『調査月報』2021年5月号(5月5日発行)に掲載された「行動分析学―効率的な時間の使い方―」の補足資料です。本文は日本政策金融公庫のサイトを参照してください。


 「時間を効率的に使う」をテーマに行われたじぶん実験や私が関わった企業における事例から,よくある問題と解決策をまとめて示そう。

仕事が不明確

 何を,どれだけ,どのように,いつまでにすべきかが決まっていないと,仕事に取り掛かる行動が自発されにくく,先延ばしされたり,逆に必要以上に時間をかけたりすることになる。
 上司として部下に仕事を依頼するときに,期待する成果をこのように明示するだけで,仕事にかける時間とタイミングが最適化されやすくなる。島宗(2015)ではこれを「成果のコミュニケーション公式」と呼んでいる(p. 52)。指示をし直したり,仕事をやり直したり,個人攻撃の罠に陥って部下に延々と説教をするという無駄な時間も削減できるし,部下が仕事に取り組む行動を感謝や承認の声かけで強化しやすくなる。
 部下として上司から仕事を依頼されたときに指示の内容が不明確であれば,期待する成果をこのように説明することを求めるとよい。自分で自分の仕事を決められるときにも同じである。

仕事のまとまりが大きすぎる

 仕事が明確になると,仕事に取り組み,完了することがそれだけでも強化として作用するようになる。ただし完了までにかかる時間と手間が大きすぎると行動は持続されない。そこで大きな仕事は小さく分割する。経験則だが,30分から長くても1時間で終わるくらいの量を目安に分割すると行動は持続されやすくなる。上司として部下に仕事を依頼するときには,この点も配慮し,部下が自ら分割できそうなら任せ,分割できていなさそうなら分割の仕方を教えると良い。分割すれば仕事の途中経過を,やはり感謝や承認の声かけよって強化できるようになるし,そうした機会を増やせる。強化率は仕事のやりがいに直結するし,"集中"した状態もつくりやすくなる。

仕事のやり方や取り組む順序が不自由である

 仕事は成果を定義し,やり方は担当者に任せる。やり方を指導するのは,期待した成果があがってこないときだけにする。取り組む順序も「いつまでに」が満たされている限り,担当者任せにする。期待した成果があがってきたときに,感謝し,承認することで,パート職員を対象とした事例からもわかるように,やり方は担当者が工夫するようになる。やり方や順序を強制すると,担当者が得意とする行動や工夫をする行動を強化する機会を逸してしまうし,不必要で無駄な工程も省かれない。反感も生じやすくなる。

仕事を思うように進められない

 仕事を分割した上で,自分のペースで進められる作業と他者のペースに依存する作業に分け,ある時点で取り組み可能な作業一覧を常時保有しておくようにすると,上司や同僚,顧客待ちで仕事を先に進められないという事態を回避できる。昨今そのような余裕がある企業も少なくなっているが,自己研鑽のための学習課題も自分のペースで進められる作業として用意しておくと無駄な空き時間をつくらなくて済む。作業一覧には自分から進んで取り組みたいと思うものもあれば,そうではないものもあるだろう。後者を一つ完了させたら前者の一つに取り組めるというルールを決めると,これも強化になり,作業が進みやすくなることも知っていて損はないだろう。

同じような仕事なのにはかどらない

 毎日何回もする作業と違い,数ヶ月や一年に一度しかしない作業は,慣れているつもりでも時間がかかったり,ミスが生じてやり直したりすることがある。そのような作業については一度時間をかけてマニュアルを作ると良い。自分用のマニュアルを同じ仕事をするたびに改訂していき,職場で共有すると,標的行動を支援する環境として機能するようになる。こうした行動支援システムとしてのマニュアル活用は無印良品の実践が参考になる(松井, 2013)。


引用文献

  • 松井忠三 (2013). 無印良品は仕組みが9割―仕事はシンプルにやりなさい― 角川書店
  • 島宗 理 (1999). 組織行動マネジメントの歴史と現状とこれからの課題 行動分析学研究, 14, 4-14. https://doi.org/10.24456/jjba.14.1_4
  • 島宗 理 (2000). パフォーマンス・マネジメント--問題解決のための行動分析学-- 米田出版
  • 島宗 理 (2014). 使える行動分析学--じぶん実験のすすめ-- 筑摩書房
  • 島宗 理 (2015). リーダーのための行動分析学入門―部下を育てる! 強いチームをつくる! ― 日本実業出版社
  • 島宗 理・若松克則 (2016). 会計事務所で働くパート従業員を対象とした参加型マネジメント 行動分析学研究, 31, 2-14. https://doi.org/10.24456/jjba.31.1_2
  • 島宗 理 (2019). ワードマップ 応用行動分析学--ヒューマンサービスを改善する行動科学-- 新曜社
  • Wilk, L. A., & Redmon, W. K. (1998). The Effects of feedback and goal setting on the productivity and satisfaction of university admissions staff. Journal of Organizational Behavior Management, 18, 45-68.

リーダーのための中国語版.jpeg

 弊著『部下を育てる! 強いチームをつくる! リーダーのための行動分析学入門』(日本実業出版社)の中国語版が台湾で出版されました。

 表紙からはまるでかつての宝島のようなムック本的印象を受けますが、ぱらぱらと頁をめくった限り、中身はそのまま訳されているようです。なんといっても中国語が読めないので、留学生のゼミ生に頼んで内容を確認してもらおうと思います。

 検索したら、このECサイトから注文できるようです。日本から注文できるかどうかは不明です。

 『部下を育てる! 強いチームをつくる! リーダーのための行動分析学入門』を書くときにたいへんお世話になった、CLG Japan代表のダニエル・ガイスラー先生が慶應大学ビジネス・スクール(KBS)で担当されている授業が日経ビジネスオンラインで紹介されています。
 日本たばこ産業(JT)の新貝康司副社長をゲスト講師として迎え、大型のM&A案件を成功させる方法についてお話しいただいた後の授業が取材されています。
 新貝氏のお話もこのシリーズのその前の記事として読めます。無料会員登録すれば購読できますので、興味がある方はぜひどうぞ。

 京都で開催された国際行動分析学会(ABAI)も大盛況のまま終了し、この夏、というか春から、ずっと続いてた常識を越えた忙しさも一段落。ようやく一息つけそうです。

 というわけで、9月17日に刊行された拙著のご紹介です。

 『リーダーのための行動分析学入門』(日本実業出版社)は、副題にあるように、部下を育て、強いチームをつくる方法を解説したビジネスパーソン向けの本です。

 行動分析学をベースにしたコンサルテーションをグローバル企業に提供しているCLG(Continuous Learning Group)のアジア進出に伴い、彼らの協力を得て、大企業への介入事例も掲載しています。

 CLGは以前にも日本の某大手企業にコンサルを提供したことがあり、その会社の大型M&A案件を成功に導くことに貢献しています。このとき、CLGを起業した当時のCEOの一人、Leslie Wilk Braksik博士に頼まれて、彼女の著書『Unlock Behavior, Unleash Profits』の日本語翻訳をお手伝いしました。クライアント企業内の研修に使うためでした。
 LeslieはWestern Michigan University大学院時代の同級生で、右も左もわからないままKalamazooに着き、アパートが見つかるまで学部生用のドミトリーの部屋で寂しく暮らしていた私をテニスや食事に誘ってくれて、友達づくりを後押してくれた恩人です。その恩返しにでもなればと思い、お手伝いさせていただいたのです。
 今回、日本と韓国にオフィスを構え、本格的にビジネスをスタートするので色々と手伝って欲しいという彼女の要請に応え、最初は彼女の本の翻訳を正式に出版することも検討していました。ですが、日本の経営者やビジネスパーソンにとって、よりわかりやすく、伝わりやすい本にするためには、日本の文化や慣習も考慮し、日本での事例も加えた方がいいだろうということになり、『Unlock Behavior, Unleash Profits』に紹介されている、CLGの考え方や方法論、用語や事例などを使う許諾をいただき、オリジナル本として書き下ろしました。

 先々週、Amazonの「売れ筋ランキング」を見ていたら、この本が「ビジネス・経済」の下の「実践経営・リーダーシップ」の下の「CI・M&A」のサブカテゴリーに入っていました。確かにM&Aの事例も紹介しているのですが、同じレベルのサブカテゴリーに「リーダーシップ」もありますから、妙な感じもします。出版社の担当編集者さんに質問したら、このサブカテゴリーの指定は出版社にはできないそうです。Amazonが独自に分類しているとのこと。
 なんて書きながら、今一度「売れ筋ランキング」を確認したら、今日は「経営理論」に入っていました。う〜ん、謎(笑)。

 これまでも行動分析学からビジネスやマネジメントについて書かれた本は、拙著『パフォーマンス・マネジメント』を含め、数冊あります。でも、日本や海外における具体的な事例が掲載されている本はこれが初めてだと思います。
 M&Aと行動分析学?と疑問に思われる方は、去年、CLGが開催したセミナーの資料をご覧下さい。数々の大規模M&Aを成功させている、JTの新貝康司氏(現代表取締役副社長)もパネリストとして登壇されたセミナーです。

