京都で開催された国際行動分析学会(ABAI)も大盛況のまま終了し、この夏、というか春から、ずっと続いてた常識を越えた忙しさも一段落。ようやく一息つけそうです。

 というわけで、9月17日に刊行された拙著のご紹介です。

 『リーダーのための行動分析学入門』(日本実業出版社)は、副題にあるように、部下を育て、強いチームをつくる方法を解説したビジネスパーソン向けの本です。

 行動分析学をベースにしたコンサルテーションをグローバル企業に提供しているCLG(Continuous Learning Group)のアジア進出に伴い、彼らの協力を得て、大企業への介入事例も掲載しています。

 CLGは以前にも日本の某大手企業にコンサルを提供したことがあり、その会社の大型M&A案件を成功に導くことに貢献しています。このとき、CLGを起業した当時のCEOの一人、Leslie Wilk Braksik博士に頼まれて、彼女の著書『Unlock Behavior, Unleash Profits』の日本語翻訳をお手伝いしました。クライアント企業内の研修に使うためでした。
 LeslieはWestern Michigan University大学院時代の同級生で、右も左もわからないままKalamazooに着き、アパートが見つかるまで学部生用のドミトリーの部屋で寂しく暮らしていた私をテニスや食事に誘ってくれて、友達づくりを後押してくれた恩人です。その恩返しにでもなればと思い、お手伝いさせていただいたのです。
 今回、日本と韓国にオフィスを構え、本格的にビジネスをスタートするので色々と手伝って欲しいという彼女の要請に応え、最初は彼女の本の翻訳を正式に出版することも検討していました。ですが、日本の経営者やビジネスパーソンにとって、よりわかりやすく、伝わりやすい本にするためには、日本の文化や慣習も考慮し、日本での事例も加えた方がいいだろうということになり、『Unlock Behavior, Unleash Profits』に紹介されている、CLGの考え方や方法論、用語や事例などを使う許諾をいただき、オリジナル本として書き下ろしました。

 先々週、Amazonの「売れ筋ランキング」を見ていたら、この本が「ビジネス・経済」の下の「実践経営・リーダーシップ」の下の「CI・M&A」のサブカテゴリーに入っていました。確かにM&Aの事例も紹介しているのですが、同じレベルのサブカテゴリーに「リーダーシップ」もありますから、妙な感じもします。出版社の担当編集者さんに質問したら、このサブカテゴリーの指定は出版社にはできないそうです。Amazonが独自に分類しているとのこと。
 なんて書きながら、今一度「売れ筋ランキング」を確認したら、今日は「経営理論」に入っていました。う〜ん、謎(笑)。

 これまでも行動分析学からビジネスやマネジメントについて書かれた本は、拙著『パフォーマンス・マネジメント』を含め、数冊あります。でも、日本や海外における具体的な事例が掲載されている本はこれが初めてだと思います。
 M&Aと行動分析学?と疑問に思われる方は、去年、CLGが開催したセミナーの資料をご覧下さい。数々の大規模M&Aを成功させている、JTの新貝康司氏(現代表取締役副社長)もパネリストとして登壇されたセミナーです。

 海外進出に伴い、現地社員や顧客とのやりとりで文化の差につまづく企業もあると聞きます。国内でも、外国人を雇用したり、女性を登用したり、異世代の若手に活躍してもらうためには、これまで通りのやり方に限界を感じている経営者や管理職の方が多いのではないでしょうか。
 行動分析学には国や文化や世代を超えて適用可能な「行動の法則」と、国や文化や世代や個人に独特の“個性”や“多様性”に対応できる方法論があります。グローバリゼーションとダイバージョンが鍵になる次世代のマネジメントに、この方法論をぜひともご活用下さい。

行動分析学に興味があり、色々な参考書も読みあさり、でも、実際にどのような研究が行われているのかを知りたい。学術誌に掲載されている研究論文を読みたいが、英語は読めない。

そういう方は国立情報学研究所が提供しているCiNiiというデータベースをご利用下さい。

「刊行物名」のところに「行動分析学研究」と入力して検索すれば、日本行動分析学会の学会誌に掲載された論文がヒットします。「出版社」のところに「行動分析学会」と入力して検索すれば、年次大会の発表論文集も含めて検索できます。論文の要約(抄録)は無料で読めますし、一般の方でも(大学などに所属していなくても)、有料ですが、本文もダウンロードできます。CiNiiにユーザー登録すれば単価は安くなりますし、割高でもよければユーザー登録しなくても単体で購入できます。

日本行動分析学会では過去に掲載された代表的な論文を集め、解説もつけた『行動分析学研究アンソロジー2010』というのも出版しています。こちらはAmazonなどで購入できます。

行動分析学研究アンソロジー2010 行動分析学研究アンソロジー2010
日本行動分析学会

星和書店  2011-02-25
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Swpbs

 久しぶりに大学に行ったら、二瓶社さんから献本が届いておりました(有り難うございます)。

 我が国初のスクールワイドPBSの(翻訳)本です。

 前半が機能分析や指導計画の立案など、後半がスクールワイド体制の築き方についての解説となっています。チェックリストもついているので使いやすそうですよ。

 今年の夏に法政大学で開催された教育心理学会の総会では、スクールワイドPBSの第一人者、G. スガイ先生による講演がありました(関連記事はここここ、講演資料はこちらからダウンロードできます)。そのときには日本語の文献をご紹介できなかったのですが、こういう本がでてくることで、日本でも本格的な導入が始まるかもしれませんね。

 楽しみです。

 Amazonに表紙画像が用意されていないようなのでスキャンして掲載しました。封を開けた瞬間はこの色に驚かされました(ドドメ色?)。増版のさいにはぜひとももう少し薄めで明るい色への変更をご検討下さい(^^)。

スクールワイドPBS―学校全体で取り組むポジティブな行動支援 スクールワイドPBS―学校全体で取り組むポジティブな行動支援
ディアンヌ A.クローン ロバート H.ホーナー 野呂文行

二瓶社  2013-11-22
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 とても面白い辞典がでました。

 序にあるように、行動生物学は動物の行動を研究対象とする生物学の総称で、動物行動学、応用動物行動学、動物心理学、行動分析学、比較認知科学、神経行動学、行動薬理学、行動遺伝学、人と動物の関係学などを含む学際領域です。こうした諸学問(諸学会)の“横のつながり”によって生まれた、我が国初の成果だそうです。

 ざっと項目をみていくと、行動分析学の基本的な概念がかなり網羅されています。行動分析学の辞典がない現状では、本書がその代用になると思いますし、関連諸学問の用語も学べるという意味で(そして関連諸学問の専門家の方々が行動分析学の用語を学んでいただくのにも)ベストチョイスとなるでしょう。

 辞典ですから一頁めから順に読むようなことはないはずなのに、そうしてしまいそうなくらい面白いですし、読みやすいです。「あ」にはいきない犬のあくびの実験の様子を写した写真が掲載されていたりします(犬のあくびの実験についてはこの記事を参照)。

