎょ、こわいよぉ)
Q: <柴犬の飼い主さんが>おすわりもなかなかできません。
A: 柴犬はたいへんです。自分の思うままに生きていたい犬です。
(こんなふうにして風評被害が広がっちゃ、柴犬もたいへんだぁ)
L: おやつが効かない犬もいます。
(フードは食べるんですよね)
Q: <コーギーの飼い主さんが>散歩にいくと、バイクとか自転車とかに吠えまくります。
A: コーギーの雄はたいへんです。吠えます。
(コーギーもたいへんだぁ)
Q: 吠えるのをやめさせるには?
A: リードをつけて、吠えたら首をぎゅっとひっぱり、「いけない」と叱って下さい。
(確かに絞めつければそんときは吠えたくても吠えられないかもしれませんが、ずっと絞めつけ続けないとならなくなるのでは?)
Q: バイクに向かって行くのですが?
A: もっと強くリードをひっぱりましょう。
Q: あまがみをしたら?
A: 口をおさえて下さい。マズルコントロールっていいます。
A: でも、マズルコントロールは素人さんには難しいので、上からやさしくおおいかぶさって、おさえつけて下さい。
Q: 来客に吠えるのが止まりません。
A: ペットボトルに水をいれて、顔にぶつけて下さい。
(まじすか? 愛護協会の人なんですよね??)
Q: 自分のうんちを食べてしまうのですが。
A: 嫌がらせでやっているのかもしれませんから、叱って下さい。そして「まったく、もー」と言いながら、不機嫌そうに始末して下さい。
(擬人化による弊害ですね)
L:社会性がある犬は他の犬と仲良しになります。社会性がないと喧嘩します。
(循環論、ここに極まる)
L:犬は5文字くらいの日本語なら習慣づけでわかります。
(も、文字数でくるとは)
Q: 散歩中、他の犬とすれ違うときに怖がります。
A: 飼い主の不安がリードを通して伝わります。「大丈夫だよ」って言ってあげて下さい。
(「だいじょうぶだよ」って、おい5文字越えてるぞ。あ、漢字仮名まじりで5文字までってこと?)
L:犬はオーラをだしています。若い犬とか年寄りとかオーラでわかります。
(えはらさんですか)
L:犬にもプライドがあります。階段を登ろうとして滑って転んだのを笑われたらプライドが傷ついて登らなくなります。
(プライドあるなしにかかわらず、ひどく転んだらしばらく同じことはしないんじゃないでしょうか、あなただって)
Q: 子犬を飼い始めたんですが、家のあちこちでおしっこやうんちをしてしまいます。キッチンにも入ってきてしまいます。
A: 生後5−6ヶ月は仕方ないです。
(フェンスやサークルで制限してあげればいいのに)
最後に、この講師が配付した資料から。
と書いてあるのですが、話の内容からすると「ほめる:しかる」が「1:9」くらいの印象でした。
それがこの資料の最後の頁ではっきりします。
一目でわかるように、不快なもののオンパレードです。
「なでる」は犬にとって好子にならないことも多いように思います。逆にやり方によっては(頭の上からいきなりなでようとしたり)不安喚起にさえなるでしょう。
この講師本人のことばにもあるように「おやつ」が使えないようにみえるときもあるかもしれません。というか、場合によっては、嗜好の問題(好きなものをみつける)、確立操作(遮断化)、拮抗反応(不安で食べるどころではないときにはそちらの解消が必要)などをクリアしないとならず、この講師のようにその方法を知らない人にとっては「おやつは使えない」となってしまうのかもしれません。
「いいこね」「かわいいわ」「賢いね」なんて、5文字以内でいくら褒めても、それが犬の行動にとって好子になってなければ、しつけてることにはならないですし。
だからこそ「ほめる:しかる」を「8:2」とかなんとか美辞麗句を並べておきながら、実際にはその逆か、もっとひどいことになっているのではないでしょうか。
来客に吠えて困っていると相談していたあの老夫婦、この講師の助言に従って、ペットボトル投げてないといいんですけど。
甘噛みの対応に戸惑っていたあの若夫婦。この講師の助言に従って、子犬におおいかぶさっていないといいんですけど。
あまりに酷い、今回の「犬のしつけ教室」。こういうことがまかり通ってしまうのにはいくつかの原因があると思います。
権勢症候群(アルファシンドローム)信仰はその一つですし、犬の擬人化もその一つだと思います。
こうやって人前に立って話をする自称専門家があまりに勉強不足ということも問題だと思います。
怒りの冷却期間をおいてからブログに書こうと思っていたのですが、書いているうちに沸々と怒りが再燃してきてしまいました。
というわけで降参宣言するつもりはありませんが、区の「犬のしつけ教室」はこれでおしまい。
権勢症候群については別途記事を書こうと思います。
「はるちゃん、パパに似てるよねぇ〜」と言われることがあります。端正な顔をした犬なので、A=B、B≒C、関係性枠で A=C となり、「いや、そんなことないですよ(私は端正な顔はしていないから)」と否定したくなりますが、同時に何だか嬉しい気持ちもします。
以前、ご紹介したように、飼い犬と飼い主の顔の類似性の研究というのがあり、関西学院大学の中島定彦先生が、このテーマでいい仕事をしているのですが、最新の研究では類似性の源が目のあたりにあることがわかってきたそうです(電子版へのリンク)。
- Nakajima, S. (2013) Dogs and owners resemble each other in the eye region. Anthrozoös , 26(4), 551-556.
飼い犬と飼い主の組合わせ20組の写真を掲載したシートと、ペアを入れ違えた20組の写真を掲載したシートを比べさせ、どちらのページがより似ている組合わせのページかを判断させます。すると、顔全体を比べさせる条件では8割の参加者が正しい方のシートを選びます。口の辺りを隠した条件ではあまり正解率が落ちませんが、目の辺りを隠す条件では正解率がチャンスレベルまで落ちてしまいます。
中島先生は、当初、飼い犬と飼い主の顔が似ていること自体に懐疑的で、この実験も、そんなはずはないだろうなとの思いで行ったそうです。意外な発見ということになります。ですが、この実験により、飼い主が太り気味だと飼い犬も太り気味とか、髪の毛の長い女性は耳がたれた犬を好むとか、女性より男性の方が大きな犬を好むとか、そのような要因の影響を排除するように計画されていて、ものの見事に、そういうことではないことが示されています。
では、なぜ、目の周辺が類似してくるのでしょうか?
そういわれてみれば、ですが、散歩中に出会う飼い主さんと愛犬の組合わせを思い出すと、飼い主さんが社交的なほど(挨拶したり、声をかけてきたり、うちの犬をかまってくれたり)、飼い犬も社交的であることが多いような気もします。社交的な犬(積極的に、吠えたり、毛を逆立てたりせず、こちらに近寄ってくる犬)は、これはまったくの主観ですが、目元が穏やかな気もします。
飼い主さんが社交的であれば、飼い犬も他の人や他の犬と接触する機会が増え、いわゆる「社会化」が進みやすく、対人、対犬状況で落ち着いていられる犬に育ちやすいのかもしれません。
また、叱って育て、犬に「服従」を求める飼い主さんは、これもまったくの主観ですが、散歩中もニコニコせず、しかめっ面の人が多いのかもしれません。そして、叱って育てられる犬は、不安状態が高く、回避行動が多くなり、目元が厳しく、あるいは不安げになるのかもしれません。
犬は飼い主の気持ちがよくわかると言います。確かに、うちの犬も、電話越しに文句を言っているときのように(声を荒げているときなどは)不安そうな顔をしています。飼い主が緊張していると、犬も緊張するなんてこともあるのかもしれません。
実験に使った刺激はドッグフェスティバルに来場していたお客さんに実験者がその場で依頼して撮影した写真ということです。見知らぬ人(実験者)や状況(撮影)という事態ですから、そのような事態にどのように反応する人と犬なのかというところが、目の周辺が効いてくる理由の一つとして考えられるかもしれませんね。
飼い主にはわざと怒ったり、悲しんだり、喜んだりする表情をしてもらって、しかもそれを犬の撮影とは別の機会に行い、それと犬の写真を組み合わせて使ったりしたらどうなるのかなぁ。
犬のあくびがこんなにも研究されているとは(笑)。
Romero T, Konno A, Hasegawa T (2013) Familiarity Bias and Physiological Responses in Contagious Yawning by Dogs Support Link to Empathy. PLoS ONE 8(8): e71365. doi:10.1371/journal.pone.0071365
ちまたの犬の本には、犬があくびをするのは不安とかストレスの顕われだと書いてあることが多いのですが、最近の研究は、いわゆる“あくびの伝染”は“共感”によるものである可能性を追求しているらしいです。
この研究では、飼い主と見知らぬ人があくびのフリをしたときに飼い犬がそれに追従してあくびをするかどうか(それから、あくびに似た動作をしたときにあくびをするかどうかも)調べていて、見知らぬ人よりも飼い主があくびをしたときに追従することが多かったことから、“親近性”が影響し、その背景には“共感”が影響していると解釈しています。
でもね、ローデータをみると、実験に参加した25頭中17頭は実験条件でも統制条件のあくびをしなかったか、実験条件=統制条件か、統制条件の方で多くあくびをしていたのですよ。
統計ってすごいなぁとこういうときに思います。
それに「あくびのフリ」に“共感”するってのもすごいなぁ。「わかったよ。おいらもあくびのフリするよ」って“共感”なんでしょうか。
うちの犬で試してみましたが、退屈そうにするだけでした。もちっと共感しろ!(笑)
あ、うちの犬は、朝起きた直後とか昼寝から目覚めた後とかに、フツーにあくびしてますよ。不安でもストレスでもないような気がします。眠いときにするあくびです。
あくびの生理的なメカニズムは知りませんが、少なくとも人の場合は眠気と関連したレスポンデントではないかと思います。でも、眠いときには口元に力をいれたり、息をのんだりするような、両立しないオペラントを自発できるので、あくびが社会的に望ましくない場面(会議中やゼミ中やデート中であくびが弱化される危険がある状況)では、嫌子出現阻止の随伴性でこうしたオペラントが強化、維持されていると考えられます。
そして他の人があくびをすると、それが嫌子が出現しない状況の刺激(警告刺激の反対の安全刺激)となり、オペラントの自発頻度が下がって、追従あくびがでるのではないのでしょうか。だから、そもそもレスポンデントとしてあくびを誘発する刺激がないところでは追従あくびもでないと思うのだけれど、どうなんでしょう。
もちろん、模倣行動のオペラント水準はある程度あると思うので、他者の何からの行動がそれと形態的に一致した行動を引き起こすということはあると思うし、このあたりがミラーニューロン関係の話(がおそらく上述の研究の流れの“共感”説の根底になるのだと思うのだけれど)と関連している可能性はあるかもしれません、でも、そうなると、あくびのオペラント的側面を考えるか、模倣の制御が反射にまで影響することになります(新生児模倣のような制御がその後も続くとか)。だから、ちょっとよくわからないというか、私にしてみれば懐疑的な話です(愛犬家研究者の気持ちはわからなくもないですが)。
ましてや犬おや。犬や犬と人の生活には、あくびを控えるオペラントを強化する社会的随伴性はないと思うのだけれど.... そのような社会的随伴性のないところでの“共感”とは、何なのでしょうね。
ハズバンダリー・トレーニングとは、動物の健康維持のために、血圧や体温を測定したり、歯を磨いたり、シャンプーしたりするときに、動物が嫌がらないように、それどころか自分から協力するように教える方法で、多くの動物園や水族館で使われている訓練法です。
たとえば、秋田市大森山動物園の柴田典弘さんは、キリンのハズバンダリー・トレーニングの動画を公開してくれています。
人に触られたり、器具を付けられたり、口や肛門に何かを入れられたりすることは動物の不安や攻撃行動を誘発する可能性がある刺激ですが、個体差があったり、拮抗条件づけでそうした行動が減るところをみると、必ずしも生得性の機能(無条件刺激や生得性の確立操作)ではないのかもしれません。
拒否したり、逃げようとしたり、威嚇したりする反応は、きっかけはレスポンデントでも、そうした行動で嫌悪事態がなくなることで強化された、逃避・回避オペラントなのかもしれません。
ハズバンダリー・トレーニングの効果や仕組みは「拮抗条件づけ」で説明されることが多いようです。レスポンデント的な効果だけではなく(不安に拮抗する、フードに対する反射)、動いたり、逃げたりしたときに、FTもしくはVTで提示するフードを停止することでこれが阻止の随伴性となり、好子出現阻止によって弱化されているようにも思えます。
うちの犬は元々どこを触られても怒らないです(だからこそ「飼いやすい、いい犬ですよ」と奨めていただいたわけです)。でも、散歩から帰った後に、たらいの中に脚を入れて洗われたり、ブラシで毛をとかされるのには、抵抗していました。吠えたり、噛んだりはしませんが、寄ってこなかったり、体重を反対側にかけていく感じの、ゆる〜い拒否反応を示していました。
そこで、ホーム・ハズバンダリーを始めました。
散歩から帰ると、玄関から風呂場に行き、濡れタオルで顔と体を拭き、たらいの中で脚を洗い、洗い終わったらタオルで脚を拭いています。最初の頃は、玄関から風呂場に連れてくるのに苦労していました。玄関で座り込んでしまうのです。名前を呼んではいけないと思ったので(呼び声に応えて来たときに嫌なことがあると、呼んでもこなくなるから)、結局、リードをひっぱったり、抱えていったりしていました。
そこでハズバンダリーの発想を導入。引っぱるのも、かかえるのも止め、代わりに、風呂場の椅子におやつをひとかけら置いておくようにしました(最初の数回は抱えていき、おやつを食べさせました)。しばらくすると、放置したリードを引きずりながら、自分から風呂場に来るようになりました。
たらいへの入水に関しては、最初は前脚を身体的ガイダンスで入れ、腰を少し押してやり、両脚が入ったら、フードをあげていました。しばらくすると、腰のプッシュはいらなくなりました。数ヶ月後には、ガイダンスせず少し待つと、自分から前脚を入れるようになりました。初発反応には多めのフードを与えました(すごい感動!)。以来、たらいには、指と声のプロンプトで入るようになっています(どちらもなくても入ることもあるし、注意がそれていて入らないこともあります。たぶん根気よく待てば自分から入ると思いますが、朝の忙しい時間などは待てずにプロンプトしてしまいます)。
タオルで顔と体を拭くには私の前方に縦方向に向いてもらえると作業が楽なのですが、最初はこちらが無理やりに体を動かし、押さえていました。これも私の方を向いたらおやつをあげるようにしました。ここは、どちらかというとフードで誘導して形成し、今でも誘導を抜いていない箇所です(誘導でも問題ないので)。
百聞は一見に如かず。こちらが現在の動画です。iPadで撮影したのが気になったのか、カメラ目線です(笑)。
ブラッシングは最初はほぼ数秒毎におやつをあげながらブラシをかけるところから始めました。おやつは目に見えるところに置き、でも動いてそちらに近づいたらブロックしました。つまり、数秒のうちにブラシを1−2回かけ、その間動かなければすぐにおやつを一つあげ、またブラシを1−2回かけ、動かなければおやつをあげる...ということを繰り返しました。
ブラッシングを嫌ってというより、目の前のおやつを食べようとして動こうとすることの方が多かったかもしれませんが、これも数ヶ月続けるうちに、食べようとする動きは減り、数秒は5−6秒に、そして十数秒にと伸びていきました。
こちらが現在の動画です。腰から後脚をブラッシングするときに、お座りをしてしまうので、今は手で支えています。「たって」のコマンドが不十分なのでこれを教えるのと、ブラシの方向に逆らって立ち続けることを教えるのが今後の課題です。
自分はアニマルトレーニングの専門家でも、しつけの訓練士でもないし、そういう研修やトレーニングも受けていません。たぶん、専門家がやれば数セッションもかからずに教えられることだと思うのですが、飼い主にはスキルはなくとも時間があります。数ヶ月かけてゆっくり教えようと思えば、それなりの成果はでそうですよ。
ブラッシングやシャンプーなどでてこずっている飼い主の皆さま、お試しあれ。