 海外進出に伴い、現地社員や顧客とのやりとりで文化の差につまづく企業もあると聞きます。国内でも、外国人を雇用したり、女性を登用したり、異世代の若手に活躍してもらうためには、これまで通りのやり方に限界を感じている経営者や管理職の方が多いのではないでしょうか。
 行動分析学には国や文化や世代を超えて適用可能な「行動の法則」と、国や文化や世代や個人に独特の“個性”や“多様性”に対応できる方法論があります。グローバリゼーションとダイバージョンが鍵になる次世代のマネジメントに、この方法論をぜひともご活用下さい。

【定員を超過した参加申込みをいただき、ありがとうございました。今回はこれで締切らせていただきます。またの機会にご参加下さい。定員締切りのお知らせが遅れてしまい、申し訳ございませんでした】

 Twitterなどで告知していた、企業に対する行動コンサルテーションに関する入門講座の詳細が決まりました。

日時: 2014年10月4日(土) 10:00-17:00
会場: 法政大学市ヶ谷キャンパス ボアソナードタワー 11F 心理学実験室
講師: D. Geissler氏(米コンサル会社 Continuous Learning Group

 研修内容は Continuous Learning Group社がクライエント企業へのコンサルテーションを進めるときに管理職に提供している“パフォーマンス・コーチング”の実習です。

 今回は、行動分析学を学んでいて、将来、コンサルタントとして働くことを希望している学部生や大学院生を主な対象として開催しますが、行動分析学を学んだ社会人も参加可能です。

 講義は英語で行われ、島宗が解説します。演習は日本語で行います。

 学生・大学院生は参加費無料、社会人は参加費一万円です。

 参加希望の方は、お名前、ご所属を明記の上、島宗(simamune@hosei.ac.jp)までメールでお申し込みください。

 申込みが定員に達し次第、締切らせていただきます。

 参加希望の方は早めにお申し込み下さい。

 Julie Smith 先生の特別講義『成果を出し続ける経営マネジメント 行動分析学にもとづいたアプローチ』が無事に終了しました。

 前夜に韓国から到着し、昨日も講演前後にはビジネスミーティングがあり、本日午前中にはアメリカに帰国されるというタイトなスケジュールでしたので、ホストとしても気が抜けない状況でしたが、講演もその後の質疑応答セッションも問題なく進行でき、ほっとしました。

 金曜日の夕方という設定にも関わらず、学生さん、社会人の皆さま、あわせて170名ほどの参加があり、これも嬉しかったです。忙しい中、お疲れ様でした。

 講演後、何人かの方から発表資料をいただけないかというご要望をいただきましたが、今回は配布資料なしということです。CLG社は、アジア諸国への事業展開をしていますが、国によってはすぐに模倣のコンサルティングサービスが立ち上がり、知的財産権を守ることが難しくなるとのことで、とても慎重になっているようです。ご了解下さい。

 その替わりというのもへんですが、CLGのコンサルティングサービスやその背景にある理論を解説した本へのリンクをはっておきます。講演でもご紹介いただいた本で、日本のアマゾンからも購入できそうです。私もまだ読んではいないのですが、ざっと目を通したところでは、昨日の講演内容(特に、コンサルティングのステップなど)が詳しくカバーされています。ただし、事例については、昨日の講演やその後の質疑応答セッションの方が詳細な情報が得られたと思います(わざわざ会場に脚を運んでいただいた参加者の特権ですね)。

 解説的通訳を務めさせていただき、反省すべきはお金の単位変換です。"Twenty five million dollars"と言われても、それが日本円でいくらになるか、とっさに訳せませんでした(恥)。日本円でもUS$でも、普段からそんな大金扱ってないからという言い訳しかできません。すみません。およそ25億円ですね。

 法政の心理学科の学部生たちもたくさん参加してくれました。学部で心理学を学んでも、卒業してからそれを仕事にするのは難しいと、あちこちで言われると思います。でも、Smith 先生たちのように、何もないところから起業し、今では世界をまたにかけ、心理学をフルに使ったコンサルテーションをして、即座に翻訳できないほどの桁のお金を稼いでいる人もいるのです。いずれは皆さんの中からも、そのようなパイオニアが出てくることを期待してます。


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 来週の金曜日に法政大学で開催される特別講座のスライドが届きました。

 ざっと見たところ、具体的な実践例がかなり含まれています。

 病院における医者の行動マネジメント、航空会社のグランドスタッフによる顧客サービスの向上、家電のコールセンターのサービス改善、グローバル企業における情報化推進とコスト削減、経営者の投資に関する意思決定支援など。

 通訳&解説が入るのため講演では時間的制約があります(90分)。事例の詳細は講義後の質疑応答セッションに持ち越されるかもしれませんね(まだ席がありますので質疑応答セッションに参加希望の方はメールでお申し込み下さい)。

    講師:Julie Smith 博士 (Continuous Learning Group)
    日時:2013年11月8日(金)16:50〜18:20
    会場:法政大学市ヶ谷キャンパス外濠校舎S407教室
    アクセス:http://www.hosei.ac.jp/gaiyo/campus/ichigaya/index.html
    解説:島宗 理(法政大学文学部心理学科 教授)
    主催:法政大学文学部心理学科
    共催:法政大学大学院ライフスキル教育研究所、日本行動分析学会

 本特別講座について、詳しくはこちらの案内記事をご参照ください。

Continuous Learning Group (CLG)は Fortune 100 の企業や米国の行政機関に対してコンサルティングサービスを提供している会社で、 Julie Smith 博士は Leslie Wilk 博士と共にこの会社を創業し、自らコンサルタントとして仕事をされてきた先生です。

お仕事で来月初来日するSmith先生に昔のよしみでお願いし、法政大学で講義をしていただけることになりました。

企業で成果を出し続けるための、リーダーシップやモチベーションの仕組みを、組織の中に埋め込んでいく、行動分析学を駆使した方法についてお話いただきます。

せっかくの機会ですので、講義の後に少人数での質疑応答セッションの時間も持つことになりました。

講義は英語ですが、日本語の解説(私が担当します)をつけますので、安心して参加して下さい。

講師:Julie Smith 博士 (Continuous Learning Group)
日時:2013年11月8日(金)16:50〜18:20
会場:法政大学市ヶ谷キャンパス外濠校舎S407教室
アクセス:http://www.hosei.ac.jp/gaiyo/campus/ichigaya/index.html
解説:島宗 理(法政大学文学部心理学科 教授)
主催:法政大学文学部心理学科
共催:法政大学大学院ライフスキル教育研究所、日本行動分析学会

☆講義の聴講に参加費、参加予約は不要です。そのまま会場にお越し下さい。道案内の看板は設置しませんので、あらかじめ地図などをご持参下さい。

☆講義の後に少人数による質疑応答セッションを行います。質疑応答セッション(S404教室、18:30-19:30)に参加を希望される方は11/4(月)までにお名前とご所属をメールでお知らせ下さい(島宗 理:simamune@hosei.ac.jp)。先着順で受け付けさせていただきます。こちらも参加無料ですが、教室の都合で20名程度で締切らせていただきます。ご了承下さい。

案内はこちらからダウンロードできます。

Smith先生には下記の論文や著書がありますが、研究者というよりは起業家、企業人というノリの先生です。個人的にも今から再会をたいへん楽しみにしています。

  • Smith, J. M., Kaminski, B. J., & Wylie, R. G. (1990). May I make a suggestion?: Corporate support for innovation. Journal of Organizational Behavior Management, 11(2), 125-146. doi:10.1300/J075v11n02_08
  • Smith, J. M., & Chase, P. N. (1990). Using the Vantage Analysis Chart to solve organization-wide problems. Journal Of Organizational Behavior Management, 11(1), 127-148. doi:10.1300/J075v11n01_09

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名言〔第18位〕:「信頼するということ」

解釈:
 部下がリーダーについていくかどうかは、リーダーの言行一致度とその一貫性にかかっている。言語行動と非言語行動が一致していること(やるといったことをやる、やらないといったことはやらない)、一致した言語行動と非言語行動が一貫していること(やるといったことは納得できる理由がない限りやり遂げる)が重要である。
 部下がリーダーのことを「好き(like)」と言うかどうか、リーダーの言うことに賛成しているかどうかは、必要条件ではない。
 言行一致度と一貫性が高く、リーダーの指示に従う行動が高い確率で強化されれば、リーダーの言語行動が生みだす言語刺激は部下にとって強化の弁別刺激となる。さらにそのことで、リーダー自身が部下にとって習得性の好子になる可能性は高く、ゆえに「好き」という評価が増えることもあるだろう。ただし、これはあくまで副次的な効果である。「好き」という評価を増やす方法は他にもあるだろうが(例:やたらと褒めるなど)、追従行動に影響するとは限らない。

本シリーズの過去記事一覧:

名言〔第19位〕:「対立なければ決定なし」

解釈:
 (「反対意見がでない案件は採用すべきではない」と主張する真意がわからないので、あくまで予測ですが)企業の経営を左右する案件については、賛成/反対の両方の意見表明を明示的に強化する随伴性を準備して、賛否両論の根拠をできるだけたくさん浮き彫りにし、十分な情報を得た上で決定を下すべきである。