 ここのところ続けて記事を書いてきた「権勢症候群」については、この辞典では「優位性攻撃行動(アルファシンドローム)」となっています。「これまでイヌの飼い主に対する攻撃行動の多くは優位性攻撃行動と診断されていたが、動物種の異なるイヌとヒトの間に社会的順位が成立するかどうかは疑問視されている」(p. 533)と書かれています。

 写真やイラストも多く、閲覧できる動画のURLまで掲載されています。数年先でもいいからiPadなどで読めるカラー、電子版、動画もありといった改訂版がでることを期待します)。

行動生物学辞典 行動生物学辞典
上田 恵介

東京化学同人  2013-11-22
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臨床心理関係の図書を数多く出版している金剛出版から隔月で刊行されている雑誌『臨床心理学』で行動分析学の特集が組まれた号を読みました。

一般臨床、発達臨床、学校臨床、リハビリの他に、薬物依存支援や矯正教育における臨床という、ふだんはあまりお目にかかる機会のない領域に関する記事もあり、勉強になりました。

上記リンク先のこれまで発刊された号の特集タイトルを眺めていると、この雑誌で行動分析学が特集されたこと自体が画期的であることがよくわかります。

神村先生と伊藤先生の「誌上討論」からは、昨年、法政で開催した公開講座「臨床場面における「ことば」をめぐる精神分析と行動分析との対話」を思い出しました。あのときは、東京国際大学の妙木浩之先生と、同志社大学の武藤崇先生の「公開討論」を私が司会させていただいたわけですが、結局は臨床の目的の違い(≒クライアントのニーズの違い)が分水嶺であると(再)認識しました。そして、研究ならともかく臨床サービスについての話であれば、選ぶのはクライアントであり、セラピスト側ではありません。だから、異なる臨床目的をもち、異なるクライアントのニーズにそれぞれ対応しているサービスプロバイダー同士の対話であれば、お互い、どこがうまくいっているかを共有し、役に立てる会話をするのが生産的で、お互いに批判し合うのはあまり意味がないと思います。これは私の意見ですが。

この雑誌をクライアントさんたちが読むことはないでしょうから、こういう特集を組むことで、現在心理臨床をやられている方、これからやろうとしている方が、これまで学んできたアプローチとはかなり異なるアプローチがあるのだと気づくきっかけとなることに意義があるのでしょうね。

さらに「広がる」ことを期待します。

臨床心理学 第12巻第1号 特集:行動分析学で広がる心理臨床 臨床心理学 第12巻第1号 特集:行動分析学で広がる心理臨床

金剛出版  2011-12-01
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『家庭で無理なく楽しくできる生活・学習課題46―自閉症の子どものためのABA基本プログラム』は低学年の指導(就学前から小学校くらい)、『高機能自閉症・アスペルガー症候群への思春期・青年期支援―Q&Aと事例で理解する』は中学、高校、大学での支援に使えそうな本です。

「家庭でできる」とありますが、学校での指導にも十分使えそうです。保護者と教員が連携しながら、学校で教え、家庭で般化させといった展開に使ってみたらどうでしょうか。領域別の課題、指導のコツなどが豊富です。

発達障害をもった学生への支援について、ようやく大学における取り組みも始まりましたが、本書では、中高、大学でありがちな問題やその対応についてわかりやすく解説してあります。「恋愛支援」とか、とても興味深いですね。

高機能自閉症・アスペルガー症候群への思春期・青年期支援―Q&Aと事例で理解する 高機能自閉症・アスペルガー症候群への思春期・青年期支援―Q&Aと事例で理解する
井上 雅彦 井澤 信三

明治図書出版  2012-01
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それにしてもめちゃくちゃ仕事してますよね、井上先生。 ご自愛下さい。

応用行動分析学に基づいた療育プログラムに関する訳書を2冊(偶然か?どちらも明石書店から)。

『親と教師が今日からできる 家庭・社会生活のためのABA指導プログラム―特別なニーズをもつ子どもの身辺自立から問題行動への対処まで―』は、題目にもあるように、身辺自立やトイレ、家事手伝い、遊びなど、生活重視の包括的なガイドブックです。わかりやすく、事細かにプログラムが書かれている良書で、訳も読みやすいです。

親と教師が今日からできる 家庭・社会生活のためのABA指導プログラム―特別なニーズをもつ子どもの身辺自立から問題行動への対処まで― 親と教師が今日からできる 家庭・社会生活のためのABA指導プログラム―特別なニーズをもつ子どもの身辺自立から問題行動への対処まで―
ブルース・L ベイカー アラン・J ブライトマン 井上 雅彦監訳

明石書店  2011-07-28
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『ABAプログラムハンドブック―自閉症を抱える子どものための体系的療育法―』は、先日紹介した「スクールシャドー」のようなインクルージョンプログラムについても書かれている本です。そういう意味では貴重な本なのですが、翻訳が弱い。誤訳もあります(致命的な誤訳も)。原著は悪くない本だと思うので残念です。元々の内容をかなり正確に推測しながら読まないと厳しいかも(でもそういう人なら最初から原著を読むよね)。

ABAプログラムハンドブック―自閉症を抱える子どものための体系的療育法― ABAプログラムハンドブック―自閉症を抱える子どものための体系的療育法―
J.タイラー フォーベル 平岩 幹男

明石書店  2012-03-06
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「スクールシャドー」という言葉を、私はこの本で知りました。特別な支援が必要なお子さんに付き添って学校に行き、学習支援や生活支援をするサービス形態です。出口は計画的フェードアウト。

モデルとしては、いわゆる「支援付きインクルージョン関連記事)」と同じようです。

ただ、支援付きインクルージョン("assisted inclusion")をPsycINFO/PsycARTICLESで検索しても、ほとんどヒットする文献がありません。スクールシャドー("school shadow")に至っては探しても文献が見つかりません(もしかして吉野先生の造語なのでしょうか?)

上記の関連記事にあるように、何年か前のABAIでは事例の発表があったので、研究というよりは実践が先に進んでいるのかもしれませんね。

日本でどのように浸透していくか、楽しみです。


自閉症児の親御さんが執筆された本を2冊紹介します。

『「ママ」と呼んでくれてありがとう』はまさに日本版の『Let me hear your voice』(わが子よ、声を聞かせて―自閉症と闘った母と子)です。お子さんが自閉症であるとわかったときから、ABAに出会い、療育を進めていくお母さん(と家族)の姿が描かれています。

診断や療育支援機関の不備や周囲の無理解や誤解、障害を受容することの難しさなど、同じ環境にいるお母さんたちにとって、共感できることがいっぱいあるのではないかと推測します。

あとがき的解説で井上雅彦先生が書かれているように、所々、え、大丈夫かなというところもあり、専門家のスーパーバイズなしに療育が進められていくときの危険信号も感じながら、それでも、お母さんが療育ママとして育っていく様子が目に浮かぶようで、感動しました。

こちらはお父さんが書かれた本です。かなり不思議な本。特に前半と最後はよくわかりませんでした。でも、私が個人的に知っている療育パパに共通する雰囲気は感じます。それは、とにかくよく調べ、勉強し、納得しながらでないと療育も進めないというところです。それが良いか悪いは別にして、療育パパにとっては(あるいは旦那さんが療育にまったく非協力的で日頃から不満がたまっている療育ママにとっても?)一読の価値があると思います。