7月の日本行動分析学会年次大会自主シンポジウム「『罰なき社会』を再考する」で山本央子先生からいただいた宿題の報告です。
犬のしつけで殴ったり、蹴ったり、チョークチェーンで絞めあげたりするなど、嫌子を使った弱化や阻止(回避)が使われることを止めるには、飼い主が声をあげていくしかないという山本先生のご主張はごもっともです。
私は以前このブログで某区の主催する「犬のしつけ教室」に対する苦情を書きましたが、山本先生によればそれでは不十分なので「区の担当者に電話して下さい」という宿題をいただいたわけです。
そこで区の保健所に電話しました(お盆前の話です)。そして「犬のしつけ教室」の担当者Aさんと30分近く話をさせていただきました。
それでわかったことです。
- 保健所にはしつけの専門家がいるわけでなく、Aさんもまったく関係のない部署からこの4月に異動になったばかりである。
- 保健所で犬(や猫)のしつけに関する相談には応じていない。
- Aさんたちの日常の業務の一つには、近所からクレームがあった犬猫への対応がある(飼い主さんからの相談はまずなく、近所の人から「あのうちの犬が吠えてうるさいから何とかしてくれ」というクレームが入るそうです)。
- クレームへの対応としては、現地に赴いて実態を確認すること、飼い主さんに話をすることだけ。
- 「近所からクレームがあるのでなんとかしてください」とは言うそうですが、専門家ではないので、どうすれば犬の吠えを止められるかはアドバイスしない(できない)そうです。
- 「それではクレームされた飼い主さんも困りませんか?」と聞くと、「確かにそうなので、わかる範囲のアドバイスはすることがあります」とのこと。
- 「どのようなアドバイスをするのですか?」と聞くと、「ラジオのノイズを流しっぱなしにするとかですかねぇ」とのこと。
- 「民間のしつけ教室を斡旋したりはしないのですか?」と聞くと、「公の組織なので特定の民間業者を推薦することはできません」とのこと。
- 「それでは、ほんとに困っている飼い主さんにとっては役に立ちませんよね」と言わせていただきました。
- 「そのようなクレームはどのくらいあるのですか?」と聞くと、Aさんが担当されているエリアで4月から数件ということでした。これが多いのか、少ないのかはよくわかりませんでした。
他にも色々は話をさせていただいたのですが、最後に、愛する飼い犬の吠えや噛みや排泄で困っている人はたくさんいると思うので、ぜひその人たちの役に立つ「しつけ教室」にしていただきたいことをお願いし、そのためには講演形式ではなく、せめて後半の時間を相談にあてるべきであると意見を言わせてもらいました。保健所の日常業務としてそういったサービスがないのですから。Aさんによれば4月のしつけ教室の感想にも同様の意見があったそうです。
最後に、私のブログ記事をファックスさせていただくことにして、電話を切りました。記事はファックスしましたが、読んでいただけたかどうか、理解していただけたかどうかは未確認です。
区では「犬のしつけ教室」を年に2回開催しているそうですから、できる限り次回の教室にも参加し、このクレームの効果を確認したいと思います。効果がないようなら、次の一手を考えます。
殺処分される犬や猫の数を減らすことは、倫理的にも経済的にも行政にとってメリットがある話だと思うので、保健所による(あるいは民間委託による)、適切な(嫌悪刺激を使って悪化させない)しつけ支援サービスの提供には意義があると思います。一市民としてのアクションがどのような効果を持つか、探ってみることにします。
徳島に帰省中は、朝夕、徳島中央公園を散歩してました。意外にも犬を連れた人の数が少ない(というか人の数がそもそも少ない)のに、放置されたうんちの数が多いのが気になりました。徳島の友達にきいてみると、犬のうんちを拾う習慣がない人も結構多いとのこと。市内でもそうだし、南や西にいくと、外飼いで、散歩もせず、夕方になると首輪をはずし、犬が自分で近所を散歩し、うんちとおしっこをして帰ってくるという家もあるそうです(それはそれですごいけど)。勝浦の友達の庭には、そういうご近所の犬のうんちがよく落ちているそうですが、昔からそうなので特に気にならないそうです。文化の違いですね。
そんなとき、イアン・エアーズ著『ヤル気の科学』(文藝春秋, 2012)で引用されていて、気になった記事がありました。
イスラエル、テルアビブ郊外の街、Petah Tikva市 では飼い主に犬のDNAを登録を促し(唾液から)、散歩中のうんちを指定された場所に片づけた飼い主にはペットフードやおもちゃと交換できるクーポンを提供し(くじ式?)、道に放置した場合は罰金を支払わせる介入プログラムを試行するとあります。2008年9月の記事です。
こちらのサイトでは市専属獣医のTika Bar-On博士のインタビュー動画が見られます。ここでは罰則のみについて言及しています。罰金が730シュケルと聞こえます(2万円?)。2011年の記事で1年半以内には実現するだろうとあるから、そろそろ本格稼働でしょうか? どうなったのかな。介入の試行で強化だけでは道ばたのうんちが減らなかったから罰則を導入したのかもしれません。罰金が高額なのは、それでDNA解析にかかるコストをまかなおうとしているからでしょうか。でも、それだと、みんながうんちを片づけるようになったらシステムが運用できなくなるかも。
興味津々です。
なお、エアーズの『ヤル気の科学』には、行動分析学を学んだ人なら誰でも知っている(?) Ainslieによるハトのコミットメントの実験が引用されています。
Ainslie, G. W. (1974). Impulse control in pigeons. Journal of the Experimental Analysis of Behavior, 21(3), 485-489.
今流行の行動経済学に行動分析学の研究が貢献している一例ですが、著者の作文には所々、非行動分析学的な解釈が現われ、これはこれで面白いです。
「試行錯誤の中で、ハトは自分の環境がどういうものか学習し、二つのキーの相対的な費用と便益も理解するようになる」(p. 28)
「事前にクチバシを縛る選択を与えられたら、予想される将来的な近視眼を防ぐだけの知恵を備えていたわけだ」(p. 40)
この本には、スキナーがシェイピングを閃いたときのエピソードも紹介されています。経済学、特に行動経済学は、環境要因から行動を予測したり、制御するという学問の基本的な性格から、他の社会科学に比べれば「心(認知)の罠」にはまりにくい学問であり、それゆえ行動分析学との相性もいいのでしょう。
行動経済学の研究からは、どのような随伴性が(もしくは随伴性を記述したルールが)人の行動にどのように影響するかについて、面白い発見がたくさん見つかっていますし、その応用研究も進められています。
ただ、その対象は人の行動なので、人以外の動物の行動と人の行動とを分けて分析する枠組みを持つ必要性がないのでしょうね。
行動分析学会年次大会自主シンポで山本央子先生にビデオを見せていただいた「チョークチェーン」。今まで実際に見かけたことはなかったのですが、徳島市内で生まれて初めて目視しました!
昼間の繁華街(二軒屋、金比羅神社の近く)。歩道で飼い主が白い大きな犬の首をチェーンで絞めあげてました。ボルゾイ??
車で通り過ぎたので、一瞬のことでしたが、しろえもんのビデオを見ていたせいか、犬がきゅーんと唸ったようにも感じました。
ひでぇなぁ。
しつけの名を借りて暴力をふるうのはやめましょう。相手が犬でも子どもでも。
我が家の排泄訓練については以前この記事に書きましたが、今日は言葉掛けでしてもらうことについて。うまくいってるんだか、うまくいっていないんだか、よくわからないケースです。
ところで、犬に対して「おすわり」とか「待て」と指示する言葉のことを「コマンド」というそうです。犬のしつけ業界用語っぽいですよね。日本語だと「命令」だけど、命令だとあまりに高圧的だからカタカナ英語にするのでしょうか。「餌」じゃなくて「フード」と言うのと同じノリなのかな。
うちでは散歩のときに、おしっこは「ワンツー、ワンツー」、うんちは「ツーツー、ツーツー」とおまじないのように声かけをし、した直後にフードをあげています。
おしっこについては、散歩に出て直後の最初の1-2回だけこうしています。その後も公園などではおしっこをさせますが、匂いをかいでちょぴっとするだけの、いわゆるマーキングみたいなので、そのときには、原則、声かけをしていません。
公園以外でのマーキングは一応禁止しています。匂いはかがせますが、しようとしたら「だめ」と言って、その場から離れます。匂いをかがせる前に離れようとすると脚を踏ん張って抵抗しますが、匂いを嗅いだあとならほとんど抵抗しません。でも、このタイミングが少し遅れてしまって、路上でしちゃうこともたまにあります(ごめんなさい)。それでも匂いを嗅がせているのは、散歩中にリードの引っぱり合いをする機会、そんでもって犬の方が引っぱり合いに勝つ可能性を極力減らしたいからです。
ちなみにマーキングは一切なしが正しい飼い方のようです。山本先生によれば、マーキングはさせなければ、しないようになるそうです。
うちの場合、今は散歩に行く前にうちのトイレでおしっこをしていることが多いので、散歩直後のワンツーは、なんというか、形だけみたいなところがあります。尿の量がそんなに出ないし、した後に自分からおやつをもらいにくることも少ないです。
うんちは、散歩で歩き出してから、だいたい5-10分くらいの範囲に、3-4箇所、決まったスポットがあります。そこに近づくと声をかけます。1箇所めでしてくれることもあれば、スルーが続き、4箇所めまで持ちこすこともあります。十回に一回くらいはそこもスルーしてしまい、仕方なく、その後に便意が生じた場所でしてしまうこともあります(二週間に一回くらいはうんちをしないで帰宅することもあります)。山本先生からは、最初、うんちをしてから散歩を始めるようにご指導いただいていたのですが、その場に10分以上留まっていても一向にしてくれなかったので、このように落ち着きました。
散歩に行く前にうちのトイレでうんちを済ませることもあります。昨年の12月くらいから、今年の5月くらいまではほぼそういうパターンが出来上がっていたのですが、5月に久しぶりにお腹をこわして下痢が続いたのを境に、うちのトイレではうんちをしなくなっています。原因は不明です。
さて、うまくいっているんだか、うまくいっていないんだか、よくわからないのは、「ワンツー、ワンツー」と「ツーツー、ツーツー」のコマンドの機能です。散歩時の排泄では、時間(食事をしてからの時間経過や朝起きてしばらくしてからとか、夕方私が帰宅してしばらくしてからとか)、場所(公園の決まった場所)とかが排泄のきっかけになっているようで、コマンドは何の機能も持っていないように感じています。コマンドかけなくてもしますし、逆に、命令されれば必ずしてくれるわけでもなく、決まった場所をスルーすることもあるからです。
夕方や夜の散歩でうんちがでなかったときには、夜寝る前に家のトイレに連れて行き、コマンドをかけてみますが、それでしてくれたことは今までに1、2回しかありません。そのくせ、その後、夜中に自分からトイレに行きを要求し、したことは何回もあります。若干、迷惑なのですが、何しろお腹が弱い子なので、下痢のときにはむしろ起こしてもらった方がいいと判断し、こうしています。
うまくいっているように見えるときもあります。どしゃ降りの中、散歩に出ると、コマンドでほとんど確実に一箇所めでしてくれるのです。どしゃ降りのときには排泄したら即帰宅します。どしゃぶりがさっさと排泄をすませることを誘発し、どしゃぶりからの逃避が強化しているのでしょうか。
もう一つの例外は旅行中です。宿に併設されたドッグランなどに就寝前に連れて行ってコマンドをかけると、大抵はさっくりとしてくれます。ただ、これは単純に他の犬の排泄の匂いが残っているからかもしれません。
擬人的に考えると、おしっこやうんちが溜まっていて(ある程度我慢しているような状態で)「ここでやっていいよ」という“許可”の機能と、おしっこやうんちがそれほど溜まっていないけど「あるものだけでもしぼりだしちゃいなさい」という“強制”の機能の二つがあって、二つの異なる機能を一つのコマンドで教えようとしてごっちゃになっているのかなぁとも思います。
そして、“許可”の方は、コマンドよりも、散歩の時間的スケジュールと場所がむしろ明確な手がかり刺激になっているような気がします。“強制”の方をしっかり教えるなら、むしろ、決まった排泄場所以外で、すでにおしっこをかなりした後で練習したり、いつもより早い時刻に散歩に行き(たとえば、夜7時くらいなのを夕方4時とか)、いつもとは違う場所でうんちを促す「ツーツー、ツーツー」をかけて、してくれたら特別なご褒美で強化するとか、そういう練習が必要なのかもしれません。
うちの場合、家での排泄は、トイレのドアをかりかりすることでドアをあけてもらえ、私が在宅中ならいつでも排泄できるようになっています。ただし、留守中はそれができず、かつ、留守か在宅かはそのときにしかわからない(定時ではないので時間的な弁別がきかない)という条件が実は事態を複雑にしています。ですが、複雑だと思っているのは当然私だけで、犬は何も考えず、行動だけが適応していくわけですから、ここも面白いですよね。
関東では観測史上一位を更新し続ける暑さが続いています。「観測史上」というのがいつからのことなのか気になったので、気象庁のHPの「過去の気象データ・ダウンロード」をみたら、東京の気温は1872年から遡ってダウンロードできるみたいです。
1872年といったら、明治5年。日本史の教科書的には岩倉使節団の年です。行動分析学で記録する行動の定点観測はせいぜい半年とか1年とかなので、こういう時系列的に長い期間のデータはただそれだけでなんだか興奮してしまいます。
夕方、雷雨があった後で散歩をすると、出会う散歩仲間の皆さんの話題もそれに集中するようです。「うちの子、雷、怖がって吠えてしまって」とよく言われます。
うちの子も去年がそうでした。どかんと来ると、びくっとし、あたりを見回し、背中を丸め、背中の毛は逆立って、尻尾は丸まって股の下、しまいにはぎゃんぎゃん鳴き出してしまっていました。
留守中のそんな様子を後からビデオで観たときには、余計に可哀想になりました。
そこで去年は、ネットから雷の効果音をダウンロードして、iPhoneに保存し、iPhoneをステレオのAUXにつないで、ステレオから雷の音を流して馴化させる練習をしました。
拮抗条件づけをするためフードをあげながら、最初は小さな音で。怯えていないことを確認しながらボリュームを上げていき、最終的にはけっこうの大音響で提示しました。
うちのステレオはホームシアター用5.1CHで、サブウーハーもあり、かなり響きます。雷の音源も複数パターン用意して、無作為な順序で使いました。
ただ、昨年は、この練習をやった後には小さな雷が数回なっただけだったので、練習の効果がはっきりと確認できませんでした。
それがどうやら、今年は大丈夫のようです。先週、はるが寝ているときに雷がなりました。最初の「ドカン」で頭をあげ、周りを見回しましたが、吠えることも、立ち上がることもなく、しばらくすると、また寝てしまいました。その後も、私の留守中に夕立があったときがありましたが、ビデオを観る限り、雷の音に反応してはいませんでした。
去年の拮抗条件づけの手続きがどれくらい効いているのかは正直わかりません。生活全般が安定してきているという影響もありそうだし、今年はまだ地響きがあるほどの雷がなっていないからかもしれません。
雷に対し、不安反応がでて、吠えるようになったら、また拮抗条件づけをやってみようと思います。
このシリーズにちょくちょく登場する山本先生こと山本央子先生は、米国で家庭犬育成の仕事に取り組まれてきた専門家の先生で、はると私はクライアントとしてお世話になっています。
私たちの場合、ご縁があって山本先生からご指導を受けることができ、叱ることもせず、吠えたり、噛みついたりすることもなく、幸せな日々を送ることができています。山本先生との出会いがなく、ペットショップで可愛いと思った子犬を、なんとなく飼い始めていたら、きっと大変な苦労をしただろうなと思うと、山本先生に脚を向けては寝られません(とはいってもお忙しい先生なので、毎晩、どちらの方向にいらっしゃるのかわかりません。きっと何度も失礼していることでしょう)。