 例:経営者やリーダーの意見が無批判で通る会社には、正統な反対意見の表明を弱化したり、消去する随伴性が存在する可能性が高く、そういう環境では的確な意思決定に必要な情報(弁別刺激、警告刺激、ルールなどなど)が入手不可能になるリスクが高まる。

本シリーズの過去記事一覧:

名言〔第20位〕:「明日のために今日何をなすか」

解釈:
 経営に影響する、将来の景気や経済・社会環境を起こりえる行動随伴性の変化として予測することも重要であるが、予測だけに終わっては意味がない。
 必要なのはそのような変化に対応できる、今日できる行動随伴性の修正があるかどうかを考え、すべきこと、できることがあるのなら、それを実行する随伴性を設定することである。
 つまり、社内の(経営者や意思決定者の)未来予測行動のみを強化する随伴性を見つけ、妥当な未来予測に対応する実行をより強化する随伴性を整備すべきということになる。

 例:会議などで予測に関する報告があるときには必ずそれに対する実行可能な対応策も提案するように促し、採用の如何に関わらず評価し、強化する。

本シリーズの過去記事一覧:

名言〔第21位〕:「顧客にとっての価値」

解釈:
 企業や組織の生存はその活動を強化する顧客の行動によって決定する。顧客の行動は企業や組織から対価を支払って受取る商品やサービスによって強化される。すなわち、好子消失による弱化を上回る好子出現による強化(あるいは嫌子消失、好子消失阻止、嫌子出現阻止による強化)を提供しなくてはならない。
 このとき、顧客の購買行動を制御する好子、嫌子、随伴性は、企業や組織がそうであるに違いないと思い込んだり、企業や組織の内部事情によって決まるものではなく、あくまで顧客側の環境によって決まるものであり、何が顧客の購買行動を強化するのか(好子/嫌子、確立操作、随伴性)は顧客の行動随伴性の生態学的調査ならびに実際の購買行動のデータから推測し、確認し、修正し続けるべきものである。
 企業や組織の内部事情(組織内の随伴性)と、顧客側の随伴性を一致させていく方法については、たとえば、Brethowerのトータルパフォーマンスシステム(Total Performance System: TPS)などの行動システム分析の考え方などを適用することが有効だろう。

本シリーズの過去記事一覧:

名言〔第22位〕:「明日のために今日なにをなすか」

解釈:
 「明日何をすべきか」ではなく「明日のために今日なにをすべきか」。拡大解釈すれば、「明後日のために今日なにをすべきか」、「来週のために今日なにをすべきか」、「来月、来年のためになにをすべきか」、「5年後、10年後のために何をすべきか」であり、かつ、「なにをすべきかを考える」だけではなく、「何をすべきかをする」ことである。
 かなり遠い未来の出来事を現在の行動の制御変数とできるのは言語行動という特別なレパートリーを持つヒトの特権だが、だからといって、まったくの訓練なしに身に付くスキルでもない。将来の転勤に向けて語学の学習を毎日するとか、万が一の災害に備えて食糧や水を備蓄するといった、個人的な行動でも未来事象による制御は難しいのに、ましてや企業の経営に関わる行動にこうした制御をいれるには、たとえば、Malottらの目的指向的システムデザインのような行動システム分析のツールを取り入れるなど、それなりの仕組みが必要だ。

Malott, R. W., & Garcia, M. E. (1987). A goal-directed model for the design of human performance systems. Journal of Organizational Behavior Management, 9(1), 125-159.

本シリーズの過去記事一覧:

第23位:「成果をあげることは習慣

第24位:「リーダーとは何か

第25位:「成果をあげるのは才能ではない

第26位:「組織の存在意義

第27位:「組織は戦略に従う

第28位:「利益とは目的ではなく条件

第29位:「理論は現実に従う

第30位:「総体は部分の集合とは異なる

名言〔第23位〕:「成果をあげることは習慣」

解釈:
 「成果をあげるのは才能ではない」〔第25位〕にもあったように、組織で成果をあげるために必要な仕事はすべて学習可能な知識や技術--すなわち「行動」--である。成果をあげるために必要な仕事は複雑で、習得の程度に大きな個人差があるため「能力」とか「人格」とかに帰属されがちだが、必要な仕事を丁寧に課題分析してみれば、それを構成している一つひとつの行動は実は意外に単純であるということ。
 もちろん、そのような課題分析をすることはそれほど簡単ではないし(課題分析をする知識や技能をもった人的資源、時間などが必要になること)、学習は“可能”であっても、学習にかかる時間(コスト)が発生することなどを考慮すれば、成果があがらない理由を「能力」や「人格」などのヒューマンファクターとして片付けてしまいがちな事情も読み取れる。「できない奴だなぁ」とか「礼に欠ける」などのタクトは「そうですよね」などの共感的反応で強化されがちだし、“リストラ”という文脈では標的となった人を解雇したり、配置転換することが強化される。しかし、こうした個人攻撃の罠にまみれた解決策は短期的な成果しか生まないのは、実は誰の目にも明らかだったりもする。
 遠回りのように見えても、必要な行動を洗い出し、それが学習され、強化される行動的環境を整備することが、成果をあげる行動を“習慣化”させるベストプラクティスである。

本シリーズの過去記事一覧:

第24位:「リーダーとは何か

第25位:「成果をあげるのは才能ではない

第26位:「組織の存在意義

第27位:「組織は戦略に従う

第28位:「利益とは目的ではなく条件

第29位:「理論は現実に従う

第30位:「総体は部分の集合とは異なる

[WorkItOut!!からの引越し案内]

めちゃくちゃ古い資料ですが、WorkItOut!から移動させておきます。


このワークショップでは、1998年12月19日に立命館大学で開催された行動分析学会公開講座『ヒューマンサービス領域における応用行動分析:プロフェッショナルのツールとしての行動分析学』で講演した資料を中心に、パフォーマンス・マネジメントについて解説します。

続きはこちらから。

名言〔第24位〕:「リーダーとは何か」 (これだけだと「リーダーとは何か」がわからないので引用します)。

効果的なリーダーシップの基礎とは、組織の使命を考え抜き、それを目に見える形で明確に定義し、確立することである。リーダーとは、目標を定め、優先目標を決め、それを維持する者である(「未来企業」p. 147 )。

解釈:リーダーとは組織に係るメタ随伴性を分析し、組織として、どんな条件のとき、どんな行動をすれば(どんな製品を造り、サービスを提供し、などなど)、社会から強化されるのか、すなわち組織のメタ随伴性ルールを、現在と将来にわたって記述し、社会から強化される行動が組織としてまとまって遂行できるように、個々のフォロワー(社員、部下など)の行動を引き出す弁別刺激や確立操作を提供する役割である。

ちなみに、昨今の、特に安倍政権以降(ポスト小泉)の日本政府の動向をみていると、リーダーシップはリーダーだけに帰属させるべきものではないとつくづく感じる。組織がその使命をまっとうするためには、フォロワーの行動も等価に重要である。リーダーの示すルールと反する行動に従事することで強化される随伴性が、ルールに従う行動を強化する随伴性よりも強い場合、どんなに優れた「資質」を持った人がリーダーとなってもうまくいくわけはないからだ。個人的には、安倍氏がいとも簡単に総理の座から退いたことで、総理を降ろす行動の強化随伴性が、おそらくこれまでもあったのだろうが実際に機能してしまい、またそうした行動が弱化されることが少ないことがバレてしまったため、もはや誰もリーダーに従わないという悪夢のような状況になってしまっているのではないかと思う。菅総理の個人的資質はさしおいて、このことの方がはるかに大きな問題である。

本シリーズの過去記事一覧:

第25位:「成果をあげるのは才能ではない

第26位:「組織の存在意義

第27位:「組織は戦略に従う

第28位:「利益とは目的ではなく条件

第29位:「理論は現実に従う

第30位:「総体は部分の集合とは異なる

名言〔第25位〕:「成果をあげるのは才能ではない」

解釈:成果をあげる人(performers)とそうでない人(non-performer)の違いは“才能(talent)”という仮説的構成体によるものではなく、習慣や行動やルールによるものであるというのは、まさに行動分析学の考え方そのものである。「才能」や「能力」といった概念に成功や失敗の原因を求める限り、循環論を抜け出せず、改善の手がかりは得られない。成果をあげている人が何をしているのか(何をしていないのか)、成果をあげていない人が何をしているのか(何をしていないのか)、まずは観察し、行動レベルでの違いをつきとめることが重要である。

もう一つ。ドラッカー先生はこういう見方がなかなかできない理由を「組織」というものが私たち人間にとっては比較的新しい“発明”であるためとしている。組織の中で成果をあげるための思考方法も進化(集団、世代としての学習)していくものだという考え方は前向きで面白いと思う。

本シリーズの過去記事一覧:

第26位:「組織の存在意義

第27位:「組織は戦略に従う

第28位:「利益とは目的ではなく条件

第29位:「理論は現実に従う

第30位:「総体は部分の集合とは異なる

名言〔第26位〕:「組織の存在意義」

解釈:「組織とは目的ではなく手段である」という考え方はまさに行動システム分析そのものである。Gilbertの階層的視点の分析にしろ、Brethowerのトータルパフォーマンスシステム(Total Performance System: TPS)にしろ、Malottの目的指向的システム分析にしろ、組織を行動の集合と捉え、行動は製品やサービスの受け手に与える影響ーすなわち社会における機能ーと考える。社会や消費者から強化されない組織の行動は消去されるから、組織にとっての存在意義は社会や消費者の求める価値とその実現から定義されることになる。こうして組織の存在意義は、社会や消費者にとってのニーズを好子出現や嫌子消失という形で定義し、それを実現することとして定義され、評価されることになる。

行動システム分析についての日本語の資料があまりみあたらないので、旧版「パフォーマンス・マネジメント」の6章(現在の版には非掲載)をここに公開しました。

本シリーズの過去記事一覧:

第27位:「組織は戦略に従う

第28位:「利益とは目的ではなく条件

第29位:「理論は現実に従う

第30位:「総体は部分の集合とは異なる

名言〔第27位〕:「組織は戦略に従う」

解釈:組織の構造は組織の機能が効率よく果たせるように変形できるように設計すべきである。いわゆる「べき論」や流行で組織の構造をつくっていくと失敗することが多い(たとえば「組織はフラットであるべき」とか「ピラミッド型であるべき」などの固定的な組織観にもとづいた組織改革は弊害をもらたすことがある)。こうした設計は、組織レベルの強化随伴性が、組織の内部にも整合するように組織をつくることで実現できる。組織レベルの強化随伴性というのは、組織が生みだす商品やサービスの受け手(顧客や他会社、地域社会や株主など)が、そうした商品やサービスを生みだす活動をどのように強化するかということであり、これがすなわち組織の目的や機能の分析となる。組織内の構造的な仕組み(部署の構造や役割分担など)は、この強化を最大化し、弱化(たとえば、顧客の信頼を失うリスク行動など)を最小化するように、課題分析、職務分析をした上で、強化随伴性を設定するのに適した構造を考え、さらに成果によって継続的に修正していくべき事柄である。そのような仕組みができれば、組織の構造は自然と、組織の目的にそった戦略に柔軟性をもって従うようになるのだ。

本シリーズの過去記事一覧:

第28位:「利益とは目的ではなく条件

第29位:「理論は現実に従う

第30位:「総体は部分の集合とは異なる

名言〔第28位〕:「利益とは目的ではなく条件」

解釈:企業活動という集団行動は経済的好子(利益)ではなく、社会的貢献(生みだすべきモノやサービスを生みだしているかということ)や顧客サービス(生みだすモノやサービスが顧客にとって充分な好子や強化になっているか)という結果によって強化されるべきである。利益はむしろそうした行動を自発する機会を整えるという意味で、確立操作や弁別刺激、オペランダムのようなものと捉えられる。あるいはそうした行動が自発されいれば副次的に生みだされるはずの環境変化とも考えられるだろう。ただし、好子出現をもらたらす確立操作や弁別刺激、オペランダムはその機能ゆえに強力な習得性好子となるため、企業活動はとかく目先の利益に制御されがちなことも事実である。したがって経営者としては、そのままにしておくと敏感になりがちな経済的好子だけではなく、社会的貢献や顧客サービスにも敏感に反応するように、企業内部の行動随伴性やルールを設定する必要があるのだ。


本シリーズの過去記事一覧:

第29位:「理論は現実に従う

第30位:「総体は部分の集合とは異なる

名言〔第29位〕:「理論は現実に従う」

解釈:企業において従業員や顧客や管理職の行動について、環境と行動との相互作用(「〜のときに〜したら〜となった」というオペラントや「〜によって〜する」が引き起こされる」というレスポンデント)を一つひとつ明らかにしながら、経営に重要な行動の制御変数を現場で見つけ、記述していき、結果として特定の個人や状況や集団を超えて共通の関係性がみえてくれば、最終的にはそれが“理論”となる。始めに経営の理論があって、それを実行して確かめるのではなく、小さな成功を数多く重ねて行くことで、経営の“理論”も見えてくるかもしれない。つまり、理論は演繹的にではなく帰納的に導かれるべきであるのだ。それでもその“理論”はおまけのようなものであり、大事なのは一つひとつのマネジメントの成功なのである。最終的に“理論”がまとまらなくても、帰納的に仕事を進める限り、そのあとには成功が残るのだから。

本シリーズの過去記事一覧:

第30位:「総体は部分の集合とは異なる

 『もしドラ』(最初聞いたときは「もしドラッカーが高校野球の女子マネージャーになったら」かと思ってた)は発行部数が200万を越え、2010年文句なしのベストセラーになったそうだ。「スーパージャンプ」で漫画の連載も始まり、柳の下のどじょう的な本も多数出版され、まだしばらく流行が続きそうな気配である。

 てなわけで、今回はちょっとふざけて(でも半分以上は真面目に)、もしドラッカーが行動分析家だったらという想定の元、週間ダイヤモンド 2010年11月6日号に掲載された特集『みんなのドラッカー:Part 6 ドラッカー名言集』(Pp. 74-81)を参考に、ドラッカー先生の名言を行動分析学から解釈し、翻訳してみようと思う。

 一応、シリーズ化宣言。でも途中で飽きるかも。

 自分は経営学者じゃないし、ドラッカーの専門家でもない。勘違いとか思い違いとかあったら、ごめんなさい(と、最初から謝っておく)。

名言〔第30位〕:「総体は部分の集合とは異なる」

解釈:会社を形づくる一人ひとりの社員の行動や社内の小集団(係・部・チームなど)の行動をマネジメントできたとしても、会社全体がマネジメントできるとは限らない。個人や小集団の行動を強化する随伴性が社内で矛盾したり(例:営業が納期を早めて受注することは、製造にとっては必ずしも好子にはならない)、相反したり(例:研究開発の予算をある製品に集中させることで、他の製品開発費が減る)するし、マネジメントしようとして部下の行動の随伴性を変えればそれに応じてマネジメントする側の随伴性も変わるという相互作用もあるからだ。経営者には、個人や小集団のパフォーマンスを最適化する随伴性を導入するだけではなく、社内のさまざまな随伴性を調整し、好子と嫌子の配分を決めていく仕事が期待される。すなわちこれは、科学というよりは工学の方法論なのである。

春もうらら、と言えるほどまで暖かくなりませんね、なかなか。

それでも大学周辺の桜は咲き出してます。今週末の入学式までには満開を迎えることでしょう。

さて今回は連載記事「ケーゾクはチカラ!」の番外編として、今年度、ゼミ生の一人が卒論で取り組んだダイエットに関する行動契約の研究成果をご紹介します。

「行動契約」とはすべき行動を取り決めてそれができたときの強化(好子の獲得)や弱化(好子の剥奪や嫌子の提示)の随伴性を契約する行動マネジメントの方法です。

今回は目標がダイエットでしたので、「野菜を食べる」「ジョギング30分」「水を1L飲む」「風呂上がりにストレッチ」「腹八分目にする」などの行動リストを参加者ごとに作成し、毎日の遂行数に目標を設定しました。

行動契約では目標を達成しなかったらiPodまたは携帯電話を没収というペナルティの随伴性を使いました。もちろん《モドキ》の随伴性です(たとえば、野菜を食べることでiPodが没収されないという好子消失阻止による強化モドキの随伴性)。

参加者3人のうち、参加者1はKzokuを使って記録をして行動契約を実施しました。参加者2はKzokuは使わずに実験者とのメールなどによるやりとりで行動契約を実施しました。参加者3はKzokuを使いましたが、行動契約は実施しませんでした。

その結果、行動契約を導入した参加者2人ですべき行動の遂行数が増加し、体重も減少しました。行動契約を導入しなかった参加者においてはそのような変化が見られませんでした。

Kzokucounseling


セルフマネジメントの成否に及ぼす要因には大きな個人差があります。メモに体重を記録するだけでうまくいく人もいれば、Kzokuを使って体重や「やること」を毎日記録しても、それだけではうまくいかない人もいるでしょう。

このため成功のためには個人差に応じた段階的な介入を用意することが必要になります。

今回の研究成果は、Kzokuを使って記録するだけでは十分な効果が得られない人も、カウンセリング的な支援を個別に受けることでダイエットを成功させられる可能性を示しています。カウンセラーとのやりとりはメールなどでも可能ですが、Kzokuを使うことで、カウンセラーにとっては記録をみながら個人差に応じた支援をすることが容易になるというメリットがあります(たとえば、その人がどのような「やること」なら遂行しやすく、どのような「やること」は苦手なのかなどを理解しながらアドバイスできる)。

スポーツジムなどでも利用者ごとにメニューを作成して運動や食生活についても相談できるパーソナルトレーナーに対するニーズが増えているようです。そうした健康支援サービスの基幹システムとしてKzokuをとらえると面白いビジネスチャンスになりそうです。

 前回の記事から6ヶ月が過ぎました。執筆をサボっていたわけではなくて、Kzokuでほんとうにダイエットが継続できるかどうかを身をもって検証するために、半年間、1ユーザーとしてひっそりと取り組んでいたのです(注1)。