リカと3つのルール: 自閉症の少女がことばを話すまで リカと3つのルール: 自閉症の少女がことばを話すまで
東条 健一

新潮社  2013-02-18
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Hitohanaze2

おかげさまで、非常にスローなペースで、でも継続的に売れてはいるそうで、このたび増刷となりました。お買い上げいただいた読者の皆さんに感謝致します。

編集者のKさんから「増刷出来」というキーワードをいただいたときに、「出来ました」の「ました」を省略した若者語かと、またもや語彙のなさをさらけだしそうになり、でも寸前で辞書を調べ、「出来」は「しゅつらい(or しゅったい)」と読み、「物事ができあがること」を意味することを学んでことなきを得ました。

増刷が決まってから入稿まで数日しかなかったので、手直しは少々です(相関係数のところは直しました)。

地震、津波、避難について書いてあるのですが、3.11の後では、やはりそのことに触れないと不自然だとは思いつつ、今回は時間がなくてそのままです。次回、また増刷の機会があれば、なんとか対応しようと思います。

ちなみに、この本、大学受験の国語の試験で何回か使われています。著作権がらみで使用許諾願いというのが来るんです。そういうのは初めてだったので最初はちょっと戸惑いました。問題を読むのも怖かったです(とんでもない勘違いされていたらどうしようと...)。これも新書の特性でしょうか。

本屋さんでピンクの帯をみたら、ぜひどうぞ(笑)。


読もう読もうと思いながら先延ばししていた本を読むのもこの一年間の目標の一つ。『日本語で読める行動分析学』も更新していきます。

まずは谷晋二先生の『はじめはみんな話せない-行動分析学と障がい児の言語指導』。一般読者にもわかりやすく書かれてはいますが、内容は専門書です。行動分析学における言語指導の研究を振り返ってまとめてあります。具体的な指導プログラムも豊富です。

HIROCo法という、日本で独自に開発された、今から考えるとPRTとも共通する指導法の紹介があると思えば、ACTを家族支援に使うという、新しめのアプローチも提案されています。

応用行動分析学で言語指導をする人たちにとっては必読書の一つになると思います。

はじめはみんな話せない-行動分析学と障がい児の言語指導 はじめはみんな話せない-行動分析学と障がい児の言語指導
谷 晋二

金剛出版  2012-09-28
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奥田健次先生の新書『メリットの法則—行動分析学・実践編』を読みました。初めて日本行動分析学会の年次大会に参加されたときに “コンディショニング”や“トリートメント”とという言葉が飛び交っているのを聞いて、「ここはシャンプーの学会か!」とツッコミたくなったそうですが、この本のタイトルを初めて聞いたときには私にも「ん? 花王さん??」といらぬイントラバーバルが出現しました。

当たり前ですが、なかみはまったく行動分析学の話です。奥田先生が取り組まれてきた様々な臨床事例について、死人テストと具体性テストによって行動が特定され、医学モデルに陥らないように随伴性が分析され、行動変容のための技術が再現可能な手続きとして解説されていきます。

阻止の随伴性についてもわかりやすく、そして臨床で重要な概念として取り上げられています。伝統的な行動療法ではレスポンデント消去として解釈されるエクスポージャー(曝露療法)を、阻止の随伴性として再解釈し、レスポンデント消去によって不安を減らすというよりは、社会・生活適応にとって望ましいオペラントを強化し、その結果、レスポンデント消去によって不安が減る(こともある?)と、逆説的に捉えているところは、最近の奥田先生の一連の臨床研究の成果でしょうね。

その他、不登校・再登校支援の問題が、学校と家庭という2つの場面における対応法則を「てんびんの法則」という、よりわかりやすい比喩で解説されるなど、とても読みやすい本で、一気に読了しました。

臨床に興味のある行動分析学の初学者にお薦めします。


メリットの法則――行動分析学・実践編 (集英社新書) メリットの法則――行動分析学・実践編 (集英社新書)
奥田 健次

集英社  2012-11-16
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今から10年前に(a decade agoだ)作成し、今でもなぜか以前の所属大学のサーバーで公開されている「日本語で学べる行動分析学の図書」。この記事にも書いたように、今ではAmazonで「行動分析」や「ABA」と検索すれば、新しい本が山のようにヒットするようになりました。自分が学部生だった頃は、日本語で読める行動分析学の本はほんの数冊しかなかったことと比べると段違いです。

『行動分析学研究アンソロジー2010』は日本行動分析学会の機関誌に掲載された学術論文を分野・領域ごとにセレクトした論文集です。そして各論文について、この本が出版された時点で執筆されたコメントが掲載されています。なので、昔の論文についても、現在その研究がどのような意味をもっているか、その後の研究がどのように展開しているかなどについて情報を得ることができます。

大学や大学院で行動分析学を学ぶ人たちを念頭に出版された本ではありますが、行動分析学の強みは研究と実践が一体化しているところにあります。初学者向けの本を一通り読み、もっと勉強してみたいと思っている方々にはぜひともチャレンジしていただきたいと思います。

Amazonでみると、なんとなく薄っぺらそうな装丁ですが、307ページもある、比較的厚めの本です。21の論文とコメントが掲載されています。

 

行動分析学研究アンソロジー2010 行動分析学研究アンソロジー2010
日本行動分析学会

星和書店  2011-02-25
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これはすごい。小林先生と奥田先生のユニットというのも想像を絶するが(注)、内容に抱腹絶倒。

療育に関する54の問いに二人の臨床家がそれぞれわかりやすく、親御さんにとってはおそらくすぐに「やってみたい!」と思うであろうテクニックを紹介するという形式の本。

たとえば「Q36:洋服にこだわりがあって困ってます」という問いに対し(自閉症のお子さんではよくあることですよね)、小林先生は「うっかり法で慣れさせましょう」、奥田先生は「どさくさにまぎれて法で着せてみましょう」と答える(詳しい方法を知りたい人は本を買って読んで下さい)。

何がすごいかっていうと、臨床の職人技(もしくは芸)と行動分析学のサイエンスの境界線をいったりきたりする本であるということ。

行動分析学は発達臨床に役に立つテクノロジーを確実に開発してきたけれど、それだけだとプロの臨床の仕事はできない。自分は臨床家じゃないんで、かつ、たくさんの臨床家の人たちを観察する機会に恵まれてきたので、そのへんよくわかっているつもり。この本にはそのプラスαの一部分がもったいぶらずに公開されてます。

発達障害を持ったお子さんに関わる人、必読。



 
自閉症児のための明るい療育相談室ー親と教師のための楽しいABA講座 自閉症児のための明るい療育相談室ー親と教師のための楽しいABA講座
奥田健次

学苑社  2009-05-20
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(注)編集担当の人は苦労されたのではないかという邪推です。

できたてホヤホヤの本ですが、これはいい。

小中学校の通常学級で特別支援教育に携わっている教員の方々には必読書といってもいいかもしれません。

行動分析学をベースにしていますが、専門的な難しい話はでてきません。高機能自閉症やADHD、LDなどの障害を持った子どもさんや、診断はされていなくても気になる子どもさんを、通常の授業などの集団指導場面でどのようにサポートできるかといった指導のコツを、漫画も交えてわかりやすく説明してくれています。