米国では、今から十数年前に、それまでの嫌悪刺激を使ったしつけや訓練から、フードなどを使った強化中心の指導に大きな「転換」があったそうです。山本先生はそのときちょうどニューヨークでお仕事をされていたので、そんなムーブメントのど真ん中にいらしゃったとのことです。
ところが帰国してみると、日本ではかけ声だけの「褒めて伸ばす」や、それどころか嫌悪刺激を使った訓練への逆転現象さえ起きているようで、これはなんとかしないとあかんと毎日頑張っておられます(元々は大阪のご出身です)。
そんな山本先生が後進を育てるキャンプを、それも奥田先生主催の行動コーチングアカデミーで開催されるそうです。実際に犬を使った(参加者の飼い犬ではなく他の犬)、本格的なキャンプだそうです。
若干の追加募集枠があると聞いたのがすでに数日前ですから、すでに埋まってしまっているかもしれませんが、犬を相手にした臨床の力をつけ、本当のプロになろう、腕一本で食べていこうという肝の据わった方は、奥田先生のブログに案内がありますので、チャレンジしてみて下さい。
山本先生のような専門家が増えて、はると私のように幸せに暮らせる犬と人が増えることを念じて、陰ながら応援します。
散歩でしっかり運動させることが、健康のためにも、ストレスをためないためにも重要ということは、雨の日や私の帰りが遅くなったりしてどうしても十分に運動できなかった日に実感します。パソコンの前で仕事をしている私のところに、ひっぱりっこのタオルのおもちゃを持ってきて遊びを要求するし、海外ドラマをみながらゆっくりしていると(はるに注目していないと)、座椅子やクッションに噛みついたりするし、突然、部屋の中をものすごい勢いで走り回ったりします。
そこで山本先生に教えていただき、臭気訓練を始めました。臭気訓練といっても、警察犬が犯人の残した匂いを追うような高度なものではなく、鼻を使ってフードを探させるという単純な練習です。それでも、普段使っていない嗅覚をフルに使わせると、横隔膜を拡げて鼻から空気をたくさん取り込むことで運動になるし、“探す”ことでメンタルな練習にもなるそうで、うまくすれば、ぐったりするくらい疲れるそうです。
そこで大小さまざまなサイズの段ボール箱を捨てずにためておき(10-15個くらい)、これを居間に配置し、はるを一度廊下に呼び出し、待たせ、その間に、段ボールの一つに好物のゆで豚を一切れ入れ、「どこどこ」のコマンドと共に廊下から居間に呼び戻しました。
最初は何をしたらよいかわからないようだったので、すぐ見つかるように底の浅い箱の中にゆで豚を入れました。すると、それを見つけ食べました。すかさず「そう!」と褒め、廊下に呼び戻し、フードで強化し、次の試行に進みます。
これを十数回繰り返すと、はるも慣れてきて、廊下から呼び入れると、ものすごい勢いで走って居間に入り、耳で聞いてもわかるようにくんくんと匂いをかぎ、段ボールの間を巡回するように探します。鳩胸的な体型なので、横隔膜が広がっているかどうか見た目ではよくわかりませんでしたが、確かに体力は使うようで、これをやった日は寝付きもよかったです。
この練習をし始めて気づいた面白いこと:目の前に肉片があっても素通りすることがあります。どうやら、この練習が進むと、「どこどこ」によって刺激制御が嗅覚に限定され、探索中、視覚をあまり使わないようになるようです。
それから、段ボールを巡回する様子から、しっかり嗅覚を使っていないのではないかと案じていたのですが、匂いはすぐに拡散するし、あちこちの段ボールの箱に肉片を入れれば匂いも残るので、その試行で肉を置いた位置だけが匂うわけではなく、部屋全体が匂う中で、最も強く匂うところを探して歩く行動が「正解」だそうです。
探索は二次元(平面)だけでなく三次元(高さ)でもできるようになるということなので、少しずつ、高いところに肉をおいて探せるようにしてみています。
次のステップは肉を入れた段ボールを試行中に移動させ、1試行の時間を延ばすことだそうです。一試行5分くらいは探し続けるように訓練できるそうです。今は長くても十数秒で探してしまっているので、全体で5分、せいぜい10分くらいしか練習できていませんが、そうなれば30分くらい練習できることなり、肉体的・精神的運動量もそれだけ確保できることになるそうです。
試しにやってみたのですが、こっそり段ボールを動かしたつもりでも見つかってしまい、そこを探しにきてしまうので失敗。肉が入っていない段ボールを動かすなどして、動かした段ボールを探す行動を消去しないとならなそうです。
Youtubeに訓練の様子をアップしてあります。ただし、これは間違い例。見本ではありません。「どこどこ」のコマンドは最初の一回だけで繰り返してはいけないそうです。コマンドは繰り返さない(そうしないと単一のコマンドに刺激制御がつかない)というのは基本なんですね。
これで今年の梅雨は万全と思っていたら、空梅雨。
このシリーズの過去記事一覧:
犬を飼おうと思ったとき、忙しい毎日の中で、果たしてちゃんと散歩に行けるのか、それを検討するのに、どのくらいの時間が必要になるのか調べていました。
散歩時間は30分から1時間と書いてある本が多く、ネットの“犬博士”さんには1ー2時間という強者もいました。一日2回、一回1時間の散歩を毎日続けるのはスケジュール的にかなり難しいなと感じていましたが、実際、はるとの生活が始まると、散歩が楽しくて(はると一緒にいる時間が楽しいし、散歩中の色々な発見も楽しいし)、自分の生活が変わりました。
夜にテニスやジムに行く頻度が下がり、飲みに行くことも減りました。それはそれで少々寂しい感じもするのですが、不思議にも何かを犠牲にしているという感覚がありません。はるが来る前と来た後では私の行動の随伴性が大きく変わった証拠です。子どもがいる友達(で夫婦生活が円満な友達 ^^;;)からは、子どもができるとすべて変わるよとよく言われますが、たぶんこういうことなのでしょうね。
現在、はるとの散歩は一日2回、一回30-40分くらいです。散歩と言っても、公園に行き、公園を一周し(およそ10分くらい)、あとはボール投げやかけっこをして遊びます。3回に一回くらいの割合で、公園には行かず、街中を歩きます。これはルースリードで歩く練習のためです。
「散歩」の役割は十分な運動をさせることだそうですが、山本先生によると、ただ歩くだけだとどんなに長く歩いても犬にとっては十分な運動にならないそうです。猛ダッシュするときにみせる、両前脚が前方、両後脚が後方に伸びきったような形で走って、息がハァハァ上がるくらいの運動を、短時間でもいいからさせてあげることが健康のためにも、ストレスをためないためにも重要とのことです。つまり、時間的な長さではなく、運動の質をあげることが課題ということですね。
幸いにも、はるは投げたボールを取りに行くのが“好き”なので(一連の行動連鎖の自発頻度が高いということです)、フレクシリード(伸びるリードです)の範囲内ではありますが、ハァハァしながら遊べています。“好き”と言っても、初めからできたわけではありません。最初はロープのひっぱりっこを室内でやっていて(ロープを噛んでひっぱって放さないのを放させて、投げてあげる)、それができるようになった頃に、たまたまボールを投げたらそれをくわえて持ってきたのです。その後、繰り返し遊べるようになりました。
ボールそのものに飽きた後も確実に運動させたいので、公園で遊ぶときにはボールを持ってきたらフードで強化するようにしています。
ボールは何でもいいわけではないようです(なので、フードの強化随伴性だけでボールを取りに行っているわけはないと推測しています)。硬式テニスボールはすぐに飽きました。しばらく軟式テニスボールにはまっていた時期もありましたが、ここ半年はかむと音がするボールです。それも通常のボール型ではなく、卵形のボールへの反応が強いです(音によっても選好があるように見えます)。
卵形のボールは投げると無作為にはずみ、それを追いかけてキャッチする行動が内在的に強化されているようにも見えます。卵形のは小さく、軽いので、空中キャッチもします。これは特に教えていないのに、自然とやるようになりました。何かしらの行動内在的随伴性が作用しているんでしょうね。今は、私も一緒に走りながら、ラグビーのパスのようにボールを投げ、それを空中キャッチする練習なんかもしています(本番のない練習ですけども)。
ボール遊びについては、ずっと誤解していたことがありました。ボールを投げ、はるが追いかけて走り、キャッチしたら「そう」と褒め、「おいで」とコマンドしていました。ボールを持って帰ってくるので、私はてっきり呼び戻し(recall)としての「おいで」の練習になっているものと思っていましたが、山本先生によればそうではないそうです。
呼び戻しとしての「おいで」なら、ボールをキャッチする前に「おいで」と言って戻るようでなければなりません。そうでないと、オフリードで、何か他のことをしているときに呼び戻せません。ボール遊びをしているときに、はるが「おいで」で戻ってくるように見えているのは、「おいで」と言われたからではなく、ボールを投げてもらえるからです。なので投げてもらえるボールがなければ戻らないということになります。試しにボールを追いかけている最中に「おいで」と言ってみましたが、やはり戻りません(涙)。随伴性が異なるということですね。
というわけで、呼び戻しとしての「おいで」は別途練習をすることになりました(これはまたの機会に)。
このシリーズの過去記事一覧:
家の中で移動させたいときに「おいで」が使えなかったり、使いたくないこともあります。
「おいで」と呼んで犬が来たときに嫌なことがあると、「おいで」と呼んでもこなくなるということは、しつけの本によく書いてあることです。爪切りとかシャンプーとか、散歩が嫌いな子に首輪をつけるとか、ドッグランで遊んでいるときにリードをつけて帰るとか....
自分もこの失敗をしてしまいました。昨年の秋、いつもボール投げで遊んでいる草むらに、近所の野良猫用に埋めた餌を(そういうことをする人がいるんですね)、はるが見つけて食べてしまいました。
これがものすごい強化だったらしく、以来、ボール投げはそっちのけで猫餌を探すようになってしまいました(猫餌が強力な好子なのか、草むらで餌を探してみつけて食べるという随伴性が強力なのかは不明です)。それで自分も気づいたのですが、猫餌はその草むらだけではなく、公園のあちこちにまかれていたのです。公園の中を散歩しているときにも、はるがまるで臭気訓練しているときのように、鼻をくんくんさせ、猫餌を見つけるようになりました。
実は最初は猫餌とはわからず、ポイ捨てされたゴミとか、最悪、犬虐待のための毒入餌かもしれないと疑ってもいたので、「だめ」や「おいで」とか、あろうことか名前まで呼んで、それでも来ないからリードを引っぱって無理やりその場から引き離していました。口の中に指を突っ込んで食べようとしたものを無理やり出したこともありました。
当然のように、室内でさえも「おいで」が効かなくなりました。名前を呼んでも反応が薄くなりました(ドッグランから帰るときにも呼び戻しが効かなくなったのですが、これについてはまた別の機会に)。
随伴性を考えてみれば、
「おいで」 → 飼い主の方にいく → 猫餌が食べられなくなる
ですから、あたりまえですね。
「おいで」 → その場で踏ん張る(リードをひっぱる) → 猫餌が食べられる
でさえあります。さらに、何かを食べようとしているのを見つけたら、私も焦って呼んで引っぱるので)。
リードを引っぱられる → その場で踏ん張る(反対方向にリードをひっぱる) → 猫餌が食べられる
なんていう、誤学習まで生じてしまいます。これでそれまで徐々にできてきていたルースリードでのお散歩が完全に崩れて元の木阿弥に戻ってしまったことはここでお話しました。
「おいで」で来なくなるどころか、反対方向にリードをひっぱることを教えてしまったわけです。
家の中でも同じです。
ベランダで日向ぼっこしているときに、
「おいで」 → 部屋に戻る → 日向ぼっこなし
散歩に行きたくないのに、
「おいで」 → くる → 首輪・リードをつけられる
散歩から帰ってきて、
「おいで」 → くる → 脚を洗われる
ベッドで一緒に寝ていて、朝起きると、
「おいで」 → くる → 飼い主が家事で忙しくしてほったらかし
と、よく考えると、罠だらけなんですね。
フードを使って付加的随伴性を追加すれば、「くる」行動を増やすこともできますが、そうすると指示待ちになるということもよくわかりました。うちの場合、首輪・リードをつけて「おいで」で居間から台所、「おいで」で廊下、「おいで」で玄関、「おいで」で外、というように、移動しては次のコマンドを待つ、というような状態になってしまいました。
そこで、毎日ルーチンでする移動については、できるだけ「おいで」のコマンドなしに、はるが自発的に動くように、強化随伴性を見直しました。
手続きは単純で、たとえば、ベランダから戻るのは、
(特になし)→ 部屋に戻る → クレートにフードあり
としました。
介入を始めたのが冬だったこともあり(元々ベランダにそれほど長居するわけではなく)、すぐにはまりました。ベランダの窓をひっかき、あけてやると、脱兎のごとくクレートに走り込みます。
ただ、うまく行き過ぎて、ときにベランダと部屋の出入の頻度が増えたのと、ベランダにでてから私がクレートにフードを仕込むのを観察する行動がでるようになってしまっのがたまにきず。
朝、寝室から居間への移動については、すでに書きましたが、実は逆方向、つまり、夜寝るときの居間から寝室はずっと前からそうしていました(居間で遊んでたり、寝てたりすると、呼んでも来なかったので)。
散歩にでかけるときは、途中のフード提示を省き、玄関の外にでたときの一回にしたところ、しばらく時間(回数)がかかりましたが(たぶん2-3週間)、途中で止まることなく、移動してくれるようになりました。この間、指示待ちで止まるはるに、「おいで」は言わず、自分が先に進んだり、リードをちょこっとだけ引くようなプロンプトは使いましたが、それもだんだんとフェイドアウトしました。はるが自分で動き出すまで辛抱強く待つのがポイントだったと思います。
散歩から帰った後は風呂場で体を拭き、トレイに脚を入れて洗っています。おそらくはるにとって、そんなに気分のいいものではないと思うので、やはり「おいで」はやめ、フード提示は、カバーをかぶせたバスタブの上に上がったとき(その後体を拭きます)と、風呂場に降りてトレイの中に入ったときだけにしました(その後、脚を洗います)。そのときどき「アップ」とか「ダウン」とか桶の中を指差すようなプロンプトはだしていますが、それ以外はコマンドなしで移動できるようになっています。
バスタブから降りて、ぬるま湯をためたトレイの中に自分で4つ脚を入れてくれたときには感動しました。
コマンドなし、最低限のプロンプトだけで教えると時間はかかりますが、学習が出来上がると、あとが楽だし、なんだか自分の子がとっても賢くみえてきますね(←親バカの自慢話でした ^^)。
アレルギー問題でフードには苦労しているうちの犬ですが、記録更新を続けていることもあります。それはフードの完食です。
栄養たっぷりで、人が匂いをかいでも食欲をそそるAFC特製生食でさえ残していたはるですが、現在、完食それも瞬食の記録更新中。
フードを食べてくれないと、どこか悪いのか心配になりますよね。でも、どこも悪くないのにフードを食べなくなる犬はけっこういるらしく、うちもそうでした。
生食に削りぶしみたいな犬用ふりかけやチーズをかけると、一回めは食べてくれますが、すぐにまた食べなくなります。食器からすくってあげると2-3口は食べますが、それ以上はそっぽを向きます。そのくせおやつは食べるわけです。獣医さんに診せても悪いところはなし。
こういうときの確実な対処法は、フードを出し、食べなければ片づけ、その日はそれ以上何もあげないことだそうです。空腹で死ぬ犬はいないそうで(人も同じだと思う)、1-2日食べなくても犬は死なないそうで(人もたぶん同じだと思う)、こうすれば食べるようになるそうです。
確かにそうでしょうね。遮断化という確立操作をきっちりかけることと、出されたフードをすぐに食べないと食べる機会を逸するようにすることで、食べる行動を好子消失阻止の随伴性でも強化するということではないかと推測します。
フードを食べなくなるたびにフードの種類を変えたり、トッピングをつけてあげたりしていると、そのうち犬が「食べない」ことを学習してしまうという説もあるそうです。
この説はちょっと怪しいかな。数秒〜十数秒ごとにフードを少しずつ何回にも分けて与え、食べなければ種類を変えることをすれば、新奇性が好子として機能する犬なら、好子出現阻止の随伴性によって出されたフードをすぐに食べる行動が弱化される可能性もあるでしょうが、一日2回くらいの食事の頻度と間隔で阻止の随伴性が効いてくるとはちょっと考えにくいです。何しろ随伴性を記述する言語行動はありませんから。
