住んでみんで徳島で!.jpg

 徳島県の教採応募要領が公開されています。

 応用行動分析学を学び,児童生徒の指導にすぐにでも活用したいと意気込む志望者の皆さま,ぜひとも阿波の国,徳島での受験をご検討下さい。

その理由

  • 徳島県の特別支援学校では十年以上前から応用行動分析学にもとづいた事例研究や指導が行われています。
  • 県外から応用行動分析学の専門家がアドバイザーとして派遣され,コンサルテーションをうける機会が提供されています。
  • 先の知事選で飯泉氏が再選され,今後,少なくとも4年間は,公約にもうたわれていたSWPBSの全県的展開が期待できるからです。これは小中学校の話です。

もちろん,その他にも(11年間徳島で暮らした個人的な経験から)

  • 東側はマリンスポーツし放題(波にのったり,潜ったり),西側には山あり,川あり(ホワイトウォーターカヤックできます)。
  • 去年は色々あった阿波踊りですが,ぜひ踊ってみて下さい。同じ阿呆なら踊りゃなそんそんです。
  • 東京だと公営テニスコートはそうそうと予約さえできませんが,徳島ならやろうと思えばほぼほぼ毎日テニスできます。
  • 魚は旨いし,仲間で飲む酒も美味しいです(大都市より人と人との結びつきが強いと感じます)。

上記の公式サイトから

  • 「教育への熱い思いと,子どもたちへの愛情あふれる皆さんのご応募をお待ちしています」

移住に関する情報はこちらから

 ご要望がございましたので、先週、徳島県の「実践研究報告会」で講演をしたときのスライド資料と配付資料を公開します。これだけだと何がなんだかわからないと思いますが、通常学級で学びを支援するために重要な4つのポイントについてそれぞれ体験的な演習を組み込んでいます。また、Mentimeterというwebサービスで参加者の皆さまとやりとりをしながら進める構成になっています。最近、PowerPointは使っておらず、このプレゼンもKeynoteです。大多数の方には読めないと思うので、一応、PDFも用意しました。

 通常学級の先生方に研修をされている方におきましては、参加者に学んで欲しい行動を引き出し、楽しみながら練習してもらえる演習をぜひ導入してみて下さい。

 2015年も残すところあと3日となりました。
 今月中旬に何年かぶりに風邪で寝込んでしまったせいもあって、大晦日ぎりぎりまで仕事が終わりそうにありません(涙)。
 振り返れば今年は公私共に色々なことがありました。京都で国際行動分析学会があったなんて、もう遠い昔のような気持ちさえします。
 徳島では大きなプロジェクトが始まりました。4月に四期めを迎えた飯泉知事のマニフェストにも書き込まれた、県をあげての発達支援プロジェクトです。11月には奥田先生と一緒に表敬訪問も行い、飯泉知事とプロジェクトの方向性や現状について話し合いました。

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 専門家によるアドバイザーチームの常設や事例研究支援、PBISやeラーニングなどなど。行動分析学の先生方も何人も巻き込んでの巨大プロジェクトです。詳細は追ってご報告しますが、とりあえず今年度の報告会についてご案内します。
日 時: 平成28年2月12日(金)13:00〜16:45
      2月13日(土) 9:00〜12:15
講 師:徳島県発達障がい教育・自立促進アドバイザーチーム
○法政大学 島宗 理
○行動コーチングアカデミー 奥田健次
○畿央大学 大久保賢一
参加費:無料
申込み:所定の様式でFAXまたはメールで
詳しくはこちらを
 ↓   ↓   ↓

 2003年度から毎年行われてきた事例研究を、web上のデータベースとして公開してきた徳島ABA研究会ですが、昨年度に行われた事例研究からは、Googleドライブでその成果報告を公開することになりました。
 これまではデータベースの入力作業が先生方にとっては一仕事だったのですが、ポスター発表で使ったスライドをそのままPDFとして公開することで省力化を進めることにしました。

Googleドライブへは徳島ABA研究会のブログからリンクをたどれます。

Swpbs

 久しぶりに大学に行ったら、二瓶社さんから献本が届いておりました(有り難うございます)。

 我が国初のスクールワイドPBSの(翻訳)本です。

 前半が機能分析や指導計画の立案など、後半がスクールワイド体制の築き方についての解説となっています。チェックリストもついているので使いやすそうですよ。

 今年の夏に法政大学で開催された教育心理学会の総会では、スクールワイドPBSの第一人者、G. スガイ先生による講演がありました(関連記事はここここ、講演資料はこちらからダウンロードできます)。そのときには日本語の文献をご紹介できなかったのですが、こういう本がでてくることで、日本でも本格的な導入が始まるかもしれませんね。

 楽しみです。

 Amazonに表紙画像が用意されていないようなのでスキャンして掲載しました。封を開けた瞬間はこの色に驚かされました(ドドメ色?)。増版のさいにはぜひとももう少し薄めで明るい色への変更をご検討下さい(^^)。

スクールワイドPBS―学校全体で取り組むポジティブな行動支援 スクールワイドPBS―学校全体で取り組むポジティブな行動支援
ディアンヌ A.クローン ロバート H.ホーナー 野呂文行

二瓶社  2013-11-22
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場面緘黙の本は少ないので、貴重な一冊である。しかも、前半はマンガ、後半はスモールステップでの指導や練習に使えるチェックリストや具体策のイラストなどが掲載されていて、とても使いやすそうな本にまとまっている。

緘黙そのものよりも、緘黙によってQOLが落ちないように、できることを伸ばしていくアプローチにも好感がもてる。

昔、テニス仲間に極端に無口な大学生がいた。テニスをしているときも、飲み会でも、自分からはまったく話さない。こちらが酔っぱらって、しつこく質問を繰り返すと、ようやく、ぼそっと一言二言、返してくれた。

周りは「個性」として受け止めていたように思う。本人がどう感じていたかはわからないが、テニスも飲み会も、時々、突っ込まれるのも、楽しんでいたように思う。

話ができなくても(しなくても)、それが「無口」という「個性」でしかなく、友人関係や仕事に影響せずに、適応できれば「障がい」ではないのだと思う。そして、そのための環境作りも実は重要だったりするのだと思う。

どうして声が出ないの?: マンガでわかる場面緘黙 どうして声が出ないの?: マンガでわかる場面緘黙
はやし みこ 金原 洋治

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日本教育心理学会第55回総会のGeorge Sugai 先生による特別講演 『子どもたちが健やかに成長する学校環境』の発表スライドがPBISのwebサイトで公開されました。

オリジナルの英語版に加え、日本語訳版も公開されています。英語版では発表者用のノートも公開されていますので、会場に来られなかった人も、あわせて読むと内容が6割くらいはわかるのではないかと思います(あとの4割は参加者特権ですね  ^^)。

Pbisimg

 

日本教育心理学会第55回総会準備委員会企画シンポジウム1の発表資料です。

話題提供者の先生方、スライド資料のご提供、ありがとうございました!

『発達・教育支援におけるエビデンスにもとづいた実践』

企画・司会 島宗 理(法政大学) 企画 山本淳一(慶應義塾大学)

11月までには『教育心理学年報』に掲載するまとめを書かないとならないようなので、討論についてはそのときにまたフォローアップします。

日本教育心理学会第55回総会のGeorge Sugai 先生による特別講演の準備がようやく終わりました。PowerPointスライドを日本語にし、渡辺弥生先生と協力して配布資料も別途作成しました。準備しながら、Sugai先生とメールをやりとりして、質疑応答もさせていただきました。役得です。

そのなかで、以前から思っていた、Positive Behavior Intervention and Support (PBIS)の“Positive”って何が“Positive”?っていう疑問をぶつけてみました。

以下がSugai先生の回答です。許可を得て引用します。わかりやすいように意訳しています。

“ポジティブ”という言葉は、(A) 新しい問題行動が生じないように、そして既存の問題行動が再発しないように予防すること、(B) 問題行動の替わりになる、より望ましい社会技能を教えること、(C) 児童生徒の成功と達成を重視すること、(D) 児童生徒がうまくやっているとき、望ましい行動をしているところを日頃からとらえて承認すること、に焦点をあてる取組みに対して使っています(G. Sugai, personal communication, August 7, 2013)。

PBISをどう訳すか決め手がなかったのですが、Sugai先生の回答からは“Positive”が複数の特性に対してつけられた名称の一部であることがわかるので、これは訳さず、固有名詞として扱うべきなんだろうなと思いました。

なお、講演用スライドを事前に読ませていただいた印象は、近年のSWPBISがRTIを統合し、学業支援(学力向上)に力を入れているということです。これは、学校は学校が本来すべきこと(教えること)ができてないときに、その他諸々の問題が生じやすくなるという、私の持論と一致した方向性で、なるほどという感触です。もちろん、スライドだけでは内容はよくわからず、あくまでこの時点での私の推論にすぎないのですがしかありませんが...

あとは講演を楽しみに待つだけです。

(原文)WE USE IT TO REFER TO AN APPROACH THAT FOCUSES ON (A) PREVENTION (PREVENTING THE DEVELOPMENT OF PROBLEM BEHAVIOR OR PREVENTING THE RECURRENCE OF PROBLEM BEHAVIOR), (B) TEACHING SOCIAL SKILLS THAT ARE MORE APPROPRIATE AS REPLACEMENTS FOR PROBLEM BEHAVIOR, (C) THE EMPHASIS ON STUDENT SUCCESS AND ACHIEVEMENT, AND (D) REGULAR ACKNOWLEDGEMENT OF STUDENT SUCCESS AND DISPLAYS OF ACCEPTABLE BEHAVIOR. (G. Sugai, personal communication, August 7, 2013)

なお、日本教育心理学会第55回総会は8月17日-19日に法政大学市ヶ谷キャンパスで開催されます。Sugai先生の講演は、初日の13:00-15:00に予定されています。

十年続けたサマースクールに区切りをつけ、今年は「サマーフェスタ」を開催した徳島ABA研究会に、ちょうど愛犬はるを連れて第二の故郷に帰省していた私も参加してきました。

サマースクールの当初の目的は、徳島県内で特別支援の仕事をしている先生方が事例研究を進められるように、行動分析学の基礎と事例研究を進めるための方法(記録の取り方、グラフの描き方、記録をもとにした話し合いの仕方、指導計画の立案方法)が学べる機会を確保することでした。

十年継続してこのような研修会とその後の事例研究支援を続けることで、県内のほとんどの特別支援学校には相当数のサマースクール受講生、事例研究経験者が在席するようになりました。「相当数」の具体数は再度調べてみないとならないですが、数年前の調査では小学部・中学部で半分近くだったと思います。

学校によっては、応用行動分析学の校内研修が常体化し、記録をとることも自然になっています。校内の授業研究として事例研究の形式を採用し、年度末にポスター発表会をする学校まであります。特別支援学校を起点にした地域の保育所や小中学校へ巡回サービスや研修の提供はどこの県でもやっていると思いますが、徳島県では応用行動分析学を学んだ先生たちによってこうした研修や教育相談が行われている数が増えています。サマースクールの講師を教員スタッフが担当することにより、スタッフ経験者の力量がぐぐっと上がったことが背景にあります。

一方で、サマースクールへの県内からの新規参加者は減少気味です(ここ何年かは県外からの参加者の方が多いくらいでした)。これは、県内には未受講者が少ないのと、各校ですでに研修を受ける機会が多いのとの両方が原因になっていそうです。また、新しくスタッフになろうという人も減少気味です。これはスタッフになることの負担感が原因になっているようでした。

そこで、今回スタッフの先生方が下した結論は、サマースクールは一定の成果を上げたとみなして実施を取りやめるということでした。しかし、各校で事例研究を推進すること、そしてその成果を報告し合い、学校間の情報交換や連携は維持するということになりました。つまり、掲示板などを通じた連絡や相談、春の発表会などは続けるという決定です。

これは私の感想ですが、学校の先生たち、特に自主的な研究会を運営している先生たちほど、真面目な人たちはいません。何かやるなら「しっかり」やります。でもそれが自分たちの首を絞めかねないことに気づく人や、知ってか知らずしてか、結局窒息してしまう先生も多いです。

徳島ABA研究会はなんといっても自主研究会です。何をどうやってもいいのです。やらなくてもいいのです。そうです。したいことだけすればいいのです。それが、いつの間にか「やらなければならない」に変わってしまう。真面目な人たちが陥りやすい罠がここにあります。

インストラクショナルデザインの基本的な概念の一つに「Lean」があります。日本語に訳すのが難しい概念ですが、意訳するなら「細マッチョ」です。ごちゃごちゃと余計な説明やおせっかいをせず、最低限の教示や例示のみで、まずはインストラクションを作り、テストする。そして、どうしても不足するところだけを捕足する。そうやって開発すれば極めて省エネのインストラクションが出来上がるという寸法です。

確かに近年のサマースクールは「細マッチョ」どころか「ゴリマッチョ」を通り越して、若干、メタボ気味だったかもしれません。サマースクールを開催しなくても、各学校で事例研究が進み、情報交換ができ、指導に活かせるのであれば、それでいいわけです。どうしても不足することがでてくれば、その時点で最小限の捕足を考えればいいわけです。

いきなり暇になった事務局担当の先生たちは、少し腰が抜けたようにも見えましたが、それでいいのです。ヘンな罪悪感から「やらなければならない」ことをつくっちゃだめですよ。

次の十年がまたまた楽しみになってきました。

“そらパパ”としてネットではよく知られている藤居学氏による療育支援本です。

自閉症児の親御さんが書かれた本にはご家族やご自分のことをリアルに書き綴ったドキュメンタリー風のものが多のですが、本書にはそうしたウェットな話はほとんどでてきません。最後まで読んでも、娘さんの「そらまめちゃん」や奥さまがどのような方なのかはわかりません。

本書の真骨頂は自閉症療育を“新規事業”と見立て、それを運営する“プレイングマネージャー”としての「新しい父親」モデルをわかりやすく、提示しているところです。

発達障害や療育や自閉症やらに戸惑い、お子さんや奥さんやご家族とどのように関わればいいのかわからずにモヤモヤしているお父さんにぴったりの本です。特に会社でバリバリ仕事をされているサラリーマンのお父さんには“プロジェクトのビジョンづくり”とか“チーム編成”とか“リソースの最適化”とか、馴染みのある言葉や考え方がどんどんでてくるので馴染みやすいはず。

お子さんに障がいがあるとわかったときに、

単に「人生のリターン」が減少したというよりは、
むしろ人生という「幸せへの投資」の性格が、
より「ハイリスク・ハイリターン」な方向にシフトした
ととらえるほうが適切です(p. 40)

という助言は“そらパパ”さんならではと感心しました。

具体的な療育法としては、主に、TEACCH、ABA、絵カード療育法(PECS)の3つが紹介されています。現在、ご家庭で療育をされている方には、このパターンをミックスしている人が多いのではないかと思われます。記録をとって、記録をもとに療育を進めるべきとしているところも信頼できます。

一つ心配なところ:本書に限らず、"ABA"(Appied Behavior Analysis:応用行動分析学)が「療法」や「技法」と勘違いされることが増えているような気がします(あるいはロバースらのプログラムやその派生したものを"ABA"と呼んでしまっている人もいます)。

"ABA"は「応用行動分析《学》」。《学》というところが大事で、一つの学問体系です。発達支援は応用行動分析学における大きな一領域ではありますが、すべてではありません。

本書には

「療育法としてのABA」では、いまある姿は「望ましいものに変えていくべき状態」と位置づけられるわけです(p.117)。

とありますが、これは、おそらく、

ABAにもとづいて開発された療育プログラムは、ご本人や保護者、関係者の要望にもとづいて、ご本人の、そして周囲の人たちの行動を変えていくものが多い。

とした方が正確だと思います(ちなみにPECSもそうしたプログラム/システムの一つです)。

ABAを名乗るセラピストすべてが「自閉症」という障がいを「望ましいものに変えていくべき状態」としかみなさず、ご本人や保護者、関係者の要望を無視して、何がなんでも変えようとする人たちであるという誤解がないようにしないとならないですね。そういう人が実在したとしても、それは応用行動分析学とは関係ないということも強調しておきたいです。

親による親支援の本です。日本自閉症協会主催による「ペアレント・メンター養成研修」の教科書のような位置づけでしょうか。ノースカロライナ大学TEACCH部による類似の事業をモデルに日本の事情にあわせて開発されたプログラムだとのことです。

保護者同士の支援はうまくいけば心強いのですが、うまくいかないと(例:親の会の分裂とか、親の会同士の仲違いとか)、親御さんもまいってしまうし、子どもさんも最適な療育を受ける機会を逸してしまうかもしれません。

そういうリスクを減らすために、自閉症の親の会の大元である日本自閉症協会がこうした研修やテキストを提供していることは大いに評価できます。

それにしてもまたしても井上先生の編著ですね(笑)。

ペアレント・メンター入門講座 発達障害の子どもをもつ親が行なう親支援 ペアレント・メンター入門講座 発達障害の子どもをもつ親が行なう親支援
井上雅彦 吉川徹 日詰正文 加藤香

学苑社  2011-10-27
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『家庭で無理なく楽しくできる生活・学習課題46―自閉症の子どものためのABA基本プログラム』は低学年の指導(就学前から小学校くらい)、『高機能自閉症・アスペルガー症候群への思春期・青年期支援―Q&Aと事例で理解する』は中学、高校、大学での支援に使えそうな本です。

「家庭でできる」とありますが、学校での指導にも十分使えそうです。保護者と教員が連携しながら、学校で教え、家庭で般化させといった展開に使ってみたらどうでしょうか。領域別の課題、指導のコツなどが豊富です。

発達障害をもった学生への支援について、ようやく大学における取り組みも始まりましたが、本書では、中高、大学でありがちな問題やその対応についてわかりやすく解説してあります。「恋愛支援」とか、とても興味深いですね。

高機能自閉症・アスペルガー症候群への思春期・青年期支援―Q&Aと事例で理解する 高機能自閉症・アスペルガー症候群への思春期・青年期支援―Q&Aと事例で理解する
井上 雅彦 井澤 信三

明治図書出版  2012-01
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それにしてもめちゃくちゃ仕事してますよね、井上先生。 ご自愛下さい。

不思議本です。

著者のプロフィールには「ABAセラピー」とあるし、第5章「困りごとへの対応法」には、機能的アセスメントの話とか、代替行動の強化について書いてあるし、トイレットトレーニング(本書では「トイレトレーニング」となっています)や共同注視の指導にもふれているのだけれど、そうかと思えば、以下のような意外な展開もみせてくれます。

「瞳はこころの窓だから、瞳を見ていれば、お子さんが今どんな気持ちなのかが伝わってくるんです」(p. 36)

「まだ一語文の段階のお子さんの場合、単語一語ずつ、ゆっくり丁寧に伝えて、言われたことの意味をはっと気づけるようにします」(p. 46)

「ことばはなんのためにあるのでしょう? (中略) たとえ発音ができて、なにかフレーズを発することができても、そこに伝えたい気持ちがなければ、ことばはことばとしての本当の意味はないのではと思うのです」(p. 117)

行動分析家だったら、まず書かないと思うのですね、こういうことって(苦笑)。

米国では"Let me hear your voice"でロバースのプログラムが世に知られるようになり、一躍"ABA"セラピストがひっぱりだこになりました。ところが大学でいくつか授業をとっただけのような人まで"ABA"の名を語るようになってしまいました。フロリダ州で始まったBACBという資格認定システムが全米に広まって行ったのには、悪貨が良貨を駆逐するような事態にならないようにという配慮もあってのことでした。

とはいえ、BACBも、所詮は実習を含む修士課程修了+筆記試験で取得できる資格です。療法として行動分析学的な手法を学んだだけの人—元々の意味とはちょっと違いますが、いわゆる“方法論的行動主義”の人—でも取得できる資格です。もっといえば、BACB取得者=徹底的行動主義ではありません。

もちろん、徹底的行動主義者のセラピストの方が方法論的行動主義のセラピストよりも、セラピストとしての腕がいいということを示すようなエビデンス(RCT的な)はありませんが、私が知っている凄腕のセラピストは、全員、徹底的行動主義者です。「主義者」というのが語弊があるなら、クライアントの行動すべてを機能的に分析し、環境を変えることで行動を変える方法をみつけることにコミットしている人たちです。つまり、クライアントのためにも、精神主義に陥ることを徹底的に排している人たちです。

教育、療育、臨床サービスの全体的な底上げや、最低限の質の保証には資格システムが役に立つ可能性がありますが、理想解ではない。そのことを認識しておく必要があると思います。

などなど。 色々、考えさせられました。

ポジティブ子育て 12のこころえ―発達凸凹の子のこころとことばを育む ポジティブ子育て 12のこころえ―発達凸凹の子のこころとことばを育む
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主婦の友社  2013-01-28
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応用行動分析学に基づいた療育プログラムに関する訳書を2冊(偶然か?どちらも明石書店から)。

『親と教師が今日からできる 家庭・社会生活のためのABA指導プログラム―特別なニーズをもつ子どもの身辺自立から問題行動への対処まで―』は、題目にもあるように、身辺自立やトイレ、家事手伝い、遊びなど、生活重視の包括的なガイドブックです。わかりやすく、事細かにプログラムが書かれている良書で、訳も読みやすいです。

親と教師が今日からできる 家庭・社会生活のためのABA指導プログラム―特別なニーズをもつ子どもの身辺自立から問題行動への対処まで― 親と教師が今日からできる 家庭・社会生活のためのABA指導プログラム―特別なニーズをもつ子どもの身辺自立から問題行動への対処まで―
ブルース・L ベイカー アラン・J ブライトマン 井上 雅彦監訳

明石書店  2011-07-28
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『ABAプログラムハンドブック―自閉症を抱える子どものための体系的療育法―』は、先日紹介した「スクールシャドー」のようなインクルージョンプログラムについても書かれている本です。そういう意味では貴重な本なのですが、翻訳が弱い。誤訳もあります(致命的な誤訳も)。原著は悪くない本だと思うので残念です。元々の内容をかなり正確に推測しながら読まないと厳しいかも(でもそういう人なら最初から原著を読むよね)。

ABAプログラムハンドブック―自閉症を抱える子どものための体系的療育法― ABAプログラムハンドブック―自閉症を抱える子どものための体系的療育法―
J.タイラー フォーベル 平岩 幹男

明石書店  2012-03-06
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「スクールシャドー」という言葉を、私はこの本で知りました。特別な支援が必要なお子さんに付き添って学校に行き、学習支援や生活支援をするサービス形態です。出口は計画的フェードアウト。

モデルとしては、いわゆる「支援付きインクルージョン関連記事)」と同じようです。

ただ、支援付きインクルージョン("assisted inclusion")をPsycINFO/PsycARTICLESで検索しても、ほとんどヒットする文献がありません。スクールシャドー("school shadow")に至っては探しても文献が見つかりません(もしかして吉野先生の造語なのでしょうか?)

上記の関連記事にあるように、何年か前のABAIでは事例の発表があったので、研究というよりは実践が先に進んでいるのかもしれませんね。

日本でどのように浸透していくか、楽しみです。


自閉症児の親御さんが執筆された本を2冊紹介します。

『「ママ」と呼んでくれてありがとう』はまさに日本版の『Let me hear your voice』(わが子よ、声を聞かせて―自閉症と闘った母と子)です。お子さんが自閉症であるとわかったときから、ABAに出会い、療育を進めていくお母さん(と家族)の姿が描かれています。

診断や療育支援機関の不備や周囲の無理解や誤解、障害を受容することの難しさなど、同じ環境にいるお母さんたちにとって、共感できることがいっぱいあるのではないかと推測します。

あとがき的解説で井上雅彦先生が書かれているように、所々、え、大丈夫かなというところもあり、専門家のスーパーバイズなしに療育が進められていくときの危険信号も感じながら、それでも、お母さんが療育ママとして育っていく様子が目に浮かぶようで、感動しました。

こちらはお父さんが書かれた本です。かなり不思議な本。特に前半と最後はよくわかりませんでした。でも、私が個人的に知っている療育パパに共通する雰囲気は感じます。それは、とにかくよく調べ、勉強し、納得しながらでないと療育も進めないというところです。それが良いか悪いは別にして、療育パパにとっては(あるいは旦那さんが療育にまったく非協力的で日頃から不満がたまっている療育ママにとっても?)一読の価値があると思います。

リカと3つのルール: 自閉症の少女がことばを話すまで リカと3つのルール: 自閉症の少女がことばを話すまで
東条 健一

新潮社  2013-02-18
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読もう読もうと思いながら先延ばししていた本を読むのもこの一年間の目標の一つ。『日本語で読める行動分析学』も更新していきます。

まずは谷晋二先生の『はじめはみんな話せない-行動分析学と障がい児の言語指導』。一般読者にもわかりやすく書かれてはいますが、内容は専門書です。行動分析学における言語指導の研究を振り返ってまとめてあります。具体的な指導プログラムも豊富です。

HIROCo法という、日本で独自に開発された、今から考えるとPRTとも共通する指導法の紹介があると思えば、ACTを家族支援に使うという、新しめのアプローチも提案されています。

応用行動分析学で言語指導をする人たちにとっては必読書の一つになると思います。

はじめはみんな話せない-行動分析学と障がい児の言語指導 はじめはみんな話せない-行動分析学と障がい児の言語指導
谷 晋二

金剛出版  2012-09-28
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Photo

 好例の春の特別講座の案内です。徳島の先生方が取り組んだ事例研究のポスター発表会と、今年は慶應義塾大学の松崎敦子氏(慶應義塾大学)による講演「応用行動分析に基づく早期発達支援:コミュニケーション発達に焦点を当てた支援プログラムの開発と地域への普及」が予定されています。

 日時:3月2日(土)13:30〜17:00
 会場:鳴門教育大学附属特別支援学校 体育館

 詳しくはこちらから。

 徳島といえば、googleのストリートビューがようやく対応しました。上は、春の講座の会場となる鳴門教育大学附属特別支援学校のストリートビュー。

 阿波踊りの2つの演舞場では踊りの様子も見られます(残念ながら天水連は写ってなかった)。他にも祖谷のかずら橋など、観光スポットの画像が、こちらにまとめて公開されています。

 お知らせです。ADDSは1月の 「発達障害児のためのABA早期療育の現在」でも、半期ごとのフォーマルなアセスメント実施が際立っていました。竹島さんは私と同じWestern Michigan UniversityのMalott先生のところで学位をとられた新進気鋭の若手で、しかもずっと自閉症の療育・研究に関わってこられた人です。小田先生からは「国の制度をいかに有効に活用して」という資源活用の話がお聞きできそうで、楽しみです。

ADDS公開セミナー~自閉症支援者ネットワークをつくる~早期療育~アメリカの事例と日本の課題・展望~

【日時】
 2013年3月3日(日)14:30~18:00

【プログラム】
 14:00 受付開始

●14:30‐15:40 国の制度を使って幼児期の子どもの長所を伸ばす
<講師:小田 知宏 (NPO法人発達わんぱく会)>
日本で初めて、児童デイサービスの枠組みによる自閉症児へのABA
に基づいた療育を開始された先生です。経済的支援の不足した我
が国において、国の制度をいかに有効に活用して、お子さんに適切な
支援を提供するか、ということについて、詳しくお話しいただきます。

●15:50‐17:00 日本の療育の将来と今すぐ使えるABA-アメリカの療育現場を参考に
<講師:竹島浩司 (なごや自閉症治療教育相談室) >
アメリカにて、10年以上に渡り自閉症児への早期集中療育の研究・
臨床現場でご活躍された先生です。海外における最新の事例を
中心に、実際の映像なども織り交ぜて詳しくお話しいただきます。

●17:10‐18:00 日本における自閉症療育の展望
<講師:竹内 弓乃 (特定非営利活動法人ADDS)>
ADDSからは、保護者トレーニングプログラムの成果やアンケート結果
のご紹介と、お子様一人一人、そして保護者の方それぞれに合わせ
た支援の在り方について、お話をさせていただく予定です。