個別の指導計画や支援計画の作成や、校内委員会の運営など、特別支援コーディネーターに指命された先生が、明日からでも取りかからなくてはならない仕事についても解説があり、使えそうな本です。

さっそく数名の先生方に紹介しました。☆5つ。

かつて「日本語で学べる行動分析学の図書」というリストを作ってHPで公開していました。

2003年以前。まだAmazonとかのオンライン書店が今ほど充実していなかった頃。そして行動分析学の和書も限られていた頃でした。

あれから数年がたち、今ではネットで「行動分析」をキーワードに検索すれば、たちどころに関連図書が見つかって、注文までできるようになりました。便利な世の中になったものです。

行動分析学の和書も増えました。特別支援教育関係など、応用系の本ばかりではなく、基礎系の教科書的な本も、理論的な本も、初学者向けの本も、専門性の高い本も出版されるようになりました。その結果、嬉しい悲鳴ではありますが、とてもじゃないですが、私個人がすべて読めるような量でもなくなりました。

というわけで、上記のリストの必要性も低下し、すべての本をフォローすることも現実的ではなくなったので更新もやめていましたわけです。でも、考えてみたら、このブログでは読んだ本の感想なども書き込んでいます。それにココログでは最近(いつそうなったのかわからないのだけれど)、記事のカテゴリーを複数選択できるようにもなりました。

そこで、今回、旧「日本語で学べる行動分析学の図書」リストをAmazonへのリンクリストとして更新し、かつ、これまでこのブログで紹介した本のうち、行動分析学に関する本の記事を「日本語で読める行動分析学」というカテゴリーに整理し直してみました。トップページ、左上部のリンクをクリックすれば、このカテゴリーに属する記事が表示されます。

私の研究室には、「これから読む論文」が入っている箱と、「これから読む本」という本棚の一角があるのですが、貯金は貯まるいっぽう。読むべき本を読まないと、読んでいれば得られる好子を得られないわけだから、貯金ではなくて借金なのかな(笑)。

これを機に、少しずつでも借金を返済していこうと思います。


「日本語で学べる行動分析学の図書」のAmazonへのリンクリスト版は続きへ。

富山から北海道へ移られ、さらに活躍されている“支援ツール”で有名な高畑庄蔵先生(北海道教育大学)による図解入りマニュアル本。ナンバーぞうきん、お手玉ふっきんなどのツールと、背景にある応用行動分析学の考え方を漫画でわかりやすく解説している。

特別支援教育で応用行動分析を活かしていこうとする初学者の先生方や保護者の方々にお勧めです。

教師の実践行動を分析する約900の特殊教育諸学校に学ぶ子どもたちは約9万人で、そこで指導・支援を展開する教員は約5万人です。一人の先生が1事例の実践研究を行うと、1年あたり5万事例が創出されていることになります(p.109)。

月に人を送るプロジェクトもいいけど、こういうプロジェクトも国は応援すべきだなぁ。

「はじめに」より抜粋米国は、日本よりも50年も早く音楽療法の全国組織や音楽療法士の資格制度を確立した音楽療法先進国ですが、その米国において、ABAアプローチは障害者教育分野でももっともオーソドックスな方法として知られています。それはABAアプローチが科学的な考え方を背景にしていて、なおかつ成果が圧倒的だからでしょう(p. ii)

音楽療法といえば、植物状態にある患者さんの動作を音楽を好子として強化できることを示した研究があります。

Boyle, M. E., & Greer, R. D. (1983). Operant procedures and the comatose patient. Journal of Applied Behavior Analysis, 16, 3-12.

音楽というのはかなり根源的な好子のようです(水や空気や人との接触のように)。だから発達障害を持った子どもたちにも使えそうなことは容易に想像できますが、実際に活用されているとは知りませんでした。

本書では音楽を使って子どもの行動マネジメントをする方法や考え方がわかりやすく解説されています。ABC分析も多数掲載されています。学校では音楽の時間が必ずありますし、音楽が好きなお子さんも多いですから、音楽療法家だけではなく、教員の方々へもお勧めです。

音楽療法士のためのABA入門:発達障害児への応用行動分析学的アプローチ音楽療法士のためのABA入門―発達障害児への応用行動分析学的アプローチ
中山 晶世 竹内 康二 二俣 泉

春秋社 2006-07
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『行動分析学入門』の元本(“Elementary Principles of Behavior”)の最新版(5th Ed.)はタイトルも変わって“Principles of Behavior”。このペーパーバック版がAmazonにナント¥1,511で登場!

半信半疑で注文してみたら(本日到着)、学生用の用語集でした。見開きの左頁に用語と定義が章ごとに掲載され、右頁はメモ用の空欄。なんだ、そういうことですか。

こういう副教材は昔なら大学の近くのKinkosというコピー屋で販売してもらっていたもんです。ネットで売買できるようになったとは.... 時代の流れを感じました。

(他にも“Behavior Modification What It Is And How to Do It ”の同じシリーズを買ってしまったというのはここだけの話にしときましょう ^^;;)

Principles of BehaviorPrinciples of Behavior
Malott Suarez Suarez Malott

Academic Internet Publishers 2006-06-30
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野呂先生の『園での「気になる子」対応ガイド』に次ぐ保育士向けの行動分析学本。

表紙にはABC分析のダイアグラムが掲載されていて、タイトルからも、これなら、気なる行動を(ダイアグラムで)読む解く方法を保育士の先生たちに教えてくれそう!と期待しながら一気に読了。

印象的だったのは以下の4点。

1. 発達の遅れの特性をとてもわかりやすく、しかも「脳」とか「障害名」とかではなく、保育士が日頃の子どもたちの関わりから理解できるようにまとめているところ(以下、p.8より引用)。

発達に遅れのある子どもの基本的な特性(1) 周りからの働きかけや刺激を受け止める力が弱い。
(2) 周りからの働きかけに応える力が弱く、また、その方法(表現)に乏しい。
(3) 周りに働きかける力が弱く、また、その方法(表現)に乏しい。

2. 発達の遅れがみられる子どもを保育所の通常のスケジュールの中でどのように支援できるかが、上の“障害観”に対応した形で具体的に列挙されているところ。特に3章の、保育所が元々持っている特性を活かした支援を進めるという考え方は、きわめて有効だと思う。

3. 「もう少し慣れてから」とか「もう少し様子をみて」という、保育所(に限らないけど)でよくみられる対応に明確にNOと言っているところ。そして、気になる子どもこそ、最初から、誤学習しないうちに、わかりやすく慣れさせることが重要であることを説得的に書いてあるところ。

4. 唯一、残念だったのが、期待していたABC分析(機能的分析)。2章の解説はわかりやすいのだけれど、14の事例のうち、ABC分析が完成しているのは最初の3つだけ。あとの事例はABのみでCがない。しかもAには「教える」とか「支援する」という記述が目立つ。そもそもABC分析には、どのようにして教えるのか、どのようにして支援するのかを記述するのだから、「教えたらできました」というのでは情報というか分析が不足する。もちろん、本文には<取り組とその成果>として指導方法や支援方法の概説はあるからそこを読めば何をしたのかはわかるのだが、これだと、気なる行動をABC分析を使って読む解く方法を教える教科書としては使いづらいかもしれない。