 百聞は一見にしかず。まずは過去1年間(365日間)のグラフを見てみましょう。体脂肪率は非表示にして体重だけを表示してみました。

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 前回、このレポートを書きながらダイエットに取り組んでいたのが6月から7月にかけてです。その前にも新学期開始頃(3月の終わりから4月にかけて)に少し頑張っていました。冬の間に蓄えた脂肪がこの2回のダイエットによって落ちていき、一時期は72kgを切っていたのがわかります。

 ブログでレポートを書くのを中断し、自分のダイエットの状況が皆さまの目にふれるという条件を取り去った後も、8月いっぱいはダイエット行動がある程度は維持できていました。ブログを使った社会的随伴性のバックアップがなくてもKzokuで継続できることがこの段階でわかりました。

 ところがそれもつかの間の喜びでした。食欲の秋の到来とともに、体重はぐんぐんと増加していきます。10月を過ぎるとまたたくまに74kg台をヒットし始め、ついに禁断の75kgにも到達しそうな勢いです。明らかにお腹まわりがゆるくなり、だぶついた肉をぎゅにゅっとつまめるほど成長してしまいました。

 注目すべきなのは、9月から12月の4ヶ月間は、ほぼ毎日体重計に乗り、ほぼ毎日Kzokuに記録を入力していたということです。

 記録だけのダイエットには限界があるということになりますよね。あるいは、食欲の秋 vs レコーディングダイエットの戦いは食欲の秋に軍配があがったとも言えるでしょう。

 体重は季節周期で変動するのが自然のようです。致し方ないと諦めるのも一つの手ですが、今年はめくるめく季節の流れにあがなってみることにしました。

 クリスマスや年末年始(忘年会や新年会)は、ダイエットする人にとってはまさに鬼門です。食べ過ぎ・飲み過ぎたくなくても、皆が盛り上がっているときに一人ガマンしていたら場も盛り上がりませんよね。結局、新年になって気がついてみると体重が元通り、いやそれ以上にリバウンドしてしまう人も多いはずです(自分も毎年このパターンを繰り返してきました)。

 そこで今年は手遅れになる前に手を打ったのです。

 作戦は次の通り。

正月太りに打ち勝つ作戦 (1) 摂取カロリーを抑制するため、「やること」の中の「野菜多めに食べました」、「腹八分目に抑えました」、「間食しませんでした」の3項目に対するヤッターポイントを2倍に。
(2) 一週間のうちヤッターポイントが5点以上の日が6日以上あれば、残りの一日はフリーで食べ放題(この日を忘年会や新年会などにあてる)。
(3) 体重の目標をより現実的な73kg(体脂肪率は18%)に変更。
(4) 思いつくたびシステム手帳に書込んでいる「欲しいものリスト」の物品は、目標を達成したら買えるようにする(目標を達成しないと買えない)。

 これなら週に一度の飲み会なら遠慮なく飲み食いできます。野菜を多めに食べることで健康も維持できます。「欲しいものリスト」は衝動買いを防ぐための手段ですが、それにも関わらず衝動買いはなかなか止められません。どうせならと、これで衝動買いのエネルギーをダイエット行動の継続に使えそうです(ちなみに現在リストにあがっているのは新しいテニスラケット、DIESELのデニム、ハイスピード動画対応のデジカメ、今春発売予定のタブレット型Macです)。

 そしてこのプランを師走に先駆けて導入し、手遅れになる前に先制攻撃することにしたのです。

 プランは功を奏し「やること」をやるようになりました。下の図で黄色からオレンジ色に変わっているところがプラン変更点です。重点3項目の配点を2倍にしているから総得点が増加しているのはあたり前ですが、そのぶんを差し引いても実行動は増えています。

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 次に体重の変化です。

 ちょっと面倒でしたが、やってみたいことがあったので、10月から12月までの体重の記録をKzokuからExcelへコピペして、グラフを作成してみました。応用行動分析学でよく使う形式の折れ線グラフです。横軸は日付、縦軸は体重、縦の点線の左側がKzokuを使った記録のみの条件、右側が今回の作戦の条件です。作戦を導入してから体重の変動が大きくなっているのは、週に1回の食べ放題の日に向かって体重が減少するものの、食べ放題の日の翌日からまた体重が増えているからです(カラダってホントーに正直ですね)。

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 体重が増えてしまうなら作戦は失敗なのでは?と思われるかもしれまん。

 それを判断するため、上のグラフに「近似直線」をあてはめてみました。応用行動分析学ではデータの傾向を判断するために「split-middle line」という手法を使いますが(注2)、Excelでsplit-middleをやるのは結構手間なので、Excelグラフの「近似曲線」の機能を使ってお手軽に作りました。

 下の図からわかるように、作戦導入前の近似直線は右上がりです。このまま順調に(?)体重が増加すれば、1月中には75kgを確実にオーバーしてしまうことがわかります。「近似直線」を使うと、こうした《予測》が可能になるのです。

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 これに対し、作戦導入後の近似直線は右下がりです。変動こそあれ、右上がりの傾向が逆転し、このまま進めば1月中には73kgを切るのも夢ではないということがわかります。これは嬉しい《予測》ですよね。

 統計的分析っていうと難しく聞こえますが、Excelでグラフを作ることができれば数学や統計の知識がなくてもできてしまう分析ですから、よかったらお試し下さい。「このままだととんでもないことになる!」と現実を直視するのにも、「このまま頑張ればすぐには結果がでなくても半年後には必ずワンサイズダウンできる」と未来を見据えるのにも役立ちますよ。

 自分の場合、大晦日から三が日はダイエット休暇にしましたので、この間で体重はまたまた増加してしまいました。でも、安心。今回の作戦を使えば、季節の流れに打ち勝って正月太りを早めに解消できそうです。

行動分析学的ダイエットの"コツ"、最終回はこれ。

行動分析学的ダイエットの"コツ" ○太りすぎる前に先制攻撃で作戦を展開しましょう(そのためには「近似直線」が便利に使えます)。
○ダイエットとは真逆のイベント(忘年会や新年会)をダイエットに活用しましょう。
○いずれ買ってしまいそうなものをダイエット目標達成時の自分へのご褒美に使いましょう。

 『Kzokuコラボ企画:ケーゾクはチカラ! 』は今回が最終回になります。最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。

 私は今後もKzokuを活用してきます。このブログで成果報告をすることもあると思います。

 また会う日まで。ポップ・ガンマイ。


注1)応用行動分析学では、導入後、少なくとも数ヶ月以上後まで維持されていないと、行動変容プログラムの効果は充分ではないとみなす傾向があります。

注2)参考書

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世界禁煙デー」という日があるそうです。WHOが定めた日ということで(5/31)、今年は各国政府がメーカーに対して、黒ずんだ肺や黄ばんだ歯の写真などをタバコの箱に印刷するように要請したそうです。

いわゆる嫌悪療法ですね。

ちなみに自分は学生時代から28歳くらいまで、とてもヘビィなスモーカーでした。一日2箱ペースで吸っていたこともあったし、貧乏だったので、ピースとかゴールデンバットにお世話になっていたこともありました。

タバコを止めるきっかけは京成立石に住んでいた頃。中川の堤防沿いコースをジョギングしているときに胸が苦しくなって走れなくなってしまったんですね。これはいかんと奮起一発。

禁煙の失敗と再チャレンジを何回か繰り返し、最後に効いたのは嫌悪イメージ法。

タバコが吸いたい!と思うたびに(英語ではurgeといいますが、まさに"あぁ〜じぃ"という焦燥感)、満員電車で横にきて、ぎゅうぎゅう押してくる、スダレ髪で太って汗だくでフケだらけで体臭がきついおじさんを連想するようにしたんです(スミマセン。そういう人に悪意があるわけではありません)。

当時は京成電鉄で渋谷まで通っていたんですが、こういう人は決して少なくなかったので、連想するのは難しくありませんでした。しかも、こういう人に限って電車を降りた瞬間にタバコに火をつけるというマナーの悪さも兼ね備えていたおかげで、嫌悪感は増すばかり。

タバコと黒ずんだ肺の写真を物理的に近接させるだけでなく、自分が喫煙している姿と嫌悪刺激とを重ね合わせてイメージするという手続きが成功の一因かも。

それと、タバコを止めた途端に(というのは記憶の歪みで、おそらくは数週間後に)、ジョギングが楽になって、音楽を聞きながら楽しく走れるようになってきたというのも促進要因だったに違いありません。

ところで、「世界禁煙デー」って英語では"World No Tobacco Day"。そのまんまだ。

前回までのあらすじ  なぜなぜ5回法を使ってダイエットする理由を見直した島宗は、体重や体脂肪率の低下そのものを目標にするのではなく、テニスやクライミングの上達を目指したセルフマネジメントにKzokuを活用すべく、まずはベースラインの測定を始めたのであった。

 なんだか懐かしい書き出しだなぁと思った人は、きっと私と同年代ですね。あとこれに「登場人物」の欄さえあれば...