おそらく、犬だって味や食感で飽和化することもあるということなのではないでしょうか。特に食事やおやつの量が多く、全般的に“食餌”としてのフードが飽和化に近づいている場合にはそういうことが起こるのではないでしょうか。
「甘いものは別腹(バラ)」と言ったりしますが、人だってお腹がいっぱいでも味が変われば“食欲”はでるものです。別の食べ物の味の遮断化が効いていればお腹いっぱいでも摂食行動が自発されるということです。だから味や匂いの異なるフードをあげればそのときは食べる。そういう様子を見て「食べなければ新しいものがでてくるってわかっているんだ」と解釈しているのが上の説ではないのかと思います。
うちの場合、最初はフードを片づけ、それ以上あげない方法をとっていました。確かに二日くらいすると食べますが、その後、また食べないときがあります。食べるときも、少し食べて、食べるのをやめて、また戻ってきて食べてと、すんなりいきません。なにより、飼い主である私の心的負担が大きかったです。いちいちきをもむのも疲れるし、なにより元気良く、がっつり食べてくれた方が気持ちいいです。
そこでフードの内容を見直すことにしました。方針は味や食感で飽和化させないように多様性を持たせることです。
うちではK9ナチュラルというフリーズドライのフードを使っていました。これにお手製のヨーグルトをいれていたのですが、どうやら乳製品全般でお腹がゆるくなるとわかったため、整腸機能があるサプリとしてビール酵母を使うように変えました。K9は水やぬるま湯でほぐしてからあげられるフードです。ヨーグルトを使っていたときは何の考えもなく水でほぐしていたのですが(ヨーグルトを温めるという発想がなかったから)、ビール酵母を使うようになってからお湯でほぐすようにしました。そのときに気づいたのですが、お湯でとくとフードの匂いがより際立ちます(犬にとってはそれほど違いはないのかもしれませんが)。
その頃、ちょうど散歩の練習に使うフードを豚肉や鶏肉を煮たものに変えたところでした。それまではジャーキーやドライフードを使っていたのですが、こっちの方が圧倒的に食いつきがいいのです。それに、散歩前に肉を温め、持って行くのに適温になるまでさましている間、食べたそうにうろうろして、ひーひー言うわけです。匂いをたてることが摂食行動の確立操作として機能するのではないかと思いました。
そこで、散歩用のフードと同様に、牛肉やまぐろもあわせ、それぞれを一度熱を通して小刻みにしたものを20-30gずつラップでまいてフリーザーで冷凍しておき、食餌の前に解凍し、適温になるまでさましてからトッピングに使うことにしました。4種類の素材を無作為に使います。
さらに、K9ナチュラルのほぐし方にも変化をつけることにしました。完全につぶしてさらさらにしたり、つぶさずそのまま大粒でだしたり、中くらいにつぶしたりと、これも無作為にして、食感に変化をつけます。ぬるま湯の量も調整し、スープ状になるときもあれば、しめった大粒状態のときもあるようにしました。
まとめると、トッピングの素材、主食の食感、水分量の組み合わせてバリエーションを作り、飽和化する暇もないくらい日々それを変えたことになります。そして、フードを準備している時間に匂いが立ち上がるようにして、その間、“食べたいのに食べられない”時間をつくったことになります。
最後に、フードをボールであたえるときには“おあずけ”としての「待て」を教えました。1秒以内から始め、少しずつ時間を延ばし、今では十数秒まで待てるようになりました(たぶん待たそうとすればもっと待てる)。さんざん待たされ、フードが目の前にでてきてもさらに待たなくてはならないのです。「待て」の間、待っているはるは、おそらく唾液が分泌しているのでしょう、舌をペロペロさせます。
そして「よし」。150-200gくらいの食餌ですが十数秒で完食です。旅行に出かけたときを除けば(環境が変わると食べにくくなるようです)、もうすぐ連続完食が10ヶ月です。
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元々、シェルターで何十頭もの犬や猫や馬や亀と暮らしていたときも、ほとんど吠えなかったらしい、うちの犬ですが、玄関のチャイムに対してはすぐに吠えるようになってしまいました。
経緯は覚えていないのですが、おそらく最初は来客に対して吠え、次第に、あるいは直に(←残念ながらこのあたり覚えていません。記録もとっていません)、来客前のチャイムに対してガン吠えするようになったように思います。もしかすると、ごくごく最初の頃は、吠えに対し「大丈夫だよ」とか声かけをしていたかもしれません。
うちの場合、マンションの集合玄関で一回、うちの玄関でもう一回チャイムがなります。これは次第にそうなったと思うのですが、最初のチャイムでは吠えず、玄関のチャイムで確実に吠えるようになりました。
来客といっても、頻度からすると、うちの場合、ほとんどは宅配やピザやカレーのデリバリーなどの業者さんです。友人がうちに上がって滞在する場合も吠えていましたが、これは部屋にあがってもらってからしばらくすれば(15-30分)止まりました。よく遊びにくる友人にはそのうち慣れ、尻尾を振って出迎えるようになりました(自分が出張中に留守番を頼む何人かの友達には私以上になついているように見えるときさえあります)。
部屋に上がってくる業者の数や回数は少ないので(年にせいぜい数回)、これについては特になにもしないことにしました。同じく年に数回しか遊びにこない友人への対処もとりあえずおいておくことにしました。
というわけで、目標は、宅配業者とその前兆であるチャイムへの吠えを止めることとしました。何しろ、玄関のチャイムだけでなく、テレビから流れてくる同じようなチャイムにも吠えるようになってしまっていたので、かなり煩く、かなり近所迷惑になると思ったので。それにしても、なんでチャイムってどこもかしこも同じなんでしょね。
山本先生には、吠える前にフードをばらまくこと、宅配業者に頼んでフードを投げてもらうこと、というご助言をいただきました。うちの場合、玄関から廊下に上がるところにベビー用品のフェンスがあり(万が一、いきなり外へ出てしまうのを防止するためです)、廊下から居間にドア、ドアをあけると台所で、台所と居間の間にやはりベビー用品のフェンスが設置してあります(これは台所でこぼしたものやゴミ箱の中のものをはるがむやみに食べないように防止するためです)。なので、業者さんにフードを投げてもらっても届かないし、届く廊下まではるを連れて行くと余計に吠えそうだし、忙しい業者さんにそんなことを頼むのも気が引けるので、とりあえず最初の助言だけを実行しました。
手順としてはこんな感じです。
1. 最初のピンポーン(マンションの玄関)
吠えないことが多いが、フードを二つかみ準備する(& 宅配の場合、受取の印鑑を準備する)。
2. 2回目のピンポーン(うちの玄関)
一つかみめのフードをばらまく(う〜とうなりだしていても、吠える前に)。
3. フードを食べているうちに玄関に移動し、用をすませる。
この間、吠えだすこともあるが、それに対しては反応しない(「静かに」とか「うるさい」とか言わない)。
4. 居間に戻ってきたら、宅配の荷物を見せ、フードをあげる。
これは山本先生からの助言にはなかったところですが、当初、段ボールの小包にも吠えることがあったためです。また、吠えがほとんどなくなってからは、玄関から戻ってくるまでに吠えなければフードを与えることにしました。好子出現阻止による弱化の随伴性を狙ってですが、作用したかどうかはわかりません。
そして、もう一つ。レスポンデントにしろ、オペラントにしろ、吠えるのを止めるには、吠える機会を増やさないとならないと考え、
5. 宅配の頻度を増やし、かつ、できるだけ自分が在宅していて上記の手順を実施できるときに来てもらうようにしました。
Amazonのプライム会員になれば、原則、送料無料です。だから、まとめ買いはせず、おやつ買ったら精算、おもちゃ買ったら精算、本買ったら精算...というふうにすれば(そして準備ができたものから順次発送と指定しておけば)、発送回数を増やせます。楽天ではお届けの日時を指定できます。いつもなら近所のスーパーなどで買う炭酸水や洗剤や食料品などもネットで購入することで、一日2-3回、一週間3-4日、おおよそ週で10回くらいの配達の機会を吠えるのを止める機会として活用できました。
最初のうちはばらまいたフードを食べずに吠えていたり、フードは口に入れながらゴホゴホしながら吠えていましたが、2-3ヶ月でほとんど吠えなくなりました。時折、思い出したように吠えることもありましたが、以前のように、吠えながら興奮していき、どんどん吠えが大きくなるということはありませんでした。
半年くらいしてからはまず吠えなくなったので、今はフードの提示をしていません。吠えるとしたらピザやカレーの宅配を頼んだときです。これは原因が匂いにあるのか、商品や支払の手続きで時間がかかったり会話が生じるからなのか、宅配業者さんはほぼいつも同じ人たちなので匂いを覚えてしまったがピザやカレーは頻度が低いし、いつも違う人なので学習が進まないのか、よくわかりません(それを確かめるには毎日ピザやカレーを頼めばいいわけですが.... ^^;;)。
ピザやカレーの場合も吠えるときには前兆行動を示します。それまでクッションで寝ていたり、クレートの中にいたりしたのが、玄関にむかうドアの方に歩いて出てきます。うなることもあります。こうした前兆行動がはっきりしているときには吠える前にフードを投げています。でも、ピザやカレーの宅配がきても、ずっと寝ていることもあり、一貫していません。
そもそもチャイムに対してガン吠えするようになってしまったのが、見知らぬ人への不安なのか、住処への侵入への警戒なのか、たまたま吠えたのを私が強化してしまったのか、その複合体なのかはよくわかりません。
散歩中、見知らぬ人にはおびえ、手をだされたら逃げるような臆病な性格ですが、それでも散歩中、人に対して吠えたことはありませんでした。なので、純粋に不安だけで吠えているとは思えなかったです。
一度、吠えるようになったら、私が声かけをしなかったとしても色々な強化随伴性が生まれます。玄関のピンポーンでは私が立ち上がって移動します。はるが吠えるから移動するわけではありませんが(因果関係はありませんが)、随伴関係は成立します。吠える→飼い主が動く、という随伴性です。
ずっと吠え続ければ、そのうち業者は用が済んでいなくなります。吠えたからいなくなったわけではありませんが(因果関係はありませんが)、吠えた→見知らぬ人の気配、音、匂いがなくなる、という随伴関係は成立します。宅配の時間設定をできるだけして、留守中にピンポーンがなる回数をできるだけ減らしたのは期せずしてこういう偶発的な強化が起こることを避けるためでもありました。
今でも火災報知器の検査の人など、見知らぬ人が部屋に入ってくると吠えます(以前に比べれば声もずっと小さく、興奮も弱くなっていますが)。そのことからすると、見知らぬ人全般や住処への侵入全般に対する不安反応が拮抗条件づけで減ったというわけでもなさそうです(少なくとも般化はしていない)。もしかすると、単純に繰り返して不安を喚起する刺激を提示していて馴化したのかもしれません。フードにはその曝露療法的な渦中、強い情動反応を抑えるという効果があったのかもしれません。
機序はわかりませんが、玄関のピンポンにも(テレビのピンポンにも)、宅配業者さんにも吠えなくなったので、方法論としては成功です。
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中学生の頃、実家でマルチーズを飼っていました。成犬を譲渡してもらった犬で、名前は「ルナ」。
あの頃は、行動分析学も知らなかったし、しつけの本を読みあさるってこともなくて、たまたま図書館でみかけたしつけの本に書いてあったことをやってみてました。本に書いてあることを疑うこともないナイーブな少年だったわけです(笑)。
排泄に関しては、失敗したら粗相をしたところに犬の鼻をなすりつけて「ダメ」と叱るという手続きだったと思います。
今ならこれがどれだけ間違っているか、なぜ間違っているかもわかりますが、当時は盲目的にそうしていました。それに昔の日本ではこの方法がある程度一般的だったようですね。30年以上も前のことですが。
はるがうちに来る前に、犬のしつけ本をたくさん読みました。ほとんどの本に、こういう昔ながら方法は間違っているとはっきり書いてありました。子犬に対する排泄訓練法は、どの本を読んでもほぼ同じ。定時で(おしっこしそうなときを見計らって)トイレシーツなど、排泄させる場所に移動させ、排泄したらフードで強化、しばらくしてもしなければ元に戻し、しそうになったらまた移動というもの。アズリンが開発した人の子ども用のトイレットトレーニングと原理原則は同じです(ちなみにアズリンのトイレットトレーニングの日本語訳『一日でおむつがはずせる』、残念ながら絶版のようですが、Amazonでまだ古本が手に入ります:この記事の最後にリンク)。
昔ながらの方法が間違っている理由も、叱るだけだとどこでおしっこすればいいのか教えられないとか、そもそも排泄してから時間が経ち過ぎていたら叱っても何で叱られているかわからないとか(60秒ルールの"認知的"解釈ですね)、下手に叱ると注目獲得になってしまってわざわざ色々なところでおしっこすることを増やしてしまうとか、あるいは飼い主から隠れてするようになるとか、どれも納得のいくものです。
はるが来たら、まず排泄訓練をしないとならないのだろうなぁと身構えていたのですが、ラッキーなことに、AFCのスタッフさんたちによる訓練で、排泄はお散歩に行ったときにお外でするということをすでに学習してくれていました。何冊かの本には「和犬は家の中で(すみかの近くで)排泄したがらない」と書いてありました。はるが和犬かどうかは不明なのですが(1/16くらいでパグが入っていることしかわからず、15/16は不明)、訓練のおかげで、今まで室内で粗相してしまったのは数えるくらいしかありません。その数回も、下痢で我慢できなかったり、遊びに来た奥田先生にびっくりしてちびったり、寝室の布団が変わったり(一回だけ)と、ほぼ特異な要因を推定できるものばかりです。
なので、うちでやったことは、散歩にだしてすぐに排泄でき、ご近所の迷惑にならない場所を見つけること(公園の端っこ)、そこでコマンドを声かけしながら待ち、おしっこしたらすぐに褒め、フードで強化するということです。はるがうちに来た初日はAFCから同行して下さった山本先生と察子さん(と杉山先生)が一緒に公園まで来て下さり、山本先生が察子さんにおしっこをさせてくれました。すると、はるも察子さんがおしっこをしたところにおしっこをするじゃないですか。那須塩原からの長距離ドライブで確立操作もばっちり効いていたということでしょう。さっそくフードをあげました。
これが強化として機能したかどうかはわかりませんが、翌日もそこでおしっこをしてくれました。そのあたりは近所のわんちゃんたちの散歩コースで、他のわんちゃんのおしっこの臭いもついているところでした。それで排泄が誘発されやすかったのだと思います。以後、ここが工事で使えなくなるまで、排泄場所となりました。
機会と場所が決まったので、後はスケジュールです。はるが来たのが2月。ちょうど後期が終わったところで、授業もなく、比較的自由に時間がとれる時期でした。でも、4月になれば授業も会議も再開し、家にいられない時間が長くなります。それまでにお留守番ができるように教えなくてはなりません(お留守番の練習についてはこちら)。
同時にそれまで日中は4-6時間おきにクレートから出され、散歩がてら排泄の機会があったのを、最終的には一日2回の散歩のときだけですませるように教えないとなりません。一日2回といっても、きっちりと12時間おきに散歩にだせるとも限らないので、最長で14時間くらいは保持できるように教えようと考えました。
これについては「月齢+2時間」が目安になると書いてある本がありました。ただ、排泄を我慢できる最長時間についてはどの本にも書いてありません。ネットを調べると「24時間我慢したことがあった」という報告がある一方、「そんなに我慢させたら尿道炎になってしまう」とか「うちのワンちゃんは4−6時間おきに散歩してます」といった飼い主さんの声が目立ちました。獣医さんなどによる専門的な意見は見つかりませんでした。