全体的には読みやすく、理解しやすく、読んだことを実践しやすい、良書だと思います。おすすめ。

保育士のための気になる行動から読み解く子ども支援ガイド保育士のための気になる行動から読み解く子ども支援ガイド
平澤 紀子 山根 正夫 北九州市保育士会

学苑社 2005-10
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ナンバーぞうきんや腹筋お手玉など、面白く有効に使えるさまざまな支援ツールを開発してきた武藏博文先生(富山大学)と高畑庄蔵先生(北海道教育大学)のコンビが、これまでの仕事の集大成のような本を出されました。

子どもが使う「チャレンジ日記」、保護者や教員が使う「サポートブック」の作成を中心に、互いにアイディアを出し合い、助け合いながら子どもを前向きに支援するための環境を整えていく構成になっています。

各章ごとに、「うちの子いちばんアンケートを書こう」とか、「ねらいを絞るワークシートをしてみよう」とか、「チャレンジ発表会をしよう」のように、具体的な活動プランとそのための教材(ワークシート)が用意されていて、このまま保護者向けや教員向けのワークショップの教科書に使えそうです。

表紙からも見て取れるように、イラストだけではなく、3コマ、4コマ漫画がたくさん掲載されていますし、教材の写真やそのまま使えそうな教材そのものまであります。これで1,800円はお買い得。出血大サービスですね。

これまたお勧めの一冊となりました。

発達障害のある子とお母さん・先生のための思いっきり支援ツール―ポジティブにいこう!
発達障害のある子とお母さん・先生のための思いっきり支援ツール―ポジティブにいこう!武蔵 博文 高畑 庄蔵

エンパワメント研究所 2006-08
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鳴門教育大学附属養護学校の猪子先生(現在、鳴教の大学院に在学中。私の阿波踊りの先輩でもある)が、徳島県内の保育士さんたちと事例研究を中心にしたコラボレーションを展開している。これまで私が養護学校の先生たちとやってきた仕事を、保育所を対象にリプリケーションする研究を修士論文としてやっちゃおうというチャレンジだ。地域の学校と保育所が連携できるように、今後の展開も視野に入れた大きなプロジェクトだ。

先週の金曜に2回目の研修が行われた。教科書として使うには間に合わなかったが、野呂文行先生(筑波大学)から新刊書が届いた。

『園での「気になる子」対応ガイド:保育場面別Q&A・保護者他との関わり・問題行動への対応など』 野呂文行【著】 ひかりのくに

新しすぎて出版社のHPにもまだ未掲載。Amazonや紀伊国屋などのオンラインショップでも取り扱いがない(9月から取り扱いになるそうです)。

まさにホッカホッカの新刊。

内容は、保育所や園などで気になる子の行動例を具体的にあげ、発達障害の特性からその原因を考え、原因に対応した保育の方法や配慮を紹介するというもの。

気になる行動の原因を推定し、それにあった対応をするということが意外にも難しいことは以前にもブログで書いたことがあったけど、本書ではまさにそこのところをカバーしている。

行動分析学の考え方は最後の章にちょこっとだけ解説されているだけだが、その内容は問題行動の機能的分析とポジティブな行動支援(PBS)という先進的なもの。

先に紹介したリハビリ本と同様にイラストが多く、読みやすい(イラストが多い本を書きたい私にとっては羨ましい限り)。

低年齢の子どもの場合、発達障害の有無にかかわらず(つまり子どもが“健常”であったとしても)、発達障害をもっている子どもへの対応策は有効である。障害児保育は専門じゃないからなどとは言わず、ぜひすべての保育士さんに読んでいただきたい。

これもお勧めです。


*Amazonに登録されましたので追加します。

日本の行動分析学界で特別支援教育に次いでいま最も元気がいいのがリハビリテーションの分野ではないだろうか。そんななか、タイムリーにも、医療や福祉の現場で“こころ”の問題に行動分析学から取り組もうとする人たちに最適な入門書が出版された。

本書では行動分析学や応用行動分析の基礎がわかりやすく解説され、すぐに臨床に役立つ情報も満載されている。キーワードだけあげても、慢性痛、車椅子操作指導、転倒予防、高次脳機能障害、重度記憶障害、急性期脳卒中片麻痺などなど。

専門的な内容にもかかわらず読みやすいのは、イラストが多く、すべての章で文章が容易に書かれているからだろう。行動の記録方法も含んだ研究方法についての記載もあるし、リハビリテーション以外の仕事をしている人たちが読んでも十分仕事に使えると思う。

間違いなく、お勧めです。

4263212975リハビリテーションのための行動分析学入門
河合 伊六 辻下 守弘 小林 和彦

医歯薬出版 2006-07
売り上げランキング : 160493

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行動療法学会のコロキウムで話題提供したときに、勉強のため、1ケースだけ事例発表会にも参加させていただいた。

そもそもこのコロキウムという催しは、学会会員が自らの事例を持ちより、他の会員から助言を受ける機会として設定されているそうである。一つの事例について1時間以上かけて発表と意見交換をするという方法は、通常の10分程度の口頭発表に比べると、話し合いも深まるから、特に発表者にとってはメリットが大きいと思われる。

取り上げられる事例は不安症など、いわゆる一般臨床が多いようだが、フロアからの助言には、機能的分析など、行動分析学的視点もあり、それが受入れられていることが私にとっては新鮮だった。日本では“行動分析学=発達臨床”という誤ったイメージが定着してしまっていると思っていたからだ。

もちろん、実際にはそんなことはなくて、行動分析学をベースに一般臨床をしている人たちもいる。特に最近では、認知行動療法的な味付けの手法だが、理論的な背景にはルール支配行動や関係性などを持つ臨床家も増えているらしい。

本書はそのような展開をまとめた、どちらかというと理論的な解説書である。具体的な事例がほとんど掲載されていないので、私のような門外漢にはとても読みづらかったが、全体的な傾向はつかめた。たぶん、初学者(特に行動分析学の初学者の臨床家)は最初の二章は読み飛ばした方がいいかもしれない。

個人的には、内的反応の条件づけなど、基礎実験につながりそうなアイディアにとても興味を持ちました。

完全に理解して読了するのはかなり難易度が高い本ですが、行動分析学から一般臨床をしたい人には必須でしょうね(他に日本語で読める本がないし)。

マインドフルネス&アクセプタンス―認知行動療法の新次元マインドフルネス&アクセプタンス―認知行動療法の新次元
S.C. ヘイズ M.M. リネハン V.M. フォレット

ブレーン出版 2005-09
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スキナー的老後生活充実作戦を一般読者向けに紹介した本。たまたまAmazonで¥978の破格で入手し、一気に完読した。

長谷川芳典先生(岡山大学)のレビューによれば

この本は本明寛氏によって翻訳され、『楽しく見事に年齢をとる法:いまから準備する自己充実プログラム』(1984年、ダイヤモンド社)として刊行された。但し出版元のホームページで検索した限りでは、発行中の書籍リストにはもはや含まれていない。