 冗談はさておき。今回はダイエットの継続のために私が使っているワザをいくつかご紹介します。第3回の記事で解説したように、どんな工夫が成功するかは人によって異なります。私にとっては有効でも皆さんにはうまくいかないかもしれませんが、やってみないとわからないから面白いのです。ヒントになればぜひ自分なりのワザの開発に役立てて下さい。

 まずは体重と体脂肪率の測定について。記録を続けることがダイエットの継続に最も重要な要因であることは間違いありません。でも、記録を継続することほど、一見とても簡単そうで実はとても難しいこともありません。よって、いくつかの工夫が必要になってきます。

 私の場合、足裏で体脂肪も同時に計測できるタイプの体重計を使っていて、これを洗面所の床に置いてあります。洗面所は風呂からでたところにあり、風呂から出たら体をふいて、すぐそのまま裸で体重計に乗るようにしています。

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 床に置きっぱなしだと、邪魔だし、見かけも悪いですが、片付けてはいけません。片付けると、測定のたびに出してきて、また片付けなくてはならないという"行動のコスト"が生じます。行動のコストというのは、簡単に言えば、めんどうくさいということです。些細なことだと思われるかもしれませんが、ほんのちょっとのコストでも行動の継続には大きく影響します。だから、いかに簡単に測定できるように工夫するかが大事です。

 測定は、毎晩、寝る前にやっています。できるだけ同じ条件で測定することが私にとっては大事です。ダイエットのための「やること」をすれば必ず一日でそのぶんの成果がでます。たとえ500gでも"成果"です。ところが測定条件を一定にしておかないと、この成果を測り損ねてしまいます。だから、寝る前に(つまり、一日の食事がすべて終わった後で)、裸で(つまり、そのときに着ている服などに影響されず)、同じ体重計で(つまり、ジムや銭湯にも体重計がありますが、機械による誤差に影響されないように)測定します。重要なのは、測定するたびに、直前に頑張ったぶんの成果が読み取れるようにすることです。逆もまた真なりで、食べ過ぎたときなどは、それがそのまま測定できるようにすることも大切です。

 体重計に乗って自分の体重を知るだけでは、自分の場合、ダイエットの継続には不十分です。記録して、グラフにして、それを目で見て、ようやく効果が現われます。ですので、洗面所の体重計からパソコンのKzokuまでをつなぐシステムが必要になります。最近ではUSBでつながる体重計やKzokuのようにグラフまで作成してくれるゲーム機もあるようですが、私の"システム"は安くてお手軽な付箋とペンです。

Kzoku2009070302

 付箋は100円ショップで購入したもの。ペンはもらいものです。これを洗面所に置きっぱなしにして(片付けてはいけませんよ)、体重計に乗ったらすぐにここにメモします。USBケーブルをつなぐ手間やパソコンを立ち上げる手間は行動コストになりますから要注意です。そして、寝る前の仕事はここまで。後は翌朝、歯を磨いた後に体重と体脂肪率を記入した付箋を切り取って手帳に貼っておき、仕事を始めるときにKzokuに入力します。入力のためにわざわざパソコンを立ち上げるのではなく、立ち上がっているパソコンを使うという点もワザの一つです。

 「やること」の記録はKzokuにそのまま入力することもあれば、システム手帳を使うときもあります。自分は毎日その日にやることをto-doリストとして書き出しています。仕事も遊びもです。

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 その手帳のディバイダー(その日のページに栞代わりにはさんでおくプラスティックのボード)に、「やること」を貼っておきます。宛名ラベルに印刷すると楽です。こうしておくと、わざわざこのためにシステム手帳をカスタマイズしなくても、毎日「やること」をチェックできます。

 これは今週から始めたテニスとクライミングの記録です。

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 こちらは昨年ダイエットしたときに使っていた「やること」です(すみません、ピンボケです)。

Kzoku2009070306

 ふだんからしていて、すでに慣習化している、つまりことさらに努力しなくても継続している他の行動に相乗りしてしまうところがこのワザのポイントです。

 以上、記録を継続するための私のワザからみえてくる、行動分析学的ダイエットの"コツ"、第五弾はこれ。

行動分析学的ダイエットの"コツ" ○体重・体脂肪の計測はできるだけ簡単にする。

○計測した記録を視覚化するまでの手順もできるだけ簡略化する。

○頑張ったぶんの成果が数百グラムまで読み取れるようにする。

○ふだんからやっている、慣習化した行動に相乗りさせる。

 他にもいくつかワザがありますが、汎用性はあまりないかもしれません。今回はそんなレアワザを2つだけご紹介します。

 一つは昼食シリアル法。これは前日に食べ過ぎ、飲み過ぎで体重が増えたら、元に戻るまでは昼食をシリアルだけにする方法です。シリアルといっても、玄米とかブランとかグラノーラなどの、甘くない大人向け商品。これをキャンプ用のステンレス製食器に入れて、無脂肪牛乳に浸して食べます。どうしてもドッ○フードとか○ャットフードのイメージがして、美味しくても大量には食べられません。体重は1-2日で確実に落ちます。お通じもよくなります。"予約"と称して、飲み会の日の昼飯にこの方法を使うこともあります(そうすると、たらふく飲んで食べてもそれほど体重が増えないので、なんだか嬉しい気持ちになります)。

 もう一つはおみやげおっそわけ法。自分は酔っぱらうと帰宅途中でほぼ間違いなくコンビニに立ち寄ります。二日酔い防止のためにウコン系のドリンクを買う、というのは口実で、シュークリームやエクレア、せんべいやカラムーチョなどを大量に購入します。そして帰宅すると、それを0時から1時過ぎまで食べ続け、そのまま寝てしまいます。胃腸にも悪いし、健康にも悪いし、もちろんダイエットにもマイナスです。

 コンビニでの買い物を減らしたり、酔っぱらって帰ったときの間食を減らすトライもしてきましたが、うまくいきません。そこで、買ってきたお菓子を「おっそわけ」用の袋に入れて、誰にあげるかをマジックで書いておくことにしました。自分が食べるぶんも少しは取り(たとえばエクレア1個)、残りを「おっそわけ」袋に入れるのがコツのようです。このワザの成功率もそれほど高くありません。結局「おっそわけ」袋を開けて食べてしまったこともあります。でも、しないよりはましです。

 最近はそのままにしておいた「おっそわけ」袋を1-2日後に捨てるという反モッタイナイ法も併用しています。この間はミスドで買った4つのドーナツのうち2つをその夜に食べ、2つを「おっそわけ」袋に入れてセーブし、二日後に廃棄しました。ちょうど、コンビニ弁当を安売りさせないセブンイレブンに対し、公正取引委員会が排除措置命令を出した日で、ニュースでは食料自給率が低いくせに、コンビニだけで世界の食糧援助の5%、日本全体だと世界の食糧援助の6倍近い食料を廃棄している現状が批判されていたところでした。とても申し訳ない気持ちになりました。この気持ちがうまく喚起できれば、もしかしたら飲んで帰る帰宅途中に余分な食料を購入するという行動を減らせるかもしれませんね。

 さて次回はいよいよこのシリーズの最終回です。テニスやクライミングの上達を目指したセルフマネジメントの成果を公開したいので、来週ではなく2-3週間後にご報告します。

〈第6弾(最終回)へ続く〉

 今週も再びジャンプがありました。昼にマック(ダブルクォーターパウンダーセット+ベーコンレタスバーガー単品)、夜にラーメン+餃子+サービスのライスを食べた成果です。

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 一日三食、毎日30日間、マックを食べ続ける社会派ドキュメンタリー風コメディ映画がありましたが、やはりマックの効果は絶大です。わかっていても、時々、無性に食べたくなるんですよね(ふだんは圧倒的にモスファンなんですけど)。

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 ラーメン屋さんのサービスライスも同じで、「ライスいかがっすか?」と威勢よく声をかけられると、ここで断ったら男がスタるような気がして、それほどお腹が空いていないときでも「はい、お願いします」って頼んでしまいます。ラーメン屋さんにNOと言えない私です。

 それでも週の後半は持ち直してきました。ただし、今日はこれから飲みに出かけますから体重増加は間違いなし。明日は仕事を休めそうなので、そのぶん精一杯運動することにします。

 さて、今日の話はトヨタ式なぜなぜ5回法です。ダイエットのコツというシリーズなのに、なんで toyota? プリウスでエコだから?と気が急くのもわかりますが、しばしご辛抱を。

 トヨタでは何か解決すべき問題が生じると「なぜ?」を5回繰り返して考えるそうです。たとえば、工場の生産ラインでどうしても不良品が減らない。「なぜ?」と調べてみたら、機械の一部に狂いが生じているのがわかった。それを直せば不良品は減った。ふつうならこれで一件落着なのに、ここでさらに「なぜ?」を繰り返す。つまり「なぜ、機械の一部に狂いが生じたのか?」と考える。調べてみると、その機械の定期メンテナンスはついこの間に行われたばかりでそのときには異常は発見されていなかった。そこでまた「なぜ?」を繰り返す。すると、定期メンテナンスの項目に狂いが生じた箇所のチェックが含まれていなかったことがわかる。当然、チェック項目を追加する。そしてそれでも「なぜ?」を止めずにさらに問う。「なぜ、今まで項目の漏れが問題になっていなかったのか?」と。すると、過去にも同じような問題があったのに、チェック項目が改訂されなていなかったことがわかる。そこで、さらに「なぜ?」と問う。すると、定期メンテのチェック項目を改訂することに責任をもつ担当者が配置されていないことがわかる。このラインだけではなく、別のラインでもそうだった。そこで、定期メンテの記録と品質管理のデータをつきあわせ、定期メンテで検査する項目を定期的に改訂するグループを作ったら、複数のラインで不良品が減少した。と、まぁ、こんな感じです(注1)