【対象】
自閉症などの発達障がいがあるお子さんの保護者の方、保育・教育・福祉・医療関係者の方、学生の方、その他自閉症などの発達障がい支援に関心をお持ちの方

【会場】
国立オリンピック記念青少年総合センター センター棟4F 集会室402
〒151-0052 東京都渋谷区代々木神園町3-1(小田急線参宮橋駅より徒歩7分)

【料金】
 一般 2000円 / ADDS会員 1500円 / 学生 1000円(要学生証提示)
託児サービス お子様お一人1000円(受入れ人数に限りがございますため、お早めにお申込み下さい)

※料金は全て、事前のお振込みとなります。

【お申し込み方法】
 下記URLより、お申し込みフォームへアクセスし、必要事項をご記入の上、送信して下さい。 http://www.adds.or.jp/?page_id=1634

【締め切り】
2013年3月1日(金)24:00

【お問い合わせ】 advanced@adds.or.jp 担当:加藤

【主催】 特定非営利活動法人ADDS

 「発達障害児のためのABA早期療育の現在」でも会場から質問がありましたが、「どんな行動を教えるべきか」は発達臨床や教育において常に問題になるテーマです。徳島ABA研究会のスタッフの間でも、サマースクールの教材開発や事例研究の助言に取り組みながら、「この子に今何を教えるべきか」を考えて決められる力を先生方につけてもらうにはどうしたらいいか、ここ数年ずっと話し合ってきています。実際、教えるべきことさえ具体的な行動として決まれば、そしてそれが現実的な指導目標であれば、どのように教えるか考え、決めて、実行するのは、行動分析学を学んだ先生たちにとってはそれほど難しいことではありません(もちろん、簡単なことではありませんが)。教え方や記録による教え方の改善についてはここ10年の教材開発で「かなり教えられる」という実感が得られるようになりました。しかし、子どもたちに教えるべきことを見つける力の方は、先生たちには遥かに教えにくいというのが私の実感でもあります。

 学校教育の通常教育では国のカリキュラムが決められています。教科書も決まっています。何年生の何学期のどの教科で何を教えるのかはすでに決定済みです。教員が何を教えるべきか考える余地はほとんどなく、だから教員養成課程でも、子どもに教えるべきことの決め方については全くと言っていいほど教えられていません。「考える力」のような曖昧な指導目標を曖昧なままで押し付けられることはあってもです。

 ところが特別支援教育では、基本的に、何を教えるべきかはそのお子さんによって異なります(本来は障がいがないお子さんだってそれぞれ個人差がありますから、正確に言えばお子さんごとに教えるべきことも異なるはずなのですが。これはさておき)。目の前のお子さんの教育的ニーズを直接観察や各種アセスメント(発達検査や知能検査など)、保護者との話し合い、生態学的アセスメントなどから導きだしていくことで、多くの場合、限られた時間と機会で教えられる以上の教えたいことがでてくるとしても、それは一体「どれから」教えるべきかについては、直観や先生や保護者の要望によって決められているのが現実だと思います。なんとなくだけど、こっちを先に教えて欲しい、教えたい、教えた方が楽そうなどなど。

 行動分析学には"behavioral cusps"という概念があります。"cusps"とはものすごく和訳しにくい英語で、もしかしたらそのせいでこの概念が日本ではあまり流通していないのかもしれませんが、ここでは「萌芽的行動」と訳してみます。あまり妥当な訳だとは思っていません。特にTEACCHにおける“芽生え”反応とは意味が違うので注意が必要です。

 「萌芽的行動」とはその行動ができるようになることによって、それまでには経験できなかった新しい環境にふれることができるようになる行動です。新しい環境とは、新しい好子や嫌子、新しい行動随伴性、新しい刺激性制御、新しい強化共同体などですが、要するに、そうした新しい環境と接触することで、その行動の学習がその学習だけでは終わらずに、次の学習へと展開していく行動ということになります。元々は故ドン・ベアー先生によって提唱された概念です(Rosales-Ruiz & Baer, 1997)。たとえば、ハイハイをしていた赤ちゃんが立って歩くようになると(「立って歩く」が萌芽的行動の例です)、おもちゃを自分で探したり、取りに行ったり、お母さんやお父さんの後を追ったり、つまづいて転んだり、それによってより注意深く歩いたり、足下をよく見たりと、様々な学習がほぼ自動的に起こるようになっていきます。つまり、「立って歩く」という行動はそれだけに留まらずに、様々な新しい行動が形成されていくきっかけとなる、これを「萌芽的行動」と呼ぶわけです。

 Rosales-Ruiz & Baer (1997)は発達臨床の実践のためにではなく、子どもの発達を行動分析学からどのように考えるべきかについて書かれた論文です。一般的な発達心理学では、発達の「段階」として、認知的な構造をもった説明概念と共に記述されることが多い行動の時系列的なつながりを、行動随伴性を使った機能的な解釈で置き換えることを念頭においていた伏があります。この方向性はやがてSchlinger(1995)の"A Behavior Analytic View of Child Development"という本で包括的にまとめられることになります。一方で、Bosch & Fuqua (2001)は、Rosales-Ruiz & Baer (1997)のアイディアを採用し、さらに発達臨床にとって重要ないくつか別の視点も追加して、標的行動を選択するさいの基準をまとめています。それらは、1) 萌芽性(上記の萌芽的行動のこと)、2) 生成性(上記の萌芽的行動と類似していますが、新しくできるようになる行動がそれ以降に自動的にできるようになる行動の下位行動となるという制限がついてます:例;文字が読めるようなると、自動的に単語が読めるようになる可能性がある)、3) 望ましくない行動と両立しない行動である(ゆえに、新しい行動がレパートリーとなることで望ましくない行動の頻度が減る可能性がある)、4) その行動を学ぶことでどれだけたくさんの周りの人にどれだけ重要に影響するか、そして、5) 社会的妥当性の5つの視点(あるいは基準)です。

 もちろん、こうした視点や評価基準を用いても、なんたら公式の様に、指導目標の優先順位が客観的に算出されるわけではありません。Rosales-Ruiz & Baer (1997)も、何が「萌芽的行動」となるかは子ども次第、状況次第であり、事前に予測することは困難であると指摘しています。しかしながら、たとえば個別の指導計画を立案するときに、保護者と教員が相談するときに、こうした視点や基準を共有していれば、少なくとも、発達的に、あるいは子どものQOLにとってほとんど意味をもたないような指導目標を設定してしまう危険は避けられることでしょう。

 何が「萌芽的行動」となるかは子どもによって異なる可能性がありますが、Hixson (2004)は比較的共通して「萌芽的行動」となりうる行動クラスを機能的に分類してまとめています。

 このあたりの研究はあまり進んでいません。Baer先生やSchlinger先生が狙っていた「段階」理論の行動分析学的解釈も、随伴性が萌芽的行動やその後の自動的な学習の展開を制御しているかどうかを実験的に解明しないと机上の理論でしかなくなってしまい(その意味では一般的な発達心理学の理論と変わりないことになってしまう)、しかしそうした実験が倫理上、実施できないという縛りがあるというのが現実です。それでも発達臨床において大規模な介入研究が進めば、あるいは世界中の介入データをビッグデータ解析のような手法を使って分析すれば、知的障害や発達障害がある、どのような子どもたちにどのような行動を教えれば、それが萌芽的行動として機能するようになるか予測できるような研究が今後でてくる可能性はあると思います。

引用文献

Bosch, S., & Fuqua, R. W. (2001). Behavioral cusps: A model for selecting target behaviors. Journal of Applied Behavior Analysis, 34, 123-125.

Rosales-Ruiz, J., & Baer, D. M. (1997). Behavioral cusps: A developmental and pragmatic concept for behavior analysis. Journal of Applied Behavior Analysis, 30, 533-544.

Hixson, M. D. (2004). Behavioral cusps, basic behavioral repertoires, and cumulative-hierarchical learning. The Psychological Record, 54(3), 387-403.

Schlinger, H. r. (1995). A behavior analytic view of child development. New York, NY US: Plenum Press.

 NPO法人つみきの会主催の「発達障害児のためのABA早期療育の現在」という公開講座に参加してきました。我が子が発達障害児と診断されて療育機関を探していますという親御さんからメールを月に何件かいただきます。そのたびにどこを紹介すべきか悩んでしまうので、この業界の現状を把握し、自信をもって紹介できるようにしたかったわけです。

 公開講座に参加して、まずは、発達障害がある子どもたちの療育に有効なことを示すエビデンスがある様々な手法を提供できる機関が増えてきたこと、そうした機関が連携する場をこうして設けていることは、とても素晴らしいことだと思いました。ようやく日本でも、という感じです。この公開講座を共催しているのも「ABA療育エージェンシー連絡会」という同業者の組織だそうです。早々に160名の定員が締切られていましたし、会場は満員で、療育サービスや機関に対する関心や期待の高さがうかがえました。おそらく、今回参加されていない機関や組織もあるだろうし、需要が明らかになれば新しく算入してくる人も増えることでしょう。

 公開講座では慶応義塾大学の山本淳一先生によるゲスト講演を間に挟むようにして、7つの療育機関から各機関における療育サービスの概要などについてお話がありました。リアルタイムで若干辛口のコメントなども含めてTwitterでつぶやいていましたが、まとめておくと、気になったのは以下の点です。

1. 応用行動分析学に基づいた療育サービスの提供をうたう限り、そうではない療育サービスとどこが違うのかを明確にすべき。
 私見ですが、(1) 指導目標を具体化してから指導すること、(2) 標的行動に対して記録をとること、(3) 記録をもとに指導を評価し、改善すること、の3つは欠かせないと思います。
 恐らく、今回プレゼンされた療育機関ではどこでもこれらをやっているのでしょうが、残念ながら、プレゼンで紹介された機関は少なかったです。
 簡単にいえば、親御さんに指導の進展をグラフで示してくれる機関は信頼して紹介できると思います。

2. 応用行動分析学に基づいた療育サービスの提供をうたう限り、最新の研究成果を常に取り入れながら、現場での判断には現場でのデータを活かすこと。
 米国などの先進国では行動分析士(Board Certified Behavior Analysts:BCBA)という資格制度があり、修士以上レベルの訓練と実習と筆記テストで認定されています。取得後も学会に参加したり、研究発表するなどして継続して研究、学習しなくては資格が維持できないようになっています。今回、プレゼンされていた代表者の中には米国でBCBAを取得されて、日本で開業されている方もいらっしゃいました。
 私たちがこの資格について調査し、資格に必要な知識や能力の一覧を日本語訳したときには(島宗ら, 2003)、まだ日本においてはこうした民間の療育機関が限られていて(というより、ほとんどなくて)、資格制度自体に意味がなかったのですが、今後、こうした機関が増えて行くにつれて、業界全体のサービスの質を確保するためには、BCBAの資格試験を日本で日本語で実施し、継続研修も日本でできるように環境を整えていく必要があるかもしれません。
 ただ、注意すべきなのは、研究で成果があるとわかっているから目の前にいるこの子にも有効だというわけでは必ずしもないところです。ここが医療サービスと行動サービスの大きな違いで、個人差の影響がはるかに大きいわけです。だから、最新の研究成果を導入しつつ、最終的には目の前のお子さんの行動の記録から次の一手を判断すべきで、それが行動分析学という学問としての特徴である、シングルケースで制御変数をみつけていく方法論を活かした臨床サービスになるはずです(関連したことをここに書いてます → 島宗, 2009)。
 簡単にいえば、親御さんから「どうしてそういうふうに教えるのですか?」と質問されたときに、「こういう研究からこういう指導法が効果があるとわかっているからですよ」と丁寧に説明してくれる機関、さらに最初に計画した指導がうまくいかなかったときには(それを最初に決めた期間で判断して)次の一手を考えて、説明してくれるところは信頼できると思います。

3. 指導目標についてはご本人や保護者と相談して指導前に決め、最初に決めた指導期間以内に成果を見返って評価する。
 機関によってはカリキュラムの大枠が決まっていることもあれば、何を教えるのかはご本人や保護者との相談で決めるところもあると思います。いずれにしても「相談」のプロセスは不可欠だと思います。もちろん、たとえば、山本先生が紹介されていたESDM(Early Start Denver Model)など、構造化されたカリキュラムを導入する場合でも、そこで教えていることが家庭でどう活かされているのかを指導者が常に把握するためにも、「相談」(せめて「説明」)の時間はなくてはあった方がいい。「何が望ましい行動なのかは誰が決めるのか?」という質問がでていましたが、ご本人、ご家族の意向をくんで(どういう子どもさんに育て、どういう暮らしを目指しているか)、専門家(療育支援者やその他、関連する人たち)の多様な意見を参考にして、決めるしかないのだと思います(学校では個別の指導計画や支援計画作成にようやく、少しずつですが、そういう手続きが導入されてますよね。地域差、学校差があるけれども)。
 指導目標を指導を始める《前》に決める(できれば紙などに残す)のも重要です。子どもは発達障害や知的障害があっても、自然に学習します(当たり前なのですが)。療育は研究ではないので、指導手続きと指導効果の間に因果関係を証明する必要はありません(そういう仕事は研究の仕事です)。ですが、少なくても、学習や発達にほんとに必要なことをしているのか、あるいは、指導によって子どもがかわってきているのかは確認しておきたいです。だから、自然に子どもが学習したことと、療育サービスによって子どもが学習したこととをできるだけ見分けやすくするために、指導前に、指導目標(標的行動として具体的に)と、どのくらいの期間(日数、週、回数)をかけて指導をするかだけは決めておいた方がいい、そうしないと何が何だかわからなくなります。時々、指導前のビデオと指導後のビデオだけを見せて、こんなに効果があったと訴えるのを見かけます。もちろん、ご本人も親御さんもよくなっているので嬉しいことに変わりはないのですが、その療育サービスを自信を持って紹介するには、もう少し情報が必要です。極端な話、何の療育もしなくても、何十人ものビデオを撮っておけば中には自然に学習・発達が進む子どもさんもでてくるわけですから。
 今回参加された機関によっては半期ごとに知能検査や発達検査を実施してくれるところもありました。個別の指導目標だけでなく、学習や発達の全体像をそのように評価し、次の療育につなげてくれるところはお勧めできます。

 簡単にいえば、親御さんから家庭でのお子さんの様子をよく聞いてくれ、それを指導に活かしたり、指導していることが家庭でどう活かされて行くかを説明してくれるところ。あらかじめ指導目標と指導期間を具体的に決め、そのたびに指導の成果を確認してくれるところは信頼できると思います(たとえ、たとえば10回に7回くらいしか指導目標が達成しなかったとしてもです)。

4. ペアトレだけに頼らない。
 発達障害児の療育にペアトレが有効で、むしろ必須なことは議論の余地がないと思います。ただ、ほとんどすべてを親御さんに任せてうまくいくというケースは私の経験では希有です。それは有効性の問題ではなくて、親御さんの負担があまりに大きくなりすぎるからという意味です。ただ、これはもちろん、誰だって週40時間の指導時間(とコスト)を確保できたらとは思っていると思うので、現在の日本の諸事情による制約ではあると思います。でもだからと言って、ペアトレだけで完了するのがサービスの終着点と決めてしまうのは、ましてや、ペアトレ中心で療育がうまくいかないときに、それを親御さんのせいにしてしまうところはもってのほかでしょうね。
 簡単にいえば、ペアトレを提供しているところは推奨しますが、ペアトレだけのところよりは、うまくいなかければセラピストが直接指導をしてくれたり、療育ボランティアを派遣してくれるところを紹介すると思います。

以上。時間がなくて推敲できず、このまま公開します。卒論・修論を採点する時期はどうしても日本語が乱れますが、それもご勘弁を。


  • 島宗 理ら(2003).  行動分析学にもとづいた臨床サービスの専門性 : 行動分析士認定協会による資格認定と職能分析 行動分析学研究, 17(2), 174-208. http://ci.nii.ac.jp/naid/110001230873
  • 島宗 理(2009).  特集号「エビデンスに基づいた発達障害支援の最先端」へのコメント 行動分析学研究, 23(1), 85-88. http://ci.nii.ac.jp/naid/110007230349

 わー。やっちまいました。特殊教育学会、初日のシンポジウム;「特別支援教育における教育現場と研究機関の協働・連携 (2) 〜 教員のパフォーマンス・マネジメントを支える組織づくりに向けて 〜。持ち時間と終了時間を把握せずに話し始め(指定討論)、気がついたときには時間切れになってました。自分が企画や司会をやっているときには、もっともメーワクな指定討論のパターン。関係者の皆さま、ごめんなさい。

 せめてもの罪滅ぼしに、指定討論で話したこと、話すべきだったろうに時間切れで話さなかったことを書いておきます。

参加への選択機会

 研究会の運営で最も重要な変数の一つは、先生たちに選択の機会があるかどうかだと思います。教育委員会や学校主催の「強制参加」vs 先生たちが主催の「自主参加」が大枠の図式ですが、「自主参加」をうたっていても、実際にはだんだんと続けることがノルマになってくるものです。徳島ABA研究会には現在30名ほどのスタッフの先生方がおられますが、このスタッフは毎年更新制で決まります。各々が次の年もスタッフをするかしないのかを決めて参加しているのです。なので、30名の顔ぶれは、発足当初からはかなり変わってきています。数字は持っていませんが、のべで数えたら10年間でこの3倍くらいの先生がこれまでスタッフとして参加してきたのではないかと思います。

 それでも毎年の参加機会を完全に「自主性」にするのは難しい。特に会長や会計、各校のリーダーの先生方にとっては、自分たちがやめてしまっては研究会が存続しないことがわかっているだけに「今年はやめます」とはなかなか言えないわけです。実際はことあるごとに「そろそろやめようか」という発言が、半分冗談、半分本気ながらみられます。これは逆に自主性を担保する上では重要な言語行動だと思います。

 先生たちの行動を強化する源泉(好子と強化随伴性)は、子どもの学び、自らの学び、同僚の先生方の学び、そしてその成果として、学校が楽しく充実した職場になっていくことに尽きるようです。こうした強化随伴性が働くように、つまり、「やらなくちゃならないからやる」から「やりたりからやる」への変換を随伴性としていかに設計するか、そのあたりが重要ではないかと思われます。

グラフの罠

 事例研究を進めるさいには(あるいは事例研究までしなくても難しい指導を進めるときには)、子どもの行動を記録し、視える化することが大切ですが、これはExcelなどを使って複雑なグラフを作ることでは必ずしもありません。卒論や修論やその他の研究におけるグラフの機能と、学校で教えながら、教えるためにつくるグラフの機能は完全に一致するわけではないからです。前者は変数間の関係性を分析したり、あるいは研究からわかったことをわかりやすく他の人に伝えるためのグラフであり、どちらといえばすべての(あるいはある一定の期間の)記録がでそろってから、色々と描き変え、解釈しながら、作り上げて行くものです。これに対して後者は、指導目標である標的行動をリアルタイムで作図しながら、子どもの過去と現在(と、そこから予測される未来を)、標的行動の頻度の移り変わりという単純化された形式で図式化し、「明日、どうするか」を日々決めるのに使うものだからです。最も重要なのは指導との同時性。なぜならグラフは指導行動を子どもの学習状況の制御化におく道具だからです。

 学校の先生方の忙しい毎日を考えれば、事例研究をしながら前者型のグラフを作成するのは、まず困難です(グラフおたくの先生以外は)。むしろ、そういうグラフを作らなくちゃ、でもそんな時間ないし、記録は記録用紙にとってあるから、後でグラフを作りましょう....という先延ばしの原因になって、指導目標がすでに達成されているのに同じ指導を続けたり、学習が停滞しているのに同じ指導を継続したりすることになってしまいがちです。

 グラフは手描きでOK。むしろ大切なのは毎日つけて、視て、考えることが大事です。グラフが好子として機能して先生たちの行動を動機づけるのには違いありませんが、好子となるのはグラフのきれいさではなく、そこに顕われてくる子どもの学習であるはずなのです。

ビデオの罠

 卒論や修論やその他の研究(研究者による研究)をするときには指導の様子を録画して後から再生、観察して記録することはよくあることです。しかし、これを学校で日常的に先生の仕事としてやるのは現実的ではありません。とてもそんな時間はないからです。学生や院生が共同研究として参加するとか、あるいは先生たちが研究者としての研究を試みるとき以外には、つまり、学校現場における事例研究のほとんどでは、いかにビデオ撮影せずに記録できるように簡略化したり、工夫できるかが要となります。

 ビデオ撮ってあるから、後で観て記録すればいいよねというように、これも上述したようにリアルタイムでの判断の先延ばしにつながる危険性もあります。 

 事例研究をするならビデオを撮影して後から観察しなくちゃと先生たちが思い込み、それはたいへんすぎる、できないと決めているなら、これも罠の弊害ですね。

研究機関(大学)側で考えるべきこと

 このように考えてみると、大学で教えていること(たとえば、ビデオ録画、インターバル記録法、観察者間一致率、シングルケースデザインなどなど)は、すべてそのまま学校の先生が日々の仕事してできる事例研究には適用できないということです。制御変数を特定する研究に必要な要件と、子どもの学習記録に基づいた指導に必要な要件とを整理して、研究を恊働して進めるためには、その研究の目的と成立要件をできるだけ事前に話し合い、学校側と大学側でお互いができること、したいこと、できないこと、したくないことをまとめ、両者が「やりたりからやる」と参加できる選択肢を作ることが必要そうです。 

 徳島ABA研究会で積み重ねてきた300以上の事例研究は、研究者からみれば変数が制御しきれておらず、測定の信頼性確保もできていなくて、当然ながら、たとえばそのまま『行動分析学研究』に投稿しても受理されないことでしょう。ところが、多くの場合に、事例研究を進めることで、そうしなければもしかしたら教えられなかったこと、教えるのにもっと時間がかかったことなどが教えられてきているのです。

 大学側が、学術雑誌に掲載できるような研究でしか恊働できないとするならば、こうした形の連携はそのままでは難しいかもしれません。研究者には論文を書く(雑誌に掲載する)という随伴性がありますから、論文にならない事例研究に多大な時間と労力を割くのは弱化されます。 

 大学院教育で先生たちの専門性を高めるという方法は、全体的にはうまくいっていないと思います。ただこれは、学校現場で必要とされる知識や技能と、大学院のプログラムで教える知識と技能がマッチしていないことが主な原因ですから改善の余地はあると思います。「修士号」とか「修士論文」に拘らず、たとえば学校に務めながら、2年間、校務分掌はなくし、授業担当も半分にすることで研究の時間を確保し、授業改善や事例研究を4-5件、専門家の指導のもとに進めるようなプログラムなら機能するように思います。大学院側も(文科省側も)それを「授業」と単位認定できれば、大学教員は仕事として時間を割くことができますので、上記の随伴性の問題も解決できます。

 教員免許を修士以上にするという議論は度々でてきていますが、なぜそうした仕組みが必要で、そのためにはどんなプログラムが必要なのかについての議論は不十分です。単に学位の条件を変えただけで問題が解決しないのは自明の理なのですが、こういう意見は少数派なのでしょうね。 

 もう一つの可能性は、大学以外に、仕事として、学校における事例研究の助言ができる人や職業を確保することです。今回の話題提供者のお一人であった笹田先生のように地域の発達センターで働いてらっしゃる専門家が学校の先生と一緒に事例研究に取り組むケースは増えているのでないかと思います。他にも地域の教育センターや研修センターなども同様な機能を担える機関でしょう。地域の発達支援・教育支援の拠点に、地域の先生方の事例研究を応援できる人材と資源(仕事として取り組むための予算措置)が配分されていけば、もしかしたら大学院プログラムの改善よりも、確実に、安定したシステムが確立できるかもしれません。この手の仕事は中央集権的にやるよりも地方分権的にやった方が現場のニーズに柔軟に対応できるぶんうまくいくからです。

 以上です。

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徳島県の県南部で取り組んでいる、地域における特別支援体制改善プロジェクトについて、特殊教育学会でポスター発表(写真は田中あ先生)。

3年めに突入したこのプロジェクト。予算はほとんどありませんが、先生方の熱意でここまでやってきました。

保育所や小中学校での状況をチェックリストを使って把握し、年度内で継続的に支援しながら改善したり、連携協議会に情報提供することで、年度を超えても改善を続けていく、そんな仕組みの確立です。

チェックリストを使うことで、取組みの状況をできるだけ客観的に捉え、かつ、次の一手を具体的に決めるのに役立てることができ、年度内では明らかに支援状況が改善されたことがわかりました。

今年度はチェックリストの内容を見直して、学校や園の体制づくりに関わること(年度を超えて、どんどん改善できること)、子どもや学級に関わること(年度内でどんどん改善できること)に切り分けてみることになりました。こうした話し合いを学会の年次大会という機会を活用して進めました。学会が専門機関と学校や園、施設等との協同を推進するのに、そういうセッションを支援しても面白いかも。

ポスターはここからダウンロードできます。

Photo

徳島ABA研究会からのお知らせです。今年はサマースクールのアドバンスコースとして私が関わった事例研究も発表されます。まだ手探りのアドバンスコースですが、研究者や研究者のタマゴ(大学院で行動分析学を研究している博士課程の院生やポスドクなど)が、行動分析学を学んだ教員と協同で研究や学校コンサルテーションの実習をじゃんじゃか進めることができる仕組みをつくろうとしています。興味がある方はぜひ一度徳島までお越し下さい。私も参加します。

学校でここまでできる! 一人ひとりの子どもを伸ばす特別支援教育

 特別支援教育の時代を迎え,教育現場ではどのように一人ひとりの子どものニーズに応え,個性や能力を活かした指導を進めるかが大きなテーマになっています。
 今年度は,国立特別支援教育総合研究所主任研究員の猪子秀太郎氏をお招きし,知的障害教育の現状と今後の展望について,最新の情報や話題を取り上げていただく予定です。
 また,本年度,特別支援学校で行われた事例研究のポスター発表を行います。どんな子どもにどんな支援ができるのか,事例を通して具体的な支援についての情報交換の場にしたいと考えております。特に今年度は,徳島ABA研究会スタッフが取り組んだ最新の研究成果の発表も行いますので,ご期待ください。
 特別支援教育に関わる教師,保育士,関係の方々のご参加をお待ちしております。

日 時:2012年3月3日(土)13:30〜17:00
場 所:鳴門教育大学附属特別支援学校(徳島市上吉野町2-1)
*会場は体育館ですので十分な防寒対策をしてお越し下さい。
参 加 費:無 料
対  象:特別支援教育に関わる保育士,幼・小・中・高・特別支援学校等教員,
関係機関職員,保護者,一般
主  催:徳島応用行動分析学(ABA)研究会
後  援:徳島県教育委員会・徳島県特別支援教育研究会・徳島新聞社・NHK徳島放送局

講演会:13:30〜15:00
「知的障害教育の現状と今後の展望」
 国立特別支援教育総合研究所  主任研究員 猪子 秀太郎 氏 

研究発表会(ポスター発表):15:10〜17:00
 今年度,鳴門教育大学附属特別支援学校,徳島県立国府支援学校,徳島県立阿南支援学校,同ひわさ分校,徳島県立板野支援学校などで行われた事例研究について,ポスター発表を行います。研究成果を見て,気軽に質疑応答できます。

Nihongohiragana

 昨年末から探しているのだが,知的障害や発達障害をもったお子さん向けの優れたiPadアプリになかなか出会わない。

 「ABA」をうたったMTS(見本合わせ課題)の学習プログラムもある。でも,作りが雑だったり,刺激が変更できなかったり,操作性が低かったりして,まだまだ使えない感じ。むしろ,このアプリのようにな(例:「にほんごーひらがな」),日本人が開発した日本語学習プログラムの方が完成度が高くて,遊びの中で学習するには使えそうなくらいだ。

 そうこうするうちに「魔法のプロジェクト」なるものがあることを知りました。東京大学先端科学技術研究センターとソフトバンクが共同で推進してきたプロジェクトで,さまざまな障害(身体,知的,発達....)を持った子どもを情報機器で支援する実践的な研究が進められ,成果がまとめられている(特別支援教育で活用できそうなアプリの一覧とか「障がいのある子どもたちのための携帯電話を利用した学習支援マニュアル」とか)。