ということで、残念ながら自分にも訳書は見つけられなかった。ただし原書でも、スキナーの他の著作と比べれば内容も英語も容易だから、原典購読の課題図書にはちょうどいいかもしれない。

大学生にはちと先のことすぎてピンとこないかもしれないが、スキナーが指摘するように、老後が始まってから対処するのではなく、あらかじめ準備することが大切である。そろそろ物忘れがめだちはじめた、自分くらいの年ごろにはぴったりだろう。

源流には行動分析学の考えがあるとはいえ、専門用語はほとんどでてこない。みのさんのTV番組なみのアイディアやアドバイスに富んでいる。

まずは否定(denial)から受容(acceptance)へ。

Enjoy Old Age: A Practical GuideEnjoy Old Age: A Practical Guide
B. F. Skinner M. E. Vaughan

W W Norton & Co Inc 1997-08
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いい本がでました。

今年度はサマースクールのための教科書を執筆する予定だったのですが、これならその必要もなさそうです。

この本では応用行動分析を学校で先生たちがうまく指導できているときの延長と捉え、日頃の指導を整理して体系的に見直すだけでも、子どもが変わり、先生が変わり、親が変わる!と提案してます。

・障害種別や発達検査のスコアだけではなく、一人ひとりの子どもに向き合って、ポジティブな指導計画を立て、実行する考え方。
・通常学級に在籍する軽度発達障害児が直面することの多い課題への、いくつもの具体的な指導の手だて。
・ハウツーだけではなく、ABC分析など、どうしてその指導方法が有効か?(あるいは有効ではないのか)を考えるための方法。

などがとても読みやすく書かれています。

特別支援教育に関わる先生だけではなく、すべての教師に読んでいただきたいと思う本です。

応用行動分析で特別支援教育が変わる―子どもへの指導方略を見つける方程式応用行動分析で特別支援教育が変わる―子どもへの指導方略を見つける方程式
山本 淳一 池田 聡子

図書文化社 2005-11
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hokkyodai-kiyo

北海道教育大学旭川校・特殊教育特別専攻科(情緒障害教育専攻)の研究紀要。

主に卒業生や修了生でつくる北海道教育大学情緒障害教育学会の研究誌でもあり、近隣の学校で行われた事例研究がふんだんに掲載されている。

TEACCH の構造化の考え方や応用行動分析学を取り入れた事例も多く、特に学校の先生たちには参考になると思う。

詳しくはこちらから。

学校教育の質を継続的に向上させていくためには、このように、教師が研究にもとづいた実践を続けていけるような構造が欠かせない。大学や大学院を卒業・修了後の支援こそ、教員養成系の学部や大学院が力を入れるべきところではないだろうか。

「卒業生の教員就職率」と「大学院生の定員充足率」の2つのみに評価の重点が置かれている近視的な現状の改善が望まれる。

待望の新書判『行動分析学入門』登場!

望月昭先生(立命館大学)が評するように、まさに“1日で読める行動分析学の基礎テキスト”としてお奨めの一冊。

一つだけ気になったこと。

副題のとおり、本書では行動随伴性の考え方を“ヒトの行動の思いがけない理由”として紹介している。

たとえば、メガネをかけるのは目が悪いからではなくで、メガネをかければよく見えるから(強化されるから)というように。

それを説明するのに次のような図を使っているのだが、これが初学者にとって誤解の元にならなければいいなぁと、少々心配している。

行動分析学入門―ヒトの行動の思いがけない理由行動分析学入門―ヒトの行動の思いがけない理由
杉山 尚子

集英社 2005-09
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“しごき”の記事で紹介した本がこれ。

関西学院大学のアメフトチーム FIGHTERS の監督をされていた武田先生が、行動的なコーチング技法をわかりやすく解説している。

アメフトの課題分析やフォームのイラストもあれば、多層ベースライン法を使った研究のデータ(グラフ)まで掲載されている。

応用行動分析というよりは、“行動療法”的な技法の紹介が多いものの、日本にまだまだはびこっていると思われる、精神論的、権威的なコーチングスタイルの代替案として、ぜひ、すべてのスポーツ指導者に一読していただきたい本である。

ちなみに、学生にも人気があって、貸し出すと返ってこない本のランキングのトップに見事輝いている。今、研究室にあるのは、たぶん4冊め(もう貸さない)。

コーチング―人を育てる心理学コーチング―人を育てる心理学
武田 建

誠信書房 1985-09
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musicteachers

『音楽教師のための行動分析−教師が変われば子どもが変わる』 吉富 功修・野波 健彦 ・竹井 成美・緒方 満・石井 信生・木村 次宏・藤川 恵子【著】1999 北大路書房

グリーア先生の『音楽学習の設計—授業の成立のために』を翻訳された先生方が執筆されたオリジナル本。

行動分析学の用語や概念に関する解説の章もあって、初学者にもわかりやすい作りになっている。

著者の先生方が日本の小中高等学校で実践的に研究された事例も紹介されている。まずは授業を成立させるためにトークンシステムと導入するなど、音楽の授業を担当されている先生たちの現実的な問題解決に役立ちそうな情報だ。

ただし残念ながら“芸術性”とか“美的価値”に関する考察はほとんど見あたらない。

音楽とか美術を専門にしている人で、行動分析学にも詳しい人に、ぜひこのへんの研究や教育実践について話を聞いてみたい。

どなたかご存知ないですか?

音楽教師のための行動分析―教師が変われば子どもが変わる音楽教師のための行動分析―教師が変われば子どもが変わる
吉富 功修 野波 健彦 竹井 成美

北大路書房 1999-03
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greer

『音楽学習の設計—授業の成立のために』 R.ダグラス グリーア【著】 石井 信生・吉富 功修・弘中 知世子・野波 健彦・木村 次宏・藤本 和恵【翻訳】 音楽之友社 1990

グリーア(Greer)先生はコロンビア大学の教育学部の先生で、ケラースクールなど、自閉症児のための学校システム(CABAS)を開発した行動分析家として知られている。

実はグリーア先生は音楽教育にも造形が深く、音楽の個別化教授システム(PSI)を開発した人でもある。

本書は、音楽教育に行動分析学をどうやって活用できるかを解説した本。理論的な話から実践的な話まで幅広くカバーしている。行動分析学の翻訳本としては老舗で、『行動分析学入門』が世に出るはるか昔から書店に並んでいた本だ。

ただし、初学者向けではない。音楽教育と行動分析学の両方に詳しくないと、読んでもチンプンカンプンかもしれない。

たとえば、第8章では、音楽の芸術性、美的価値、情動的行動をどのように捉え、どうすれば指導プログラムに組み込めるかを、教育哲学的な考えと比較しながら論じている。

行動分析学というと、何でもかんでも客観的に測定しようとするから、どうぜ音楽と言っても、楽器を弾くスキルのような、技術的な行動にしか目を向けないんでしょ? と誤解している人も多いと思う。

もちろん、そんなことはない。

・“心を揺さぶられるような感動”を体験するとは、いったいどういうことなのか?
・そういう体験を味わうために必要な下位行動にはどんなものがあるのか?

そういう分析だってできるし、すべきである!と、この本には書いてある。難解だけど...