 最初に"問題"として浮かび上がってくる現象は、本当は氷山の一角でしかなく、「なぜ?」を繰り返していくことで"真"の問題とその原因が見えてきます。"真"の問題を解決しないと、モグラたたきのように問題は生まれ続けます。逆に、"真"の問題を解決してしまえば、その他の多くの問題も消失したり、未然に防ぐことができます。このあたりになぜなぜ5回法の醍醐味がありそうです。

 行動分析学を使って問題解決するパフォーマンス・マネジメントでも実は同じようなことをします。解決すべき問題や達成すべき目標を定めるときに、なぜそれが解決すべき問題なのか、なぜそれを達成したいのか、をとことん突き止めていくのです。

 たとえば、ダイエットの場合(ようやく話がダイエットに戻りました)、目標はたいてい体重や体脂肪率のコントロール(多くの場合は「減らすこと」)ですが、なぜ体重を減らしたいのでしょうか? 医者や家族に「メタボ」と注意されたからですか? 太っているとかっこわるいからですか? 彼氏や彼女が欲しい(モテたい)からですか?

 健康改善が"真"の目的なら、体重を減らすだけではなく、もしかしたらそれよりも、栄養バランスのいい食事を規則的に摂ったり、睡眠時間を十分に確保したり、仕事のストレスを減らしたり、ストレスを解消する遊びを増やしたりすることの方が重要で、かつ、有効かもしれません。そういう生活が送れるようになれば、体重も自然に減少することでしょう。

 モテることが"真"の目的なら、体重を減らすことよりも、出会いの機会を増やしたり(趣味のサークルに参加したり、学生時代の友達との旧交を温めるとか)、会話がはずむように相手の興味を惹きそうなことを学んだり、笑顔の練習をしたり、はたまたそのままの自分を受け入れてくれる人を探したり(mixiなどネットでの出会いが可能になった現在、ロングテール理論は男女関係にも適用されます)、他のさまざまな解決策が考えられます。

 なぜなぜ5回法をダイエットにも活用することで、ダイエットが成功したのにやせ過ぎて病気がちになったとか、頑張って痩せたのに相変わらず一人寂しい生活をするといった、本末転倒の結末を避けることができるようになります。

 それに、"真"の目的がはっきりしてくると、ダイエットのための「やること」にもハリがでてきます。今日バイクを30分こぐことで、三十年後、病院のベッドで寝たきりになる時間を3日間短くできるかもしれません。今このサービスライスに「NO」と言うことで、半年後、深津絵里さんのような女性(注2)と知り合えるかもしれません。

 行動分析学的ダイエットの"コツ"、第四弾はこれ。

行動分析学的ダイエットの"コツ" ○なんのためのダイエットなのか、なぜなぜ5回法を使って自分に問いかけ続けましょう。

○"真"の目的が見えてきたら、そのためにはダイエットするのがベストなのか、それとも他にもっとすべきことがないかどうか見直しましょう。

○それでもダイエットすることになれば、ダイエットのための「やること」と"真"の目的とを結びつけて、日々のダイエットにハリを持たせることに使いましょう。

 私の場合、ダイエットの目的はというと、テニスで体が動くようになったり、腕や腰の故障が少なくなったり、クライミングで今は登れないルートが登れるようになることなんです。そうなった方がモテそうだな(かっこ良く思われそうだな)ということもありますが、どちらかというと負けず嫌いで、試合に負けるのが嫌だったり、誰か他の人が登れちゃったルートが登れないのが悔しかったりすることの方が強いみたいです。

 ということは、実は単純にダイエットするよりも、テニスをする時間を増やしたり、試合で勝てる機会を増やしたり(そもそも試合に出る回数を増やし、さらに自分のレベルにあった試合にでること)、クライミングの練習の回数を増やすことが"真"の目的の達成のためには重要そうです。そして、こうした目標が達成できれば、自然と、体重や体脂肪率は適正レベルまでコントロールされるはずです。

 次週はなぜなぜ5回法を適用して自分のダイエットを改訂してみます。

〈第5弾へ続く〉

(注1)なぜなぜ5回法に限らず、トヨタのマネジメント技術については多くの本が出版されています(たとえば、若松義人氏の『トヨタの上司は現場で何を伝えているか』(PHP新書)など)。定期メンテの例はそうした図書を参考に私が創作した喩え話です。

(注2)好きなんですよねぇ。『若者のすべて』の頃から。

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 まずは今週のマイダイエット報告から。

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 Kzokuのグラフを見ていただくとわかるように、今週も順調に体重が減りました。一カ所グラフがジャンプしているところは、日曜日に開催された学会の懇親会で学生にそそのかされ、柿の種をたらふく食べてしまい、その後、テニスを3時間する予定が雨で1時間しかできなかったのに、さらに調子にのってファミレスで2,600円ぶんも食事をしてしまったためのリバウンドです(フ〜)。でも、その後は順調。1週間に1度の暴走なら、どうやらすぐに元に戻るようです。

 今のところ、やっていることは、毎日の体重と体脂肪率の測定と「やること」の記録だけです。カロリーを計算したり、絶食したり、食事制限したり、サプリを飲んだりはしていません。

 もちろん、自分のダイエットをこうやってプロジェクト化し、ブログで公開し、大学の授業でも学生に紹介していますから、自分ひとりで取り組んでいる状況とはずいぶん違います(法政大学の「行動分析学」という授業では受講生全員がそれぞれセルフマネジメントのプロジェクトに挑んでいます。学生さんにやらせるだけでは説得力がないので、私も何かしらのプロジェクトに一緒に取り組むようにしているんです)。

 自分ひとりで記録しているだけなら「やること」ができなくても、体重が減ったり増えたりしても、それを知ることができるのは自分だけです。でも、こうやって、自分の行動の記録をネット上の不特定多数、そして授業を受講している特定40人くらいの学生たちに公開すると、「やること」ができなかったり、体重が減らなかったときにも隠しようがありません。うまくいかないと"恥ずかしい"と思うような状況を作り出しているわけです。うまくいったときに"どうだ、すごいだろ!"と人からの賞賛を呼び寄せる仕組みであるとも言えますが、個人的には恥ずかしさの回避の方が大きいような気がします。

 自分で自分の行動記録をみることがどのくらい自分の行動に影響するか、行動記録を他の人に公開することがどのくらい自分の行動に影響するかには大きな個人差があります。自分で「やろう」と思い立ったことができないときにどのくらい"残念"に思うか(そんな状況を避けようとしてやるべきことをやれるか)、できたことを他の人から承認してもらえることがどれだけ"嬉しく"感じるか(そのために頑張れるか)は、生まれてこのかたどのような発達・学習をしてきたかによって、それからもしかしたらある程度は遺伝的にも、決まってきます。

 大事なのは、こうした個人差は「できないときにはもっと恥ずかしく思わなくては」と"反省"することで変わるものでないということです。"気持ちの持ちよう"で変わることでもありません。だから、逆に言えば、できないからといって自分を責める必要はありません。いくら責めても変わらないからです。

 目標が達成できなかったり問題が解決できないときに、それを人の能力や性格のせいにして他に解決のためのアクションをとらなくなってしまうことを《個人攻撃の罠》と呼んでいます。ダイエットがうまくいかないと「自分はだめなんだ」と"自己嫌悪"に陥ってあきらめたり、逆に過食してしまう人もいます。これも個人攻撃の罠の一つです。

 罠にはまったら(普通の人なら必ずハマります)、まず罠にはまったことを認識すること、そしてハマりながらも、同時に、能力や性格以外の要因を見つけていくことができれば、罠から抜け出すチャンスが見えてきます。

 行動分析学では行動の原因を (1) 遺伝、(2) これまでの発達や学習、(3) 現在の状況の3つの要因に分けて分析します。「能力」や「性格」と言われる特性は最初の2つによって形成されます。ここには気持ちの持ちようや少々の工夫で変わる余地はほとんどありません。何しろ遺伝は何十・何百世代前からの学習、過去の発達や学習も年齢ぶんの(45歳の私なら45年ぶんの)"実績"がありますから、そうそう簡単に覆せるものではないのです。「三つ子の魂百まで」という格言も、少し大げさだけど、部分的には真実なんです。

 ダイエットの記録を公開することによる"恥ずかしさ"や"誇らしさ"の強弱はまさにこうした不可侵領域にある特性の一つです。だから、"恥ずかしさ"が弱いことに自己嫌悪しても仕方ありません。できることは、自分で自分の特性に気づくことと、その特性をできるだけ活用することです。