犬のことについて専門的な知識もないのに色々と語る飼い主さんを"犬博士"というそうです。心理学でも、心や行動の働きについて、科学的根拠も論理性もなく、素人さんが(時に素人さんレベルの専門家が)解釈する"理論"を「素朴心理学」と呼んでいたりしますが、犬については、心理・行動面だけではなく、生理・医学・遺伝など、様々な学問領域について素朴な理論を展開する飼い主さんがかなりいて、まともな訓練士さんにとってはときに弊害になるそうです。飼い主さんに助言しても近所の"犬博士"の意見でくつがえされてしまって、しつけが進まなくなることがあるからだそうです。
幸いなことにうちのご近所にはそういう"犬博士"さんは見当たりません。せいぜい、時々、はるの犬種について推論する人に出会うくらい。でもネットをみる限り、確かにこういう"犬博士"らしき人たちがたくさんいるんだなという印象は持ちました。
ただ、そういう雑駁な情報も使い方によっては有益です。基本的なことですが、自分の場合は「事実」と「解釈」に区別して、「解釈」はほぼ捨ておき、「事実」だけを抜き出すようにしています。たとえば、排泄の間隔については、なぜ短くしなくてはならないのかとか、犬がどういう"気持ち"なのかとか、我慢させたら○○になってしまうかもしれないとかいう不安はあくまで参考程度に読みとばし、実際、どのくらいの時間間隔をおいているのかを拾って読んでいきました。そうすると、事実として、ほとんどの犬は7-8時間は我慢していることがわかります(「4−5時間おきに散歩に連れて行っています」という人も自分が寝ている間は散歩させていないわけだから)。それから散歩をさせているのが一日2回でそのときに排泄させている人がけっこうの数いることがわかります。となると、排泄間隔の最大値が12-14時間というのは、それほど珍しくないとわかります。そして膀胱炎などを心配する書込みがある一方、一日2回の散歩しかしていなくて(そのせいかどうかはわからないにしても)膀胱炎になりましたという報告は見つかりませんでした。また、膀胱炎になったときの症状については複数のサイトで共通項目が見つかりました。これらを総合すると、犬の様子を観察しながら、成長にあわせ、徐々に排泄の間隔を延ばしていけば、12-14時間間隔にすることは、おそらくそれほど問題ない、という結論に達します。
そこで記録用紙に「排泄間隔の最長時間」を記入し、様子をみながら、2月(月齢6ヶ月)に8時間から初め、月に+1-2時間のペースで少しずつ、ゆっくりと延ばしていき、4月には11時間、6月には13時間、7月には14時間でも問題ないことが確かめられました。4月の半ばにはそれまで一日3回散歩に行っていたのを、2回に減らすことができました。
それ以後は必要もないのでそれ以上間隔を延ばそうとはしていません。9月くらいから、別の理由で、家でも排泄訓練を始めたので(これについてはまた後日報告します)、今では、たとえば夕方4時くらいに散歩に行っても、夜寝る前に家でおしっこしたり、朝、散歩に行く前に家でおしっこしたりもしています。つまり、散歩まで我慢する必要はない状況でもおしっこをする間隔は12時間くらいということです。
会議などが長引いてお留守番が14時間を越えてしまった日も何回かありましたが、そんなときも粗相はしてませんでしたし、帰ったら自分と遊ぶことに夢中で、散歩に行きたそうにするわけでもなかったです。
犬によっても、年齢によっても、摂食や摂水状態、あるいは体調によっても排泄の時間的間隔は変わってくるでしょうが、うちの場合はこのようにして排泄の間隔を延ばしました。
最後に冒頭のイラストです。家で排泄訓練をするのに(主に体調が崩れて下痢したりしたときのためです)、購入したトイレトレーについていた取扱説明書(「指導法」)の一部です。説明書きからは「犬を叱る」は削除されているのですが、イラストには残っているところが面白かったので掲載しました。ガミガミと叱られて申し訳なさそうにしているワンちゃんが哀れですね。
このシリーズの過去記事一覧:
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はじめて犬を飼う人、犬の飼い方について困っている人を対象にした教室ということで、私はどちらにもあてはまりませんが、こういう教室にはこれまで行ったことがなく、行政が主催する会でどのような話が聞けるのかに興味を持って参加しました。
平日の夜7-9時に催される会に20人くらいの参加者。これから犬を飼おうと思っている人、すでに犬を飼っている人がおよそ半々くらいでした(講師の先生から質問されて挙手)。
講師は某トレーナー協会の認定を受けているという先生で、地域のボランティア活動にも積極的に関わっている方ということです。
講義の前半は犬を飼うときの一般論。動物愛護法とか条例とか狂犬病ワクチン接種などの話と犬種別特性の話。○○図鑑だとチワワやミニチュワダックスは都心でも飼いやすいと書いてあることがあるけど、吠えやすい犬種であるとか、ジャック・ラッセル・テリアは可愛いけど、ものすごい運動量が必要なので一般の人には勧めないとか、ドーベルマンをマンションで飼うのもどうかと思う、などなど。
狂犬病ワクチンについては異論もあるんだよなぁとか、こういう犬種特性って、はると出会う前は、それこそ図鑑とかを毎晩のように読んで勉強してたよなぁとか(そして、結局、犬種特性で飼う犬は決められないという結論に達したよなぁとか)、こういう話の流れだと、雑種は蚊帳の外だなぁとか思いながら聴講。
手元には都や区のハンドブックとかも配付されていたので、これらにも目を通しました。
都の冊子は素晴らしいです。「しつけは犬の必修科目」という章には以下のように書いてあります。環境設定を重視し、体罰を禁じています(p. 7)。
5. 叱る状況を作らないように予防する。
(例:かまれて困るものを放置しない。ゴミ箱にはふたをする)
6. 困った行動を叱るのではなく原因を考えて対処する。
7. 体罰は絶対にしない。どならない。おどさない。
区の冊子も負けていません。「噛み癖をやめさせましょう」には甘噛みを好子消失による弱化を使って減らす方法が書いてあります(p. 5)。
甘噛みであっても、噛まれたらすぐに「痛い」と伝えて、その場から離れましょう。歯を使うと大好きな人がいなくなってしまうことをおぼえさせます。
さらに次のページでは(p. 6)、叩くことで噛みを誘発する可能性を警告しています(叩くことが確立操作として機能し、回避/逃避の随伴性が噛みを強化するようになる)。
犬がいうことをきかないと、犬の頭を叩く人がいますが、これをすると、この犬は
頭をなでようとすると人の手をこわがり、噛むようになってしまいます。
さらにさらに、無駄吠えには消去、不安の吠えには(深読みすれば)馴化、消去、拮抗条件づけを使うべしとあります。
犬は飼い主に何かをしてほしくて吠えています。吠えているときには、犬と目を合わせず、無視しましょう。
犬は知らないことに反応して吠えることがあります。普段から社会性をみにつけることで解決できることがあります。この音は何?と疑問をもたせないで、この音はこういうものだから大丈夫!ということを教え、むだに吠えることをなくさせましょう。
「後半は参加者からの質問や相談に答えますので、何かあったら講師への質問をお書き下さい」というメモ用紙が用意されていました。どうしようかな、何か書こうかなと考えているうちに、質問や相談の時間もなく、2時間が終わってしまいました。
後半は講師の先生のしつけについての話が中心でしたが、これはかなり残念でした。ご自身が飼ってらっしゃるワンちゃんの話なのですが、たとえばこんな感じです。
うちの犬は飼い主(講師ご本人)を病院送りにするほどの噛み犬です。
そういう深刻な問題を抱えていて、解決策を探しにきてらっしゃる参加者の方もいるかもしれないのだから、解決策を提示すべきでは?
うちの犬はおやつは興味がないんです。だからしつけはおやつじゃなくて、遊んであげることでやってます。
でもフードは食べるそうです(笑)。
うちの犬は名前を呼んでも振り返りません。耳が悪いのかもしれません。
うちの犬も今そういう状況になっちゃったんで、呼び戻し訓練を最初からやり直しているところです。キュッキュなるボールには良く反応しますから聴覚はOKだと思うので。
うちの犬はしっぽを噛む癖があります。トラウマがあるみたいです。そういうときには抱きかかえてあげると落ち着きます。
飼い主さんの(講師ご本人の)注目や接触がそういう行動を強化している可能性があるのでは?と思っているうちに、
うちの犬はよく泣きます。不安なのかもしれません。だっこしてあげると泣きやみます。
あららら、やっぱりと納得していると。これについては自分の対応が泣き続ける原因かもしれないと、まるでノリツッコミみたいな展開でした(でも、だから注目をやめて消去してみましたという話は残念ながらなかったです)。
「うちの犬」の話はまだまだ続きます。
昔はペット禁止のホテルに内緒で連れて行ってましたが、最近はそれもできなくなってきました。
とか、
ペットと泊まれる宿に行っても、うちの犬は部屋で一人で留守番できず、吠えるので、そういうときには車の中に入れておきます。
とか。
え〜。そんなことする人がいるからペットをOKしないところが増えちゃう(and/or ペットをOKとするところが増えない)んじゃないですかとか、そういうときに安心してお留守番できるように教える方法を皆さん聞きにきているのではないのでしょうかとか。
このあたりまでくると、私、かなりしかめっ面です (`-´)゛
チャイムについても同じです。
うちの犬はピンポーンの音で吠えます。
だそうです。
この問題行動については、チャイムがなったらおやつをばらまくという手順を紹介していました。しかし、それがうまくいくのは(チャイムやその後家に入ってくる見知らぬ人に対する不安反応を減らすための)拮抗条件づけではなく、口にフードが入っているから吠えられないとお考えのようでした。
なぜご自分のワンちゃんにそれをしないのかなと思ったら、そうでした。「うちの犬はおやつは興味がないんです」でした。だったらフードを投げればいいのにね。
うちの犬は所有欲が強くて、おもちゃを取ろうとすると噛みます。
はるが来たときに山本先生に最初に教えていただいた(たくさんの)ことの一つがこれでした。タオルを噛んで放させて(手間に引くのではなく犬側に押すように力を抜くとはずえることがある)、そしたら遊びを継続してあげるとか、アキレスみたいな噛めるおやつを噛ませ、同じように放させ、そしたら瞬時にレバーペースをつけて返してあげるとか。フードを食べているときにボールにおやつを追加してあげるとか。うちの子はおかげさまでフードやおやつを守る危険行動はしません。タオルやボール遊びの文脈でなら「ちょうだい」で放せるようにもなってきました。
そういう指導方法の一つでも話してくれればいいのに。
質問の時間がなくなると悟ったのか、参加者の一人から「遊んでいると甘噛みしてくるので、獣医さんに相談したら、飼い主が上の立場であることをわからせるために、脚をぎゅっとつかんで押さえつけなさいと言われました。それでいいんでしょうか?」と質問されると、
脚をつかむことはしなくてもいいと思いますが、「だめ」っときちんと短く怒ってあげましょう。
と回答。今どきαな獣医さんも獣医さんですが(そういう獣医さんはまだまだ多いようですが)、せめてせっかく配付した区の冊子を引用して「その場から離れましょう。歯を使うと大好きな人がいなくなってしまうことをおぼえさせ」ましょうくらい言ってほしかったです。
もうおわかりでしょうが、この時点で、私はこの講師先生に相当の不信感を抱いていました。
ブログで個人攻撃をする気は毛頭ありません。色々な人から話を聞いてみると、どうやら、こういう「しつけ教室」は珍しくないそうなのです。「しつけ」のインストラクターに関しては民間の資格が色々作られているそうなのですが、基本的には「おすわり」や「ふせ」や「おて」のように、何か新しい行動を教えることを「しつけ」と呼んでいるようです。「吠え」「噛み」「排泄」など、日常生活における問題行動を減らす技術はあまり重視されていないようなのです。でも、一般の飼い主さんの興味というか、愛犬と一緒に幸せに暮らしたいという願いを叶えるためには、このへんは避けて通れませんよね。
うちの犬は「おやすみ」と言えば寝ます。犬は条件反射で覚えますから。
「おやすみ」よりも電灯が消えたり、飼い主が寝て動かなくなることが手がかりになっているのでは?(昼間、飼い主さんが友達と大騒ぎしてても「おやすみ」で寝ない限り)
私の場合、はるが来る前は寝室ではテレビをつけっぱなしにしてタイマーかけて寝ていたのですが、これだと刺激変化がはっきりしなくて、はるが寝る状態(ベッドにあがって、くるっと丸まって目をつむる)に移行しにくかったので、それはやめました。元々、安眠のため、カーテンはかなり分厚いものを使っているので、電灯を消すとまっくら。二重サッシで静寂。はるがちょっかいをだしてきても当然一切無視です(消去です)。これで今では電灯を消すと、溜息をつきながら(うそじゃないです)、寝る体勢に入ります。ちなみに、すぐには寝ません。目は開いているようです(時々、目があいます。瞬間、目をつぶって寝息をフェイクします)。
あと....「条件反射」....ではないですね(笑)。
2時間の教室の最後の方で、とても気になる話がでてきました。
「この犬、ばかなのよ」とか、犬には全部聞こえてわかっていますから、目の前では話さないで下さい。陰口は聞こえないところでお願いします。
私も、ついつい「○○○、コラ」とか言ってしまいます。
「この犬、ばかなのよ」が犬に"理解"できるかどうかは別として、飼い犬を「ばか」と言うような状況は悲しいですね。「陰口は聞こえないところで」なんて言わず、「うちの犬、賢いのよ」「うちの犬、可愛いでしょう」としか言えないような状況にしていくのが「しつけ」なのではないでしょうか。幸いにも、有難いことにも、うちはそうです。聞こえないところで「親バカ」と陰口言われても気にしません。
「コラ」が機能するためには何かしらの随伴性が必要なはずです。私は基本的には「コラ」ではなく「ダメ」を使っていますが、言うだけではありません。たとえば、座椅子に噛みつき始めたら「ダメ」と言い、それでも止めなければ別室に立ち去ります(好子消失による弱化)。座椅子への噛みつきはこれでかなり減りました(ほぼ毎晩だったのが1週間に一度くらいに)。「ダメ」が警告刺激として機能するようになったかどうかは不明です。「ダメ」でやめることもありますが、一瞬動きが止まった後、座椅子攻撃を続けることもありますから。しかも般化はしていません。散歩中、道に落ちているゴミを口に入れようとしたときに「ダメ」と言っても何の効果もありません(もっともこれは随伴性がまったく異なりますから当たり前といえば当たり前。落ちているものを「そのままに」することを教える別のコマンドや練習が必要ですね)。
ただ単に大きな声や怖い顔で「コラ」と言って、その場でその行動を止めさせているなら、都の「7. 体罰は絶対にしない。どならない。おどさない」に抵触するのではないでしょうか。それに、それだけなら恐らく犬はすぐに馴化してしまい、「コラ」と言われても"聞こえないように"振る舞うかもしれません。そこから「体罰」(や「天罰」)にエスカレートしないためにも、もっと別のしつけの方法を具体的に紹介すべきだと思うのです。
この「しつけ教室」についてブログに書くべきかどうかかなり迷いました。おそらくは無償ボランティアで一生懸命に講師をして下さった先生に無礼、失礼をしてはいけないからです。でも、はじめて犬を飼う人や犬の飼い方について困っている人に保健所という公の機関が提供する「教室」としては甚だ不十分であり、改善の余地があると思い、書くことにしました。
一般の飼い主さんがあのような「教室」を受講したら、吠えたり噛んだりするのは「犬種」や「ばかな犬」のせいであって、講師の先生の飼い犬でもそうなのだから、うちの犬がそうでも仕方ないと思う人がでてきてしまうかもしれません(そして「コラ」とか「バカ」とか言い続けるのかもしれません)。あるいは、そんなにたいへんなら犬を飼うのは止めようと諦める人がでてくるかもしれません(それはそれで正しい判断かもしれませんが)。
本来ならこういう「教室」では、吠えたり噛んだりするのをいかに減らして、飼い犬とハッピーに暮らせるか、具体的で実行可能な方法や例をできるだけたくさん紹介すべきだと思うのです。そして、せっかく2時間もあるのですから、参加者からの質問や相談を受ける時間をしっかり確保し、飼い主さんとワンちゃんの状況を聞取りながら、できるだけそれにあった方法を助言するようにして欲しいです。