興味がある人はぜひチャレンジしていただきたい。

音楽学習の設計―授業の成立のために音楽学習の設計―授業の成立のために
R.ダグラス グリーア 石井 信生 吉富 功修

音楽之友社 1990-01
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西南女学院大学のごまひげ船長こと服巻繁先生との共著がでました。

とにかく行動随伴性ダイアグラムがいっぱいの本です。PBS(問題行動に対するポジティブなアプローチ)や、TEACCHの構造化、PTSDの治療、糖尿病患者の自己管理に至るまで、ダイグラムで分析しています。

行動分析学の初学者が、対人支援のプロジェクトをしながら、記録の取り方、グラフの書き方・読み方、ABC分析の仕方などを学んで行く授業で使いやすいように作った本です。


個人的にはごまひげ先生の絵心に感動。

haramaki-illust
対人支援の行動分析学―看護・福祉職をめざす人のABA入門対人支援の行動分析学―看護・福祉職をめざす人のABA入門
服巻 繁 島宗 理

西日本法規出版 2005-05
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autism_bperspective

Autism: Behavior Analytic Perspectives. P. M. Ghezzi, W. L. Williams, & J. E. Carr (Eds.) 1999. Reno, NV: Context Press.

ひとつ前の記事で、Journal of Applied Behavior Analysis には自閉症児の知覚・感覚過敏性の問題を直接に扱った研究は見当たらないと書いた。これは、行動分析家がこの問題に無頓着という意味ではない。

この本は、自閉症と自閉症にまつわる諸問題を、何人かの行動分析家が、それぞれの研究や臨床経験から論じた本。自閉症の原因に関する分析もあり、そこでは知覚や感覚の過敏性が大きく取り上げられている(ABAで買ってきて飛行機の中で半分くらい読んだだけだが)。

過敏性は神経生理学的な障害の問題とする人もいれば、学習によって生じる可能性を否定しない人もいる。

このへん日本語でまとめた展望論文があるといいんだけどなぁ... ないのかな?

駒澤大学の小野先生の書き下ろし(?)作品。行動分析学の基礎領域全体がバランスよくまとめられている。

言語行動の章では刺激等価性についても解説されていて、人間の高次の認知活動を行動分析学の基礎概念で分析するのに役立つ。

タイトルにあるように、人間を豊かに理解するための、基礎と応用の橋渡し的な教科書として最適ではないだろうか。

「罰」が「弱化」になっているところも◎。

「正の強化/負の強化」を残したのは、小野先生曰く、

負の強化、負の弱化あたりはどうするのがよいか、結構考えたところです。 結局、論理的な統一性をもたせるのが、最良なのかな、との判断です(私信)。

とのこと。

確かに論理性は一貫するですよね。こうすれば。

でも「負の弱化」と聞いて、行動が増えるか減るか一瞬で判断するのは、「負の強化」以上に難しそうな気がする(正解は「減る」)。

ルール支配行動や迷信行動、社会的行動のように、人間らしい行動の実験的行動分析の専門家である小野先生らしく、このあたりの章はとても読みやすく、わかりやすい。

初心者向けの本を何冊か読んだ後、さらに行動分析学に興味を持った人にぜひ奨めたい本です。

行動の基礎―豊かな人間理解のために行動の基礎―豊かな人間理解のために
小野 浩一

培風館 2005-05
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だめ犬しつけ王選手権を観て、なんとなく気になって読み返した。

ペットのしつけのハウツー本ではなく、ハウツーの原理である行動の科学をわかりやすく解説した本だ。

動物のしつけの90%はオペラントだろうって自分なんかだと思ってしまうところだが、まずレスポンデントの解説から始まり、すべてをできるだけレスポンデントででも説明しようとする姿勢を最後まで維持しているところに中島先生らしさがでている。

たとえば、パブロフの以下のような実験が紹介されている。

パブロフらは、円と楕円の区別を、古典的条件づけの分化条件づけ手続きで犬に訓練しました。犬がこの2つの手続きを区別できるようになったら、楕円を少し円に近くして、訓練を継続します。これができるようになったら、楕円をさらに円に近づけます。この訓練を繰り返し、円と区別できないところまで楕円を円形にしていったところ、急に犬は吠えたり暴れたりし始め、初めに学習できていた2つの刺激の区別もできなくなりました(p. 48)。

オペラントで課題が難しくなって強化率が低下すれば逃避行動や攻撃行動が自発されやすくなることはよく知られているが、レスポンデントでも同様の現象が起こるとは知らなかった。

勉強になります。

アニマルラーニング―動物のしつけと訓練の科学アニマルラーニング―動物のしつけと訓練の科学
中島 定彦

ナカニシヤ出版 2002-05
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AAMR(アメリカ精神遅滞学会)が刊行している人気シリーズ「リサーチから現場へ」の日本語翻訳版、第3段め。

PBS(Positive Behavior Support)の枠組みから、どうすれば個人の生活の質を向上させる行動支援計画が作成できるかを分かりやすく解説している。

個別の教育支援計画や個別移行支援計画を作成するのに読んでおくといい一冊。

表紙の解説からは、この本は応用行動分析の本ではないと誤解を生むかもしれないが、そうではない。ABC分析(機能的分析)を基本にした正真正銘の応用行動分析本である。

表紙からプラス思考的行動支援(PBS)では
問題行動を起こしている子どものことを
彼らの立場からまず理解し
長期的・短期的な指導計画を立案していく。
従来の応用行動分析(ABA)のテキストでは
触れられることの少なかった
ライフスタイルへの指導
危機管理の介入についても
詳細に解説する。

本文中には、たとえば問題行動を減らす手法として、タイムアウトなどの弱化の手続きを使うのが「従来の応用行動分析」、同じ機能を持つ、より社会的に望ましい代替行動の強化を進めるのがPBSの特徴であると区別する記述があるが、これは誤解を生む表現だと思う。応用行動分析学は「手法」ではないのだから。

正確には「PBSは、応用行動分析学をベースに開発された行動支援、生活支援、教育支援のためのパッケージであり、嫌子よりも好子を、弱化よりも強化を、望ましくない行動よりも望ましい行動により力点を置く手法を組み合わせている」ではないだろうか(もちろんあくまで私見です)。

プラス思考でうまくいく行動支援計画のデザインプラス思考でうまくいく行動支援計画のデザイン
リンダ・M. バンバラ ティム ノスター Linda M. Bambara

学苑社 2005-01
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先日、現職教員数名との覆面座談会を行った。 テーマは「教師はなぜ本を読まないか?」。

もちろんすべての教師がそうではないだろうが、とても熱心な先生でさえ、特に専門書になると、「なかなか読めない」、「買ったけど、そのまま」、「ページを開けて文字だらけだと、読む気を無くす」ことが多いようだ。

活字を全く読まないというわけではなく、雑誌(ファッションや芸能)は熟読するという。

教育に関する専門的なことに興味がないのかというとそんなことはない。覆面座談会の出席者は誰もがとても勉強熱心な先生方だ(この点に関しては私が個人的に保証します)。

そういう自分も、最近はさっぱり小説を読まなくなってしまった。学生時分は週に数冊は読んでいたのに、過去一年ではせいぜい『ハリーポッター』くらい。食事のときなど、比較的気を抜いてるときに読むのは『日経トレンディ』とか『MacPeople』。ホントは Journal of Applied Behavior Analysis とか Journal of the Experimental Analysis of Behavior とかの論文を日常的に読むべきだし、読みたいのにも関わらず、なかなか読めない。逆に、ゼミ生やコラボレーションしている学校の先生たちに情報提供するために、特別支援教育関係の文献をひたすら読んだりしている。

たとえ本の内容に興味があって、読書行動を強化する内在的随伴性が存在しても、それを上回る弱化の随伴性があるということだろうか....