 この取組みは「魔法のじゅうたんプロジェクト」として来年度以降も継続され,現在,研究協力校を募集しているとのことなので(締切は2/3),興味のある先生方,学校は検討されてみてはいかがでしょうか。

[WorkItOut!!からの引越し案内]

徳島県の特別支援学校(当時の養護学校)で応用行動分析学に基づいた事例研究や研修を始めた頃に,今では考えられないくらい豪華な講師陣に講演していただいたときの記録です。ビデオの視聴にはAppleのQuickTimePlayerが必要です(最近ではiTunesに組み込まれてインストールされるようです)。


『自閉症者の就労支援』 ---- 梅永雄二 先生

Video

『知的障害者のための就労支援』 ---- 志賀利一 先生

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『障害児教育実践を楽しむための応用行動分析学的アプローチ』----  奥田健次 先生

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『学級経営に生かす応用行動分析学』 ---- 加藤哲文 先生

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『コミュニケーションの指導と自立活動・余暇活動の支援』 ---- 井上雅彦 先生

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『発達障害児者の"ことば"にならない"ことば"を理解して支援する』----  平澤紀子 先生

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『自閉症児にも分かる知的障害教育』 ---- 藤原義博 先生

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『「脱力系」応用行動分析と特別支援教育〜大学と学生を地域資源として今こそ『楽しい教育実践』を〜』 ---- 望月 昭 先生

Video

 山本淳一先生(慶應義塾大学)の研究室に在籍する院生さんたちが中心となって立ち上げた、発達障害児を支援するADDS(Advanced Developmental Disorders Support, NPO法人申請中)では、定期的にセミナーを開催しているそうです。発達支援に興味のある人、大学院生による起業に興味のある人はぜひ一度参加してみて下さい。以下、次回のセミナーの案内を転載します。

ADDS Winter Seminar vol.2 〜自閉症支援者ネットワークをつくる〜
「ライフステージに応じた支援の実際」
【日時】
 2012年1月9日(月祝)10:00〜16:50
【会場】
 国立オリンピック記念青少年総合センター
  センター棟4Fセミナーホール
 *小田急線参宮橋駅より徒歩7分
【プログラム】
 10:00〜「子どもの可能性を最大限に広げる、幼少期の支援」 講師:熊仁美(ADDS共同代表)
 11:30〜特別講演:「支援の輪をつくるために〜小学2年生自閉症児のママより〜」
 13:30〜「発達障がい児の学齢期における支援の実際」 講師:渡部匡隆(横浜国立大学教育人間科学部教授)
 15:00〜「発達障がいの強み・特性を活かして働こう」 講師:鈴木慶太(株式会社Kaien代表取締役)
【対象】
 ・発達障がいがあるお子さんの保護者の方
 ・保育・教育・福祉・医療関係者の方
 ・学生の方
 ・発達障がいの支援に関心をお持ちの方
【料金】
 一般2500円/ ADDS会員2000円/ 学生1500円(要学生証提示)
 託児サービス:お子様お一人1500円(※託児サービスは、受け入れ人数に限りがございますため、お早めにお申込みください)
【お申し込み】
 下記URLにて詳細をご確認のうえ、「お申し込みフォーム」よりお申し込み下さい。
 http://www.adds.gr.jp/?page_id=495
[WorkItOut!!からの引越し案内]

今となっては化石的な資料ですが、一応、移転しておきます。「自立」や「自発的」コミュニケーション、構造化を学校に導入することなどについて、考えるべきこと、整理すべきことなどが蓄積してきています。いずれまとめないとならないです。


行動分析学からみたTEACCHプログラム

【レポート】
 2002年6月20日-21日に佐賀大学附属養護学校とその近隣の福祉施設を見学してきました。佐賀大学附属養護学校は、自閉症の人たちの支援システムとして日本でもよく知られるようになった、米国ノースキャロライナ州のTEACCH(Treatment and Education of Autistic and related Communication handicapped CHildren)プログラムを早くから取り入れた先進的な学校です。また、ノースキャロライナ州がそうであるように、この地域では学校だけでなく、保護 者、福祉関係者などの連携によって、就学前から就労、地域での自立までを目指した総合的なライフサポートのためのネットワークができつつあるようです。

続きはこちらから。



自閉症サポートの最先端-TEACCHプログラムに学ぶ

【レポート】
 2002年9月14日から16日まで上越教育大学で開催された第40回日本特殊教育学会で、自主シンポジウム『自閉症サポートの最先端-TEACCHプログラムに学ぶ(2)-』に指定討論者として参加しました。ここではこのシンポジウムで学んだこと、考えたことについてまとめます。

続きはこちらから。

[WorkItOut!!からの引越し案内]

徳島県立国府特別支援学校とのコラボレーションで生まれ、発展し、いまだ活用されているデータベースです。


特別支援教育のための教材データベース

徳島県立国府特別支援学校の先生方による教材データベースです。発達障害児(主に自閉症児)のための自立課題が中心です。


個別の指導計画作成支援ツール

*現時点では校外の方にはゲストとしてデータの検索と閲覧のみを許可しています(ID=guest、パスワード=guest)。

指導目標の領域表や指導目標の検索・登録に関するマニュアルなどはこちらから入手して下さい。



特別支援教育のための事例研究データベース

徳島県の特別支援学校や小学校で行われている事例研究データベースを公開しています。

2007年度以降に行われた事例研究はこちらから参照できます。

2006年度以前に行われた事例研究はこちらから参照できます。

[WorkItOut!!からの引越し案内]

奥田健次先生もコンサルでいまだに活用してくれているというチェックリストです。



日本語版PIRK: 就学前児向け行動査定リスト

ニューヨークにあるフレッド・ケラースクールという学校で使われている、就学前児童のための行動査定チェックリストの日本語版です。個別指導計画の作成などにご参照下さい。

続きはこちらから。
[WorkItOut!!からの引越し案内]

 徳島県立阿南支援学校が阿南市立富岡小学校と共同で開発したクラブ活動の時間を活用した支援プログラム『チャレンジクラブ』を実施するためのマニュアルや記録用紙、チェックリストなどの各種資料です。

 本研究については第48回日本特殊教育学会にて発表しました。

島宗 理・田中清章・田中敦子・島岡次郎 (2010) 小学校のクラブ活動を活用した特別支援:モデル事業から日常的な支援サービスへの展開  日本特殊教育学会第48回大会  長崎大学、長崎市。

 再来週の日本特殊教育学会でも、その後の展開(特に、参加教員の協同体制づくりに関して)が下記のシンポジウムにて紹介されます。

船橋篤彦・奥田健次・田中清章 ・若林上総・喜馬久典 (2011) 特別支援教育における教育現場と研究機関の協働・連携 (2) 〜 教員のパフォーマンス・マネジメントを支える組織づくりに向けて〜 日本特殊教育学会第49回大会 弘前大学、弘前市。

 【資料】 には以下の25のファイルをまとめて圧縮してあります(ChallengeClub.zip)。解凍してお使い下さい。

記録シート.doc
記録シート.pdf
授業改善シート.doc
授業改善シート.pdf
児童の基礎情報シート.doc
児童の基礎情報シート.pdf
チャレンジアンケート.pdf
学習・活動チャレンジ教材.doc
学習・活動チャレンジ教材.pdf
「良い姿勢で座る」の指導方法.ppt
チャレンジクラブ説明用資料.ppt
富岡小学校タイムスケジュール.ppt
授業改善シート記入例「先生を見る」.doc
授業改善シート記入例「先生を見る」.pdf
チャレンジクラブ個人懇談案内文書.doc
チャレンジクラブ個人懇談案内文書.pdf
チャレンジクラブ実施における改善例.doc
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チャレンジクラブ自己評価アンケート.pdf
授業改善シート記入例「良い姿勢で座る」.doc
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マニュアルの表紙、目次、目的、スケジュール.doc
モデル児童推薦について学級担任への依頼文書.doc
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Cimg9641

 今年も徳島ABA研究会のサマースクールが開催されます。

 初級コースは7/28 (木)-29 (金)、会場は徳島県立障害者交流プラザ(徳島市南矢三町2-1-59) 、中級コースは 8月/17 (水)-18(木)、会場は鳴門教育大学附属特別支援学校となります。

 法政での開催は延期となりましたので、四国は徳島への旅行がてら、ぜひご参加下さい。

 夏のお勧めはもちろん阿波踊りです。日程からすると阿波踊りの最終日8/15にからませ、8/16はたとえば大歩危小歩危あたりでラフティングを楽しみ、2日間、ばっちり研修する、なんてコースにすると、一生忘れられない夏休みになるかもです(笑)。

 日程などについて詳しくは徳島ABA研究会のwebサイトをご参照下さい。

Index_logo

 春の特別講座の打上げで特別支援学校の先生たちが知らなかったことに愕然としたので、宣伝します。

 『きらっといきる』は毎回障害のある人たち(アスペ、知的障害、脳性麻痺、などなど)がゲストとしてスタジオを訪れ、彼ら・彼女らの日常生活を追ったビデオを観ながら、司会の3人と話をするという番組です。

 彼らのナマの姿が自然に紹介されている(お涙ちょうだい的な悲壮感のない)素晴らしい番組です。

 この番組のスピンオフで障害者によるお笑いバラエティ番組『バリバラ』も生まれています。

 番組観ていると、そもそも「障害って何だろう?」と考えてしまいます。

 司会の3人のうち、玉木さんはご本人が障がいをお持ちの方で、少々聞き取りにくい話し方ですが、言っていることは3人の中で、だいたいいつも一番筋が通ってます(なので、最初はサングラスの人も、そして女子アナの人も、きっとどこか障害があるのだろうかと思ってました)。

 自分が持つ「障害」に対する偏見に気づかされますし、この仕事に「真摯さ」は必要でも、必要以上の「深刻さ」はむしろお門違いじゃないかとさえ思い知らされます。

 番組webサイトではネットで番組の一部を閲覧できますし、YouTubeにもけっこうアップされています。

 見逃した人もぜひどうぞ。

追記:愛知教育大学の船橋先生から貴重な情報をいただきました。NHK厚生文化事業団では「福祉ビデオライブラリー」ということで10日間、ビデオを無料でレンタルしてくれるそうです。

訂正:"調べてみたら確かに「VHS」だった。まだ再生機がある人にとっては朗報ですね(うちにはもうないです)"と書いていましたが、DVD版もありました。検索画面で「全て」ではなく「DVD」を指定すると表示されます。

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 昨日の春の特別講座@徳島では、チャレンジクラブについての講演と、今年度の事例研究のポスター発表が39件(新記録!)。

 チャレンジクラブは小学校のクラブ活動の時間を使って気になる子どもの指導を進める方法で、今年度はあたらに2つの小学校で活動が始まり、その成果が報告されました。子どもの伸び(授業中に先生の話を聞いたり、書き取ったりするなどの課題従事活動)だけではなく、小学校の先生方がチャレンジクラブの授業の様子を観察され、授業研究の結果、それぞれ担任する通常学級にもそのアイディアを持ち帰るようになったそうです。

 チャレンジクラブは子どもたちが自分が伸ばしたい力を伸ばす機会、そうすることで周りから承認され、自尊心を高める機会としてデザインされていますが、そうした成果からは、このクラブが先生たちにとっても挑戦し、子どもたちの学びや成長という糧を得て、そして周りから承認される機会になっていることもわかりました。

 来年度はさらに導入校が増えるといいですね。着実に、少しずつ、前進です。

 チャレンジクラブの資料(マニュアルなど)はこちらから

 事例研究に関しては各学校で行われた実践研究のポスター発表が39件ありました。新記録です!(田中会長、おめでとう!!)。ほとんどのポスターに、長期目標、短期目標、標的行動の記述があって(つまり個別の指導計画と直結していて)、指導の成果がグラフとして可視化されていて、しかもタコ足ABC分析がありました(つまり機能的分析がなされているということです)。とても贅沢な空間でした。奥田先生がコンサルされている事例も発表されてましたね。

 ポスターを全部見て、先生たち全員とお話することを目標としてましたが、おおよそ50%止まり。すんませんでした。来年度こそ全ポスター制覇します。

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 『アトウッド博士の〈感情を見つけにいこう〉』を読んだ感想を書き込んだ記事を見て下さったのか、監修の辻井正次先生(中京大学・浜松医科大学子どものこころの発達研究センター)からご丁寧なメールをいただきました。

 そして、この本のあとがきでも紹介されている、アスペ・エルデの会における研修会の案内もご案内いただきました。

 以下、メールのやりとりです(編集 by 島宗)。

辻井先生 > 全国で行っております。1月以降も10箇所ほど回りますので、お知り合いの先生方や、学生さん、親御さんたちにもご紹介願えますと幸いです。無料のセミナーです。発達障害に関わっている人や関心の高い方や、思春期のお子さんをお持ちの親御さんたちでもご参加いただけます。特に大学院生の皆さんなどにお知らせいただけますと幸いに存じます。生物学的精神医学などの最新成果の話も含めております。

島宗 > <感情をさがしに行こう>のワークを経験できるんですか?

辻井先生 > 感情の理解や調節など、ワークショップの内容を含みますし、社会的なやりとりスキル演習や親向けのペアレントトレーニングの導入もやってます。

 補助金を獲得されているため、一般(非会員)も無料で参加できるそうです。

 大学・大学院などでアスペルガー症候群をもった子どもさんの感情のマネジメントについて勉強、研究している人は、ぜひどうぞ(補助金で参加費無料は今年度限りのようですから、今がチャンス)。

 詳しくはこちらから。

ワークブック アトウッド博士の〈感情を見つけにいこう〉1 怒りのコントロール ワークブック アトウッド博士の〈感情を見つけにいこう〉1 怒りのコントロール
トニー・アトウッド 辻井 正次

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 秋の特殊教育学会のワークショップで紹介されていた、自閉症児の「感情」(不安と怒り)に焦点をあてたAttwood博士のワークブックを読みました。

 プログラムは明快で、子どもにも指導者にも取り組みやすいワークから構成されています。基本的には「感情」の状態(私的出来事)と強度、その感情を引き起こす刺激や環境を観察し、タクトすることを教え、そういう状況で自分がしがちな不適応行動と、その代わりにできるかもしれない適応行動のレパートリーをいくつか(できるだけたくさん)教えて(言語的に)、感情的になったときにそれを弁別刺激もしくは確立操作として、適切な行動を思い出す練習をするようです。ただし、リラクセーション以外の代替行動を練習する機会(ロールプレイなどで)は特につくらないみたいですね。

 RCTを使ったエビデンスもあります。論文も読んでみました(Sofronoff, Attwood, &  Hinton, 2005;  Sofronoff, Attwood, Hinton, & Levin, 2007)。この手の研究に共通する課題だと思うのだけれど、従属変数は質問紙による間接的な行動評定です。それと、個人差の分析がされていないので、これらの論文からは、このプログラムでは改善しない子どもたちにどのような対処が可能なのかはわかりません(プログラムのカスタマイズや調整も含めて)。それでもエビデンスがあるということはもちろん重要ですね。

 〈感情を見つけにいこう〉は「不安」と「怒り」の2冊がありますが、ワークはほぼ一緒。序文も同じなので、プログラムの概要のみ知りたければどちらかで十分だと思います。

 他にも関連する図書としてドーン・ヒューブナーの『だいじょうぶ 自分でできる心配の追いはらい方ワークブック』も読んでみました(こちらも「心配」と「怒り」のほとんど内容は同じ2編)。こちらは絵本仕立てになっていて、子どもがある程度は自分で読み進められるようになっています。ただ、「心配タイム以外は心配事を話したり、考えたりしちゃ、ダメ!」(p. 40)とあるなど、ネガティブな思考は考えないようにすると余計に考えてしまうという侵入思考の逆説的効果(木村, 2004)に逆行する要素もあり、首をひねってしまうところもあります。著者名「Dawn Huebner」でPsycINFOを検索しましたが、この本に関する研究は見つかりませんでした。

 最後に『これは便利!! 5段階表』。昔、徳島で障害者職業センターとコラボしていたときに、挨拶のときの声の大きさを指導するのに、こういう5段階表を使ってました。「気分」や「セルフコントロールの出来加減」(のコミュニケーション)にも使えるという事例集です。著者名で検索してみましたが、こちらもエビデンスとなるような研究論文は見つかりませんでした。

これは便利! 5段階表  副題 自閉症スペクトラムの子どもが 人とのかかわり方と感情のコントロールを学べる5段階表 活用事例集 これは便利! 5段階表  副題 自閉症スペクトラムの子どもが 人とのかかわり方と感情のコントロールを学べる5段階表 活用事例集
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 ACT的な「不安はそのままにおいておく」という要素は見当たりませんでした。まだまだこれからなのかな。

引用文献

木村 晴(2004)望まない思考の抑制と代替思考の効果 教育心理学研究, 52(2), 115-126.

Sofronoff, K., & Attwood, T., &  Hinton, S.  (2005).  A randomised controlled trial of a CBT intervention for anxiety in children with Asperger syndrome.  Journal of Child Psychology and Psychiatry, 46(11), 1152-1160.

Sofronoff, K., Attwood, T., Hinton, S., & Levin, I.  (2007).  A randomized controlled trial of a cognitive behavioural intervention for anger management in children diagnosed with Asperger syndrome.  Journal of Autism and Developmental Disorders, 37(7), 1203-1214.

 「iPrompts」というのは構造化のアイディアを組み込んだシステムのようだ。スケジュールとか作れるみたい。

 「Proloquo」はPECSのようなコミュニケーション支援に使えるシステムのようだ。ただ、カードじゃないから「交換」というプロセスがない。どうやって教えるのかな(特に学習の初期段階に)。

 商品名が思い出せないんだが、昔、カードを通すと音がでるおもちゃ(知育玩具?)があった。馬の絵が描いてあるカードをすっと通すと、「うま」という声が出るわけ。

 とてもシンプルなゲームだけど、自閉症の子どもたちには大人気だった。それに、遊びながら、勝手に音声摸倣している子どももけっこういた。

 だから、画像を提示し、少し遅延させて音声を提示することで、摸倣(エコーイック)から命名(タクト)を自動的に教える簡単なシステムの効果を検証したことがある(島宗・竹内, 2003)。同じような実験をiPadとか使ってやったら面白いかも。

 この種のシステム開発はシステム屋さんに任せておくと技術先行で使いにくいものになりがちだ。ユーザーテストを繰り返し、シンプルで使いやすいものにするのが一番だと思う。おそらく、音声や画像の質(聞き取りやすさ、見やすさ)、そして、生活に関連する物や事柄や動作や状態など、とにかく使える材料を幅広く、数多く取り揃えることが重要だと思う。

○島宗 理・竹内めぐみ(2003)自閉症児におけるパソコンを使った発語要求の指導:エコーイックからタクト、マンドへの移行を促進する 第41回日本特殊教育学会大会,ポスター発表,東北大学

 昨年末に自宅サーバーがぶっとんで急遽レンタルサーバーに引越したまま放置していた『行動分析学で問題解決!』のリンク切れコンテンツをおおよそ復旧しました。最後に残してた動画ファイルも復活。Xファイルにでてくる宇宙人の解剖ビデオやLOSTにでてくるDharmaのオリエンテーションビデオなみに低品質ですが、なにしろYouTubeよりはるか前の時代のことなのでご勘弁。当時、講義をネットで生中継したり、学会のシンポジウムを録画したビデオをQickTimeに変換してストリーミングしたりしてたけど、一番難しいのは結局、照明とか録音とかのアナログ的な技だったなぁ。

 コンテンツの一部を紹介します(順不同)。今にしてみれば特別支援教育の領域で活躍しているオールスターズ。所属は講演当時のものです。

題 目:「脱力系」応用行動分析と特別支援教育〜大学と学生を地域資源として今こそ『楽しい教育実践』を〜
講 師:望月 昭 教授(立命館大学)

題 目: 自閉症児にも分かる知的障害教育
講 師: 藤原義博 教授(上越教育大学 )

題 目: 『発達障害児者の“ことば”にならない“ことば”を理解して支援する』—問題行動を減らすための機能的コミュニケーション訓練—
講 師: 平澤紀子 先生(西南女学院大学)

題 目: コミュニケーションの指導と自立活動・余暇活動の支援 -「好きなもの探し」から「好きなもの造り」へ -
講 師: 井上雅彦 助教授(兵庫教育大学発達心理臨床研究センター)

題 目:障害児教育実践を楽しむための応用行動分析学的アプローチ 『考えて、試して、また考えて、また試す』
講 師: 奥田健次 先生(吉備国際大学・臨床心理学科)

題 目: 知的障害者のための就労支援
講 師: 志賀利一先生(社会福祉法人 電気神奈川福祉センター)

題 目:自閉症者の就労支援
講 師:梅永 雄二 先生(明星大学)

題 目:学級経営に生かす応用行動分析学-子どもが“わかる”“動ける”教室環境づくりから援助の仕方まで
講 師:加藤哲文 先生(上越教育大学・学校教育学部・発達臨床コース)

 閲覧したい方はここからどうぞ。

2010

今週末(9/18-20)は長崎大学で開催される特殊教育学会に久しぶりに参加します。

徳島県立阿南支援学校が阿南市立富岡小学校と共同で開発したクラブ活動の時間を活用した支援プログラム『チャレンジクラブ』についてポスター発表する予定です。

なにしろ3年間にわたる長期のプロジェクトでしたので、たくさんの資料があります。ですので、WorkItOut!!にて、マニュアルや記録用紙、チェックリストなどを公開することにしました。

こちらからどうぞ

すでに阿南市内では数カ所の小学校に普及が始まっています。小学校における気になる子どもさんへの実行可能で効果の検証された支援プログラムとして、全国に広がるといいなと思っています。

興味がある人はぜひご活用下さい。

では(お会いできる人は)長崎で!

島宗 理・田中清章・田中敦子・島岡次郎(2010)小学校のクラブ活動を活用した特別支援:モデル事業から日常的な支援サービスへの展開 日本特殊教育学会第48回大会 長崎大学、長崎市。

慶応義塾大学の山本淳一先生よりお知らせがありましたので転載します。

お知らせ 8月21日(土)に、「基軸行動指導法(Pivotal Response Teaching:PRT)」の開発者として著名な、Laura Schreibman先生(カリフォルニア大学サンディエゴ校University of California San Diego)の公開セミナーを、慶應義塾大学にて行います。

案内はここからダウンロードできます。

要となる行動を教えて、その他の行動を自動的に派生させるピボタルレスポンス・トレーニングのアイディアは日本の学校や臨床現場ではまだ応用例が少ないようですが、今後の展開が期待できるものです。

前任校ではご自身が自閉症児の父である大山さんが修論研究で取り組みました。名前のわからない(タクト・マンドのできない)、でも魅力的そうなもの(箱に隠すのが確立操作)を提示し、「なにそれ?」と名前をマンドすることを指導します。この「なにそれ?」が要となる行動になります。

「なにそれ?」が自発されるようになると、名前を知らないものへのタクトやマンドが、直接には訓練しなくても、「子:なにそれ?」→「父:○○だよ」。「子:○○ちょうだい」/「子:○○なんだ」というように、マンドやタクトが自動的に形成される(つまり、語彙が増える)というのが、Schreibman先生たちによる先行研究でした。

大山さんの修論ではSchreibman先生たちの研究ほど爆発的な語彙の増加はみられませんでしたが、要となる行動とそこから派生すべき行動をつなぐ指導手続きに必要な要素が明らかになりました。

というわけで、とても面白そうで、ぜひ参加したいのですが、私自身は小川山デビューで残念ながら欠席です。

興味がある人はぜひ参加して下さい。



どこに出張かというと、徳島です。

3/6(土)はダブルヘッダー。

通常学級の気になる児童をクラブ活動で支援する! 実践研究報告会
日 時:2010年3月6日(土)9:15〜11:30
場 所:阿南市立富岡小学校
参加費:無 料
問い合わ先:徳島県立阿南養護学校特別支援教育課 田中敦子
TEL 0884-22-2010

小学校のクラブ活動の時間を活用した実践の報告です。2年目の今年度は他の小学校でも同じ取り組みができるための準備をするということを目的に進めました。ですので、研究発表会とはいっても、参加することで来年度から自分たちでも「チャレンジクラブ」が始められるような内容になっています。


徳島ABA研究:春の特別講座 『学校でここまでできる!』
日 時:2010年3月6日(土)13:30〜17:00
場 所:徳島県立阿南養護学校体育館(阿南市上大野町大山田52)
参加費:無 料
講 演:13:30~15:00
「障害のある子どもの生きる力と保護者への生涯にわたる支援を目指す個別の包括支援プラン」 ~京都市総合支援学校のカリキュラム作りから見えるもの~
講 師:朝野 浩先生(立命館大学)
研究発表会(ポスター発表) 15:00~17:00

詳しくはこちらから。

今年度で5回目の春の特別講座です。京都で特別支援学校の「総合化」に取り組まれた朝野先生のお話も楽しみです。地域の学校が今年度に取り組んだ30件以上の事例研究がポスター発表されます。先生方と直接情報交換できる機会ですので、興味がある方はぜひご参加下さい。


3/7(月)は「ひわさ地域支援プロジェクト・うぇるかめ」チームとの打ち合せです。

中日の日曜には徳島の友達と久しぶりに遊べればいいなと思っているのですが...  それまでにやっておかないとならない仕事が山積み。

がんばるべ。

Hiwasagmap


とくしま特別支援総合サポート事業として展開している『ひわさ地域支援プロジェクト・うぇるかめ』。

徳島県阿南養護学校ひさわ分校の先生方が、特別支援学校のセンター化にともない、地域に密着した発達支援ネットワークを構築中です。

Google Mapを活用して、地域の支援機関をまとめて紹介するなんて試みも始めました。

保護者や保健士、保育士や幼稚園の教諭、小中学校の教員やコーディネーター、病院や福祉施設の医師や職員、役所の担当者など、地域における特別支援の関係者に声をかけて、協力体制を整える第一歩です。

私の役割はコンサルテーションですが、同じように地域支援ネットワークを構築したい人たちのために、その手順を文章化しておくことも重要ではないかと考えています。

ひさわ分校のWeb版海部郡特別支援ハンドブックはこちらから

また随時報告します。

今年度から国立特別支援教育総合研究所で研究員として勤務している猪子秀太郎先生に、学校心理学の授業でゲストレクチャーをお願いし、猪子先生が担当されているプロジェクトについてお話をうかがいました。

どれも興味深いお話でしたが、特に個人的に興味を持ったのは、「障害者権利条約」にまつわる話でした。

「障害者権利条約」は国連で採択されている国際条約で、我が国も2007年に署名しているのですが、未だに批准はされていません。国際条約に批准するとなると、違反があれば何らかのペナルティを受けます。我が国の現状で批准すると、ペナルティがあることが明らかなので批准できないわけです(地球温暖化対策の国際条約にアメリカや中国が批准しないのと同じです)。

ただ、もちろん放置はできないわけで、批准するためには何をどうやって整備しなくてはならないかが少しずつ検討されているとのことです。

「障害者権利条約」は政府では「障害者の権利に関する条約」として翻訳され、外務省のwebサイトで公開されています

たとえば「教育」に関しての条文を読むと、

(c) 個人に必要とされる合理的配慮が提供されること。

とあります。

この条約の基本精神は、障害がある人とない人の垣根を援助によってできるだけ取り払うというインクルージョンの立場をとっています。

つまり、たとえば自閉症やADHDなどの発達障害がある子どもへの指導をする場合、障害があることで不利にならないように、できる限りの支援をすることが、行政にとっての義務になるわけです。

そこで「合理的な配慮」とは具体的にはどのようなことなのかが検討されているそうです。

たとえば、ADHDがあって長時間集中して課題に取り組むことが難しい生徒には、受験で試験時間を延長するとか、他の人と一緒に狭い部屋にいるとパニックを起こしやすい生徒には個室で受験する権利を保障するとか、そういう検討だそうです。

こういう線引きは一般論としてはかなり難しいのではないかと思うのですが(結局、個別の事例を検討するしかないような気がする)、でも行政としてはやらなくてはならない仕事のようです。

ぜひともエビデンスを重視して、何を「合理的」と判断するかを決める手順についても合理的に判断して進めて欲しいものだと思いました。

2009

サマースクールについてはここから。すでに今年度は満員御礼(だと思います)。

2003年から始めた徳島でのサマースクール。今では特別支援教育に関わる先生方の自主的な研究会(徳島ABA研究会)が開催主体となり、徳島県内外からの参加者に初中級各2日間の研修を提供しています。

上記のグラフはスタッフ用掲示板の閲覧・更新数。夏休みに入り、ここ2週間くらいは一日平均400件くらいのアクセスがあります。

2日間の研修会を単元ごとに担当チームを決めて、教材の開発・改善、テスト、練習を重ねるのですが、チーム内・間の連絡に上記の掲示板を使ってます。

先生たちの活動には、量的にも内容的にも感動を覚えます。

グラフを見ながらウルウルするのはかなり変人的ですが仕方ないですね。

ちなみに下はサマースクール参加者の人たちの事前学習教材へのアクセス記録です。こちらも当日に向けてスキャロップ状態に突入中。

2009_2

今年は事前学習の遂行をサポートするためにプロンプトメールを送っています。サマースクールは演習・実習中心で、全体の50%以上を目標にしています(つまり、講義は50%以下)。読んで分かることは参加者各自が自分の時間を使って勉強することにして、サマースクールでは、皆で集まって、体や頭を動かさないと学べないことを優先しているためです。

参加者の方々、スタッフの皆さん、徳島でお会いできるのを楽しみにしています。

Universaldesign200903

先週末は徳島へ出張。

土曜の午前中は阿南市の富岡小学校にて「通常学級の気になる児童をクラブ活動で支援する!」と銘打った実践研究の報告会にスーパーバイザーとして参加。このプロジェクトは、とくしま特別支援総合サポート充実事業の一貫として徳島県立阿南特別支援学校と阿南市立富岡小学校が共同で推進している実践研究。"チャレンジクラブ"という部活動を新しく設置し、そこで「姿勢よく座る」とか「話をしている先生をみる」などの課題にチャレンジしてもらい、目標達成を賞賛して自信をつけ、通常学級で成果を発揮してもらうという主旨でシステムを開発中。プロジェクトの成果は7月の行動分析学会で発表する予定です。

研究会では、鳴門教育大学の島岡くんと富岡小学校の田中先生が研究を発表し、その後に、ユニバーサルデザインの考え方を活用して授業改善によって気になる子どもだけでなく学級全体・学校全体を変えて行くという話をしました。参加者アンケートによれば、発表はわかりやすく、力づけられたと感じて下さった先生方や、自分たちの取り組みが整理されてすっきりしたと感じた先生方が多かったようです。島岡くんも田中さんも素晴らしい発表で、この1年間の努力が実った瞬間だったと思います。

午後は徳島ABA研究会による「春の特別講座」に参加。今年のゲストは上越教育大学の道城裕貴先生。元気いっぱい、若さあふれる講演の後、好例のポスター発表。今年も県内で行われた32件の実践研究が報告されました。残念ながら、時間が足りなくてすべての発表をみることができなかったのが心残り。来年こそ、全発表者と話をすることを目標にします。ただし、事例研究はこちらのデータベースでも閲覧できます。そういえば道城先生のお話でも「ユニバーサルデザイン」の考え方が紹介されていました。偶然のようですが、実は(私のプレゼンでは紹介しましたが)、元々、立命館大学の武藤先生の下記の論文がネタになっています。道城先生も私も、この武藤先生の論文を中心にした行動分析学研究の特集号にからんでいた経緯があります。興味がある方はぜひこの特集号をお読み下さい。

武藤 崇  (2007).  特別支援教育から普通教育へ : 行動分析学による寄与の拡大を目指して  行動分析学研究, 21(1), 7-23.