そうです。つまり、長くなりましたが、この記事は、こういう「しつけ教室」を開催する公の機関の担当者さんに向けてのお願いなのです。
最後に蛇足:2020年オリンピック招致活動のメモパッドが配られてました。表紙だけじゃなく、メモ用紙も六色刷り。超贅沢。せっかくなので東京が選ばれますように。
引き取られた犬猫のほとんどは殺処分されます(殺されます)。
犬や猫を飼おうと思ってる人は、その前に下のDVDを観て下さい。子どもさんが犬猫を飼いたいと言ったら、ぜひ観せてあげて下さい。ただし、非常にショッキングな映像もありますから、親御さんのご判断と監視下でお願いします。
イギリスでは使用が禁止されるようになったのに日本ではまだ使われているという「リードショック」を使った指導の動画と、フードを好子に使った強化による指導の動画を、同じ犬で比較できるということで買って観たのですが、それはそれでとても参考になったものの、本来のこのドキュメンタリー映画のテーマの方でガツーンとやられました。胸が苦しくなる感じ。
殺処分の問題は本で読んで知ってはいたのですが、映像でみると違いますね。辛い。
はる、俺たちは一生楽しく暮らそうな。
この映画の監督さんがプロデューサーに回った第二作が近日公開。こちらは東日本大震災で被災した動物たちがテーマだそうです。劇場では恥ずかしくて観られないな、きっと(わんわん泣いちゃいそうで)。
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犬と猫と人間と [DVD] 紀伊國屋書店 2010-06-26 売り上げランキング : 19328 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
AFCでお世話になっていた間、そしてその後しばらくは、佐良先生のご厚意でAFC特製の生食をいただいていました。生肉に何十種類もの野菜やフルーツを混ぜた、栄養満点のお食事でした。
でも、いつまでもそれに甘えているわけにもいかず、自力で生食を作るのも難しかったので(フードプロセッサーを買って試してみましたが、使い方がよくわからず、一台壊しました。5分以上連続運転しちゃいけないタイプだったようです。ミキサーとの違いが今でもわかりません)、某メーカーのそれなりに高品質の半生タイプのフードをあげ始めました。これがその後のおよそ2ヶ月にわたって、はると私を苦しめます。
去年の3月末から6月くらいまで、何度、動物病院に行ったかわかりません。駒沢公園の近くの名医さんにも診ていただきました。症状は下痢です。しかも、血便。きばって、きばって、ようやくでてくるうんちが水状だったり、真っ赤だったりしました。最初は、初潮!?と勘違いして、避妊手術の種類を調べ、那須の動物病院に電話したくらいです。
AFCでしっかりトイレットトレーニングをしていただいたおかげで、排泄は散歩のときだけで、家ではほとんど失敗しない状態でうちにやってきましたが、さすがに下痢は我慢できるわけもなく、サークルの中でやってしまっていました。
帰宅してサークルの中が真っ赤になっていたときは、心臓が止まると思うほどのショックでした。はるは何となく申し訳なさそうな顔をしてこっちをみます。それが私の"投影"的タクトだとわかっていても、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
夜、寝ているときも急に起きてもぞもぞしだし、我慢できずに寝室でやってしまったことも何回かありました。どうしてよいか分からず、深夜だというのに山本先生に相談したこともありました。このときは、初めて赤ちゃんを授かって、でも相談に乗ってくれる両親がそばにおらず、赤ちゃんの些細な症状にもいちいち反応してしまい、病院に駆け込む新人ママさんの気持ちがよ〜くわかりました(パパですが、ママの気持ちです)。
次の日、ほとんど寝ていないまま、大学に行く前に便を持参して動物病院に行き、薬をもらって帰ってくるということが何回も続きました(はるは車酔いして吐いてしまうので、それもたいへんでした)。何しろ原因がわからず(なので、下痢止めと抗生物質の投与のみしかできず)、少しよくなったと思うと、またぶりかえし、ということが続きました。食欲はあるし、元気いっぱいに遊ぶのに、下痢、そして血便。
3.11で体内被曝し、みなしごさんにレスキューされるまではそのあとも放射能濃度の高いところにいた子です。時々、体に赤いポツポツができることもあり、それが喉元にでたりすると、ほんとうに不安になりました。このままでは育児ノイローゼになるなんて思っていましたから。この頃の私のiPhoneの「写真」の中は、はるのうんちだらけでした。
原因がようやくわかったのは、アレルギー検査の結果がでてからです。「ラム」に×がついているじゃないですか。半生タイプのフードはラムだったのです。
「これだ」というホッとした思いと、佐良先生から「アレルギー検査してあげて下さいね」と言われていたにも関わらず、すぐに実行しなかったことへの後悔の念があふれました。しかも陽性とでたのはラムだけではありませんでした。米も大豆もジャガイモも×。玄米、カツオ、ニシンも×。他にも、ハウスダストやダニ、ブタクサやニワトコ、オリーブにブナにオークにクワにと、かなりの数の×がついていました。
はるにとってのアレルゲンを含まず、アレルギー反応がでない(でにくい)フード探しがそこから始まりました。これには時間がかかります。フードをかえるのに(ぞれまでのフードと少しずつ割合をかえて)1週間ちょっとかかり、その後、新しいフードの影響をみるのに2週間。症状が改善されればそのままで、もう2週間様子をみるという原則でのぞみました。iPhoneの「写真」はますますうんちだらけになりましたが、だんだんときれいでしっかりしたうんちが続くようになっていきました。
散歩中、立派なうんちがしゅるっとでてきたときの安心感ったらありません。思わずにこっとして、写真を撮ってしまいます。
ただ、親バカ行動がこの原則の厳格な運用を妨害します。Amazonや楽天で検索し、アレルゲンフリーとか書いてあると、ついつい買ってしまいます。買ってしまうと、ついついあげてしまいます。しかも、いっぺんにいつくかの商品を買って与えてしまったりします。そしてその次の日あたりに便がゆるくなってくると、..... 、もう何がなんだかわからなくなります。
与えたフードや便の様子、散歩(排泄)の時刻、おやつや遊びは毎日記録をとっていますが(下に例)、記録をとっているだけでは、アレルギー反応の原因は特定できません。シングルケースデザインの鉄則、すなわち、一度に変える変数は一つだけ、そしてその変数の影響が分かるまで次の変数は投入しない、を守らないとなりません。
このあたりは、躾に厳しいママと、欲しがるものは何でも買って与えてしまうジジが私の中に同居している感じです。ようやく1年のバトルをへて、最近ではジジも少し理解して協力してくれるようになりました。
はるの場合、アレルギー反応はまず消化器系にでて便がゆるくなるみたいです。次に皮膚のかゆみ。ひどくなると赤いプツプツがでます。そしてさらに便がゆるくなります(散歩中にしたのをポイ太くんでつかめなくなり、トイレにながせる濡れティッシュを使わないとならなくなるくらい)。そろそろ1年くらい血便はしていませんが、もっとひどくなると血便になるのだと思います。
なので、今では、新しいフード(主におやつですが)を導入するときには、便の様子を観察し、影響しそうならやめるようにしています。アレルギー検査をすると、アレルゲンが含まれていないセーフなフードも紹介してくれます。ところが、はるの場合、推奨されているフードでも下痢をしてしまったり、発疹がでてしまったりしました。獣医さんによると、アレルゲンは増えることがあるそうなので、再度検査をしないとならないのかもしれません。もっと高度で正確な検査もあるそうです(7−8万円するらしい)。でも、結局は、この子にあったフードを一つひとつ見つけて行くことになるのは同じなので、私はシングルケースデザインの鉄則に、ジジの様子をみながらできるだけもとづいて、食べられるものの幅を増やしていってあげようと考えています。
ベッドには乗せない予定でした。布団が毛だらけになるのが嫌だったからです。
でも、はるがベッドに飛び乗るのを物理的に防ぐことが難しく(ブロック作戦の顛末はこちら)、それより何より、腕の中で眠るはるが可愛くて仕方なくて、結局、ベッドで一緒に寝ることになりました。
たいへんだったのは朝です。早朝、5時くらいになると目が覚めて、私の顔をぺろぺろ舐めだします。知らんぷりして寝ていると布団や枕を噛み始めます。特にジッパーには執着して、引きちぎります。
でも、ここで起きてしまっては、こうした行動をすべて強化してしまい、毎朝、はるの都合で起きなくてはならなくなります。
そこで、ここでも徹底的な消去を導入することにしました。そして、そのために以下の手段を講じました。
- 枕・布団はあきらめる。どんなに噛みつき、引き裂いても、反応せず、そのままにしておく。最初は枕を取り返して布団の中に隠そうとしましたが、これも遊びのやり取りになりそうなので、枕を咥えたら、もうそのまま放置することにしました。枕カバー、布団カバー、それぞれ2−3セットは台無しになるだろうけど、台無しにすればそのうち反応しなくなるはずと考えて先行投資することにしました。それにどうせすぐに引きちぎられるのだからと、しばらくの間は、破け、裂けて、ジッパーのないカバーで過ごすことにしました。
- 寝室の危険箇所(暖房器具や空気清浄機のコード周りなど)を100均で売っているネットで覆い、コードを噛んで感電することを防ぐ。
- ベッドそのものやベッド下の収納ボックス(も噛みだしました)にはビターアップルを十分にかけておく。
以上はどんなにバーストが生じても、安全に放置できるようにするための対策です。
次に、
- 目覚ましのアラーム音をiPhoneで録音し、手動で再生できるようにする。
- 目覚ましをセットした時間より前でも、はるのバーストが一段落し、静かにしているときには、手動でアラーム音をならし、カーテンをあけ、「おはよう」と言って、遊び(顔をなめさせる、などなど)、居間へ移動して一緒に遊ぶ。
- 例:7:30に目覚ましをセットしていても、6:50くらいからバーストが始まり、暴れまくって7:10くらいに収まったら、7:15くらいでまだ静かにしているうちに起きてしまう。
これは、はるがバースト中(顔をなめたり、枕や布団をかじったり、などなど)にアラームがなって、こうした行動を偶発的に強化しないためです。また、アラーム音を起床行動の弁別刺激にするための手続きです。
その結果、やはり最初の1週間くらいはめちゃくちゃバーストが生じました。バーストが続いている時間の記録をとっておいたのですが、残念ながら消失してしまいました。たしか、40分、50分、40分、20分、10分、10分、20分....といった感じの推移だったと思います。
強いバースト中には、ベッドの脚が削れ、壁にも大きな傷がつきました。枕カバー、布団カバーはボロボロになりました。
それでも1週間後には、驚くほどバーストが減りました。寝た振りをしてこっそり見ていると、ベッドの上でおすわりして、あたりをきょろきょろしたり、こちらの方をじっと見ているのですが、そうするうちにまた丸くなって寝てしまったりしています。眠るというよりは寝てじっとしている感じです。
そういうはるの姿をみると、頑張っているなぁという感動でむねがあつくなりました。抱きしめてあげたいけど、もちろん我慢。しばらくして、手動でアラームをならしてから、たっぷり抱きしめました。
このような手順で、早起き問題は案外と早くに解決しました。枕カバー、布団カバーをかじる行動はその後も引き続き見られたので(寝る前とか、起きた後とかに)、半年くらいは破れたままのカバーで過ごしましたが、今ではまったくなくなったので、新品のキズなしカバーで寝ています。
それどころか、最近では、アラームがなってもスヤスヤ寝たままで、こっちが起こさないとならないときも多いです。起きた後も、ふかふかな布団の上が心地よいのか、居間になかなか移動してきません。居間にいくと、私もコーヒーつくったり、パソコンの前に座ってメールをチェックしたりと、はるに関わらないルーチンが始まってしまうので、居間への移動行動が好子消失によって弱化されているのもしれません。
コーヒーを飲んでいると、あくびをしながらはるが寝室から居間にやってきて、足元でぎゅーっと背伸びして、ちょこんとお座りする。一年前には想像できなかった朝の風景になっています。
「はるちゃん、いい子ですね。おとなしいし、かわいいし」と、あちこちで言われます。めちゃ、嬉しいです(←親バカ 笑)。
散歩中、他の犬や人に吠えることはまずないですし、犬を散歩させている飼い主さんには安心して近寄って行って愛想を振りまきます。病院やトリミング(シャンプー)で体に触られてもじっとしているので、落ち着いた、静かな性格の犬だと思われるのかもしれません。
そもそも佐良先生や山本先生がはるを勧めて下さったのも、元々持っているそういう特性によるものだそうです。他の犬が吠えていても吠えない。人に触られても嫌がらない。飼いやすい犬です。
でもそれは、そういう特性があるから「吠えない」というわけではありません。
うちに来てから一ヶ月くらいは、ほんとうに大変でした。最初は私がトイレに行くのに一瞬姿を消しただけでも吠えてましたし、宅配や来客にも当然のように吠えていました(関連記事)。
自分がいなくなったときの吠え方は尋常ではありませんでした。背中を反らせ、遠吠えのように鳴くのです。近所の皆さまへご迷惑をおかえしてしまうという心配もありました。さっそく菓子折りをもってお詫びに回りましたが、冬ということもあって皆さん窓を閉めておられるせいか「聞こえないですよ」と言われ、安心しました。
それよりなにより、はるの鳴き声を聞くと、胸が痛むのです。初めての体験でした。犬の鳴き声で、まるで棒のようなものをぎゅっと押し付けられたような感触を胸のあたりに覚えるのです。
辛くて反応してしまいそうになります。サークルの中のはるを見たり、可哀想だからとサークルからだして、抱きかかえてあげたくなります。
でも、それをやったら鳴きを強化してしまうのが目に見えています。
ここは山本先生ご指導どおり「消去」を徹底するしかない。そう頭でわかってはいても、辛い。ほんとうに辛かったです。
とにかく、4月の新学期までにお留守番ができるようにする必要がありました。
当時のビデオが残っていますので、ここに公開します(留守中のことが心配だったので、USBカメラで留守中の家の様子をずっと録画していました)。
まずは、うちにきてすぐの頃。この頃はずっとサークルの中で過ごさせていました。私がいなくなると絶叫マシーンと化していた頃です。
完全な消去、つまり、いくら鳴こうが放っておくという作戦は犬にも厳しい介入ですが、それ以上に飼い主にとって我慢が必要になる介入です。その辛さに耐えられなかった私は、もしかしたら余計なことを、色々とやってみました。
・着替えて/鍵をもって/鞄をもって(つまり外出するときの刺激要素を加えて)、一瞬だけ居間をでて、すぐに戻る。
・戻るときに鳴いていたら、鳴き止んでからしばらくするまで(当然60秒ルールにもとづいて1分は待って)から戻る。
・少しずつその時間を長くしていく。
・トイレ/風呂/ゴミ捨て/買物などで、本当に留守にするときには、玄関や居間に入る前に、はるが鳴いているかどうかを確認して(上記のUSBカメラを家の中のLANに接続し、リアルタイムで見て聞けるようにしました)、鳴いていないときに入室する。
などなどです。
それでもやはり、外出すると、遠吠え状態になります。遠吠えは最長で4時間くらい続いていました。ビデオを見ることで、私の胸はいよいよ痛みました。
ある日、玄関の外でライブ映像を見ていると、興奮したはるがサークル内で暴れ回り、クレートの屋根に飛び乗り、その反動でサークルを飛び越えてしまいました。
このときばかりは急いで部屋に入り、怪我していないかどうかを確認しました。
完全「消去」の放置状態が許されるのは、そうしても危険がないときだけです。
安全確保のため、クレート上部にサークルの柵を付けたしました。下は1週間ちょっと経ったときの映像ですが、まだ吠えています。
2週間経つと、遠吠えはかなり減りました。下の画像をみるとわかるように、出かけてもすぐに吠えだすことはなくなりました。それでも、サークルの中で居間のドアの方をずっと見ています(擬人的に言えば「早く帰ってこないかぁ〜」でしょうか)、それに、留守中に宅配の人がピンポンと呼び鈴を押すとそれに対して吠え始め、それが延々と1時間以上続きます。つまり、吠えは減ったけども、まだ安心してお留守番できるところまでは達していません。