前置きが長くなってしまった。

本書は、ADHD(注意欠陥多動性障害)に関する概説と、保護者や教師が取り組めるさまざまなアイディアが簡潔にに紹介されたガイドブックである。現在のところ、ADHDへの対処としては薬物療法と行動療法の組み合わせがベストとされているが、その両方がバランスよく解説されている。

薄く(全77ページ)、文字も比較的大きく、専門的につっこんだ話はほとんどないので、たとえば、初めてADHDの児童・生徒を担当することになった先生たちにちょうど良いのではないだろうか。

「行動分析」というキーワードはでてこないけど、行動のマネジメントや社会的スキルの指導など、全編通じて行動的な指導方法のアイディアがちりばめられた本である。

親と教師のためのAD/HDの手引き親と教師のためのAD/HDの手引き
ヘンリック ホロエンコ Henryk Holowenko 宮田 敬一

二瓶社 2002-12
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まえがきから引用します。

まえがき「児童生徒の状況を理解しようとすることもなく、ただ待つだけでは状況は改善しない。子どもと周囲の状況をよく知り、積極的な働きかけをする必要がある」。そして、そのためには、さ行動論や認知理論の使った「この方法で支援し指導すれば、子どもは学校に復帰できるという確かな手ごたえをつかんでいます」。

不登校という複雑で困難な問題に、主に行動分析学的なアプローチで取り組んでこられた河合先生ら研究グループの豊富な事例研究をベースに書かれたガイドブックです。

とても読みやすく、かつ実践的に、なんのために、どんな技法を、どのように使えるか解説されています。54の事例報告つき。

どちらかと言うと、理論的な背景の解説に重点をおいて書かれたと思われる、『不登校 再登校の支援』(河合伊六・桜井久仁子【著】、2000、ナカニシヤ出版)とあわせて読むと、理解がいっそう進むと思います。

ガイドブック 子どもを学校復帰させる方法ガイドブック 子どもを学校復帰させる方法
河合 伊六

ナカニシヤ出版 2004-09
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umakuyarutameno.jpg

『うまくやるための強化の原理—飼いネコから配偶者まで』
プライア,カレン【著】 河嶋 孝・杉山 尚子【訳】 二瓶社 1998 ISBN:4931199550

この本の原書は「Don't Shoot the Dog!」。叱ったり、なじったりしなくても、愛犬はしつけられますよというメッセージだ。

しかも犬だけではない。なつきにくい猫とか、近所のうるさいおじさんとか、あるいは、読者が自分でもやめたいと思っている癖までも。

「強化」の仕組みさえ理解すれば、行動は変えられるということを、とても分かりやすく解説してくれる本である。

行動分析学の初学者にお薦めです。

うまくやるための強化の原理―飼いネコから配偶者までうまくやるための強化の原理―飼いネコから配偶者まで
カレン プライア Karen Pryor 河嶋 孝

二瓶社 1998-06
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ようやく出ました。

自分で自分のパフォーマンスマネジメントをしていて、最も達成率が低いのが執筆行動なんですが、この本は足掛け3年。出版社の米田さんに何度「ごめんなさい」をしたか数えきれないくらいです。

インストラクショナルデザインは行動分析学が「教育」に貢献できる大きな柱ですが、残念ながら日本にはこれまであまり紹介されていません。どちらかというと、教育工学系あるいは認知科学系の話かと思われるかもしれませんが、教育工学の基礎を作った一人はB.F.スキナーであることは(長井秀和風に)間違いないですし、お弟子さんの一人である S.M.マークルの著書はインストラクショナルデザイナーにとってはバイブル的な本となっています。

本書では「どうすれば上手く教えられるか」について、行動分析学にもとづいたインストラクションデザインの考え方をできるだけわかりやすく解説しました。

授業づくり、教材作成、研修計画の立案などにご活用いただければと思います。

インストラクショナルデザイン―教師のためのルールブックインストラクショナルデザイン―教師のためのルールブック
島宗 理

米田出版 2004-11
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ようやく出ました(笑)。

これまで障害児教育関係の臨床、というか臨床心理学一般では、専門家がクライアントと直に接して、指導や治療をするという一次的な関係が主体だった。しかし、そのような介入で対処できるクライアントの数には当然制限がかかる。

この本で紹介される「行動コンサルテーション」とは、たとえば学校場面では、児童・生徒と直に接する教師をコンサルティ、教師に対してアドバイスをする専門家をコンサルタントと位置づけ、教師を介して(あるいは教師と共に)指導に関わるアプローチを指す。

教育相談や巡回相談員、特別支援コーディネーターなどには、そのように、子どもたちに間接的に働きかける仕事が期待されており、本書はそうした仕事につく人にぴったりの内容である(宣伝 ^^)。

第11章:養護学校への支援では、国府養護学校とのコラボレーションプロジェクトについて、その導入期と専門性マトリクスについて解説してあります。 ぜひご一読を。

ケーゲルらの研究グループは、自閉症児への最も効果的な教育は日常場面での自発的なコミュニケーションの指導であると考え、子どもたちが遊びの場面などで自発的に質問するスキルを教えるプログラムを開発してきている。この本はその理論的背景も含めた解説書。

たとえば、指導者と子どもが机をはさんで座って、「これは何?」「えんぴつ」というやりとりをするより、遊びながら子どもから「これは何?」と聞けるように指導する。

このように、それを教えれば、あとは日常生活の自然なやりとりでボキャブラリーが増えたり、コミュニケーションのレパートリーが広がるような「要となる行動」(Pivotal Behavior:ただし、本書では「機軸となる行動」と訳されている)」を見つけていくのが彼らの仕事の特徴で、注目に値するところ。

親指導プログラムやソーシャルサポート、IEP作成における課題などに関する章もあり、特別支援教育に関わる先生方にはぜひ読んでいただきたい一冊。

ただし、応用行動分析学の基礎的な知識なしに読むと話が見えないかもしれない。『自閉症へのABA入門—親と教師のためのガイド』(リッチマン,シーラ【著】 井上 雅彦・奥田 健次【監訳】・テーラー 幸恵【訳】)などを読んでからどうぞ。

残念ながら日本語訳は堅く(章によってバラツキあり)、誤訳も散見される。英語に自信がある人は原著を読んだほうが読みやすいかも。

自閉症児の発達と教育―積極的な相互交渉をうながし、学習機会を改善する方略自閉症児の発達と教育―積極的な相互交渉をうながし、学習機会を改善する方略
ロバート・L. ケーゲル リン・カーン ケーゲル Robert L. Koegel

二瓶社 2002-10
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法政心理ネット