夜は先生方と懇親会。研究の話、実践の話、来年度のプロジェクトの話、マチピチュの話など大いに盛り上がり、夜中の1時を回っても、誰も帰らない。とうとう「もう終わりにしましょうよ」と水を差しました(だって眠かったんだもん)。

関係者の皆さん、お疲れさまでした。こんな熱心で楽しく、正直な先生方と一緒に成長できる子どもさんはとても幸せです。来年度もまた頑張りましょうね。

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白梅学園短期大学心理学科の金子尚弘先生から研修会のご案内をいただきましたので、ご紹介します。

三菱財団から助成を受けて、小平市を中心に、東京西部での発達障害支援に係る地域連携ネットワークを構築中とのことです。

「特別支援教育とICT」「運動が苦手な子の指導」「動物トレーニング」と、バラエティに富んだメニューになっているようです。今後も「子どもの在宅医療支援」など、幅広い分野の専門家からお話をお聞きできる機会が提供されるようですので、楽しみですね(しかも参加費はすべて無料のようです)。

興味ある方は、ぜひ参加してみて下さい。

「特別支援教育実践連続講座のご案内」はこちらから。

徳島のサマースクールに福岡から参加された先生方が中心になって、地元で勉強会を立ち上げたそうです。

実は福岡県では、数年前、県の研修センターの依頼でサマースクール短縮版(半日コース)をやったことがあったのですが、そのときには先生方による自主的な研修会の開催までには至りませんでした。

今後はぜひ事例研究も進めていただき、研修と事例研究を組み合わせた実践型のトレーニングシステムをつくっていっていただければと思います。

勉強会の様子はブログで広報されていくそうですから、近隣の先生方で興味がある方は、どうぞ一度、のぞいてみて下さい。

ABA(応用行動分析学)を学ぶ会:特別支援教育のための応用行動分析学

徳島県の国府養護学校と共同で開発してきた、個別の指導計画作成支援ツールを、試験的にですが、公開します。

先生方の努力により、実際に使われている指導目標、手だて、教材、評価の方法などが、すでに3000件以上登録されています。

このシステムは、

(1) ひとり一人の子どもの教育ニーズにあった指導計画を作成し、実行し、評価するのを支援するため、

(2) 同じようなニーズを持ったお子さんに、これまで、どのような指導が行われ、どのような効果があったか簡単に検索できるようにして、

(3) それを自分の担当するお子さんに活用したり、子どもさんの実態にあわせて改変して、

(4) さらにそれもデータベースに登録していくことで、情報の共有化をはかるものです。

インターネットで公開するにあたっては、学校内で慎重に、時間をかけて議論を進め、個人情報が秘匿されるように、新しいデータが登録され、公開される前には、担当者がチェックする体制を整えたり、活用のためのマニュアルを作成していただきました。

今回は、試験的な公開ということで、校外の皆さんにはゲストとしてログインしていただき、指導目標データベースの検索や閲覧のみを体験していただくことになりますが、準備が整えば、データの登録などもできるようにしていきたいと思っています。

まずはお試し下さい。
  ↓ ↓ ↓
個別の指導計画作成支援ツール

教員用のIDでログインし、続いて児童・生徒用のIDでログインするようになっています。

現時点ではどちらもゲスト用のアカウント(ID=guest、パスワード=guest)をお使い下さい。

マニュアルなどはこちらから入手して下さい。

ずいぶんと間があいてしまいましたが(ごめんなさい)、7/12(土)に法政大学で開催された「自閉症とコミュニケーション」の配布資料をアップしましたのでお知らせします。

資料はここからダウンロードできます。

参加者は160名。教員、保護者、学生がほぼ同数くらいだったようです。蒸し暑い日の、長時間のイベントでしたが、皆さん最後まで熱心に話を聞かれ、質問もされていました。

参加者の方々、講演をして下さった皆さま、ありがとうございました。

法政大学ライフスキル教育研究所主催,学校で使える心理学シリーズ第2弾として,標記の講演会およびシンポジウムを開催することになりました。

講師のAndy Bondy博士は,PECS(Picture Exchange Communication System)の開発者であり,自閉症を持った子どもたちにコミュニケーションを教える仕事を長年続けておられます。現在では,彼が代表者を務めるPyramid Educational Systems社のサービスが米国だけでなく,英国,オーストラリア,フランス,カナダ,そして日本でも提供されるようになっています。

シンポジウムでは,我が国,特に関東近郊において,自閉症児にコミュニケーションを教えている研究者や実践家の方に話題提供をしていただき,コミュニケーションを苦手とする子どもたちに,何を,どのように教えられるか,最新の情報を提供していただきます。

自閉症スペクトラムやその他の発達障害をもった子どもさんと関わる教職員や家族の方々,将来,発達臨床の仕事をしたいと考えている学生や院生さんなど,ぜひ,ふるってご参加下さい。


題目:『自閉症とコミュニケーション』
主催:法政大学ライフスキル教育研究所
後援:日本行動分析学会
日時:2008年7月12日(土)13:00-18:00(詳しいスケジュールは案内をご覧ください)
場所:法政大学市ケ谷キャンパス( MAP
   外濠校舎S406 教室

招待講演:  『絵カードによるコミュニケーション』
 アンディ・ボンディ博士(Andy Bondy, Ph.D)
 *講演は日本語に通訳されます。

シンポジウム: 『我が国における最新の研究と実践』
話題提供者:高橋甲介(筑波大学大学院)
      熊 仁美・竹内弓乃・原 由子(慶應義塾大学大学院)
      渡邊 倫・齊藤宇開(たすく株式会社)
指定討論: アンディ・ボンディ
司  会: 島宗 理(法政大学)

参加費:一般¥1,500- 学生¥1,000-
    日本行動分析学会会員 ¥1,000-
定 員:先着200名

お申込みはwebまたはファックスで
 URL: https://www.hosei.org/   FAX: 03-3264-6099

お問合せは法政大学エクステンションカレッジまでお願いします。
 TEL: 03-3264-6098  Mail:help@hosei.ac.jp

案内と参加申込書は こちらからダウンロードできます。

皆さんのご参加をお待ちしています。

☆本講座の開催を日本行動分析学会から後援していただけることになりました。学会員の方は割引価格でご参加いただけます!

ABAとPBS

大学院の授業準備をしていたら、面白いwebページをみつけた。

まず、米国公衆衛生局(US Department of Health & Human Services)の長官(Surgeon General)のサイトから自閉症(autism)を検索。

トップヒットするのが、同局の自閉症に関するページ

このページの右上囲み「Indicators for Autism」のリンクを辿ると、National Institute of Child Health and Human Development(NICHD)の自閉症サイトへ。

自閉症に関する豊富なQ&Aの中から「Are there treatments for autism?」をクリックすると、この画面が表示される。

Nichhdautism

ここでは自閉症に対する代表的な自閉症の療育方法として以下の5つがあげられている。

(1) IEP(療育方法ではないと思うけど....)

(2) 総合的なプログラム(と書いてあるけど、中身を読むと"...15-40 hours a week, for two years or more, to change their behaviors and experience benefits"とあるから、ロバースのプログラムのことを意識して書いてあるのかな)

(3) 応用行動分析(ずばり、そのまま。ただし、内容は、これで素人に意味が通じるだろうか?という疑問系)

(4) PBS(ABAと独立して項目立ち)

(5) 薬物療法

(2)-(4)は基本的には行動分析学に基づいたプログラムだし、(1) も指導目標を具体的で評価できる行動目標として記述し、系統的に(そうとは書かれてはいないけど)データに基づいて指導を進めることが奨励されているから、まぁ行動分析学的方法論とも言える。なので8割(4 out of 5)が行動分析学という話。

最近、The Behavior Analyst に、PBSとABA(国際行動分析学会ではなく応用行動分析学)との関係性について懸念する論文が掲載されていたけど(Johnston, et al.,2006; Filter, 2007)、PBSの人たちがABAとの独立性をうたう背景には、こういう事情があるのかもしれない。"Positive"という語感が行政受けがいいだろうし、「これもABA?」と言われて全部まとめられたら項目数が減るし。

試しに同様の検索を我が国の厚生労働省のwebサイトでもやってみたけど、結果は...

どうぞご自分で。

明日からABA(こちらは国際行動分析学会)です。

Johnston, J. M., Foxx, R. M., Jacobson, J. W., Green, G., & Mulick, J. A. (2006). Positive Behavior Support and Applied Behavior Analysis. The Behavior Analyst, 29(1), 51-74.

Filter, K. J. (2007). Positive Behavior Support: Considerations for the Future of a Model. The Behavior Analyst, 30(1), 87-89.

法政大学ライフスキル教育研究所主催の研修会、学校で使える心理学シリーズ第一弾「特別支援教育のための応用行動分析学」が無事終了しました。

参加者の皆さま、お疲れさまでした。配布資料はここにアップしてあります。当日配布した資料に閲覧パスワードを記載してありますので、そちらを参照してご覧ください。

講義はほとんどなく、演習ばかり。しかも指導のテクニックとかハウツーではなく、ABC分析など、なぜ問題行動が生じるのか?をチームで考える演習が中心でした。

それでも参加者アンケートからは、皆さんに楽しんでいただけたこと、そしてこうした研修が重要であり、実践にも役立つという評価をいただけたことがわかります。スタッフ一同、ホッとしています。

この研修の講師を務めることが最後のゼミの仕事だった、猪子さん、山王丸くん、お疲れさまでした。二人とも2年間の修業の成果が見事に現れていたと思います。

Inoko2008
Sannnoumaru2008
Simamune2008
Takoashi2008

次回は7月にイベントを計画中です。はっきり決まりましたら、またこのブログでもお知らせします。

法政大学ライフスキル教育研究所の活動として、応用行動分析学の研修会を開催することになりました。

『特別支援教育のための応用行動分析学』と題し、主に自閉症などの発達障害や知的障害を持った児童生徒の指導、支援に使える考え方を学びます。

題目:『特別支援教育のための応用行動分析学』
主催:法政大学ライフスキル教育研究所
日時:2008年3月27日(木)10:00-17:00
場所:法政大学市ケ谷キャンパス(MAP
   ボアソナードタワー10F 1004教室
講師:島宗 理(文学部心理学科教授)
   および大学院生のスタッフ
費用:¥2,000-
定員:先着20名

お申込みはwebまたはファックスで
 URL: https://www.hosei.org/ FAX: 03-3264-6099

お問合せは法政大学エクステンションカレッジまでお願いします。
 TEL: 03-3264-6098  Mail:help@hosei.ac.jp

案内と参加申込書はこちらからダウンロードできます。

皆さんのご参加をお待ちしています。

今年で4年目を迎える春の特別講座 in 徳島。

「学校でここまでできる!一人ひとりの子どもを伸ばす特別支援教育」と題し、奥田健次先生の講演と徳島の先生たちの事例研究(ポスター発表)が中心のイベントです。

日 時:2008年3月1日(土)13:30-17:00
場 所:鳴門教育大学附属特別支援学校体育館(徳島市上吉野町)
参加費:無 料

詳しくはこちらをご覧ください。

参加予約は必要ありません。どなたでも参加できます。


日本特殊教育学会第45回大会(神戸大会)では、自主シンポジウムとして、ペアレントトレーニングに関するシンポジウムを企画しました。2つの養護学校、1つの病院(小児科の自閉症外来)、1つの親の会(NPO)が主催するペアレントトレーニングについて話題提供していただき、筑波大学の野呂先生、兵庫教育大学の井上先生に指定討論をしていただきました。

教師や保護者や専門家が共に学びながら子どもを支援する:学校や地域におけるペアレントトレーニングの取組み

話題提供者:
 ○神戸市立青陽東養護学校における取組み(藤本優子先生)
 ○徳島県立国府養護学校における取り組み(竹田真理子先生・森住俊子先生)
 ○NPO法人「おひさまクラブ」における取組み(高浜浩二先生)
 ○屋島総合病院における取組み(長町香先生)

自閉症などの発達障害をもったお子さんの療育には、保護者と専門家が協働で、できるだけ早くから取り組むことが理想的だとされています。そのためには、学校や保育所、病院や発達支援センター、親の会や地域のサポートグループなど、とにかく社会のいろいろなところで、そのような協働体制が提供されなければなりません。

今回話題提供していただいた4つの事例からいえることは「それは可能です」ということです。

皆さんのご好意により、シンポジウムの発表資料(PowerPointのスライドをPDF化したファイル)を公開していただけることになりました。

同じようなシステムを自分たちの学校や病院や親の会でもやってみたいという方は、ぜひ参考になさって下さい。

資料はここからダウンロードできます。

Octopusdiagramss2007

今年のサマースクールでは初級も中級も問題解決のためのABC分析に全力投球。タコ足ダイアグラム(仮称)を使って,問題行動の原因とそれぞれに一致した解決策をできるけたくさん考える演習をたっぷりやりました。

日和佐の構造化軍団のおかげで,構造化のアイディアもどんどことタコ足ABC分析。これは世界でもここだけのユニットと自画自賛(笑)。

こうやって演習中心の研修を組み,ユーザーテストも積み重ねていくといろんなことがわかってきます。サマースクール実施中には,会場の後ろの方にノートPCが用意され,スタッフが気がついた改善点をその場で書き込めるようになっています。今年はその数が初級73件,中級107件。これに参加者の皆さんにご記入頂いたアンケートの集計結果も加えて,来年度へ向けての準備が始まります。

今年よくわかったことの一つは,問題行動のABC分析は比較的わかりやすいけど,代替行動などの望ましい行動(適切行動とネーミングしようかどうか検討中)のABC分析は苦労する人が多いということ。

Photo

猪子さん曰く「見えない行動」のABC分析。

望ましい行動は自発されていない(見えない)だから,それをまず考える段階でつまづく人がいます。それから,行動を考えてからも,いま見られていない行動なのに,なぜ強化や弱化などの随伴性が考えられるのかがピンとこない人がいます。これは昔,鳴教大のゼミでさんざんやってた,いわゆる「仮定法の思考」が必要になる場面です。

ヒントになるのは,その望ましい行動ができている他の子ども行動を観察して,どのような先行条件や結果があるのか考えること。また,同じ子どもさんでも,他の場面なら望ましい行動ができていることがあるので,その場面の随伴性をABC分析してみることも参考になります。

というような情報を含めた教材を来年度までに準備するのが目標になりそうです。

サマースクール初級コースが無事終了しました。参加者の皆さま,スタッフの方々,おつかれさまでした。

日本行動分析学会の年次大会をはさんで,来週は中級コースです。息つく暇もない状態かもしれませんが,頑張っていきましょう。

下の図はサマースクール事前学習のためのwebサイトへのアクセス件数のグラフです。コースをオープンした6月初旬からのべ16,448件のアクセスがありました。サマースクールの受付開始時と本番前にアクセスが集中するのは毎度のことですが,それにしても莫大な学習量です。参加者の皆さんの熱心さにはいつも感動します。

2007

今回は同じような図をもう一つ。これはサマースクールを運営しているスタッフの先生方が使っている掲示板や資料へのアクセス数です。同じ期間にのべ9,758件のアクセスがありました。

2007_2

サマースクールの教材は年々改善されています。特に今年度はスタッフの先生方がインストラクショナルデザインの考え方を実践しています。つまり,本番前にユーザーテストを何回か実施し,教材のわかりやすさ,わかりにくさなどを評価,測定し,そうしたデータを元に改善してから本番に挑んでいます。

9,758件のアクセスのほとんどは,そうしたユーザーテストと教材改善に関する情報交換です。なにしろ複数の学校の先生方がスタッフとして参加していますので,一同が同じ時間,同じ場所に会して作業を進めるのはほとんど不可能に近く,このようなネットを活用したコミュニケーションが欠かせないのです。

2003年に第1回のサマースクールを開催したときには,教材のほとんどは私が用意し,講義のほとんどを私が担当しました。それが今では,遠くから見守っているだけで,私一人でやる仕事量や質の十数倍以上のペースで仕事が進んでいきます。

自主自立型研修改善システムが動き出した年と言えると思います。

次は維持ですね。

あまりに仕事量が多いと,それこそ息切れしてしまうと思うので,長期的にこのような活動が維持できるバランスを探していくことが重要になりそうです。

なにはともあれ,来週は私も徳島入りします。リニューアルされた中級コース,楽しみです。

金曜の特別講義「自閉症児の療育支援」には、学内・学外からたくさんの人が参加して下さいました(n=66)。

パニックや反社会的行動を示す子どもへの対応など、IEPに基づいて作成されるBehavior PlanによるABAセラピストの活動や、通常学級の教員とセラピストの関係や協働などに関する、詳しく具体的なお話が聞けました。

講演が終了してからも、教室に残られて講師の塩田先生に質問をされていた参加者の方々も多数いらっしゃいました(待てずに帰られてしまった人たちもいましたね。ごめんなさい)。自閉症療育への関心の高さや緊急性がうかがえました。

講義に参加できなかった方々からのメールもいただきました。塩田先生にお願いしたところ、当日の資料のネット配布を快く了承していただきました。こちらからダウンロードして下さい

諸外国の先進的な実践の話を聞くと「それはアメリカだから...」というように、最初からあきらめてしまう発言をされる人もいらっしゃいます。でも、日本でも、たとえば京都市の特別支援学校が教員免許を持たない応用行動分析の専門家を雇用したり(詳しくはここ)、今年度から私たちが関わり始めた公立中学校でも、学習支援のために校外から人を雇用する制度を活用したりと、いろいろ明るい将来を感じさせる動きもあるのです。

とにかく今は社会的なニーズに応えらえる専門家の人数が圧倒的に足りない状況だと思います。大学が頑張らないといけませんね。

題 目:自閉症児の療育支援:ボストンのプレスクールにおける応用行動分析セラピストの実践

日 時:2007年7月6日(金)19:00-20:30
場 所:法政大学市ケ谷キャンパスボアソナードタワー11F心理学実験室
講 師:塩田玲子(しおたれいこ)先生
所 属:マサチューセッツ州市立プレスクール / 自閉症.com

塩田先生はボストンのプレスクールでABAのセラピストとして支援付きインクルージョンの仕事をされています。

徳島の猪子&田中さんが学校見学ツアーへでかけたときに、たいへんお世話になりました。今回、たまたま帰国中ということで、法政大学にてお話をしていただけることになりました。

米国では、ABAセラピストが公立学校にも自閉症療育の専門家として雇われるようになってきています。教員や保護者と共同で、どのように療育支援をしているのか、その仕事ぶりについて、お話がうかがえると思います。

自閉症など発達障害児の療育支援や、支援付きインクルージョン、学校におけるセラピストの仕事などに興味がある方は、ぜひどうぞ。

参加予約はいりません。参加費、無料です。

徳島のサマースクールの参加者募集が始まりました。

初級コース:7/31-8/1の2日間
中級コース:8/8-8/9の2日間

初級コースは遠隔で、中級コースは室内で(^^;;)、スーパーバイズします。

どちらも徳島ABA研究会の面々(みなさん特別支援教育に関わる現職教員の方々です)が、今から寝る時間を削って(!?)、運営します。ちなみに、会長の猪子さんは映画『眉山』で松嶋菜々子と共演を果たしました。

参加申込はこちらから。

Bostonreport2007

猪子先生&田中先生によるマサチューセッツ州・ボストンの学校見学レポートを、iPodで見れる動画形式として、徳島ABA研究会のwebサイトへアップしました。

公立学校で行われている支援付きインクルージョンの話や、ABAの専門家がどうやって学校スタッフとして雇われ、仕事をしているか、生の情報を聞くことができます。

ボストンの寒さ、食事や移動におけるハプニングなど、研修企画会社によるツアーでは味わえない、個人手配の旅行ならではの異文化体験による感動もいっぱい(笑)。

興味のある方はぜひダウンロードして視聴してみて下さい。

Autismdvd

今年度から学部の「学校心理学」という講義を担当しています。

うちの学科では、教育心理や学習心理、認知心理や行動分析学、発達心理やカウンセリングは別の授業として開講されているので、この授業では主に発達障害や学習障害、不登校やいじめなどの課題と解決支援について、行動コンサルテーションという角度から紹介する予定。プラス、インストラクショナルデザインの考え方の習得。

自閉症やADHDなど、発達障害を持った人たちへの心理教育的援助サービスを、こうした人たちと関わったことがない学生に教えるのは至難の業です。自閉症の定義だって、DSM-IVの項目をいくら暗記したって、実際にそういう行動を目にしないとピンとこないものです。

なので今回は日本自閉症協会が作成した『自閉症の子どもたち:バリアフリーを目指して』というDVDを授業で紹介しました。

受講生からは、

○「今まで、自閉症という名前から、別のイメージで自閉症を捉えていましたが、先日のビデオを見て全くの誤解だということがわかりました」
○「自閉症をもっと理解したい。今回のDVDを見てそう思いました」
○「自閉症の人のことを初めてきちんと知ったのでとてもいい機会になりました!このDVDを見て、自閉症の人も周りの環境によって生活しやすくなるんだということが分かりました。自閉症という脳の障害はまだまだ世間に知られていないので、私たち周りの人間がいかに自閉症の知識を広めていくかが問題だと思いました」

といった感想が聞かれました。

やはり百聞は一見にしかず、ですね。

残念ながらこうした教育用ビデオ教材は希少です。いろいろ調べてみましたが、ほとんど存在しないんですね。日本自閉症協会とこのDVD制作に関わったご家族の方々には敬意と感謝をあらわしたいです。

ちなみに実録は少ないけど、自閉症をもった人たちが登場するドラマや映画は増えているような気もします。ダスティン・ホフマンの「レインマン」は古典ですが、最近では篠原涼子(←ファンです ^^)がお母さん役を好演した「光とともに…」が印象に残っています。

参考までに、自分が観たことがある映画やドラマをリストしておきます。

Precision Teaching は、基礎学力の向上に有効であることが実証されている、行動分析学をベースにした教授法です。Ogden Lindsley博士らが中心になって開発しました。読み書き計算の基礎スキルの流暢性を向上させることで、注意や記憶の保持や応用力(文章題など)へもポジティブな成果を及ぼす指導法と言われています。

日本では100マス計算がブームになり、導入している学校も多いようです。基礎スキルの正答スピードを上げることを尊重し、繰り返しの練習をに注力するところは、Precision Teaching と共通です。

国際行動分析学会の分科会としてStandard Celeration Societyというコミュニティがあり、Journal of Precision Teaching and Celeration という機関誌も発行しています(1981-)。購入できる教材もそろっています(たとえば、ここ)。

しかしながら、初学者向けの教科書というかマニュアル本がなく、ゼロから学ぼうとすると、正直言って、何がなんだかわかりません。私も大学院生のときに授業で紹介され、国際行動分析学会のワークショップ(有料の研修会)にも何回か参加しましたが、いまだに謎の部分も多いのです。

このたび、Rick Kubina先生(Pennsylvania State University)が、Precision Teachingに関わるいくつかのビデオや音声をPodcastの形式で公開されました。教室で子どもたちが学習に取り組む様子もこれでわかります。

あ〜、こういうことなんだ。と、勘をつかむのにちょうどいいと思いますので紹介しますね。

動画の閲覧にはAppleのQuickTime(もしくはiTunes)が必要です。

Precision Teaching: Party Movies(←これをクリック)

前任校(鳴門教育大学)のゼミ生二人が、ボストンへ学校見学旅行に行ってきました。

猪子さん(M1)と田中さん(M2)。どちらも養護学校の先生で、大学院で行動分析学を勉強しています。

春休みを利用して、自分たちで学校を探し、自分たちで案内してくれるセラピストを探し、自分たちで通訳を雇い、自分たちで航空券やホテルを手配して.... と、まさに猪子さんいわく“インデペンデント”なツアー。感心を通り越して、感動ものです。

ゼミ日記でごくごくさわりの報告をしてくれていますが、詳しくは4月の徳島ABA研究会で発表してくれるそうなのです。乞うご期待。頑張って、久しぶりにストリーミング配信してみようかな。

実は、裏バージョン(?)もあります。mixiの同窓会コミュでは、アメリカでの食事やボストンの寒さ、ホテルのシャワーなどなど、異文化体験の驚き、感動、怒り、涙(?)が、生々しく語られています。自分が初めてアメリカに行ったときのことを思い出し、こちらも楽しませてもらいました。