1ヶ月経つと、呼び鈴さえなければ吠えないでいられるようになりました。下の動画ではわかりにくいのですが、サークルの中のクレートで寝て過ごす時間も増えました(擬人的に言えば「そのうち帰ってくるから寝て待とう〜」でしょうか)。
犬のしつけ本の多くには、出かけるときにやたら可愛がったり、挨拶したり、でかけるということが犬にわかるようなキューをだしたりしてはいけないと書いてあります。
だから最初は私も無言で、できるだけ気づかれないようにささっと出かけていました。それが、はるも落ち着いて、私も留守の間にはるが鳴いている様子を想い出したり、思い浮かべたりして胸が痛むことも少なくなってきたこともあってか、「言ってくるよ」とか「お留守番よろしく」とか言いながらでかけるようになりました。もちろん、帰ってからビデオを確認し、それでも大丈夫だとわかったからです。
「言ってくるよ」と言わなくても、鞄を持ったり着替えたりすることで、どうせはるにはそれがわかるとわかったということもあります。それから、これは何となくで、何も証拠はないのですが、たとえば、居間からではなく寝室からでかけてみると(つまり、でかけることがはるにわからないようにしてでかけると)、帰ってきたときに怒っているような気がするのですね(笑)。いつもは帰宅すると尻尾どころか腰全体を左右に振って喜んで出迎えてくれるのですが、そういうときには前脚で私を突き飛ばすような動きをすることがある、そんな気がするのですよ(笑)。
そういうこともあって、今では出かけるときには歯磨きガムをあげています。そのときにしかあげないので、わざわざお留守番のキューをだしていることになります。食べ始めたところを確認してから「行ってくるよ」と声をかけています。1−2時間のお留守番のときと、5−6時間以上のお留守番のときではガムの種類を変えています。大好きなガム(グリニーズ)は長い時間のお留守番のときです。
いざ出かけるとき(鞄を持って居間の奥の書斎をでるとき)には、今でも時々「きゅーん」と寂しそうな声をだすときがありますが、それでもグリニーズをだすと、そっちに気を取られ、欲しがり、お座り、伏せ、まってをさせると、もうお留守番ことは気になっていないようです(さすが犬です 笑)。
以下が最新の画像です。去年の7月くらいにサークルは撤去し、クレートだけ残してあります。在宅中も留守中も、居間・書斎は自由に動けるようになっています。ガムを食べたあと、少し部屋の中を散歩したりしていますが、そのうち座椅子やクッションの上や、陽がさしてぽかぽかする床の上とかに移動しては寝ています。今では宅配のピンポンの音に吠えることもありません(これについてはまた別途書きます)。
結論。うちの場合(あくまでうちの場合です)、お留守番の練習は、鳴きや吠えを消去すること、留守番の時間を徐々に長くすることで、うまくいったと思います。消去をするときにはバーストがでますから、騒音対策(もしくは近所へのお詫び)、暴れても怪我をしないような配慮(うちの場合、興奮してもサークルからは出られないようにしたこと)、外出のときだけではなく、家の中で移動するときにも、はるの視線から自分がいなくなって鳴いているときには絶対に強化しないようにすることが重要だったと考えます。
逆に言えば、そうした手続きを踏まなければ、今でもはるは遠吠えし、今でも私は外出するたびに胸を痛めていることになったと思います。偶発的に吠えを強化してしまいそうな瞬間は山ほどありましたから。
はるを迎えるために、徳島時代から使っていた巨大な円卓を処分し、長さを変えられる座卓を購入しました。居間にサークルをつくるため、また、一緒に遊べる空間を確保するためです。
ところがサークルを開放して居間で遊べるようにすると、問題が生じました。
放っておくと座卓の上に上がります。ちょこんとお座りします。寝転がって寝てしまうことさえあります。でも「決して叱らない」方針を貫くため、当初はそのまま放置していました。
食事のときにはサークルに入れておいたので、それ以上の問題はなかったのですが、いよいよサークルを撤去すると、食事のときに食べ物を奪われないようにすることが困難になりました。
クレートは残してあるので、その中に入れておくという手もあったのですが、この段階までクレートは常にオープンで、クレートには自分から入って休んでいましたが、こちらが無理に入れて扉を閉めると吠えだす状態。クレートに入っているときだけフードを与える練習も始めていたのですがうまくいかず(扉を閉めると食べなくなってしまう)、クレート訓練は中断していました。
そこで日曜大工魂を発揮し、座卓に脚をつけ、テーブルにしてしまうという作戦にでました。写真が座卓(改1)です。
ちなみに、これより前に、寝室ではるがベッドの上にあがれないようにするために、ホームセンターで大量のコンクリートブロックを買ってきたことがありました。3段重ねで60cm近くかさ上げしました。ところがです。完成した自作"ハイベッド"にドヤ顔ではるを迎え入れたとたん、はるは軽々とジャンプし、ベッドの上にあがってしまったのです。笑うしかなかったです、あのときは。
そういうことがあったので、写真からわかるように、座卓につけた脚はかなり長くなっています。高すぎて、こっちが食事しにくくなるくらい(笑)。
ところが、今度は「噛み」問題が発生します。追加で装着した脚は木製で、ちょうど噛み心地がよいのか、がりがりガリガリ噛みだしました。ビターアップルで対抗しますが、スプレーしても木材が成分を吸込んでしまうのか、しばらくすると無効化してしまいます。
この座卓、重量がかなりあります。ガリガリ噛んでいるうちに脚が折れて崩落なんていう事態は絶対に避けなくてなりません。
そこで再びホームセンターに出かけ、配管工事に使う塩ビの太いパイプを購入してきました。これを切断し、脚に装着。座卓(改2)が完成です。
見かけは悪いが、機能はばっちりと思っていたら、これにも食らいついていきます。さすがにいくら噛んでも塩ビが欠けることはないし、味もしないだろうし、この噛みが私の注目によって強化されていることは間違いないのですが(留守のときにはしないし)、完全消去は難しく(ふと見てしまうことがあれば部分強化しちゃうし)、時間もかかり、何より「崩落」が怖いので、せっかく買った座卓はあきらめ、新しくテーブルを購入することにしました。もちろん、脚は鉄製。いくらでも噛んで下さいという製品です。
このテーブルが到着した後も、しばらくの間は脚への噛みが自発されていました。「鉄でも噛むのかい!」とツッコミたくなりました。しかし、半年以上経過した現在、テーブルの脚への噛みはまったく自発されていません。味もしないし、何かが剥がれることもなく消去されたのか、どんなに噛んでも心配ないので私も注目しなくなり、消去されたのか、その両方なのかはわかりませんが、こうして、
・座卓/テーブルの上にあがる
・人の食事を食べる
・座卓/テーブルの脚を噛む
といった問題行動を「叱らずに」失くすことができました。
番外編としたのは、しつけや訓練とは異なる方法で解決したからですが、実はこういう環境設定も重要なのではないかと思っています。
近くの公園を散歩中、朝露にぬれ、きらきらと輝く草木の匂いをかぐ姿を見て、「あぁ、はるはやっぱり那須の山から降りてきた犬だなぁ。野生っぽくていいなぁ」と無邪気に喜んでいたんですね、最初は。それが朝露ではなくて、他の犬のおしっこだと気づいたときは唖然としました。
はるがうちに来てから2ヶ月くらいは、散歩中、急に立ち止まって動かなくなったり、ぶるぶる震えたり、きびすを返すように反対方向に向って歩き出したりしていました。尻尾がお尻の下に丸まって入っちゃうことも多かったです。人や車や自転車やバイクが行き来するアスファルトの上でリードをつけられて歩くなんてこれまでしたことがなかった犬ですから、突然、多種大量の不安喚起刺激を呈示され、無計画な曝露療法状態になっていたのだと思います。向こうから歩いてくる、マスクをした人、キャスター付きのバックを転がしている人、子ども、男性一般には特に強い反応を示していました。中高年女性層はなぜかセーフでした。
一方で、ゴミ袋やティッシュや葉っぱなどが風に吹かれて飛んでくると即時に反応して飛びついたり、ハトや雀に飛びかかっていったり、なぜか停まっているバイクのマフラーの匂いを嗅いだり、ピアノの演奏が聞こえてくるとそちらに耳を傾けたり、突然ダッシュしたと思うと、その先にコンビニ弁当が捨ててあったりと、新奇刺激への興味や食欲でも反応してました。元気すぎる子どもみたいです。
世界的にはきれいに維持されていると評判の日本の街角や道路ですが、よく見るとゴミだらけです。これも犬と散歩を始めるまでは気づかなかったことです。スーパーマーケットでもらうビニール袋、空き缶、空き瓶、お菓子の袋や中身、焼き鳥の串、マクドナルドのポテト、痰やゲロなどなど。ほとんどすべてが誰かが散らかしたもの、片付けなかったものです。犬にはそれがゴミとはわかりません。臭いがすれば嗅ごうとするし、美味しそうなら口に入れようとします。散歩の敵、地雷みたいなもんです。仕方がないのでリードを引っぱります。はるは引っぱられまいと脚を踏ん張ります。あんまり強く引っぱると痛かったり、苦しかったりするかと思って少し緩めます。はるの勝ち。リードが引っぱられたら踏ん張って引っぱり返す行動が強化され、これが後々まで楽しい散歩を妨害することになります。
犬との散歩の理想型は「J」リードだそうです(『佐良直美が教える犬との暮らし方--中高年が愛犬と楽しく暮らすための上手なしつけと飼い方』大泉書店)。首輪からリードが垂れ、Jの字を書くように飼い主の手に戻り、この状態を維持したままで歩いたり、走ったりするわけです。リードがぴんと張ることがないということです。そもそもリードは犬が飛び出して事故にあわないように万が一に備えた命綱のようなものなんですね(クライミングのロープと一緒で)。そのような危険がないところならリードをつけずに散歩できるような状態が理想的なわけです。だから「J」リード。
私とはるの散歩は「J」どころか、ほぼ「I」。はるがどんどん先を歩き、リードがぴんと張った状態で私が付いていく。はるが止まれば私も止まる。はるが何かに興味を示して逸脱すればリードを引っぱるが、最後は私が手を緩める。随伴性を視考すれば自明の理ですが、リードが張った状態で私を引っぱって歩くことを強化していたわけです。
日本語の犬のしつけの本は何冊も読みましたが、散歩の練習について詳しく書かれた本がありません。イアン・ダンバーの「赤信号・青信号」法に似た方法くらいでしょうか。実はこれも試してみたのですが、うまく行きませんでした。リードを引っぱったら止まる。リードが緩んだら歩き出す。行動分析学的にも理にかなっているのですが、結局、リードを引っぱったら止まる。リードが緩んだら歩き出すを繰り返すだけで、リードが緩んだまま歩き続けることはありませんでした。NHKの「極める 優木まおみの犬学」でみた「リーダーウォーク」も試してみました。その番組では、この方法が日本の警察犬学校では標準と紹介されていましたが、これもうまくいきませんでした。どちらもその場ではひっぱりが減るのですが、次の日はまた元に戻ります。ひっぱることを消去、もしくは弱化したとしても、横で一緒に歩くことを特定して強化していないのですから、当たり前といえば当たり前です。
そこで山本央子先生に散歩の出張レッスンをお願いしました。山本先生によれば、チョークチェーンという首輪を使った痛刺激を使う訓練士の方も多く、悲しいことに、最近、増加傾向にさえあるそうです。Youtubeで画像を見る限り、あまりに酷い。こんなこと愛犬に対してよくできるなぁと思います。それに、こうやって訓練された犬はトボトボと、山本先生曰く「ドナドナの歌に出てくる牛のように」歩くようになってしまうそうです。はるには、できるだけ不安にならず、楽しく、胸をはって(?)歩いてもらいたいです。山本先生の指導法はまさにそれで、散歩がルンルンに楽しくなるように教えることを重視するそうです。
山本先生のレッスンは、まずは室内でリードを装着せず、歩いて呼んで、ついて来たらすかさずフードを使って強化するという、行動分析学の本道--シェイピング--を用いた練習法です。フードは自分の左足の膝の裏側あたりに少量だします。うちの居間は10畳ほどの広さですが、そこで歩く向きを変えたり、曲がったりして、それについて来たらフードで強化します。レッスンの前の日の夕飯は半分、当日の朝飯は抜きで午後の練習にのぞみました(確立操作ですね)。
これができたら(これは簡単にできました)、次はリードをつけて同じように練習します(これもできました)。次は部屋をでて、マンションの廊下で同じように練習します(これもできました)。そこでマンションをでて、いつも散歩している近くの公園で練習しました。ここには草木もあり、ゴミもあり、他の犬のおしっこの匂いもありと、妨害刺激満載の環境です。最初に私がリードをもって歩こうとすると、はるはいつものように先頭を切ってIリードのまま歩こうとします。
「止まって下さい」という山本先生の指示で立ち止まるとリードがさらにピンとはります。はるは姿勢を前傾させ、踏ん張ります。リードを緩めそうになる私に「そのまま待って下さい」と山本先生。「そのうち戻りますから」。
主観的には3分くらい、実際にはたぶん30秒もしないうちに、はるはリードを引くのをやめて立ちすくみ、少ししてから、こっちに向って歩いて来ました。!。すかさず、とはいかず、しばらくモタモタしてからフードをあげました。
すると、山本先生が苦笑しながら、「戻ってきて直ぐにはフードをあげないでくださいね。引っぱって、戻っての繰り返しを教えることになってしまいますから」と、これはすかさずフィードバック。「戻ったら歩き始めて下さい。そして、はるちゃんが横についている時に、連続で数回、フードをあげて下さい」
歩き出すと、2-3歩は部屋の中でできたように左後についてきますが、すぐにまた前に飛び出し、リードを引っぱります。再び「止まって下さい」と山本先生。止まって、戻って、歩き出してフードをあげますが、また先頭を切ってリードをひっぱります。これが何回か繰り返された後、「見てて下さいね」と山本先生。リードを山本先生にバトンタッチします。
歩き出す山本先生。すると、はるは山本先生の左横についてしっかり歩いて行くではないですか。リードもJのまま。よく見ると、山本先生はかなり早めのペースで歩いています。はるの方をずっと見て、何やら話しかけているようです。そして、なによりフードを与える間隔が短い。さ、さ、さっと次々と肉片をちぎってスピーディーにあげています。はるは尻尾を振りながら、飛びついてそれを受取っています。
50mくらい歩いて、山本先生とはるが戻って来ました。もう一度私の出番です。注意をひくため、とにかくなんでもいいので話しかけ続けて下さいとのこと、それから、歩き始めに連続でフードをあげるときには、もっと手際良くして、間隔を短くすること。どちらも、はるの注意が逸脱しないようにするためだそうです。これまで散歩中に話しかけていたことはなく、部屋の中ならともかく、人目がある外で犬に話しかけながら歩くのはさすがに恥ずかしく、声も小さくなりがちでしたが、今度はなんとか20mくらい歩けました。
この日からはると散歩の練習が始まりますが、すぐにはうまく行きませんでした。まず、はるは不安状態になるとフードを鼻の前にだしても食べません。そして、東京での散歩に慣れて来たとはいえ、一回40分くらいの散歩時間中、あちらこちらで10-20分くらい、ひどいときには丸々40分、尻尾を丸め、目を伏せて、その場から逃げようとするような歩き方、走り方で散歩を過ごしていました。山本先生のレッスンでやったような状態ができるときもありますが、50-60mすると、またリードを引っぱります。止まって、戻るのを待ちますが、なかなか戻って来ません。道路の真ん中でこうなると、戻るまで待てないこともあります。車や自転車が通るので、それを避けるため、道路の脇に移動するからですが、このときにはるの引っぱりを強化してしまいます。以前よりもひっぱりを強化する回数は減りましたが、逆に部分強化になってしまい、消去抵抗を高めた可能性が大きいです。
さらに、この頃、はるの体調は最悪で、お腹の調子がいつも悪く、病院通いをしていました。うんちをする時間と場所が固定できず、散歩中、うんちをしようとしてはやめ、しばらく歩いてはうんちをしようとしてはやめを繰り返していました。うんちをしようとする体勢になると、こちらもリードをゆるめるので、ここでも引っぱりを強化してしまいました。