ふだんと全く異なる随伴性に暮らすことって、人生を豊かにしてくれますよね。

先週末は徳島。公開講座「学校でここまでできる!」に参加して、野呂文行先生(筑波大学)のご講演を拝聴し、今年度、徳島の学校で行われた30の事例発表をみてきました。

野呂先生のお話は通常学級に在籍する軽度発達障害児のお子さんへの支援について。

「特別支援」というと、通常学級の担任の先生たちからは、「また仕事が増えそう」とか「私たちには関係ない」とか「難しい」とか「専門的すぎる」など、ネガティブな反応や感想が返ってくることも少なくないようです。

野呂先生は、これまで通常学級の先生たちがやってきた仕事がそのまま使えるところと、常識や経験が通じなくて、「あれ?」と思うところを区別して、後者にのみ、ちょっとした工夫を入れることで、学級経営が円滑になるというお話を、事例を通してわかりやすく説明して下さいました。

“叱ってもきかない”とか、“褒めてもぴんとこない”ときには、そういうこともあるんだということを念頭においておき(第一ステップ)、次に、その児童や生徒に応じた方法で、叱り方や褒め方を変えてみて(第二ステップ)、うまくいくかどうか試して行く(第三ステップ)ということですね。

もう一つ、これは懇親会の席での話題でしたが、面白かったこと。

徳島のABA研究会のメンバーには養護学校の先生たちが多く、どうすればもっと小中学校の先生たちにも参加してもらえるだろう?と考えているわけですが、野呂先生が仕事をしている筑波周辺では、養護学校の先生よりも、小中学校の情緒学級などの担任の先生たちが多いそうです。

ABAが活用されている学校種に、地域によって若干の偏りが見られるのは、学校種の特性というよりは、偶然、歴史的にABAに興味をもった人たちがどういった学校に勤めていたかによるようです。

とすれば、地域間の関わりが増えて行けば、情報交換によって、こうした偏りも少なくなって行くかもしれませんね。

Noro20070209
(↑野呂先生。話してる人の画像をスクリーンに映しだす演出(?)が陣内孝則陣内智則のネタっぽくて思わず写メってしまいました ^^)

先日、学校見学におじゃました、久里浜養護学校の研究発表会に行ってきました。とはいっても残念ながら午前中は別件で参加できず。さらに、会場(代々木オリンピックセンター ←すごい豪勢!!)のホールで京都の朝野浩校先生(京都市西総合養護学校)に再会し、すっかりしゃべりこんでしまいました(これはこれで楽しかったです)。

というわけで最後のシンポジウムだけ聞いたので、研究の全体像は分からずじまい。後で報告書をよく読んでみることにします。

ちょっと長くなりますが、シンポジウムとその後の「講評」で印象に残った二つのことを書き留めておきます。

筑波大学附属久里浜養護学校に見学に行ってきました。学部生3名、大学院生7名。総勢11名で到着した我々を、副校長の馬場先生が暖かく迎えて下さいました。

元々は国立特殊教育総合研究所の附属校として昭和43年に設置された伝統ある学校ですが、平成16年に日本初の自閉症をもった幼児・児童のための学校として改組されました。学区域が日本全国であり、教員も全国の県教委から派遣されてやってるくるという特色があります。

幼稚部・小学部あわせて18学級、50名の子どもが在籍していて、そのうち数人が寄宿舎で生活しています。小学部では構造化のアイディアを取り入れ、カードをつかったコミュニケーション指導(必要な子どもには一人ひとりカードをまとめた「コミュニケーションブック」がつくられていました)、スケジュールの視覚化、ワークシステムを使った自立課題、教室の物理的構造化などが取り入れられていました。また、教員との一対一の個別指導場面では、数字の弁別や発話訓練などが離散試行型で行われていました。

教室を観察して気がついたのは、とても片付いていること。県立の養護学校などに行くと、教員の机の回りやロッカーの上などに、教材や遊具やその他いろいろなものがかなり乱雑に置かれていたり、壁には子どもたちの作品などが、やはりどちらかというバラバラに掲示されていたりすることも多いのですが、この学校にはいわゆる教員の机が見当たらず、とても片付いていました。自閉症の子どもたちによっては、不用意に注意をそらす刺激が少ないという意味で、動きやすい環境になっていると思われます。

残念ながら、とても短い時間の見学だったので、教員の方々と話しをする機会がなく、それぞれのお子さんにどのような個別指導プログラムが設定されているのかは、よくわかりませんでした。それから、せっかくの構造化のアイディアも、幼稚部ではほとんど導入されておらず(“緩やかな”構造化だそうです)、むしろ小学部になるほど構造化のレベルが上がっているのが気になりました。幼稚部では個別指導の時間も少ないそうで(週に数時間)、自閉症児への介入として早期の集中療育プログラムの有効性にエビデンスがみつかっていることを考慮すると、不思議な流れだと思いました。

筑波大学の附属校となり、筑波の先生方との交流も盛んになったそうなので、これからは増々、最新の研究成果を取り入れていかれるのではないかと期待します。

来る2/9(金)には、オリンピック記念青少年総合センターにて「自閉症児のための教育課程の研究開発」の研究発表会が開催されるそうで、私も立ち寄ろうと思っています。

見学にいったみんなで海岸を見下ろすテラスから記念写真を撮ろうと思ったのに、またまた忘れてしまいました(残念)。

国際行動分析学会(ABA International)は、来月、「自閉症」に関するカンファレンスを開催します。テーマは「Progress and Challenges in the Behavioral Treatment of Autism」(自閉症に対する行動的介入における発展と課題)で、一つのテーマに特化したカンファレンスを開催するのは、学会史上、初めての試みです。

今回、このカンファレンスの発表がweb配信されることになりました! 日程からすると、日本の大学ではちょうど入試や成績やらで、大学教員が出張して参加するのはとても難しい時期ですので(日本からの参加者は)、嬉しいニュースだと思います。

ライブ配信だけではなく、大会終了後も3ヶ月間、合計30時間までは閲覧できるようです(費用は$180.00)。英語が苦手な方でも、繰り返し聞けるというのはメリットだと思います。

残念ながらMacへのサポートは貧弱なようで、今のところ私はMacからはテスト視聴に成功していません。WindowsXP + IE + Windows Media Player という組み合わせなら視聴できることを確認済みです(ただし、個々の環境によっては、ファイアーウォールやポップアップ広告の設定など、若干の調整が必要になるかもしれません)。

Web配信の日時(ライブ):2007/2/3(土)8:00-18:00〜2/4(日)8:00-18:00 *時刻は合衆国東海岸の時間。

このカンファレンスについて詳しくはここを、web配信についてはここをご参照下さい。

参考までにカンファレンスの紹介文の冒頭文をざっと訳しておきます。

Progress and Challenges in the Behavioral Treatment of Autism子どもが自閉症スペクトラムと診断されることは、保護者にとっても、教員にとっても、大きな挑戦を意味します。過去数十年間、応用行動分析学は、自閉症児に対する効果的な教育や療育プログラムを開発し、評価するための、理論的・実証的な研究を積み重ねてきました。これまでに、コミュニケーション、社会性、学習、生活適応などに関して、行動的な介入を使った指導プログラムが社会的に有意である(有効である)ことが、少なくとも550本以上の査読付きの論文として発表されています。行動的な介入の有効性がメディアで取り上げられることで、自閉症児のための“ABAサービス”を名乗る会社や個人も急増しています。一般のメディアには、応用行動分析学とは何か(何ではないか)、何ができるのか(何ができないか)について、不正確な情報や誤解が飛び交うようになっています。このことで、消費者や実践家の人たちにとっては、何が本当(事実)で何が嘘(フィクション)か、とてもわかりにくくなってきています。こうした事態に対応するため、国際行動分析学会では、「自閉症に対する行動的介入における発展と課題」をテーマにしたカンファレンスを開催することに至りました...

日本行動分析学会後援の公開講座のお知らせです。

「学校でここまでできる!」テーマ:一人ひとりの子どもを伸ばす特別支援教育
日 時:2007年3月3日(土)13:30-17:00
場 所:鳴門教育大学附属養護学校体育館(徳島市上吉野町)
参加費:無 料
対 象:特別支援教育に関わる保育士,幼・小・中・高・養護学校等教員,関係機関職員,保護者,一般
主 催:徳島ABA研究会
後 援:日本行動分析学会・徳島県教育委員会・徳島県特別支援教育研究会・徳島新聞社・NHK徳島放送局

● 講 演 13:30-15:00 通常学校に在籍する発達障害のある児童・生徒への支援-応用行動分析学の生かし方-
    講 師:野呂 文行(のろ ふみゆき)先生
    筑波大学大学院人間総合科学研究科(心身障害学系)助教授

●研究発表会 15:00-17:00
 今年度、鳴門教育大学附属養護学校、徳島県立国府養護学校、同池田分校、徳島県立阿南養護学校、同ひわさ分校、徳島県立板野養護学校などで行われた事例研究について、ポスター発表を行います。研究成果を見て、気軽に質疑応答できます。

連絡先:鳴門教育大学大学院障害児教育専攻院生室 勝瀬 秀成(e0511106@naruto-u.ac.jp, 088-687-6318)

*お問い合わせにはできるだけEmailをご利用下さい。
*会場は体育館ですので十分な防寒対策をしてお越し下さい。
*事前の参加申込みは必要ありません。お気軽にご参加下さい。


 特別支援教育の時代を迎え,教育現場ではどのように一人ひとりの子どものニーズに応え,個性や能力を活かした指導を進めるかが大きなテーマになっています。

 今年度の講座には、筑波大学で教鞭をとるかたわら保育所などの特別支援の現場で活躍されている野呂文行先生をお招きし,これからの教育現場における特別支援教育について,応用行動分析の視点からの様々な展開のアイデアを,お話しいただきます。また、本年度、県内外の養護学校や小学校で行われた事例研究のポスター発表を行い、どんな子どもにどんな支援ができるのか、具体的な情報交換の場を提供します。

 特別支援教育に関わる教師,保育士,関係の方々のご参加をお待ちしております。

来年度、特別支援教育の推進のための予算が、今年度より10億円アップの77億円で承認されたそうだ(日経新聞, 2006.1.4)。

この予算で通級指導担当教員を増加したり(+258人)、特別支援教育支援員をおいたり、乳幼児検診で発達障害を早期発見する仕組みをつくったりするそうだ。

大きな一歩前進であり、関係者の皆さまの努力に拍手。

税金の無駄遣いにならないように、ぜひ効率よく使って成果をあげていただきたい。

アスペルガー症候群のお子さんのお母さんが書いた本。

ぼくがアスペルガーしょうこうぐんだってことは、ぼくを見ただけでは分からないと思う。ほかの子たちと、ほとんどいっしょだからね。でも、もしかしたら、ぼくがほかの子とちょっぴりちがうってことには、気がつくかもしれないな。どうしてかというと、ASだと、みんなとはちょっとちがう行動をしたり、ちょっとちがう話し方をすることがあるからね。みんなみたいに、ASの人にもそれぞれこせいがあるし、人によってASの出かたもちょっとずつちがう。だから、ほかのASの子とぼくとは、にたところもたくさんあるんだけど、全く同じではないんだ(p.13)

と、アスペルガーのアダムくんが自分について友達に語りかけるというスタイルになっている。

その場の雰囲気を読むことが難しいとか、言葉どおりの意味で理解しがちとか、冗談がわかりにくいとか、ルールを守って遊ぶのが苦手だけど、みんなとは遊びたいし、わかりやすく教えてくれれば遊べるよとか、アスペのお子さんの特徴を、子どもたちに使えるのにいい教材になりそうです。

小学校の中学年くらいからなら十分読めるのではないかと思います。お勧め。

ねえ、ぼくのアスペルガー症候群の話、聞いてくれる?―友だちや家族のためのガイドブックねえ、ぼくのアスペルガー症候群の話、聞いてくれる?―友だちや家族のためのガイドブック
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Skypescreen

Mac版Skypeにもビデオ機能が追加され、月例の徳島ABA研究会への参加も一段とビジュアルになってきました。

発表者のプレゼン資料をみながら、事例研究の記録をwebで確認しながら、先生たちが話し合いながら展開していくABC分析をリアルタイムで眺めながら.... ネットのこちら側でホカ弁を食べてる場合じゃないですね(バレちゃうし ^^;;)。

今月発表された事例では、キレやすい子どもさんの行動のABC分析に、特殊な確立操作による攻撃性好子の分析(『行動分析学入門』の11章)があてはまりそうで、興味深かったです。

攻撃性好子とは、自分の思い通りにならなかったり(消去)、難しい課題が提示されたり(強化率の低下)、ゲームで負けたり(好子消失)、同級生が隣で大声で泣き続けたり(嫌子出現)すると、自分があげる大声や、机を叩く感触、そうすることによってまわりの大人が困った顔をすることなどが、一時的に、とても強力な好子となり、わめいたり、暴言をはいたり、自傷・他害を引き起こす行動が誘発され、強化されてしまうという考え方です。

となれば、そのお子さんにとって、どんな環境が攻撃性好子をつくりだす確立操作としてはたらくのかを調べ、できるだけそういう状況にならないようにし、そうなってしまった場合には、その場から移動して落ち着ける場所に行く、深呼吸する、地団駄をふむなど、逆に作用する確立操作を見つけて、教えることが有効になります。

かつて、ある小学校では「なんでやねん」とツッこむことを教える実践をされていましたが、「おどける」というのも逆の確立操作として有効かもしれません(追記:我々もあまりに辛いことがあったときに自分やそんな状況を笑い飛ばせるスキルがあるとストレス対処として有効ですよね)。

いわゆる「アンガーマネジメント」ではこういう対処法がいろいろ開発されているはずです。行動分析学から解釈しなおしてみると、より包括的で効果的なプログラムが組めるかもしれませんよ。

徳島県内の二つの養護学校に行ってきました。サマースクールに参加した先生方が研修で学んだことを実践で活かせているかどうか、事例研究を進めるのにどんな支援が必要か、サマースクールを改善することでまかなえるところはあるか、などなどを調べるためのフォローアップ訪問です。

どちらの学校でも校内に事例研究のチームがつくられていて、事例について話し合い、課題分析やABC分析をやってみて指導計画を立案し、記録にもどついて指導計画を修正したり、変更したり、達成を承認しあうというプロセスが見事なまでに運用されていました。

数年前にこの仕事を始めた頃、ケース会議などで助言をするときには、そのたびに、なぜそういうふうに考えるかをかなり詳しく話さないとわかってもらえなかったものですが、今では、ちょっとしたヒントだけで「あぁ、そういうことですか、そうですよね」とか、もっと嬉しいことには「実は、私たちもチームで話し合ったときにそういうふうに考えていたんです」なんて言われたり、「こんなのはどうでしょう?」と提案されたりもします。

コンサルテーションはフェイドアウトが最も肝心かつ困難なステップですが、そろそろ出口が見えてきた感じです。

Consultation_roleplay

大学院の「学校コンサルテーション演習」では、受講生が教育相談や巡回指導の仕事ができるようになるように、教科書に『特別支援教育を支える行動コンサルテーション』を使って方法論を学び、かつ、教員や保護者へのインタビュー、機能的分析、話し合いによる指導計画の立案などを、ロールプレイやビデオ観察などの実習によってトレーニングしています。

これまで私が関わってきた仕事のネタばらし的な授業でもあります。論文や教科書には書けなかったり書かなかったりするけど、指導が成功するためは重要な変数もあるわけで(たとえば、コンサルティである教員と話をするときに、共通理解を進めるために配慮すべきことなど)、そういう話もたくさんしてます。

個人的な経験談を授業でするのは本当は嫌いないんですが、紙に残しにくい情報もありますし、この授業だけは別格扱い。

サマースクール初級コースがいよいよ明日から始まります。今年度は徳島の先生たちへの引継がほぼ完了し、ほとんどすべてが有志の先生たちによる運営です(私の役割は「助言」のみ)。

各ユニット担当の先生たちが、日夜、掲示板を使って話し合い、それぞれの学校で教材のユーザーテストをして改善し、忙しい中、時間をつくって寄り合いミーティングをしている姿は、有志どころか勇士、ドラクエ的には勇者です。

この機会に過去3年間の記録をざっと振り返り、サマースクール(初級・中級含む)の全ユニットに占める教員が担当する割合を計算してみました。

Summerschoolindependence

2003年から2004年に少し凹みがあるのは、この年度にプログラムの大幅な改定をしたためです。2005年で大きなジャンプをしているのは私の異動が決まったせいで、ほんとうはあと2年くらいかけて緩やかな引継を計画していたわけで、そのぶん先生方にはご苦労をおかけしました。

現在は、各学校の先生が自分の時間を持ち出して参加してらっしゃいます。こういう活動が正式な勤務として評価されること、また、次々と新しいスタッフを育てて、一部の人だけに過大な負担がかからないようにすることなどが、「維持」への課題だと思います。

いずれにせよ、久しぶりに皆さんにお会いするのが楽しみです。

国際行動分析学分析学会(ABA)が自閉症スペクトラムに関するカンファレンスを開催します。2007年2月2ー4日。開催地はボストンです。

米国では「ABA services」という名のもとに、応用行動分析とは関係ない療法が横行したり、無知や不勉強から誤解や誤用を生みかねないような報道などもあり、数年前からABAの常任理事会では問題視されてきました。

今回は「Autism and Parent Professional Partnership Special Interest Groups(自閉症に関する親と専門家のパートナーシップ)が中心となり、自閉症について行動分析学から現在わかっていることを、学校や家庭でABAサービスを提供する専門家、保護者、研究者、教師などに、わかりやすく提供することが目的のカンファレンスです。

日本の大学に勤めているものにとっては日程的に参加困難な時期ではありますが、研究者に限らず、興味のある人はぜひ、学会のHPをご覧下さい(発表申込〆切は7/26です)。

ネットで学ぶ行動分析学」は法政大学文学部心理学科の島宗研究室のゼミや各種共同研究で使っている学習支援サイトです。利用できるのはゼミ生、受講生、研修会の参加者、共同研究者などに限定されています

徳島のサマースクールでも使っている「特別支援教育のための応用行動分析学」は徳島ABA研究会コミュニティに引越しました(2010年1月)。 こちらのコースは広く一般に公開しています。ご自由にお使い下さい。ただし、現在、コースの改訂作業は中断しています。

また、PCやネットの使い方、コースの閲覧方法などについてのサポートはできません。ユーザー登録がうまくできなかったり、パスワードを忘れてログインできませんというメールをいただくこともありますが、すみません。そこまでサポートする余力がありません。

ログインできなかったり、パスワードを忘れてしまったら、新しくアカウントを作成して下さい。

自力では問題が解決できない人は、まわりの、親切な同僚、お友達、ご家族などに支援を依頼して下さい。

また、私個人がサーバーを運営している都合上、いきなりアクセスできなくなったり、正常な動作をしなくなったりすることもあります。

そういうすべての現状を受け入れて、それでも自力で使ってみたいという方は、ぜひどうぞ。

よくある問題と対処法 Q: 携帯メールアドレスで登録しましたが、登録メールが届きません。
A: 携帯メールは使えない場合が多いのでPCメールで登録して下さい。

Q: PCのメルアドで登録しましたが、登録メールが届きません。
A: 登録メールが迷惑メールに自動的に振り分けられている可能性があります。迷惑メール用のフォルダーやゴミ箱を探してみて下さい。

Q: PCのメルアドで登録しましたが、登録メールが届きません。迷惑メールフォルダやゴミ箱も探しましたがみつかりません。
A: hotmailとは相性が悪いようです。うまくいかなければ他のメルアドを使って試して下さい(yahoo!、Gmail、gooなどの無料メールやプロバイダーが用意するメルアドを使って下さい)。

Q: 複数のPCのメルアドを使って登録しましたが、どのメルアドにも登録メールが届きません。
A: サーバーが不調で登録メールアドレスの送信が遅れる場合があります。しばらく待って(最長で1週間)、それでも届かなければ再度登録してみて下さい。

Q: 登録メールにあるURLをクリックしましたが「Invalid confirmation data」というエラーメッセージが表示され、アカウントを確定できません。
A: 確認メールの有効期限が切れている可能性が高いです。再登録して下さい。

Q: パスワードやIDを忘れてしまいました。
A: 新規に再登録して下さい。

とても嬉しい知らせが届いた。

竹田さんが修士論文で開発した自閉症児の保護者のためのペアレントトレーニングが国府養護学校で継続して実施されるという。

竹田さんは、大学院修了後、4月から別の養護学校に異動となった。開発者がいなくなってしまった学校で果たしてプログラムが継続されるかどうか、つまりプログラムが“維持”されるかどうかが焦点になっていたのだが、喜馬先生・森住先生をはじめとする小学部の先生たち、そして校長先生・教頭先生たちのご尽力で、継続実施が決定された。

ところで世の中では「アクションリサーチ」というのが流行のようである。

教育改善、学校改善のためには、机上の理論をいくらこねくりまわしても意味はなく、実践場面での応用研究が重要であることには疑問の余地がない。

なにしろ応用行動分析学はずっと最初からアクションリサーチだ。

でも、それだけでは教育・学校改善は進まない(進みにくい)。ほんとうに必要なのは「リサーチにもとづいたアクション」なのだから。

鍵は、先生たちが、何か特別な「研究枠」として活動するのでは、日常の指導にリサーチにもとづいた指導を取り入れていくことである。

竹田さんの修論では、ペアレントトレーニングの開発段階から校内スタッフによる実施まで、周到に計画された開発計画によってコトを進めたが、とりあえず1年後の維持は成功したことになる。

おめでとうございます。

これが今後も継続して実施され、ひいては日本全国の養護学校で、児童・生徒とその保護者に対する支援サービスとして普及し、定着していくことを期待しながら見守ります。

徳島で開催されるサマースクール「特別支援教育のための応用行動分析」の募集要項が徳島ABA研究会のHPに公開されました。

この研修会は、(1) ネットによる事前学習、(2) 夏休み中の短期集中研修(2日間)、(3) 9月から各学校で実施する事例研究、から構成されますが、(1)と(2)だけの参加も可能です。

毎年恒例で、わりと早い時期に満員御礼となっていますので、参加希望の方には早めの申込をお勧めします。

私もアドバイザーとして参加します。

引越しのときにアルバムを整理していてフト思った。

重い。かさばる。そんなに見ない(引越しのときだけ?)。

それならデジタル化しちゃおうと、写真をスキャンしてくれるサービスをネットで検索。

そしたらフィルムスキャンや写真スキャン、アルバムごとスキャンしてCDやDVDに焼いてくれるところがいくつか見つかった。

写真スキャンだと1枚80円から200円くらい。枚数を数えたら1500枚以上写真があったので、半分に絞ってもけっこうな金額になる。だから個人的にはとりあえず保留。

にもかかわらず、ほとんどのサイトで「現在、注文が多いので納期が守れないことがあります」との注意書きが。

つまりニーズがあるってことだ。

フィルムや写真のスキャンは手間はかかるが、課題自体はルーチン化・構造化しやすいはず。

作業所や職業訓練所、養護学校の職業訓練などで導入できるのではないだろうか?

人の力

先週の土曜日には鳴門教育大学特別講座『学校でここまでできる!一人ひとりの子どもを伸ばす特別支援教育』が開催されました。

前年度を大幅に超える170人の教員が参加し、千葉県発達障害者支援センターの土屋立先生のご講演をお聞きし、37件の事例研究についてポスター発表が行なわれました。

土屋立先生のお話で印象的だったのは千葉県全域(人口:600万人以上)の発達相談をわずか1.3人のスタッフ(土屋先生常勤1名+非常勤0.3人)で受付けているということです。年間のケース数は900以上に及ぶそうです。確かに自閉症だけも発生率からすれば県全体で1万人以上の方がいらっしゃるわけで、あたりまえといえばあたりまえなのですが、たいへんな仕事です。

県民のニーズに応えるために、千葉県では来年度から専任のスタッフを県予算で1名増員するそうです。これも全国では珍しいそうで(県から委託されている法人の持ち出し予算でまかなっているところが多いから)、福祉・教育サービスを充実させる行政として他県でもぜひ見習って欲しいと思いました。

もちろん、単に頭数を揃えたり、ハコモノ行政的に立派な建物だけに予算をかけても仕方がないわけで、仕事ができる人の確保が最重要事項でしょうね。土屋先生のお話では、たとえば自閉症スペクトラムの問題を社会全体の問題としてとらえるための枠組みをまず考え、それをもとにデータを集め、地域の福祉や教育のシステムとして、どこに改善の余地があるのかを見定めて行く、システム志向的な視点からの分析が欠かせないと思われます。そして、TEACCHの構造化なり応用行動分析といった個人への支援手法がそれに上乗せされて行くという構成です。

徳島県にも発達支援センターが設置されるようです。千葉県に負けない素晴らしいシステムになるといいですね。

行動療法学会行動療法コロキウムに招かれて、応用行動分析学におけるアセスメントについて話をしてきました。持ち時間が30分しかなかったんで、自閉症の早期発見・早期療育を例にして、スクリーニング、指導目標とする標的行動を選定するための網羅的スキルチェック、生態学的アセスメント、機能的アセスメント、指導の効果を評価し改善するための測定、指導が立案どおりに行われたかどうかのチェック(treatment integrity)、社会的妥当性、地域の療育システムのパフォーマンスアセスメントなどを、まくしたてました(早口でごめんなさい)。

フロアーから「ASSQ」についてご質問があったのですが、その場でお答えできなかったので、ここに関連する情報をアップしますね。

ASSQは「The high-functioning Autism Spectrum Screening Questionnaire」の略で、高機能自閉症・アスペルガー症候群の診断をするための27項目からなるチェックリストです。元論文はこれです。

Ehlers S, Gillberg C, Wing L. (1999) A screening questionnaire for Asperger syndrome and other high-functioning autism spectrum disorders in school age children. Journal of Autism and Developmental Disorders, 29(2), 129-141.

日本では若林明雄先生(千葉大学)や東條吉邦先生(国立特殊教育研究所)たちが、自閉症スペクトラム仮説に基づいて、自閉症得点(AQ)を求め、さらに“健常”と自閉症の境界線がどのあたりにあるかを調べる研究をされています。

ASSQは成人を対象としておらず自己回答式ではないということで、若林・東條先生はケンブリッジ大学のBaron-Cohen先生らが開発したテスト(成人版と児童用)を日本語化し、その性能を検証されています。

成人版については以下の論文に発表されています。

若林明雄・東條吉邦・Baron-Cohen・Simon (2004)自閉症スペクトラム指数(AQ)日本語版の標準化-高機能臨床群と健常成人による検討 心理学研究, 75(1) ,78-84.

私も自己回答してみましたがAQは15で思ったより低かったです(カットオフは33)。

児童用AQについては国立特殊教育研究所のHPに研究経過やチェックリストが公開されていますので、参考にして下さい。

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面白いサイトを発見。第一法規(株)の「3分でできる特別支援教育理解度チェック」。

10問のクイズ形式で解説あり。こんだけシンプルなら、ちょっと試しにやってみれる。

文科省も地方の教育委員会も、半数近くが居眠りを始める集合研修より、こんな形の学習支援に力をそそいでみたらどうだろ?

イノベーションの民主化」では、地域の行政が特別支援教育体制づくりを進めるときにエンドユーザーを巻き込むことを提案したが、もちろん、専門家がその役割と責任を果たすことも重要だ。

たとえば自閉症に関しては(他の様々な発達障害と同じように)早期発見と早期療育が生涯にわたって大きく影響することがわかっている。学齢期を終えた人たちが地域で自立して生活していけるように支援しようとしたら、学齢期を終えてからの支援以上に、まずは早期発見と早期療育が肝心になるのだ。

井上雅彦先生(兵庫教育大学)が紹介されているように、自閉症の早期発見のスクリーニングテストとしてはM-CHAT(Modified-Checklist for Autism in Toddlers)が有力な選択肢の一つとなっている。

英国で開発されたもの(CHAT)が米国で改善されて使われてるテストで、さらに改善され、翻訳されたものが中国でも検証されている(CHAT-23)。

M-CHATは23項目の簡単な質問に保護者などが「はい」か「いいえ」の二件法で回答する、とてもシンプルなテストで、最少18カ月から使える。感度(sensitivity:自閉症の受診者を自閉症であると判断する比率)と特異性(specificity:自閉症ではない受診者を自閉症ではないと診断する比率)は、判断に用いる項目の組み合わせにもよるが、それぞれ0.95以上という、とても高い値がでている。

日本では九州大学の神尾先生らが研究中ということだが、web検索しても日本語訳が見つからなかったので、ざっと試訳(私訳)してみた。

まずは、研究に裏打ちされたこのようなスクリーニングテストがあること、そして、たとえば保健所の一歳半検診などでこうしたテストを使うことで、より多くの子どもが早期発見できる可能性があることを、地域行政に携わる人たちに伝えて行くことが専門家の一つの役割であり、責任だと思う。

M-CHATの試訳はここからダウンロードできます。

もちろん、診断が下りるだけで「様子を見ましょう」と言われちゃ元も子もない。診断と療育サービスの提供はパッケージで考えるべきだ。これに関しての情報提供はまた後日。

エリック・フォン・ヒッペル教授(マサチューセッツ工科大学)は、先端ユーザーの力を使って進めるイノベーションを“イノベーションの民主化”と呼び、すでに成功を収めているリナックスなどのオープンソフトウエアプロジェクトやスケボー、ウィンドサーフィン、スノボー、そして人工心肺の開発など、先端ユーザーが新製品を開発している分野を例にあげて、技術革新の大幅なスピードアップとコストダウンのためにはこのような手法が有効であると提言している(日経新聞 2006.1.27)。

この“イノベーションの民主化”のアイディアはメーカーだけではなく、というよりむしろ、行政や公共機関の仕事にもっともっと導入されるべきではないだろうか--と、ある地方都市の特別支援教育に関する会議に参加していて感じた。

その会議には市役所の教育・福祉・保健、就労などさざまざま部署から関係者が集合していて、これからの特別支援体制について話し合う場になっている。こうした取り組みはこれまでまったくなされていなかったというから、大きな前進であり、評価すべきだろう。ところが残念なことに、活動計画などを読むと、どうしても役所の中のお仕事にまとまってしまっていて、利用者の視点が欠けているように思えた。

公共サービスの質の向上には、障害を持った本人や保護者、保育士や教員など、現場の人たち(まさしく“先端的ユーザー”)を、システムをつくっていく仕事に巻き込んでいくプロセスが欠かせないのではないだろうか。ヒッペル教授の考え方を流用するなら、ヒアリングやアンケートでニーズを聞くだけでなく、こうした当事者の人たちにシステムづくりに参加してもらうということになる。

応用行動分析学ではサービスに対する利用者の評価を社会的妥当性と呼び、サービスの有効性そのものと同様に重要視する。そして、社会的妥当性を高めるのに有効な方法は、サービスを開発する段階から利用者を取り込んでしまうこと(共同開発など)であることがわかっている。

行政の人たちにはぜひ一考していただきたい方法論である。

ある養護学校の先生から相談を受けて、発作を抑えるような介入プログラムがないかどうか調べたら、以下の論文が見つかりました。

Zlutnick, S., Mayville, W. J., & Moffat, S. (1975). Modification of seizure disorders: The interruption of behavioral chains. Journal of Applied Behavior Analysis, 8, 1-12.

行動療法では発作を引き起こす誘発刺激を除去したり、系統的脱感作法によって発作を減らすレスポンデント的な手続きも使われるそうですが、この論文では「発作」に至るまでの前発作的な行動に着目し、本格的な発作が起こるまでに連鎖を打ち切ることで頻度を減らすことができることが示されています。

“前発作的な行動”は対象者によって異なりますが、たとえば対象児の一人には、(1) 机の上や壁などの平面をボーッと見つめる、(2)体全体が緊張する、(3)大きな痙攣を起こして、(4) 倒れるといった決まったパターン、他の対象児には、(1) 活動レベルが落ちる、(2) 頭部と腕がけいれん、(3) ぼーっとする、(4) 嘔吐というパターンが見られることを、まずは事前の行動観察によって調べます。

そして介入では、最初の兆候が見られたらすぐに「だめ!」と一言だけ短く大きな声で言い、両手で対象者の肩をつかんで一度だけ大きく揺さぶります。

この方法で5人の対象者のうち4人で発作の減少が見られ、3人で前発作的な行動の頻度も低下したと報告されています。

もともとは18人の被験者がいて、そのうち発作の頻度を安定して測定できた5人のみが対象者となっていますから、もしかしたら“前発作的な行動”を安定して見つけることも難しいのかもしれません。

対象者は全員服用していますから薬物療法と行動修正の併用ですが、てんかんによる発作のような行動でも、環境の工夫でマネジメントが可能であることを示しているところが面白いです。

先日、国府養護学校小学部の事例研究会に参加した。3時間で12のケースについて話し合う超高速ミーティングだが、まずリーダーの森住先生から配布されたのは「専門性マトリックスチェックシート」だった。

国府養護学校では数年前から教員の専門性向上のために自ら作成した183の項目について一人ひとりの教員が自己評価するようになっている。個人の評価はその個人にしか見れないが、学部ごとの平均値や学校全体の平均値は全員が閲覧できるようになっている(詳しくは『特別支援教育を支える行動コンサルテーション』(学苑社 )をご参照下さい)。

この仕組みを導入した当初から、校内研修などを開催するときにはその研修で向上を狙う専門性を、183項目から該当する項目を示すことで提示しようということになっていたのだが、外部講師として参加する事例研究会でまさにこの実践を目撃したのは初めてだったので、なにやら感慨深いものがあった。

今回の事例研究会で対象となったのは、「個別の指導計画の目標にそった具体的な学習記録を必要に応じてつけることができる」「ABC分析を活用して指導方法を考えることができる」「課題分析などを活用して指導方法を考えることができる」「適切な(難しすぎない)指導の手だてができたかの評価ができる」の4項目。

各事例に関する助言をしながら、同時に、この4つの専門性に関する先生方の成長を承認し、さらに今後のさらなる専門性向上についてアドバイスするのにとても役立った。

外部から講師をお招きするときには気が引けがちになるかもしれないが、研修の目的を具体的に教えてもらえれば、少なくとも自分なら仕事が圧倒的にしやすくなる。

他の学校でもぜひ取り入れていただきたい方法だ。

来る3月4日(土)13:30-17:00、鳴門教育大学附属養護学校体育館にて「学校でここまでできる! 一人ひとりの子どもを伸ばす特別支援教育」という特別講座を開催します。

講演では千葉県自閉症・発達障害支援センターの土屋立先生に「小中学校に在籍する高機能自閉症児やアスペルガー症候群の児童・生徒にできる支援」というタイトルで、高機能自閉症やアスペルガー症候群を持った児童・生徒の支援を中心に、スケジュールや教室内環境の整備、セルフコントロールのためのトークン、コミック会話やソーシャルストーリーなど、学校で取り組める様々な方法論を、事例を中心に紹介していただきます。

今年度、県内の各学校で行われた事例研究のポスター発表も行なわれますので、特別支援教育に携わる先生方の情報交換の場として、ぜひふるってご参加下さい。

詳しくはこちらのページで案内をご覧下さい。

先日、附属養護学校の野崎先生から質問されたこと

附属で使っている「指導計画立案シート」では、指導目標を考えるときには、まず、その子どもさんの生活のどの部分に般化させたいかを考えることになっている。

「はじめに般化ありき」の考え方だ。

このシートを使い始めて今年で3年になるのだが、先生方がわいわいやるなかで、こんな疑問がわいてきたという。

・体育の時間にグランドを5周走ることを教えるのに手順書とトークンを組み合わせた指導法を使った。
・これがうまくいったので、そのお子さんの他の授業や生活場面でも同じような手順書とトークンを試してみたところ、うまく使えた。

そもそもの指導目標は「グランドを5周走る」だったが、他の場面(たとえば、作業の時間)でも手順書を見て、それに従って組み立てをして、トークンで強化されるという一連のパターンが、練習や指導なしにできたのは、はたして「般化」と言っていいのだろうか? なんか違うぞ.... ということだった。

その通り!と思わず叫びそうになりました。

体育の時間に野崎先生が使った手順書とトークン。それを同じ体育の時間に同じグランド5周するのに猪子先生がやってもできたなら、いわゆる「人の般化」(刺激般化)になる。

この場合、手順書を見て、そこに書かれた指示にしたがってすべきことをして、トークンを受け取るという行動パターンを学んだわけで、確かに刺激般化ではありません。むしろ、そういう高次オペラントを学習した、ということになる。

「般化模倣と同じですね」と言ったら、「やっぱり、そうですか」と返ってきた。頼もしい限りである。

附属では自閉症児の指導をテーマにした指定研究をしたときに、自閉症児に教えるべきこうした高次オペラントを列挙し、それをカリキュラムに組み込むことを目指した(これは『自閉症の特性に応じた自立活動の内容表』という支援ツールとして使われている)。

「手順書にしたがって作業をする」とか「スケジュールを見て移動する」とか、「カードを使って選択要求する」など、いわゆる「要の行動」(pivotal behaviors)を授業や生活指導の中でどんどん教えちゃいましょうという発想だ。

自閉症児に限らず、発達障害を持った人全般、場合にはよっては健常の成人にも“要”の行動が多く、指導目標として明確化することで、複数の場面で共通の高次オペラントを、子どもにわかりやすく、効率良く教えていくことができるだろう。

順調です。

鳴門教育大学・附属養護学校の研究発表会は2/3(金)。楽しみです。

研究発表会のご案内(PDF)。

M2の竹田さんと大西さんが〆切を守って修論を無事に提出しました。おつかれさまでした。

竹田さんの修論は主に自閉症児の保護者を対象にしたペアレントトレーニングの開発。知的障害養護学校で教員主体で開催するところまで持っていったところがミソ。学校と家庭で協力して子どもの療育を進める手段の一つとして、ぜひ全県展開して欲しいです。

大西さんの修論は小学校の特別支援教育で交流学級の友達と遊ぶためのソーシャルスキルをボードゲームを使って教えるプログラムの開発。SSTもボードゲームも流行のようだけど、その結果、ほんとうに交流が増えたかどうかまで示している研究や実践は意外に少なかったりする。大西さんの研究でもスキルを教えるだけでは不十分であることがわかった。通常学級で障害を持った子どもさんが学び、遊び、楽しめるためにはどのような環境設定が必要なのか? これからの特別支援教育のあり方にも関連するデータが取れましたね。

あとは修論発表会を残すばかりですが、それぞれ目標達成をして、悔いのない2年間で修了できるように、残り2ヶ月を有意義に過ごして下さいね。

学校の力量

鳴門教育大学附属養護学校の研究発表会が2/3(金)に開催される。

附属養護とは5年近くにわたってコラボレーションをしてきた。だが、今年度はほとんどノータッチ。特に事例研究については各学部でリーダーの先生たちが中心になって、学校内で自立型マネジメントを展開してきた。私からみると、これまで積み重ねてきたことがどのくらい維持され、さらに発展できるかが興味の焦点になっていた。

送られてきた紀要の原稿をドキドキしながら読んだ。

事例研究は量・質ともに充実。なにをさておき、すべての事例研究で記録が取られ、グラフが作成され、指導の効果ができるだけ客観的に評価されている。指導目標の設定や指導方法の立案時点で般化を促進することも検討されている。素晴らしい。

研究発表会のためだけの研究授業ではなく、子どもたちの日々の学校生活で、いかに授業や指導を改善し、学習を進められるかという、最も大事な視点も維持されている。

猪子先生によれば、やはり指導計画立案シートというモノをつくってしまって学校全体で使うようにしたことや、指定研究の期間だけではなく、継続して使っていける仕組みを作ったことが大きいのでは?とのこと。

また野崎先生からは「般化」に関する興味深い質問もいただき、先生たちがとれもハイレベルな話し合いを展開していることをうかがわせた(後日紹介します)。

もちろん個々の教員の力量をアップする研修システムなども重要なんだけど、附属養護の展開を見ていると、そこからさらに「学校の力量」をアップするために必要な条件が見えてくる。

今後も楽しみです。

子どもの頃、こんな遊びしませんでした?

「ひざって10回言ってみ」
「ひざ、ひざ、ひざ、ひざ....」
「(肘をさしながら)ここは?」
「ひざ」  {゜゜}"

先週の徳島ABA研究会では行動的慣性(behavioral momentum)を活用した指導法について情報提供しました。

物理学における慣性の法則と同じような法則が行動についても成り立ちそうだというのが行動的慣性です。

学校教育では子どもが先生の指示にスムーズに従うことが授業や指導の成立条件になっています。

うまくいっていない授業を観察すると、必ずといっていいほど、子どもが先生の指示に従っておらず、それにもかかわらず先生は同じような指示を繰り返しています。

行動的慣性の法則を適用すると、子どもにとって従いやすい指示をぽんぽんぽんと出しておき、その慣性で、その後に出す従いにくい指示でも従えるようになるという指導法が生まれます。

研究会では就学前の高機能自閉症児への対面指導場面と、通常学級での全体指導場面で行われた2つの研究を紹介しました。資料は徳島ABA研究会のHPにアップしてありますので、興味のある方はご覧下さい。

このシリーズ(No.1 No.2 No.3 No.4)の最終回はたぶん一番難しいテーマ。教えるのも難しいし、教えられたかどうかを確認するのも難しい「〜を楽しむ」という指導目標の話。個別の指導計画の話からはかなり逸脱します。

「〜を楽しむ」という指導目標を考える場合、まず大切なのは、「子どもが楽しんだかどうか」ということと「子どもに楽しむ行動を教えられたかどうか」とを区別すること。

授業中の子どもの表情とか態度を主観的に評価したり(「子どもの目が輝いていました!」)とか、授業後のアンケートなどで子どもに楽しめたかどうか感想を聞いたりするのは、前者についてのかなり大ざっぱなアセスメントである。

これに対して、授業後に子どもの趣味が広がったかどうか(休み時間に授業で取り上げたことについての本を読むようになったとか、休日に親に美術館に連れて行ってもらうように頼むようになったとか)など、子どもが楽しむ行動を獲得していれば現れそうな副次的な行動を測定して評価するなら、後者の達成にも関連した、もう少し有意味な評価になる。

でも、どちらも「楽しむ」という行動を直接的に測定し、評価しているわけではない。

徳島ABA研究会に関西学院大学から道城裕貴さんがゲストスピーカーとして登場。

神戸市が取り組んでいる、地域の大学と小学校の連携による通常学級への特別支援事業についてお話ししていただいた。

詳しくは徳島ABA研究会のHPに資料がアップされると思うのでそちらをご覧頂きたいが、現在、神戸市内の253の小学校のうち、56校が参加し、各学校に近隣の大学から学生・院生が3人、週1〜2日、大学の教員の指導のもと、現場のニーズにあった支援を研究をしながら行なうというモデルは魅力的だ。

うまくいっているところもあれば、そうでもないところもあるという話だったが、事例を積み上げて、うまく連携するための条件が明らかにされていけば、他の自治体で同じような取り組みをするときにとても役に立つ情報になるだろう。

ちなみに道城さんは関西学院大学大学院博士課程在籍(D3)。松見淳子先生の元で、行動分析学・臨床心理学を学んでいる。来年には博士論文を提出して修了予定とのこと。研究者志望ということだが、こういう貴重なトレーニングを積んだ若きPh.D.たちが活躍できる機会が増えるといいと思う。

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懇親会の写真です。そーいや人間ポンプの親分として一芸披露してもらうのを忘れてました。
また次の機会に (^^) 。

各学校でコラボレーションプロジェクトの事例研究がスタートしている。今年は10の学校で60事例が展開中。進め方は各学校それぞれだが、教育支援アドバイザー派遣制度を活用し、午前中は授業観察を行ない、午後に事例検討会をするというパターンが定着化しつつある。

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事例検討会では対象児の実態、指導目標の妥当性、記録の取り方、指導の手だてなどを話し合い、その後は掲示板やデータベースを使ってネットを使った遠隔支援をしていく。

授業観察というのは時間も拘束されるし、私にとっては疲れる仕事なのだが、事例の他にもいろいろ面白いことを発見できるので、けっこう楽しんでいる。

ピーコの辛口ファッションチェック並みに、教材や指導方法や授業展開にツッコミを入れるので、観察される先生たちにとってはハラハラもんだろうが、私にとってもいい勉強になるので、実はたいへん感謝しているのだ。

ただ、その場その場でコメントするだけで終わってしまうので、後に何も残らない。もったいないので、できるだけブログに書き留めておくことにする。

今回は養護学校などで「自立課題」としてよく使われている「1対1対応」課題。下のような教材で、アイテムを一つずつ置いて行く作業だ(写真は国府養護学校の教材データベースから借用したもので授業観察したものとは違います)。

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これができるようになれば、たとえば、給食の準備をするときに、お盆に一つずつ牛乳パックを置いて行くといったお手伝いができるようになる...という目論見だそうだが、そうそううまくいかないこともある。

自立課題で「1対1対応」ができているのに、お盆に一つずつ牛乳パックを置けない(数個をいっぺんに一つのお盆に置いてしまう)児童の学習場面を観察した。

そこで発見したこと。

コラボをしている国府養護学校ではすでに個別の指導計画に通知表の機能を持たせることにしたそうだ。附属養護でも検討中らしい。

これらの養護学校では、学期初めに個別の指導計画を作成するのに多大な時間と労力をかけている。児童・生徒の実態把握、保護者とのミーティングの積み重ね、学年や学部での話し合い... だから、学期毎に評価し、保護者とコミュニケーションする手段としては、従来の通知表よりむしろ適切だと思う。

ただ気をつけなくてはならないこともある。個別の指導計画には、あくまで重点的な指導目標のみが掲載される。学校で行われるすべての指導について記載されるわけではないから、この点について保護者との同意が必要だろう。

指導目標をできるだけ具体化し、達成の程度を客観的に評価することはもちろん重要なのだが、そうすることで指導の効果《だけ》が評価されるようになってもいけない。

子どもが授業や授業以外の学校生活をどのくらい楽しめたか、また、保護者が指導方法や活動をどのくらい適切だと感じたかも重要な評価の観点だからだ。

「さとるちゃん、これってさとるちゃんが仕事でやってるやつじゃない?」

アメリカ人の彼氏と結婚し、徳島からワシントンへ移住したみつけちゃんからメールが届いた。

みつけちゃんは徳島ではHDAアプローチセンターという、構造化の手法を使った自閉症児の療育センターで働いていたこともあり、今では向こうで小学校の先生をしている。

夏休みにABAの教員研修があったらしく、その資料を送ってくれた。

“Applied Behavior Analysis for Students with Autism” というタイトルの研修会で、彼女が勤務しているバージニア州フェアファックス学区の小学校の先生たちを対象にした研修らしい。

内容はまさにABA(あたりまえだけど)。自閉症の子どもたちに言語行動を教えることが核になっている。言語行動といっても、手話やカードによるコミュニケーションも含めた、マンド、タクト、イントラバーバルなどの機能的なコミュニケーションをどうやって教えていくかという実践的な内容だ。

興味深かったので、誰がこの研修を実施しているのかを調べてみた。

すると、この研修はこの学区の教育委員会、日本でいえば県教委や教育センターにある特別支援課みたいな部署が提供していることがわかった!

このシリーズ(?)のテーマからは横道にそれるが、前回の徳島ABA研究会で、国府養護学校の名山先生から面白い発表があったので紹介しておこう。

発表内容は個別の指導計画を作成するための校内研修(新転入者研修)について。面白かったのは、今年度から始めたという小学部の“品質保証”システム(“”内の表現は私の感想)。

それは「個別の指導計画セルフチェックシート」という15項目からなるチェックリストをもとに、指導主事の先生がすべての個別の指導計画を読んで、評価し、先生方にフィードバックするというものだ。

好きな遊びや活動が少ない、重度の障害を持つ子どもの興味を拡げるための臨床的なハウツーとして、井上雅彦先生が「訪問セールスマンの原則」を紹介している。

発達障害をのある子どもの余暇の拡大1.市場調査から顧客のニーズを読む(好みのアセスメントをする)
2.客とコミュニケーションをとる
3.ご用聞きをする(こどもの要求を充足する)
4.まずは商品を見てもらう(遊びを提示して見てもらう)
5.いきなり売らない(遊びを強制しない)
6.商品説明を十分に(遊びのモデルを十分に見せる)
7.売り込むタイミングをはかる(遊びに誘いかけるタイミングを考慮)
8.使い方の説明はお客さんが理解できるように(遂行できるようにプロンプト)
9.売った後のアフターサービスを十分にする(維持)

言い得て妙である。

学校でも、子どもの興味を引き出し、面白さや楽しさを教えるのが上手な先生の授業や指導は、おそらくこんな感じになっているのだろう。

ただ、これを個別の指導計画に書くとなると、けっこう難しい。

たとえば「休み時間、プレイエリアで遊ぶときに要求する遊びの種類が、5種類以上になる」と、書けないこともない。

音楽の時間にいろいろな楽器の演奏を教えることで「自由時間に自発的に音楽室に行って楽器の練習をするようになる」と、書けなくもない。

だけど、何かがおかしい。

附属養護学校の中学部では、今年度、学部全体で個別の指導計画のレベルアップに取り組んでいる。

サマースクールで教材に使っている「個別の指導計画チェックリスト」を駆使して、指導目標をできるだけ具体的に書き、指導の手だてが有効だったかどうかを客観的に評価できるように、先生方がお互いにチェックし、フィードバックし合うという、画期的な取り組みだ。

これまでも管理職の先生方によるチェックはあったようだが、教員同士が、内容にも踏み込んで(誤字脱字とかではなく)、共通理解したガイドラインにそって話し合いによって改善しているところが新しい。

その過程でいくつかの課題も見つかってきた。

何を教えるかを具体的にするために、上記のチェックリストでは指導目標を「〜ができるようになる」と行動レベルで記述するように推奨している。

日常生活の指導や読み書き算術など知識や技能を教える目標に関しては、比較的このように書きやすいようだが、芸術系科目や体育においては、従来の「〜を楽しむ」とか「〜を味わう」のような、感情や情操に関わるところがどうしても客観的に書き下せないというのだ。

確かに「いろいろな色を使って自分の気持ちを表現することを楽しむ」のような目標を「色の名前をいえる」とか「複数の色を使って絵を描ける」とか、単純にスキルレベルに書き下してしまうと、味気ないし、本来、教えたいことが見逃されているような気にもなるだろう。

そこで、N崎先生・H岡先生にお願いし、このことについてじっくり話し合った(あまり伏せ字にしてる意味がないですが... ^^;;)。

DNAには大量の遺伝子情報が含まれているが、これまでその大半は無意味であると思われていた。それが、実はその7割ほどに有用な情報があることが判ったらしい(NIKKEI NET)。多比良和誠教授(東京大学)によれば「これで教科書が変わる」ということである。

教師の力量を向上するために専門性大学院の設立教員免許の更新制度の導入が検討されているが、こうした仕組みがいくら変わっても、教師に何を教えるかが見直されなければ、力量は向上しないと思う。

発達、学習、指導・支援法など、教育の根底にある「学習の科学」も生物学ほどのスピードではないにしろ進展している。

専門性大学院にしろ、免許の更新制にしろ、何十年も前の教科書を使った研修や授業をするようなことがないようにして欲しいものだ。

サマースクール中級コースも終わり、新学期の忙しさの中、各学校で事例研究への取り組みが始まっている。

今年のテーマは2つ。

・指導の手だてを考えるとき、先生たちが過去の事例や研究を自分で調べて参考にできるように支援すること。

・各学校のチームによる話し合いが円滑に進むように支援すること。

両方ともマニュアルというかガイドラインみたいなものを作る予定だ。

その準備をしていて気づいたこと。

たとえば、国立情報学研究所のGeniiというポータルでは、国内の研究データベースを一括して検索できる。

見つかった文献は、掲載雑誌によっては実物をダウンロードできる。これなら、図書館や大学に出かけて文献コピーを依頼して、数週間後にようやくコピーが届くといった手間がかからなくてすむ。

ところが、この料金が意外に高い。

日本行動分析学会の年次大会で井上先生・奥田先生と一緒にやったシンポジウムの論文集の原稿(たかだか1ページの要約)は535円もする。

現在、国府養護学校池田分校に勤務する佐藤先生の修士論文の一部が行動分析学研究に掲載されているが、これは 651円。ページ単価にしたら上の原稿よりは安いが、果たしてこれだけの金額を払う人がどれだけいるだろうか?

井上先生(兵庫教育大学)が養護学校免許の認定講習について書いている。

養護学校免許の認定講習、真夏のたたかい170人近い先生たちが受講されているが、1年では単位をすべて集めることは難しい。下手をすると免許を取得した時には再び通常学級へ移ってましたなんてこともあるらしい。それこそe-learingを使って、いつでもどこでも受講できる環境にするべきだ。なんでやらないんだろう?

徳島でサマースクールをやりながらわかってきたことは....

・事前の学習課題を具体的に明示すれば多くの先生方はやってくる。

・事前課題をすませた先生方への演習中心の研修はとても有効である。丸2日間、誰も寝ないし(寝れないし)、2日も費やしただけの元をとって帰ってもらえる。

・事前課題はweb中心にすると学習支援がやりやすい。
(「教科書を読んでおいて下さい」とお願いするだけだと読んでこない人もでてくるが、教科書を読まないとできないネットでの自習課題と組み合わせると、ネットでの自習課題は完了したかどうかがはっきりわかるだけに、遂行率が上がる)

・ただし、そのぶん、パソコンやネットが苦手な人にとっては負担が増える。

・養護学校ではすでに何人もの先生がサマースクールに参加しているので、同僚からの支援が受けやすいが、小学校などから一人で参加している先生にはそういうサポートがつきにくい。今年は小学校の先生方数名が事前学習の段階でドロップアウトした(ただし、理由は各自それぞれで必ずしも全員がパソコンが苦手だからというわけではなかったようだ)。

背景にある事情をインフォーマルに(飲み会などで)聞き取りしてみると、以下のような要因も浮かび上がってくる。

sschool-m-05

今日から2日間、サマースクール中級コースを開催中。

今年のテーマは3つ。

1.研究と実践のギャップを埋める見本市

 ヒューワード先生も指摘する“practice gap”を埋めるため、効果が実証されている指導法を“見本市”のように展示する。もちろん各ユニット演習付き。9月からの事例研究で先生方が使ってみたいと思うようなプレゼンを目指す。

2.小中学校と養護学校のコラボレーション

 養護学校のセンター化を、通常学級に在籍する軽度発達障害児への支援につなげるために、小中学校の先生方と養護学校の先生方が協働で事例研究に取り組むことを重点的に支援する。現時点で4〜5事例が計画中。

3.先生たちが自立して研修を行なえるようなトランジッション

 徳島ABA研究会のメンバーの先生たちがインストラクターとなり、自主的にサマースクールを運営できるように移行する。
 私が担当する(した)ユニットの数は、昨年度、初級コースが13/13(100%)、中級コースが14/14(100%)に対して、今年はそれぞれ、3/13(23%)、3/12(25%)と、フェイドアウト進行中。

 初日を終えた感じでは、参加者もスタッフも100%力を発揮して、いい感じ。

 明日もこのまま頑張りましょう!

今日からサマースクール初級コース2005が開講!

今年は

・大学の公開講座として開講していて、

徳島ABA研究会の先生方が講師として参加していること

が新しい試み。

とりあえず初日は無事に終了。皆さま、おつかれさまです。

明日、台風に影響されず、楽しく有意義に修了できますよ〜に。

うちでは院生さんのダイエットにと、ゼミ室にプレステ2を設置しましたが、利用は維持しなかったです。

ブレステダイエット@応用行動分析学&特別支援教育探求道うちの研究室でも数年前に行ったDDR(ダンスダンスレボリューション)ダイエット、確か途中までデータとってたよなぁ。ダンレボは結構運動になるし楽しい、運動会のお遊戯よりも、朝の会の体操よりもいいのでは?と思っている。日本の養護学校や障害児学級でも是非実施して欲しい。

秋のプロジェクトで附属に持っていってみる?