というわけで、山本先生のレッスンが功を奏し始めるのは、半年以上も経ち、お腹の調子が良くなり、散歩中の立ち止まりや不安反応が減り、食いつきの良いフード(散歩の直前に温めた豚のバラ肉)を見つけてからになります(右手にフードとリードの端、左手にリードのあまった部分を持ち、右手のフードを左手に移して高速で呈示するのはけっこうたいへんで、普通の粒状のフードだと、ぱらぱら落としたりしてしまいました。ドライジャーキーとかだと小さくちぎるのに時間がかかります。温めた豚のバラ肉だと、手がべたべたになるのが難ですが、ちぎりやすいし、落としにくいです)。そしてうまく行き始めたと思ったら、今度は野良猫のために誰かが埋めた餌を探して食べることをはるが覚えてしまい、それを止めさせるためにリードをひっぱったり、声をかけてしまうというミスを犯し、またまた3ヶ月くらい訓練が停滞します。それでも、ようやくこの頃は、散歩中の70-80%はJリードで歩けるようになってきました。フードは歩き始めは高頻度で(2-3歩に一回くらい)、しばらく歩いたら間隔をあけ、10-15歩くらいまでフードなしで歩けるようになってきています。まだ、ゴミ収集の場所や公園の草むら、猫餌が埋まっている辺りではリードを引っぱって進もうとしますが、以前とは違って随分と楽しそうに歩けるようになってきました。工事現場などで騒音や臭い、ヘルメットとマスクをかぶった男性らなどの刺激に反応してフリーズすることもありますが、ここぞとばかりフードを呈示しても何とか食べるようになってきています。それだけ、以前は相当の不安を喚起した刺激に対しても馴化したか、もしくは拮抗反応が条件づけられてきたのだと思います。
まだまだ道半ばの私とはるの散歩練習ですが、とりあえず中間報告まで。
自分が読んだ本の中で、山本先生の練習方法に類似した手続きを紹介しているのは、カレン・プライヤの『犬のクリッカー・トレーニング』もしくはTurid Rugaasの『MY DOG PULLS - WHAT DO I DO?』です。後者はKindle版を読みましたが、山本先生は評価されていないそうです。
それにしても、犬のしつけに関する日本語の本で、散歩の仕方を教える具体的な手続きがほとんど書かれていないのはどうしてなんでしょうね。多くの本が「散歩の時間や道順は決めない方がいい」とか「運動不足にならないように」とか、散歩にまつわることについては触れていても、肝心のどうすれば飼い主と一緒に楽しく歩くことを教えられるかをステップ・バイ・ステップで書いてある本がありません。
ちなみに、山本先生が指導されている犬たちは、一回のセッションでほぼ完全に楽しく歩くことを学んでしまうそうです。うちみたいにやたらと時間がかかるのは珍しいそうですが、これは間違いなく、飼い主側の問題ですね。
忍者がクリッカートレーニングしてる珍奇なYouTubeビデオがあるよと教えてもらい、はると一緒に鑑賞。
確かに珍奇なビデオだが、それより面白かったのは、はるが動画を見ながら、音を聞きながら首を傾げること。
普段から、何かよくわからないことがあると首を傾げる。時々、こういう行動がでてくる。まるで、「なに? なに?」と“考えている”ようだが、もちろん犬族だから、そのような人族の言語行動があるわけではない。
どうやら既知の刺激やまったく新奇な刺激というよりは、どこかで見たり、聞いたりしたことがある刺激だけど、まったく同じではない場合に自発されるようだ。
自分はアラビア語が読めないから、文字を見せられても無反応だが、たとえば、中国語の簡体字を上下ひっくり返して見せられたら、たぶん、首をかしげたりして見る角度を変え、読めるかどうか試してみると思う。レストランで中国語のメニューを見ているときのことを思い浮かべて欲しい。
これは、テクスチャル(読字)という行動クラスが強化される事態であることを示す弁別刺激はあるのだが、そのままでは強化される反応を直接誘発する弁別刺激がないときに、そうした弁別刺激を生みだすことで強化される“問題解決行動”であると考えられる。
はるの首を傾げる行動も、そうすることで、画面の見え方や音の聞こえ方が変わり、何からの反応が誘発されるようになる問題解決行動なのかもしれない。そのように解釈すれば、自然に存在する行動内在的随伴性で、一見知的で、人らしいこの行動の源も理解できるのではないだろうか。
つーか、何より可愛いし(^^;;)。
先日、はるの第二の故郷である那須塩原に里帰りしてきました。
AFCでは佐良先生や秋元先生、スタッフの方々と再会。最初はきょとんとしていましたが、すぐに腰をふりふり喜んで飛びついていきました。半年以上経っているのに、2週間ほどお世話になった人たちのことをしっかり覚えているようです。普段、見知らぬ人にはまず見せない行動ですから、記憶していることに間違いはないと思います。匂いでしょうか、見かけでしょうか、おそらく声ではないと思います(無言のスタッフにも飛びついていったから)。
AFCの無数にあるドッグランを思う存分走り回り、穴を掘り(^^;;)、どろんこ遊びに興じました。ちょうどナンシー・レイズ先生のオビーディエンストレーニングや競技会も開催されていて見学させていただきました。お利口なわんちゃんたち(というよりもそのように訓練されている飼い主さんたち)に感心しました。
はるの第一の故郷である福島(原発20km圏内)からはるを保護して下さったシェルター、みなしご救援隊にも里帰りしました。主宰者の中谷さんが、はるの双子の妹のみなこちゃんの里親さんに連絡して下さり、お母さん、お姉さん、妹との再会となりました。敷地内に入るときに他の犬にめちゃくちゃ吠えられ、最初は超ビビっていて何が何だか分からん状態のはるでしたが、しばらくして落ち着くと、家族に囲まれていることに気づいたようで、特に妹のみなこちゃんとは、これまでみたこともないくらい元気に取っ組み合いをしていました。
中谷さんからは、はるを保護したときのお話を詳しくお聞きし、また、その頃のはるの写真をいただきました。はるの家族は住人が被災、非難した後のどこかのお宅のコタツの中にいたそうです。飼い主と別れ、犬だけになり、それでも子犬を生んで育てたお母さん、生まれてきた子犬たちのことを思い浮かべると、ぐぐっときてしまいました。
よい里帰りになりました。
(うちに来た当初のはる。用意したクッションにちょこんと座っているのを見て喜んでたら、「そんなことしたらクレートの中に入らないですよ」とさっそく山本先生からツッコミが...)
はるをずっとシェルターに置いておくのは可哀想だと思った佐良先生が、私の方で準備が整うまで、はるをAFCで預かってくれることになりました。
これまで人から世話されたことなどほとんどなく、他の大勢の犬がわんわん鳴いている環境から、はるは突然、AFCのとても贅沢な環境に引越すことになりました。
AFCではスタッフの方々が代わる代わるはるの世話をしてくれました(ありがとうございました!)。食事は特製の生食です。4時間に一回は施設内のドッグランに遊びに連れて行ってもらえます。はるはケージの中に入れられていましたが、だんだんケージの中で鳴いたり、ケージをがりがりと噛んだりするようになったそうです。
その鳴き方があまりに激しいので、杉山先生はこれでは都内のマンションでは飼えないのではと、とても不安になったそうです。
AFCのスタッフの皆さんも最初ははるが鳴いても放っておいたそうですが、あまりに大きな声で、あまりに悲しそうに、あまりに長時間鳴いていたので、最後には根負けして外にだしてあげたそうです。というか4時間ごとに外にだしていただいたので長く鳴いていれば、いずれ鳴いた直後に外に出られるタイミングがきてしまうわけですね。
はるにしてみれば、鳴いたり、ケージをがりがりしていれば誰かきてくれる、誰かきれくれれば、遊んでもらえたり、外に出してもらえるということを、徐々に学んで行ったことになります。
それまでここまで密接な人との関わりがほとんどなかったはるですから、人から注目されると、こんなにいい事があるんだと、そのとき学んだようです。
ペットショップなどで売られている犬は、人が入れ替わり立ち代わりくるけど、別にそれでおやつをもらえるわけでもないし、外にだしてもらえるわけでもないので、こうした要求吠えは意外に少ないのだと、山本先生が教えてくれました。
そして、はるは、鳴いたり、がりがり齧ったりする事で人からの注目を得られるということも学んでしまったようでした。普通、人は犬が静かにしていても注目しません。鳴いたり、うなったり、いたずらをすると、「あっ」と思って注目してしまいます。はるにとっては、人が驚いたり、危ないと思って注目しているのと、遊んでもらえそうなときに注目しているのとは区別できませんから、しめしめということになり(←もちろんですが意識的に「擬人化」してます)、いよいよ悪戯するようになってしまいます。
これは、家で飼われている犬にはよく見られる傾向だそうです。つまり、犬は、どうでもいいようなものではなく、飼い主が大事にしているもので遊ぶ傾向にあるということです。
はるがうちにやってきてから数日は、ちょっとでも私が視界からいなくなると、最初はきゅんきゅんと、そしてだんだんと激しく、しまいには背中をそって遠吠えのように吠えていました。
そんなはるを見ていると、胸の奥が痛くなります。ぎゅっと抱きしめてあげたくなります。福島から、那須の山から、一人で降りてきて、きっと寂しいに違いない。なにしろ、まだ生後8ヶ月の小犬ですから。
でも、そこではるを抱いてしまったら、はるは増々鳴くようになってしまいます。我慢してると、より大きな声で、より切ない声でなく、だから可哀想で抱いてしまう。すると、次はより一層大きな声で、より切ない声で鳴くようになる。これは私の専門の行動分析学でも常識なのに、でもいざ鳴くはるをそのままにしておくとなると、なんと辛い事でしょう。
「計画的消去」が消去する側にとってどんなに辛いものか、その後、1ヶ月くらい身をもって経験することになります。
(うちに来る前のはるとはるのお姉ちゃん。同胞って双子のことだろうに、なんでこんなに別犬みたいなんだろうと思っていたら、犬の場合、同じときに生まれた兄弟姉妹で顔が全然違うことはよくあることだそうです)
はるをもらいうけることに決めましたが、2月には長期出張があり、それが終わってからでないと、家の中を整理して、犬と暮らせる環境をつくれません。電気のコードを噛んだり、大事な書類や本をひっくり返したり、犬に悪気はないけども、飼い主にとっては困りものになる行動は、最初からその機会を与えないことが肝心のはず。だから、部屋の中を整理することで、問題行動が生じて、強化されてしまう機会をできるだけ減らしておこうと考えました。
そこで部屋のプチリフォームを開始。本やステレオを置いていた低いラックを、扉を閉められる頑丈なキャビネットに換えました。居間でたっぷり遊べるように、巨大な座卓(10人くらいでホムパできるやつ)も、巨大なソファ(hide-a-bedタイプでセミダブルベッドに早変わりするやつ)も、和紙を使った間接照明も、引き取ってくれる人を探して処分しました。
ちょうど年末に『人生がときめく片づけの魔法』(近藤麻理恵)を読み、いらない服や本や写真や引出物などの「全捨」をやっていたので、その波にものって(行動的慣性?)、どんどん捨て、どんどんあげました(こんまり先生によると不用品を人にあげるのはNGなのですが、はるが来る前は立派な要品だったのでヨシとしました)。いずれにしても、喜んで引き取ってくれた人たちに感謝です。
そして山本央子先生からアドバイスをいただき、居間にサークル(2畳くらい)を設置しました。サークルの下には防水のシートを敷き、サークル内にはクレートをこしらえました。
この頃、私の頭の中は、「クレート」、「ケージ」、「ハウス」、「サークル」、「カドラー」など、慣れない専門用語が飛び交い、混乱していました。本を何冊も読みましたが、どこにも「クレート」や「サークル」の定義が書いてありません。ある本で「クレート」と命名されているものが別の本だと「ケージ」だったり、「ハウス」だったりします。そもそも「ご飯」とか「餌」だと思っていたものが「フード」と呼ばれていることも知らなかったし。
居間のプチリフォームも完了し、キッチンに入って行かないように赤ちゃん用のゲートもつけ(これはすぐに失敗だったことが判明します)、電源コード類も片付け、コングやビターアップルなど、そのときにはまだ正体不明で言われるがままAmazonで注文していた数々のアイテムもそろい、2月中旬頃にようやく"お輿入れ"準備が完了したのでした。
これを片付けて、
こんな感じに(右奥のクレートはこの後毛布で覆いました)。
(そのうち別記事で取り上げるかも。面白本&メソッドです)
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はるは東関東大震災の後、2011年の6月某日、福島第一原発から20km圏内の非難地域で生まれました。
お母さんとお姉さん、同胞の姉妹と一緒に4匹で発見されたそうです。
見つけてくれたのは広島からやってきた「みなしご救援隊」というNPOの方々です。
そして、はるは、那須塩原にあるシェルターに保護されました。
シェルターにはたくさんの犬、猫、それに亀やポニーまでが、一緒に暮らしていました。
そこにやってきたのが、那須塩原でAFC(アニマル・ファンスィアーズ・クラブ)という、犬のしつけや競技訓練をする施設を運営している佐良直美先生です。
佐良先生は広大な敷地に、何十頭もの犬や猫と一緒に暮らしています。元々、犬や猫が大好きで、歌手や女優として大活躍していらしたときから、野良犬や野良猫を保護し、これまでに飼った犬や猫は500匹以上だそうです。
佐良先生は、はるを見て「この子はいい」と、一目で気に入ったそうです。シェルターで何十頭もの犬がわんわん吠えている中、はるは静かに佇んでいたそうです。それでも手を伸ばすと、少し警戒しながらも寄って来て、佐良先生の手の中に入ってきたそうです。
ちょうどAFCで犬の訓練競技のワークショップのお仕事をされていた山本央子先生もはるを見に行ってくれました。山本先生は家庭で犬と人が一緒に幸せに暮らせるように助ける仕事をされている先生です。アニマルセラピーに適した犬を見分ける"適性評価"という仕事をされている専門家でもあります。
その山本先生も、はるを見て「こんな子はなかなかいない」と思ったそうです。
佐良先生とは昨年の12月にお会いしていて、「犬が飼いたいんですよ」とお話していました。佐良先生は「仕事もお忙しいでしょうし、一人暮らしなら犬より猫の方がいいですよ」とか「犬を飼うなら犬を世話してくれるお嫁さんをもらいなさい」と、冗談のような本気のような事を言われます。
そんなことをおっしゃいながらも、ほとんど初対面の私のために、名古屋までマイカーをご自分で運転されて、シェルターに保護されていた犬を一頭、連れてきてくれていました。
でも、その犬はけっこう吠えることがわかり、高齢でもあり、都内のマンションで一人暮らしという、私の生活状況にはどうもあわないだろうということになり、またいつかご縁があれば、ということになっていたのです。
そんなこともあって、佐良先生がはるを見つけたときには、これはぜひにと、山本先生と杉山尚子先生を通じて、私に声をかけて下さいました。他にもすでに何人か、はるを欲しがる人もいたそうです。同胞のお姉ちゃんも人気で、はるより一足先に引き取られて行きました。
実は、犬を飼いたいなぁとはずっと前から考えていました。子ども頃に飼っていたマルチーズは、中学生のときに家から脱走し、行方不明になってしまいました。辛く、悲しい想い出です。
今から考えると、ルナという名前のあの子には何もしてあげられませんでした。トイレのしつけもできなかったし、散歩もリードで引きずり回すような状態でした。
また同じことになるのは嫌だなという気持ちと、今度は色々と犬のことやしつけのことを勉強して、散歩の仕方も練習して、犬と楽しく暮らしたいなという気持ちと、ただでさえ忙しい毎日を過ごす自分に一つの命を預かることなんて本当にできるかどうかという気持ちとがいったりきたりして、1年間くらいずっと考え続けました。
はるがうちにくる前の数ヶ月間は、杉山先生に教えていただいた里親募集のサイトを毎日のように見て、こんな子がうちに来たら、どんな生活になるんだろうと、思い浮かべていました。
はるをもらいうける決心をしたのは1月末です。佐良先生と山本先生がそこまで薦めて下さるのであれば、これはきっと間違いなくいい犬に違いないと、はると暮らすことに決めました。