好きなものさがし@徒然なる随伴性日記大学院を卒業する頃までには、子ども達の好きなものさがしが上手になりたいなっと思います。(田中清章)

発達障害を持った子どもたち、特に自閉症児には、興味の幅がとても狭い子どもが多い。遊びや趣味の種類が少なく、これが背景となって、問題行動を引き起こし、学習してしまうこともある。

文献を調べてみると、好子を見つける手法については、実は、90年代後半から2000年代前半にかけて、ちょっとした流行になっていたようだ。

これは、子どもが自分で「好き」とか「欲しい」と言ってくる物や遊びが必ずしも好子にならないこと。同様に、保護者や教師など、子どもの身の回りにいて、その子をよく知っている人でも、何が好子として働くか予測するのは意外に難しいことから、指導に使える好子を客観的に見つけ出す手法の開発が要望されていたからだ。

終わりの概念

附属養護学校の猪子先生の話は面白い。こちらの思考が触発されるネタを、いつもたくさん提供してくれる(ちなみにプライベートでは阿波踊りの師匠です)。

前回の徳島ABA研究会でTEACCH 2DAYSについて報告していただいたときも、そんな感じだった。一つひとつ突っ込んで、いじっていったら、1学期ぶんの授業になるだろうと思うくらい、ネタが満載状態で、うちの大学から参加している院生さんは、ほんとうにラッキーだ。

今日はそのうちの一つを取り上げて、いじってみよう。

自閉症児は、好きな遊びをやめて次の活動に移るのが苦手な子どもが多い。それゆえ、TEACCHでは「終わりの概念」を教えることが重要であるとされる。

おもちゃは遊んだら目の前から消えるようにしておくといいし(ビー玉を箱の中に落としていって、なくなったら“おわり”など)、タイムログやキッチンタイマーを使って“おわり”の合図を統一すると、終わりを教えやすくなる。

確かにそういう子どもは多いから、こういう話を聞くと、先生方や親御さんは「そうそう」と納得されるだろう。

国際行動分析学会で仕入れてきた、応用行動分析でインクルージョンを支援するモデル(ABAレポート#1を参照)の話を、徳島ABA研究会で報告した(資料は同研究会HPのダウンロードのコーナーにあります)。

・加配を“子守り”ではなく、通常学級などにおける自立支援に積極的に使う。
・そのための指導・支援プログラムを系統的に組み立てる(最終的にはフェイドアウトするのが前提の移行的支援)

という点に賛同する先生が多かったが、人的配置・人数の厳しい日本では実現が難しいのでは?という声も聞かれた。

ひとつ一つの小中学校の中だけでみたら、確かにそうかもしれない。

地域の養護学校や教育センター、大学の教育相談機関など、複数の学校や機関にまたがった連携が、まずは必要なのかも。

さて、支援付きインクルージョン(Supported Inclusion)と呼ばれるこのモデルについては、『Behavioral Intervention for Young Children With Autism: A Manual for Parents and Professionals』(Maurice, C., Gina G., & Luce, S. C., 1996: Pro-Ed)という本の中に詳しく解説されている。

そして、実はこの章の日本語訳が、とあるサイトから入手可能だ。

版権とかがどうなっているかわからないので、早い者勝ちかも。

興味がある人はここからダウンロードして下さいね。

これはいいものができました。

コレール社のwebマガジンですが、兵教の井上先生、筑波大の園山先生、野呂先生ら行動分析家が、毎月記事を書くそうです。

第1号の目次は以下の通り。

1.思々彩々
2.特別支援教育ニュース
3.研究トレンド
4.教材・教具を考える
5.支援のヒント箱—実践
6.燎原の火の如く

面白そうでしょ。

興味のある方はこちらから。

日本ではよく指摘されている自閉症児の知覚・感覚過敏性。ところが Journal of Applied Behavior Analysis を検索しても、この問題を直接に扱った研究は見当たらない。

摂食障害を治療する方法の研究はかなりあるのだが、多くは、栄養チューブを使っている重症の幼児(発達障害があるなしに関わらず)を対象とした研究だ。

今回は大山さんの修論のネタ探しということもあって、このへんの発表を探してみたら、3つの面白い発表が見つかった。

1つは摂食障害がある自閉症児に刺激フェイディングを使って、食べられる(飲める)ものを増やした研究。

もう1つは学校の騒がしい教室では落ち着いて課題に取り組めない自閉症児に、家庭の静かな環境で課題に取り組ませることから初めて、徐々に人工的な雑音、騒音を入れていき、最終的に学校の騒がしい環境でも課題に取り組めるように指導した研究。

もう一つは、掃除機の音に過敏に反応して耳ふさぎをしパニックになる自閉症児に、系統的脱感作法的な手法を適用し、目の前で掃除機をかけても問題がないように指導した研究。

3つめの研究の発表者は、hyperacusis(聴覚過敏)的な兆候は確かに自閉症児に多く見られるが、本当の聴覚過敏なのかどうか(聴覚刺激がそのまま痛刺激となるかどうか)は不明であると言っていた。

確かにもしそうなら、系統的脱感作法的な手法で、耳ふさぎもパニックも消失したということの説明がつかない(少なくともこの事例では)。

いずれにしても、この問題に関しても応用行動分析学からアプローチできそうな感触を得られたので○。

国際行動分析学会(ABA)の初日はワークショップから。

今回は 「Strategies for Successful Inclusion Programming in a Public School Setting」に参加した。

マサチューセッツ州の公立学校 Marlborough Public Schools のスタッフが、応用行動分析でインテグレーションを成功させるモデルを解説するワークショップだ。

ちなみにABAでは、大会前日と初日の午前中にかけて、さまざまなテーマのワークショップが開かれる。今年は80のワークショップが開催された。

ワークショップは認定行動分析士(BACB)の資格維持のための単位としてカウントされるので、教師やセラピスト、各地の療育センターで働くスタッフのための研修の場となっている。また、学生・大学院生にとっては、自分の大学では開講されていない内容を短時間でまとめて勉強できるというメリットがある。

今回のワークショップで学んだこと

・アメリカはメインストリーミング/インテグレーションが進んでいて、いわゆる「特別支援学級」みたいのがなくなっているのかと思っていたら、そんなことはなく、self-contained class という形式が残っている。

・特別な支援が必要な児童・生徒が、通常学級(交流学級)で授業を受けるときには、補助(educational assistant)がつく。ただし、残念ながらほとんどの場合、補助の先生には特別支援の専門性がなく、児童・生徒がそこで静かにしているようにするのがせいいっぱいのことも多い(日本と同じような状況)。

・Marlborough Public Schools では、この補助の先生たちの代わりに「ABA(応用行動分析)セラピスト」を雇う。補助の先生の時給より若干高めの給料を用意している($15-$17)。

・この学校にはABAの専門家が何人か配属されていて、「ABAセラピスト」のための研修を行なっている。

・インテグレーションの目標は、対象となる児童・生徒が、他の子どもと同じような活動を自立的にできることである。だから、健常学級で他の子どもが先生のレクチャーを聴いているときに、その子どもだけドリルをやらせるようなことはしない(これは発想の転換だなぁと思った)。

・健常学級で他の子どもと同じように動けるためにはどんなことを学習し、どんな支援が必要なのかを課題分析して、それを特別支援学級で練習する。そして、健常学級では、最初はABAセラピストがプロンプトやガイダンスなどの支援を行なうが、徐々にフェイドアウトしていくプログラムを組む。

・このプロセスを円滑に進めるために、各児童・生徒が、どの授業のどんな活動に参加するためには、何ができていなくてはならないか、といった客観的で詳細な評価基準をつくっている。

・この学校における取組みは、学校の中でABAを勉強した熱心な先生たちと保護者による後押しによって進められ、その成果が、州や教育委員会の特別支援教育に理解のあるスタッフに認められることで、特別な予算が組まれて運営されるようになった。

 最も印象に残ったのは、特別支援を「baby-sitting(子守り)」ではなく、子どもたちの「自立」を目指した支援と捉えて、指導計画を作り、実行しているところ。

 子どもたちが自立して生活できるようになればなるほど、その後の生活でQOLも高まるし、州にとっては福祉の経費の低減につながる。それをデータで示しているからこそ、比較すると短期的にはコストが高くなるABAセラピストも雇える。

 日本で同じような支援をするには何が必要なのか、次回の徳島ABA研究会で先生方に問うてみよう。

特殊学校免許 50年ぶりに改革ところで免許の科目っていうのは大学で履修するんだろうけど、現場での指導に役立つスキルとはかけ離れたものも多いのが実際である。現場とはほど遠いことを研究していたり、現場指導ができない大学教員が多いからだが、現職でばりばりやれてる教師を大学教員として積極的に登用することも必要だ。つまり大学の人事システムにも改革の必要性があるわけ(応用行動分析学&特別支援教育探求道)。

全く同感。

熱心な教員は、自ら大枚はたいて高額な外部研修に参加している。公的機関にだって現場のニーズにマッチした研修が提供できないはずはないのに....

免許を出すのが大学だけっていう仕組にも問題があると思う。この業界、競争があるようで、まったくないから。

たとえば県の教育センターとか民間の研修会社でも、ある一定の要件を満たす教育研修プログラムを提供すれば、免許を出せるようにしたらどうだろう? 大学自体も許可制から認可制(アクレデーション)へ移行していくようだから、いずれそうなるのかな。

そのときにはいよいよどんな教育サービスを提供できるかという内容で勝負することになるよね。

「応用行動分析は“療法”ではありません」−授業や研修で、口が酸っぱくなるほど繰り返し言っていることの一つだ。

教師や保護者にしてみれば、すぐに使える指導方法とか○○療法に関心があるわけで、「応用行動分析は科学なんですよ」なんて言っても、正直なかなかピンとこないというのも理解できる。

そんなとき、逆に、○○療法を行動分析学から解釈して、おまけに改善策も提案しちゃうと、「あ〜、なるほど」と納得してもらえることもある。

先日、ちょうどゼミで感覚統合のことが話題になった。

遊具を使った遊びをABC分析すれば、セラピストがやっていることには、

(1)いろいろな遊具を試すことで、対象児にとって好子となる感覚を引き起こす遊具や、刺激の与え方などを見つけ出す。
(2)まずは、それを提供して、プレイルームやセラピストを習得性好子化する。
(3)対象児からセラピストへの働きかけ、たとえば、木馬をゆすって欲しいという要求をマンドとしてシェイピングしていく。

といった要素が含まれていることがわかるはず、というような雑談をしていた。

こうやって分析してみると、各ステップで優秀なセラピストがしていることが想定できる。たとえば(1)では、できるだけ多様な刺激を用意し、系統的に試し、その時々の対象児の反応を周到に観察するスキルが、対象児にフィットした好子を見つけ出すのに重要であることが想定できる、などなど。

兵教の井上先生も音楽療法について同じような分析をしている。

「音楽療法」を行動分析する子どもが先生にピアノを引いてほしくて先生の手に自分の手をそえる。ポロンポーン♪先生がおもちゃのチャチャチャをちょっとだけ引く。すると子どもはちょっと先生の手を押す。すると先生は続きを引く。

この場合行動分析学的(マロット流)では

   先行条件     行動      結果条件
    曲なし → 先生の手を押す →  曲あり

となる。

既存の、さまざまな○○療法をむやみに否定せずに、それぞれの療法に含まれている行動随伴性を解釈し、整理して、「こうやって分析すると、こんなことも考えられますよ」といった提案をしていくと、行動分析学を正確に理解し、有効活用してもらうのに役立つかもしれない。

自閉症など発達障害児を持った子どもたちは「はまる」遊びがみつかると実力を発揮する。それまでやめさせたくてもやめさせられなかった問題行動も忘れて、気に入った遊びに没頭したりする。

だから、問題行動の機能的分析をしてみて、自己刺激系の強化が多いとわかったら、その問題行動への介入以外に、遊びのレパートリーの拡大を狙った指導プログラムを奨めることが多い。

そのとき成功の鍵となるのが、いかにその子の興味にマッチした新しい遊びを考え出せるか。

だけど、これがなかなか難しく、結局は物量作戦(とにかくいろいろ試してみる)になってしまいがちだ。

井上先生

最近自閉症のある子どもたちと私たちで取り組んでいる余暇スキルの一つが“デジカメ・スキル”。コツとしては好きな被写体を選ぶこと。動物の好きな子は動物、虫好きの子は虫、ナンバープレート好きな子はナンバープレートなどなど、モノであればなんでもいい。実際に一緒にやってみると結構楽しい。

こういう発想が貴重。今年、どこかの事例研究で提案してみることにしよう。

世の中にあるすべての「遊び」から、たとえば「触覚、ざらざら」などのキーワードであてはまる遊びが検索できるデータベースがあったらこんなとき便利なのにと思う。遊びって、自分が好きだったり、得意な遊び以外はなかなか思いつかないものだから。

日本自閉症協会の調査によれば

YOMIURI ON-LINE自閉症の原因について正しく理解していたのは全体の6割に過ぎず、心の病(23%)、遺伝(5%)、親の育て方(3%)と、誤った認識の人が全体の3割を占めた。特に、誤った認識の人は20歳代までの若年層に多く、60歳代以上の世代では、乳幼児期の不適切な教育が原因と考えている人が多かった。

このような全国的調査が実施されたのは初めてということなので、比較できる過去のデータはない。でも、おそらく10年前に同じような調査が行われていたら、自閉症の名前を知らない人ももっと多く(今回の調査ではほぼ95%以上が知っていた)、原因を誤解している人がもっと多かったのではないだろうか。

正確な情報を広めることに尽力してこられた人たちの努力の成果だと思う(ニュース記事からは「まだまだ」という認識も読み取れるが)。

「心の病」という誤解は、おそらく、ひきこもったり、対人関係が苦手だったりする人を、精神医学用語としての「自閉症」ではなく、日常用語として「自閉的」と使ってしまう人がまだいるせいで生じているのではないかと思われる。混乱を避けるためにも「autism」を「自閉症」と訳すのが適切なのかどうかを再考すべきなのかもしれない。

「親の育て方」という誤認識が3%というのはよく頑張ってる数字ではないだろうか。ニュースソースの調査結果を読んでみたら、正確な情報が少なかっといわれる60歳代以上の世代でも5〜7%である。「光とともに」など、お茶の間のテレビ番組のポジティブな影響がでているのではないだろうか。

「遺伝」が間違った認識としてとらえられていることには最初少し不思議な感じがした。自閉症の発生率が二卵性双生児よりも一卵性双生児で有意に高いという論文を読んだことがあったからだ。おそらく、調査者の意図は「親が自閉症なら子も自閉症になる」という意味での「遺伝」だったのだろう。自閉症の「原因」である脳の機能障害と「遺伝子情報」の間に何らかの関係があるかどうかを質問していたわけではないのだと思う。

日本自閉症協会のHPには、この他にも「メディア・ガイド(報道機関で働く皆さんへ)」などもある。ぜひ参考にしていただきたい。

注記:上記サイトからダウンロードできる「自閉症者に対する意識調査」はMacOSXのプレビューではエラーがでて閲覧できませんが、アドビのAcrobat Readerなら読めます。

「最近ブログはじめました。」
と兵庫教育大学の井上雅彦先生からメール。

どれどれと見に行くと、なんと、もう半年くらい前から書いているじゃないですか。

残念なことにRSSがついていなかったので、そのことを指摘したら、RSS機能がついているプロバイダーへ瞬間でお引越し。さすが行動が早い。

応用行動分析学&特別支援教育探求道

さっそくリンクしました。

同業者のブロガーは増えれば、トラックバック機能を活かしてネット上の情報が有効利用できるようにリンクしていくという、ブログ本来の展開も可能になるしれません。

kyotoshisougouyougo

全国に先駆けて総合養護学校化に取り組んできた京都市。養護学校はこれまで障害種別ごとに設置されていた。だから、子どもの持つ障害によっては、家庭から遠く離れた学校に通学しなくてはならなかった。総合養護化されると、障害種別に関わらず近隣の学校に通えるようになるというメリットがある。

しかし、京都市の取り組みが抜きん出ているのはその点ではない。注目すべきなのは、総合養護化という変革の機会を利用して、一人ひとりの子どものニーズにあった教育サービスを提供するシステムを構築するという、本来、学校という組織がすべき、最も優先順位の高い目標に挑んでいるところなのだ。

このために、「個別の指導計画」とその実行について、理念から見直し、はじめに授業ありきの教育活動にならないようなシステムをつくっている。それは、教員に「こうしなさい」と指示するだけではなくて、校内の役割分担(校務分掌)まで見直す、系統的で網羅的な改革だ。とかく形だけの導入で終わりがちな「個別の指導計画」の本格的な、本来あるべき姿での導入だ。当然、教育課程もすべて見直しになる。

特別支援教育に関わる教員、特に、学校経営に関わる校長、教頭、主事の先生方、そして教育委員会の担当者の方々には、ぜひ資料を読んでみることをお勧めしたい。

・文部科学省教育研究開発学校5年次報告 総合制・地域性の養護学校における教育課程はどうあるべきか−障害種別の枠をこえた教育課程のあり方に関する研究−

・京都市立総合養護学校 経営の手引き(応用編)−カリキュラム編成について− 京都市立総合養護学校長会

・平成16年度 研究紀要 社会参加し、自立するためのインクルーシブ(包括的)な教育の推進 −「個別の指導計画」から導き出された教育課程の実践とネットワーク方法論の開発− 京都市西総合養護学校

この取り組みの中心人物である朝野浩校長先生が率いる京都市西総合養護学校のHPはこちら。なんと、教員公募までしている!! 素晴らしい。

去る3/12(土)『鳴門教育大学特別講座:学校でここまでできる!』が附属養護学校で開催されました。

年度末の土曜日。しかも徳島ヴォルティスJ1昇格後初のホームゲームと重なったににも関わらず、特別支援教育に関わる80人以上の方々が参加して下さいました。

特別講演の望月先生のお話は、子どもを認めることから始める“脱力系”の考え方が面白かったです。

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行動分析学は「教える」ことが得意なだけに、子どもがまだ獲得していない行動を見つけて次々と教え込んでいくことになりがちですが(これを「×から○へのアプローチ」と呼んでらっしゃいました)、すでにできていることを使って子どものQOLを上げていくという“脱力系”の支援方法(これを「○から×へのアプローチ」と呼んでらっしゃいました)は注目すべきだと思いました。もちろん、そのためには回りの大人の行動を変えないとならないことも多いわけです。

望月先生のご講演と配布資料はコラボネットにアップしてあります。ここからどうぞ。

また、後半のポスター発表の時間には5つの学校で行われた36の事例研究について活発な質疑応答が行われました。ほとんどの先生方にとってはポスター発表という形式自体が初体験で、なんでこんなことまでしなくてはならないのだろう?という戸惑いもあったようです。

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いろいろな学校に出かけて、いろいろな先生方とお話していると、担当されているお子さんの学習や生活支援や指導に取り組み“悩み”ながら、どうすればいいのか、何ができるのか、具体的な方法論について質問をされることが多いです。

専門家としてそれらしいアドバイスをすることはいくらでもできますが、本当に役に立つ情報は現場にあるものです。というより、現場での事例研究が豊富で、しかもたくさんの先生方がそういう情報を共有できれば、先生方にとってこんなに便利なことはないわけです。

これを機会に、先生たちの中に、教わる行動だけではなく、教える行動がもっと増えていくといいなぁ。
そういう感想を持ちました。

行政の役割?

NYSEIGuidebook

3/9の記事でふれた米国ニューヨーク州の保健省(Department of Health)が出版しているガイドブックを紹介しておこう。

Clinical Practice Guideline: Report of the Recommendations Autism/Pervasive Developmental Disorders Assesment and Intervention for Young Children (Age 0-3 Years).

ニューヨーク州では0歳から3歳までの発達障害児とその家族に早期介入サービスを保障している。療育費を無駄に使わないために、さまざまな介入方法や療育方法、アセスメントツールについて、効果があると実証されているかどうかを専門家の委員に委ねて調査・研究し、その結果を保護者へのガイドラインとして配布しているのだ。

ガイドブックには評価や手続きが明記され、そのプロセスはガラス張りで、基本的には、学術的な研究の裏付けがどのくらいあるのかを評価している。つまり、しっかりした研究によって効果が確認されているかどうかの判断である。そして、さまざまな療法について、(A)効果を示す明確な裏付けがある、(B)ある程度の裏付けがある、(C)若干の裏付けがある、(D)裏付けがない、の判定をしている。D判定については、基準を満たさない研究を調査した上での委員会の判断と、そのような調査もできなかった上での判断にさらに分かれている。

日本でもこうした仕事が行政主導で進められるべきだろう。

自閉症の人は「視覚優位」だという。

 確かに言葉がけでは指示に従えない子どもがカードを見ながら自分で動けているのを見ると、視覚的支援の有効性には異論のないところだと思う。

 でも、視覚的支援が有効だからモダリティとして「視覚優位」だとは言えない。これは短絡的すぎる結論だ。

 たとえば「片づけなさい」という言葉がけが機能するためには、「片づけなさい」という音声が、“いまやってる遊びを終えて、おもちゃを棚にしまいなさい”という意味であることを理解できなくてはならない。これに比べて、たとえば指さしや片づける場所の写真カードなどなら、「片づけなさい」という言葉が理解できなくても従える。視覚と聴覚という刺激のモダリティのみを比較するためには、視覚刺激の方も、たとえば「かたづけなさい」と文字カードを使うなどしなければ公平ではない。

 注意喚起の問題もある。「片づけなさい」という言葉がけは、子どもが遊びに熱中しているときにでも、子どもの背後や離れたところから、ついついかけてしまうものである。これに対して、子どもの背後から、子どもに見えないように、指さししたり、カードを出す人はいない。たいていは、子どもがカードを確実に見るように、目の前にかざしたり、カードを指さしたりしているはずだ。音声による指示も同じようにして提示しない限り(たとえば、子どもの目の前で、まず指導者の方に注意を向けさせてから言葉がけするなど)、公平な比較にはならない。ちなみに、注意喚起しないで音声の指示をだし、従わないからカードで指示をするということを繰り返していけば、どこからか聞えてくる音声には注意を向けず、目の前に提示されたものだけに従うことを学習してしまっても不思議ではない。

 刺激の特性として、言葉がけは刺激の提示時間が一時的(瞬間的)になりがちである。一方、カードなどの視覚刺激はそこに置いておく限り、継時的に提示される。公平に比較するならば、たとえばカードも瞬間提示する(ちらっとだけ見せる)か、音声を継時的に提示しないとならない。後者は技術的に難しいが、疑似的にはたとえばVOCAなどを逆に使い、1回の提示で指示がわからなければ子どもが自分で何回もボタンを押して指示を再生できるようにするなどが考えられると思う(カードをちらっと見ても何が書いてあるかわからなければ何回かわかるまで見直すのと一緒)。

 自閉症の人たちはワーキングメモリーがうまく働かないということを示す研究もあるらしい。もしそうなら、たとえばPECSの文章ストリップ(複数のカードを並べて文章を作る)などで、複数のカードを同時に並べて提示せず、継時的に提示したら(一枚見せて、次の一枚を見せるときは前のカードをしまってしまう)、視覚刺激でも音声と同じようにその処理が難しくなると予想できる。

 もう一つ。言葉がけの場合には、言葉をかけるたびに刺激が変化しがちなことも忘れてはならない。「かたづけようね」「かたづけなさい」「はやくかたづけなさい」と、いろいろな言葉が出やすいだけでなく(特に一度で指示が通らない場合)、音声のピッチ、テンポ、イントネーションなども異なるはずだ。言葉がけをする人によっても刺激ががらっと変わってくるだろう。これに対し、カードの場合は、いつも同じカードを使うことが一般的である。指導者が変わっても同じカードを使うことで、“般化”を促進させようとするくらいだから。聴覚と視覚で公平な比較をするならば、言葉がけも、たとえばVOCAやテープに録音した同じ刺激を使うとか、逆にカードの場合にはそのときそのときで少しずつ異なるカードを使うとかしなければならない。

 自閉症の特性として刺激の過剰選択性(シングルフォーカス)が指摘されている。もしかしたらこの特性によって、刺激クラスによる弁別学習が進みにくいのではないだろうか? だとすれば、たとえば、カードを使っても概念的マッチング(いろいろな犬の写真を「犬」、いろいろな猫の写真を「猫」に分けるなど)は難しいはずである(もちろん、犬と猫の決定的な違いをシングルフォーカスして区別する手がかりを見つけてしまえば、逆に驚異的な弁別力を発揮すると思うけど)。

 脳科学や神経生理学的な研究はまったくといっていいほど読んでいないので、自閉症の人の「視覚優位」について、どれだけハードな証拠があがっているのかは実は知らない(不勉強です)。
 でも、今回、このように、ちょっと考えただけでも、たとえ神経生理的に視覚と聴覚の“情報処理”に差がなくても、行動的には視覚優位に見えることは十分にありえる。それは自閉症という障害のより根本的な特性(ワーキングメモリーに関することや過剰選択性に関すること)と、日常の指導で使われやすい刺激の特性から説明可能だということだ(もちろんモダリティによって“情報処理”に差があるという事実がでてくるかもしれないけど、上述のような条件の差があることは変わらない)。

 私見:視覚的支援が有効だからといって、自閉症の人はモダリティとして「視覚優位」だから、聴覚刺激は使わず、視覚刺激のみを使うべきだというような極論にならなければいいと思う。聴覚刺激も教え方を工夫すれば教えられるし、視覚刺激も教え方を間違えると、うまくいかないはずだから。

 この記事を書くきっかけとなった「Comic Strip Conversations」に載っていた「みんなで話を聞きましょう」の絵。ソーシャルストーリーのキャロル・グレイ著のコミック会話の本(Future Horizons, 1994)。気持ちはわかるのだが、この絵(というか使い方?)はちょっと行き過ぎなのはと思いました。

comicconversation
tetris_03

自閉症の特性として「注意の範囲が狭い」「シングルフォーカス」「見通しがきかない」などが上げられることがある。

これって、どんな感覚なんだろう? って想像してみた。たとえば、雨や霧で視界が悪いときに時速60kmで運転をしていると、ふだん100m先まで見えるのが、十数メートル先しか見えなくなったりする。もちろん、怖くてスピードを下げる。次に何が起こるのかわからないのはとても不安な状況である。

霧の中の運転みたいな状況をもっと安全で楽しく作りだせないか?と考えるうちに、そうだ「テトリス」はどうだろう?と思いついた。「テトリス」のようなゲームだと、先行きの見通しが苦手だとうまくプレイできない。だから、もしかして自閉症の子どもたちは「テトリス」が不得意ではないだろうか?  それでも、即時強化があるTVゲームやパターン化した型はめみたいなのは好きな子どもたちも多いから、もしかしたら「先を読む」行動の学習教材として利用できるんじゃないかな? なんて思ってネットサーフィンしていた。

すると自閉症児のお父さんのサイトで、テトリスが得意なお子さんがいることがわかった。学習教材として使える可能性が確認できた。

ところが、同時にとんでもない情報もどんどん見つかった。曰く「ゲームで自閉症になる」という話。

どうやら「ゲーム脳」というコンセプトで話題になった日大の森昭雄氏の発言があちこちで取り上げられていて、「ゲームで自閉症になる」もその一つのようだ。

もちろん、これはありえないトンデモ説。この件に対する日本自閉症協会東京都支部のコメントがこちらに掲載されている。

森氏は講演などで、テトリスはロシア(旧ソ連)で兵隊の(殺人)訓練のために開発されたゲームであるとも発言しているらしい。

え〜まじで? そんなことがホントで暴露しちゃったら、旧KGBに暗殺されちゃうのでは?と心配しながら、ネットでいろいろ調べたが、そんな話はみつからない。ちなみに開発者の一人による解説はこちら

ゲイムマンのコラム“トンデモ”という言葉を世に広めた「と学会」の定義によると、“トンデモ本”というのは、「著者が意図したものとは異なる視点から楽しめるもの」、具体的に言うと、「著者の大ボケや、無知、カン違い、妄想などにより、常識とはかけ離れたおかしな内容になってしまった本」のこと。
である。

2年前、岡山大学の長谷川先生をお招きして「論理的思考講座:トンデモ世界のリテラシー」なるものを開催したことがある。トンデモ世界に惑わされずに本質を見抜くための論理的思考を身につけましょうというのが狙いの講座であった。長谷川先生の講演はこちらから。

ちなみに「ゲーム脳」関係について、批判的な情報はこちらのサイトで閲覧できる。このサイトにも散見されるように、世の中の多くの人は、大学の先生や「医学博士」が言っていることに間違いはないだろうと、素朴に信じてしまう傾向になる。

自分もこのweb日記で新たなトンデモ説を作りだしたりしないように注意したいと思う。

ごまひげ船長こと、西南女学院大学の服巻繁先生が、PECSやTEACCHの構造化の手法を導入している学校への訪問レポートを日記の形式で公開されています(Captain's Cabin)。


PECSについては、カードを使ったコミュニケーションから始めることで発話によるコミュニケーションがどの程度促進できるのかとか、発話にまでは至らなかった場合、カードだけでどこまで複雑な言語行動を教えられるか、つまり、イントラバーバルを増やしていくことで「思考」まで教えられるのか、その場合は手元にカードがなくても頭の中でカードを思い浮かべるなどして「思考」できるようになるのかなどなど、まだ明らかになっていないことで面白そうなことがたくさんあります。

米国では学校全体でPECSを使っているところもありますし、ごまひげ船長先生の今後の報告や日本での活動に期待がかかります。

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来る2/27(日)に行われる附属養護学校の「表現会」の練習を観察してきた。小学部の3つの組が、それぞれ舞台に上がって、予行練習をしていた。

この種の行事や集団行動が苦手な子どもたちも、各自が取り組める、そしてなおかつ楽しめそうな役割を、先生方がよく考えて工夫している様子がみてとれた。

例によって例のごとく、いろいろなことを考えさせられたが、そのうちの一つ:こうした活動を学校の想い出として、子どもたちが後から振り返ることができるように教えるにはどうすればよいのだろうか? いうなれば想い出にひたる行動の下位行動の分析だ。

たとえば、表現会の舞台を撮影した写真を見て、
・「3年生のとき」とか「7匹のこぶたしたよ」とか言う。
・「これボク」とか「これ○○ちゃん」とか「あ、猪子先生だ」と、指差しながら言う。
・「体育館寒かった」とか「お母さんがみにきた」とか言う。
などの行動はおそらく練習すればできるようになる子どももいるはずだ。

発話が苦手な子どもでも、
・写真の中の自分を指差す。
・自分たちの写っている写真とそうでない写真を区別する。
・自分たちの写っている写真を物語の順番に並べる。
・自分たちのアルバムをときどき見る(絵本と同じように選択肢に用意しておく)。
などの行動は教えられるのではないだろうか?

子どもの頃の楽しい想い出は人生を豊かにする。想い出づくりを支援する指導法の開発にはそういう価値がある思う。

脳と行動

先日の鳴門教育大学附属養護学校の研究発表会では、「自閉症」についてあらためて考えさせられることがいろいろあった。あまりにいろいろあったので、まとめて時間をとって、じっくり考えて文章にすることにし、来年度のプロジェクトリストに追加した。

いろいろなことのうちの一つ。

自閉症の原因は脳の器質的な障害にあると言われている。その原因は遺伝や妊娠・出産時の母体環境などさまざまであり、特定されていない。そこまでは納得できるのだが、脳の器質的な障害と脳の機能的な障害、そしてそれとあたかも一対一で対応しているかのように考えられている行動的な特徴との関係はどうにも納得できないことが多い。

たとえば、「心の理論」で指摘されるように、自閉症を持った人たちは他人の気持ちを読み取ることが苦手であると言われている。「マインドブラインドネス」などとも言われる。

fMRIやPETなど、ある行動をしているときに脳の中のどの部位が活性化しているか調べる装置が開発されてきて、たとえば、他者の気持ちを読み取る課題をしているときには、前頭葉の部位が活性化することがわかったりする。そして、同じような装置で、自閉症を持った人たちの脳の活動を観察すると、前頭葉の部位の活動が健常の人に比べて低いことがわかったりする。

しかしながら、そのことから、自閉症の人たちは前頭葉の部位に障害があるために他者の気持ちを読み取りにくくなっていると結論するのはあまりに短絡的というか、少なくとも早計なように感じる。

もしかしたら、「他者の気持ちを読み取る」ことが学習されるにつれて、前頭葉のある部位が活性化していくのかもしれない。そして自閉症のもっと根本的な障害(たとえば感覚過敏。そして刺激の過剰選択性から推測される注意の狭さなど)から、そうした学習が起こることが妨害される可能性はないのだろうか。

神経生理学的な事実と、行動の事実とを結びつけるキーワードは「学習」である。自閉症の人たちがみせる一見不思議な行動と彼らの脳の間には、自閉症ゆえに生じる独特の「学習」があるように思う。それをひもとくのが行動分析家の役目かもしれない。

数年前から The Behavior Analyst Today というニューズレターをオンラインで発行していた BEHAVIOR ANALYST ONLINE.ORG から、行動コンサルテーションを専門とする、新しいオンラインジャーナルが発刊された。

ジャーナルの名称は The International Journal of Behavioral Consultation and Therapy 。第1巻が上記のwebサイトからダウンロードできる。

編集者の巻頭コメントを引用しておこう。

The International Journal of Behavioral Consultation and Therapy (IJBCT), is published quarterly by Joseph Cautilli. IJBCT is an online, electronic publication of general circulation to the scientific community. IJBCT's mission is to provide a focused view of behavioral consultation and therapy for the general behavioral intervention community. Additionally, IJBCT hopes to highlight the importance of conducting clinical research from a strong theoretical base. IJBCT areas of interest include, but are not limited to: Clinical Behavior Analysis, Behavioral Therapy, Behavioral Consultation, Organizational Behavior Management, Human Performance Technology, and Cognitive Behavior Therapy. IJBCT is an independent publication and is in no way affiliated with any other publications.

行動分析学をベースにした、心理臨床、行動療法、行動コンサルテーション、組織行動マネジメント、人間工学、認知行動療法など、幅広い領域をカバーしながらも「コンサルテーション」に焦点を絞ったジャーナルになるようで、期待できそうだ。

ちなみに上記webサイトでは、この雑誌の他にも、The Journal of Early and Intensive Behavior Intervention という、低年齢期の集中的行動療育に関するオンラインジャーナルも発行している。

サマースクールを修了した先生たちが9月から進めてきた事例研究を発表し、情報交換する場をつくるというのが今年の新企画。嬉しいことに、大学がバックアップしてくれることになりました。

詳しくは徳島ABA研究会のHPをご参照下さい。

鳴門教育大学特別講座:学校でここまでできる!−特別支援教育のための応用行動分析学−

日 時:2005年3月12日(土)13:30〜17:00
場 所:鳴門教育大学附属養護学校体育館(徳島市上吉野町)
参加費:無 料
主 催:鳴門教育大学/徳島ABA研究会
後 援:徳島県教育委員会

● 講 演:「脱力系」応用行動分析と特別支援教育 13:30〜15:00
 講 師:望月 昭先生(立命館大学教授)

● 研究発表会 15:00〜17:00
 今年度、鳴門教育大学附属養護学校、徳島県立国府養護学校、同池田分校、徳島県立阿南養護学校、同ひわさ分校、神戸市立青陽養護学校、北島南小学校で行われた事例研究について、実際に指導をされた先生方がポスター発表を行います。研究成果を見回りながら、先生方と気軽に質疑応答できます。

不覚にも泣きそうになってしまった。映画やドラマを観てじゃなくて、鳴門教育大学附属養護学校の研究紀要(印刷中)を読んでいての話。

昨年度まで文科省の指定研究として進めてきた『自閉症の児童生徒のための指導プログラムの開発』。今年度はその成果を学校での日々の指導に実際に活かすことがテーマだった。

まずウルウルしたのがこの流れ図(一部割愛)。何がスゴいって、指導目標を「般化」の達成においていること。般化しなかったら「×」になり、もう一度指導計画から見直すことになる。

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そして子どもたちの学習の進行を示すグラフ。指導目標を具体的に設定して、記録を取り、指導目標が達成できたかどうか、般化したかどうかを客観的に、事実に基づいて判断して、次の指導のステップを考える材料にしている。こんなグラフが、数えたら全部で30もありました。

fuzoku-graph

何をどうしてどうやって教えるのかをはっきりさせ、子どもが学ぶことにコミットする。そして記録をもとに教え方を改善していく。応用行動分析学のコアとなるこの考え方が学校全体に浸透してきたのがよく分かる。

鳴門教育大学附属養護学校の研究発表会は2月10日(木)です。ぜひ学校にいらして授業を観察し、先生方をつかまえて話を聞いてください。詳しい案内はこちらから。

香川県高松市にある屋島総合病院では数年前から自閉症外来を始めました。行動分析学の専門家と小児科医、カウンセラーが共同で親子指導に取り組んでいます。

ここにいらしている保護者の方々とスタッフが共同で「屋島小児発達研究会」を立ち上げました。そして、第1回の研究会が、来年、2月5日(土)午後1時~5時30分、香川県社会福祉総合センター1Fコミュニティホールで開催されます。

兵庫教育大学の井上雅彦先生、西南女学院大学の服巻繁先生、香川大学の繪内利啓先生ら、豪華キャストです。

徳島ABA研究会のHPに案内および申込書をアップロードしておきましたので、詳しくはそちらをご覧ください。

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発達障害、主に自閉症をもった児童・生徒さんの指導に活用できる教材データベースを公開しました。徳島県立国府養護学校の先生方とのコラボレーションプロジェクトのひとつです。

足掛け2年で、すでに1000件以上の教材が登録されています。特別支援教育に関わる先生方はぜひ一度ご覧ください。

教材に関するアイディアやヒントを話し合うための掲示板も用意してありますよ。

教材データベースを閲覧するにはコラボネットにメンバー登録してメンバーIDとパスワードを入手して下さい。

教材データベースへはこちらから。

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徳島ABA研究会で自閉症の刺激の過剰選択性に関する古典的な論文を紹介した(資料はここ)。

「刺激の過剰選択性(stimulus overselectivity)」とは、環境の特定部分に注意を向けてしまって、他の刺激に注意が向きにくいという特性である。最近では「シングルフォーカス」とも呼ばれている。

学校現場ではよくよく見られる現象なので、先生たちにはわかりやすかったようだ。好きな活動をカードで要求するのを教えたのに、ちょっと場面が変わっただけでカードが使えなくなるなどの例があげられた。

類似した現象は健常児でも成人でも条件次第で見られることがある。たとえば、図と地では図の方に注意が向きやすいとか、一度、それで弁別学習が成立するとそれ以外の刺激要素が弁別刺激になりにくいという「ブロッキング」という現象だ(研究会では上の図を使って試しにやってみた)。先生によって注目する特性がばらばらで面白かった。

自閉症児のこの特性にどのように対応できるのか? 次回はそうした研究について情報提供する予定である。

医療ルネサンス@Yomiuri Online三重県立小児心療センター「あすなろ学園」(津市)は、1歳6か月児健診で広汎性発達障害を発見しようと、独自のシステムを築いた。

自閉症児への療育は、できるだけ早期に、できるだけ集中して、行動的に行うのがベストだとわかっている。

診断の技術も進み、文献によれば2歳以前に自閉症の疑いがある子どもをスクリーニングして適切な療育を始めることも可能である。

にもかかわらず、このような試みは日本ではまだほとんど行われていない...と思っていたら、こんな記事を読売新聞で見つけた。画期的である。ぜひ、その成果を公表し、他の地域でも再現できるようにしていって欲しいと思う。

ちなみに、読売新聞のwebサイト、医療ルネサンスでは、高機能広汎性発達障害に関するシリーズが組まれている。他にもさまざまな課題を提起し、いくつかの興味深い実践を紹介しているので、興味のある人はぜひどうぞ。

TimeTracker.jpg

Different Roads to Learnig は、1995年に設立された、応用行動分析学を中心にした自閉症児向けの教材販売会社だ。 webサイトはこちらから。

画像は「タイムトラッカ−」という時間経過を知らせる道具。見た目、極めてアメリカ的だけど、日本の「タイムログ」
と機能は同じ。色が変わるときに音を出すように設定できるみたい。

他にもソーシャルスキルを教えるための「すごろく」とか、PECSで使うボードとか、さまざまな商品が用意されている。

日本の学校の先生たちは教材を自作するのが上手だし、好きな人もいるから、こういう既製品にどのくらいニーズがあるのかわからないけど、こんな会社、日本にあってもいいと思う。

前回「指導目標を決める思考」(2004.9.12)で取り上げた事例に取り組んでおられる先生方からお叱りを受けた。「私たちの事例のことを誰もが見られるweb日記に許可なく書かれてとても嫌な気持ちがした」とのこと。嫌な気持ちをさせてしまったことに、この場を借りて深くお詫びしたい。

先生方には昨日直接お会いしてお話し、ご説明したのだが、実は前回の解説は、その先生方が取り組んでいるケース以外の事例も参考にして書いたものである。特に「長期目標と中期目標のつながりが弱い」とか「学校行事をうまく進めることが優先されている」というのは、他の事例で見られた問題点である。複数の事例について書くと話がこんがらがるので、ひとつの代表例を取り上げてまとめさせてもらった。私の意図は特定の先生を批判することではもちろんない。その点は理解していただけたように思う。

コラボレーションプロジェクトを始めのが4年前。この年の事例研究は『コラボレーションプロジェクト2000』として公開されている。行動分析学について何も知らずに果敢にも事例研究に参加して下さった国府養護学校小学部の先生方には今でも感謝している。なにしろ、強化とか、好子とか、ベースラインとか、標的行動とか、応用行動分析学の基礎的な知識の研修はまったくしないまま、ほんとうに大ざっぱなところから始めたのだから。

そういう事情もあったから、当時、指導目標(標的行動)については、先生方の要望や考えをそのまま採用していた。ほとんど無修正だったと思う。

4年後。今年は各学校で自主的な研修会が開かれ、先生方がチームで事例を検討している。私からプロンプトされる前に、ホワイトボードにABC分析を書き出す場面もたくさん見られる。指導目標に関しても、個別の指導計画とからめ、長期目標、中期目標へとつながり、児童・生徒のQOLにインパクトを与えるにはどんな標的行動を選べばいいのか、時に悩みながらも、深い話し合いが行われている。

「指導の現場で教えるべき標的行動をうまく見つけて選ぶ技術はどのように身に付くのでしょうか?」と、核心をつく質問をする先生もいる。

これはたいへんな進歩である。そしてこの進歩は、私のような門外漢を学校に呼んで下さり、自分たちのこれまでの仕事のやり方に、ある意味で「いちゃもん」をつけられながらも、新しい考え方や視点、指導方法を、試し、取り入れ、失敗と成功を繰り返し、そして何より、それを研究として、次の指導や研修プログラムの開発に役立てることに同意して下さった先生たちのフトコロの広さによるものだ。

標的行動をうまく見つけて選ぶ技術はどうすれば習得できるか.... 先生方からの問いかけに応えるべく、来年以降のサマースクールで実施できるように研修プログラムの開発を進めて行くのが、今度は私の仕事になる。

協同で事例研究を進めながら、教育の現場に必要などんな思考やコミュニケーションが必要なのかを探し出し、そしてそのトレーニングプログラムを一緒にしていく。コラボレーションプロジェクトのこの枠組みに賛同し、参加して下さっているすべての先生方に、この場を借りて深くお礼したい。

先日、ある養護学校の研究会で「避難訓練」のあり方が話題になった。

特に、いきなり大きな音がするとパニックを起こしてしまうような聴覚過敏を持った児童・生徒や、ざわざわする集団活動が苦手なお子さんの場合、避難訓練自体がとても嫌悪的な経験になってしまう可能性がある。最悪の場合、いざというときには先生の目を逃れてどこかに隠れてしまうかもしれない。

ネットで検索したら、避難訓練のたいへんさを報告する親御さんの悩みは多くみつかったが、しっかりした研究報告はなかった(まだ、探しきれていないだけかもしれないけど)。

そんな中、徳島ABA研究会の「こんな本読みました」でも紹介した『すぐに役立つ自閉症児の特別支援Q&Aマニュアル 通常の学級の先生方のために』には避難訓練のさいの配慮について記載があった。実はこの本の元版は、国立特殊教育総合研究所のホームページから閲覧することもできる。ぜひ参照していただきたい。

また、ご本人が自閉症をお持ちで有名なテンプル・グランディンさんの見解も見つかった。彼女によれば「聴覚過敏の強い自閉症児は、予測できない突然の大きな音に慣れることが困難なので、避難訓練が始まる前に部屋から出す方がよい」とのこと。

いずれにしても万が一のときには生命に関わることなので、もっと研究が行われてもいい領域ですね。

新学期が始まり、サマースクールに参加した先生たちによる事例研究がいよいよスタート。

7つの学校でのべ40以上の事例が取り上げられている(新記録更新中)。

指導目標を標的行動として定義し、ベースラインを測定する段階だが、このステップがけっこう難しい。子どもの生活にとって大切で、先生が学校で教えられる行動を選ばなくてはならない。例年、この段階であまり適切ではない行動を選んでしまって、後々まで糸を引くことがあるので、今年は特に注意を払っている。

そんな中「う〜ん」と唸ってしまう目標がでてきた。

『体育館で泣かずに教師と肩を並べ一人で決められたコースを10周歩く』という目標だ。

何かが引っ掛かるのだ。直感的にどこかヘンだと思うのだが、うまく説明できない。「肩を並べ」と「一人で」が矛盾しているが、これは些細なこと。他に《何か》ありそうだ。

そこで、少し時間をもらって、一人で考えてみることにした。「直感」を「理論」で裏付けられるかどうかの作業をしてみる。

体育の時間、決められたコースを歩くように指示しても、動かなかったり、体育館から飛び出したり、先生を叩いたりする妨害行動が出現するなら、その原因を機能分析で調べてから、たとえば、何をしなくてはならないかを明確に示す(先行条件Aの整備)、「つかれました」「休ませて下さい」など、妨害行動と等価でかつ社会的により望ましい行動を教える(他行動Bの強化)、あるいは歩き終わったら好きな活動に従事できる(結果Cの整備)などの指導策が考えられる。

聞けば、このお子さんは、登下校時や散歩の時には泣かずに歩けているという。歩くこと自体が嫌子というわけではないらしい。

このお子さんの「泣く」がオペラント行動なら、上述の妨害行動と同じようにその機能をABC分析して、原因に見合った指導を考えるべきであろう。もし、先行条件にも結果にも問題がなく、他行動を教える必要があるなら、指導目標は『体育館で歩くとき、疲れたら「休ませて下さい」と要求できる』になるだろう。

なんとなく引っ掛かった理由(その1): 指導目標を決める前に、なぜ泣いてしまうのか?という原因推定が行われたのだろうかと思ったこと。

さらに考えてみる。

『体育館で泣かずに....』という記述は『泣くのを我慢して...』のようにも読み取れる。もしそうなら、これも引っ掛かるところだ。嫌なことを我慢させることも大切かもしれないが、むしろ「なぜ泣いているのか」その気持ちを他の人に使えるコミュニケーションを教えた方が、長期的なQOLの向上には役に立つからだ。

なんとなく引っ掛かった理由(その2):「嫌なことを我慢する」という指導よりも「嫌なことを伝える」という指導の方が長期的には役に立つから。

さらに考えてみる。

このお子さんの「泣く」がレスポンデント行動だったらどうなるだろう。犬に噛まれてから犬の写真を見ると泣き出すようになった子どもに、犬の写真を見せ続けることは、指導としてはかなり大ざっぱだ。レスポンデントの消去によって泣かなくなることもありえるが、写真を見せて泣くことで、そのときの状況(教師や教室など)が派生の原理により、副次的に条件性の嫌悪刺激になってしまう危険性もある。

なんとなく引っ掛かった理由(その3):レスポンデント的に泣いているなら、泣かせ続けることでうまくいくこともあるが、失敗してさらに泣くようになってしまうこともある。注意深い介入計画が必要である。

さらに考えてみる。

担任の先生たちによれば、体育館を歩くという習慣を身に付けることで、このお子さんの健康増進にも役立てたいとのことである。しかし、もし健康増進が長期的な目標であるなら、余暇につながるような、すなわち本人が自ら選んで活動しそうな運動を選んだ方がいいだろう。それはエアロバイクかもしれないし、バスケットボールかもしれないし、家の近所を散歩するということかもしれない。

なんとなく引っ掛かった理由(その4):長期目標と短期目標、そして指導目標(標的行動)が一貫していない。あるいは、下位目標が上位の目標達成のための最適な目標とはいえない。

さらに考えてみる。

先生たちから提出された資料の中に「運動会に参加できるように」という趣旨の説明があった。他のさまざまな運動からあえて体育館の中を歩くことを選んだ背景には、「そうすれば運動会に参加できるから」という先生方の意図があるのだろう。しかし、個別の指導計画を作成する本来の目的は、一人ひとりの教育ニーズにあった指導をするためであり、学校の行事に子どもたちをあわせていくというのは、実はまったく逆行した発想なのだ。

なんとなく引っ掛かった理由(その5):指導目標の選択が、子どものニーズというより、学校のニーズにあわせたものである可能性がある。


というわけで、このweb日記を使って、「直感」を「理論」で裏付けられるかどうか、web日記を使って自分の考えを整理してみた。

あとは担任の先生方にうまく伝えられるかどうかだ。


学校現場で日々子どもたちの問題行動に取り組んでいる先生方にとって、問題行動の原因や、そもそも何が問題なのかをじっくり考え、しかもそれを一人ひとりの児童・生徒の長期的なQOL向上と結びつけた上で指導計画を作るという作業は確かに難しい仕事だ。

指導計画を考える前に、ほんとうにどこに問題があって、その原因は何なのかを考える時間的余裕や機会があまりなく、すぐに指導を始めなくてはならない、せっぱ詰まった状況なのだと思う。

事例研究をするということは、いつもより時間をとって、このような思考をめぐらせるいいチャンスだ。あとは、いかにこのような思考を促し、習得できる教材や研修プログラムが組めるかということになる。これは、我々、教員養成系大学に勤める者がしなくてはならない仕事である。

さて、この事例に取り組んでいる先生方とは来週ミーティングをすることになっている。その前に、いくつか提案をしておこう。

長期目標が「健康」に関わるのなら、「運動の時間に自ら取り組める(選択肢を提示すれば選んで行う)運動レパートリーをいくつか持つ」が中期目標になり、短期目標としては「自分で進んで5分間できる運動が一つ以上ある」になるのではないだろうか? この場合、指導の手続きとしては、このお子さんにさまざまな運動の機会を提示して、その中で自分で選択する運動を強化することなどが考えられる。

長期目標が「社会性」に関わるのなら、「集団の中で決められた活動に従事できる」が中期目標になり、短期目標としては「他に子どもがいる体育館で教師の指示に従って1つの課題を遂行できる」になるだろう。その中には「教師と一緒に1周する」などが入ってくるかもしれない。

「泣く」に関する長期目標は「社会性」あるいは「コミュニケーション」に関わることかもしれない(その機能がオペラントの逃避・回避なら)。その場合、短期目標は「自分の気持ちを相手に伝えられる」などになり、標的行動としては「体育の時間、疲れたときは休憩を要求できる」などが立てられるのではないだろうか。

「泣く」がレスポンデントだったら、長期的目標は「情緒的安定」になるのかもしれない(このあたりは自分でもあまり自信がないのだが)。「学校生活を楽しく過ごせる」が目標になるのなら、泣く行動を引き出している条件性刺激を突き止めて(「体育館」かもしれないし「先生と肩を並べる」かもしれない)、レスポンデント的関係を弱める指導が必要になる。たとえば、体育館では楽しいことばかりをまずはして(マットに寝転がる、音楽にあわせて自由に動くなどなど)、そこから徐々に苦手な状況に近い課題に近づけていく(系統的脱感作法的指導)。

以上。

今年の日本行動分析学会年次大会では『特別支援教育に行動分析学はどう貢献できるか?
『教育現場からの提案 ?』というタイトルの公開シンポジウムが開催された。

川崎市立東菅小学校の取り組みを小野學先生が、守谷市立松前台小学校の取り組みを藤田直子先生が話題提供して下さったのだが、両学校での実践に共通していたのは、

障害の有無に関わらず支援の必要なすべての子どもを支援する

ということ。

しかもこの骨太の方針を学校の先生たちは自分たちで話し合って決めたということだ。

この定義は、ある意味、アメリカの「No Children Behind」法の主旨に通じるものがあり、日本の文部科学省の定義(軽度発達障害を持った子どもの支援に限定)より先進的で、何より現場のニーズにそったものだと言える。はっきりとした障害を持っていなくても特別な支援が必要な児童・生徒はたくさんいるから。

こういう学校がある。こういう先生たちがいるという事実は、ほんとうに嬉しいことだ。

自分は極端に楽観的な方だけど、その楽観さに加速がかかりそうです。

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西南女学院大学の服巻繁先生が、最近ご翻訳された以下の2冊を送って下さった。

『アスペルガー症候群と高機能自閉症−その基本的理解のために−』 メジボフ, G.B.・シェア, V・アダムス, L. W. 著 服巻繁・梅永雄二・服巻智子 訳 エンパワメント研究所 2003

『見える形でわかりやすく−TEACCHにおける視覚的構造化と自立課題−』 ノースカロライナ大学医学部精神科TEACCH部編 服巻繁訳 2004

後者にはワークシステムで使われる課題の例がカラー写真で紹介されている。

いくつか興味を引く教材があるが、中でも「絵による辞書」というのが面白い。

画像は30ページに掲載されている「左上の容器から、集める野菜か果物の数を示した指示書を1枚取り出し、左下の絵による辞書を参照しながら組み合わせる」課題。

「辞書を使う」という行動を系統だって教えるプログラムがこれまでどのくらい開発されているのかわからないが、こんな単純な教材でもうまく使えば教えられるのかもしれない。

おそらく、最初は実物とひらがなのマッチングができている組み合わせで練習し、セットの中に1つか2つくらい、実物は分かるが(見たことがあるが)ひらがな単語カードとのマッチングはできていない組み合わせを入れてみるというところから始めるのだろう。

でも、そうすると、辞書をめくるとか、見開きページの中から文字カードを同じものを同一マッチングで探すという行動が入るから、最初は辞書の「単語数」は少ない方がいいのかもしれない。

あるいは、知らないはずの組み合わせだけ、太い枠でくくっておくなど、プロンプトを使ってもいいかも。

「辞書の使い方をマスターした」というためには、実物も知らないし(見たことがないもの)、もちろん名前とのマッチングもできていない組み合わせが初めて提示されたとき、辞書を使って回答できることが必要になる。

事例研究として取り上げたら、なかなか面白い実践研究になるのではないだろうか?

dvdclip.jpg

サマースクールで使う教材ビデオを作成するために、先の日曜、附属養護学校でロケを行った。

この日のために、徳島のこどもミュージカルWITHの公演を見に行き、子役さんをスカウト。ゼミ生さんたちの協力のもとシナリオを書いて、撮影にのぞんだ。

子役さんたちには、自閉症のことを理解してもらうため、ちょうど放映されていた『光とともに』(日テレ)を観てもらった。自分はまとめて観ようと週間予約しておいたんだけど、野球中継の延長で半分くらいしか観られなかった(涙)。

本番では、カメラを持つ手も震えんばかり(?)の演技力に圧倒。さすがでした。
先生役および助監督として協力していただいた附属養護の先生方もなかなかの演技力。
仕上がりが楽しみです。




屋島総合病院に高機能自閉症児の親御さん向けペアレントトレーニングを見学に来た。講師は兵教の井上先生。
ビデオを使った教材など、サマースクールでも使えそうなアイディアが満載。

勉強になります。

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