 行動分析学的ダイエットの"コツ"第一弾では「記録から自分の傾向を知りましょう」と書きました。自分の行動を記録しながら、さまざまな工夫をして、成功と失敗を繰り返すことで、自分の行動を継続するために有効な要因とそうでもない要因が見えてきます。たとえば、Kzokuで記録をつけるだけでは不十分でも、Kzokuのダイエット日記にコメントを書込んでもらうように友達にサポートを頼んだらうまくいくのなら、あなたは不特性多数の人より、特定の友達にどのように思われるかの方が有効な要因だと言えます。友達の目があってもうまくいかないけど、自分で自分にご褒美を用意することで(たとえば、目標体重に達したら新しいiMacを買うことにするなど)、うまくいくなら、あなたには人の目よりも欲しいモノの方が有効ということになります。何が有効なのかは人それぞれ違います。私の場合は(どうやら自分で思っているよりも)人の目を気にするようです。

 自分の特性がわかってくると、どうすれば自分の行動を継続できるかも見えてきます。「三つ子の魂百まで」が部分的にしか真実ではないのは、自分の特性を知り、行動の法則にそれをあてはめて、上記の最後の砦である「(3) 現在の状況」を工夫すれば、《行動は変わる》からです。

 行動分析学的ダイエットの"コツ"、第三弾はこれ。

行動分析学的ダイエットの"コツ" ○体重や行動の記録を他の人に公開することで、うまくいったときの誇らしさやうまくいかないときの恥ずかしさを自分の行動継続に利用しましょう。

○ただし"誇らしさ"や"恥ずかしさ"がどのくらい有効かは人によって異なります。だから、継続に取り組みながら自分の特性を見つけて、それを活用しましょう。

 行動分析学的ダイエットの楽しさの一つには、ダイエットをしながら、自分でも気づかなかった自分に出会っていくことかもしれませんね。 

 そうそう。今週はKzokuからこんなメッセージが。

 こういうサプライズで継続を強化する試みも仕組んであるんです。

120kaikzoku

 

〈第4弾へ続く〉

 今週から体重と体脂肪率と行動の記録をKzokuを使って再開しました。Kzokuでは「やること」をチェックリスト形式で登録し、こんなふうに毎日記録していきます。

Kzokutodolist20090612

 「やること」は自分で決めてもいいし、"プランNavi"を使って専門家が提供しているコースから選ぶことも可能です。「メタボ改善プラン」とか「モデル体型じっくりコース 」とか、50以上の様々なプランが用意されています。

 「やること」を記録していくと、やろうと思ったことがどれくらいできたかが表示されます。体重・体脂肪率とは別の棒グラフに。Kzokuではこれを"ヤッターモニター"と呼んでいます。いわゆる"視える化"の技術です。

Kzokuyattarmonitor20090612

 ダイエットの継続は、体重や体脂肪率が目に見えて減らないときが一番難しくなります。そんなときでも行動を記録してヤッターモニターで確認すれば継続しやすくなります。ダイエットのように、行動を継続していけば累積的な成果がでるのに1回の行動(たとえば腹筋を20回するとか、駅の階段を一気に駆け上がるなど)では目に見える成果がでない状況を"塵も積もれば山となる"型と呼んでいます。こうした状況では、その成果の重要性を頭では理解していても、そのための行動は継続されにくいことが行動分析学の研究からわかっています。

 わかっちゃいるのに続かないという問題があれば、その背景に"塵も積もれば山となる"状況があるとみて、ほぼ間違いないことでしょう。

 "塵も積もれば山となる"状況を打破する方法の一つが行動の記録を視える化すること、そして1回の行動によって記録が確実に変化するように記録の仕方を工夫することなんです。

 岡田斗司夫氏の『いつまでもデブと思うなよ』で話題になった"レコーディングダイエット"などは、このコツを活用している一例と言えるかもしれません。

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 ただし、継続するためには何がなんでも記録すればいいというわけではありません。記録することによって、行動が目に視える成果を生みだすように仕組むところが肝心です。

 そして、これはダイエットだけではなくて、会社で目標を達成するための努力をしたり、志望校合格のために勉強したり、CO2削減のために節電したり、幸せな家庭を築くために夫婦間で相手を思いやったりすることにも応用できる行動分析学のコツの一つです。

行動分析学的ダイエットの"コツ"、第二弾はこれ。

行動分析学的ダイエットの"コツ" ○ダイエットにむけて何か望ましい行動をしたら、それが目で見てわかる方法で記録を取りましょう。

 最近話題のインサイトやプリウスなどのハイブリッドカーにはエコ運転を促進するための行動支援システムがついています。ゆっくり発進したり、加速していれば「エコ」のライトが点灯しますが、急にアクセルを踏み込めばたちまちレッドカードを突きつけられます。エコ運転のフィードバックがなければ、急発進や急加速の結果は"塵も積もれば山となる"状況で燃費の悪化につながります。だからこうした行動はなかなか減らせないのです。ところが1回の急発進や急加速に、目に視える形で燃費の悪化やCO2の増加をフィードバックすることで行動は変わります。

 さて、私のKzokuプロジェクトです。今週はまずは記録をとることに専念しました。行動分析学では、問題を解決する前に現状を把握することを重視します。そして、そのために解決策を導入する前に記録を継続してとって分析します。これを"ベースライン"と呼びます。

Kzokuperformancemonitor20090612

 上のグラフからわかるように、この5日間、体重は減少傾向にあります。このプロジェクトを始めて、記録をつけ始めたことで、夕食後、寝るまでの間に食べていた間食が減りました。ところがこの成果に油断して、昨晩は23時過ぎにビール3本飲みながら、カラムーチョ、いかなんこつ、亀田の柿の種をたいらげました。さっそくのリバウンドです。今晩、体重計に乗るときにそれがわかるはずです。

 次週も引き続きベースラインを取り、現状分析をして、ご報告します。 

〈第2弾へ続く〉

 2年前から共同研究を進めてきたキー・プランニング社のダイエット支援サイトKzokuがあのlivedoorからも利用できるようになりました。

Livedoordiet

 過去1年間にわたる体重・体脂肪率のグラフがPCから見れたり、携帯からもグラフ表示やメッセージ受信、コメントの読み書きなど、PCとほぼ同等の操作が可能になるプレミアム機能の提供も始まりました(有料)。

 365日のグラフ見たさに、自分はさっそくプレミアム登録しちゃいました。

Kazoku200901

 今回はこうした正式サービスのスタートを記念した(不)連続シリーズで《行動分析学的ダイエットの"コツ"》をお届けします。(不)が取れるかどうかは、毎週〆切を守ってブログを更新できるかどうかにかかってます。ダイエットではありませんが、これもKzokuですね(Kzokuはケーゾク、継続のことです)。行動分析学が机上の空論ではないことを身をもってお伝えできればいいのですが...

 さて、上のグラフです。

 去年は真夏の一番暑い時期に炎天下でテニスをして、熱中症になりかけたんです(死ぬかと思った)。その後ずっと運動を控え、家でクーラーをがんがんにかけながらピザやスルメいかを食べていたことで激太りしました。

 そこで8月の終わりからKzokuを使ってダイエットを始めました。上のグラフからは、およそ3ヶ月かけて3kgほど落としたことがわかります(黄色い折れ線)。家庭で体脂肪率を正確に測定するのは誤差が大きくて難しいものですが、それでも長期的にみれば体重の低下に伴って下がっていったことがわかります(緑の折れ線)。

 今年は3月の終わりからダイエットを開始しました。自分の場合、いわゆる"正月太り"が2-3月くらいにあらわになります。腹回りがたるんできて、ズボンがきつくなり、テニスでも動きが鈍くなってきます。桜の開花宣言が西から次第にやってくるようにだんだんと、でも確実に。

 そのうち、いよいよ「これはヤバい」と思うようになります。これが連休前あたりです。夏までになんとかしようと思い、ダイエットを始めます。この季節周期は、もっと昔のデータも表示できれば、たぶん一目瞭然でしょうね(K社長、これまでのすべてのデータを表示する「ライフスパン」機能を追加して下さいよぉと、何気にリクエスト)。今年は1ヶ月でおよそ1kg落とした後、まさかの新型インフルエンザか?と案じた風邪をひいてしまい、ダイエットを中断し、今日に至ってます。

 せっかくなんで、この機会に再開するぞ〜

 行動分析学的ダイエットの"コツ"、第一弾はこれ。

行動分析学的ダイエットの"コツ" ○記録を取りましょう。
○記録を残しておきましょう。
○記録から自分の傾向を知りましょう。

 ダイエットに取り組む「オン」の時期と、ダイエットをしない「オフ」の時期があってもいいですから、ケーゾクし損ねても、また始めましょう。

 どういうときにダイエットできて、どういうときにダイエットできないか。ケーゾクし損ねたときの記録から自分を知ることが、のちのちプラスになってきます。

〈第2弾へ続く〉
パフォーマンス・マネジメント―問題解決のための行動分析学

このたび法政大学大学院ライフスキル教育研究所主催で、標記の特別セミナーを開催することになりました。

社会人を対象にした、企業や官公庁、病院、施設、教育機関などで、問題を解決し、目標を達成するための、パフォーマンスマネジメントの方法とその基礎にある行動分析学の考え方を学ぶセミナーです。

セミナーは1回の集合研修と全9回の研究会から構成します。集合研修で学んだことを、参加者それぞれのフィールドで実践していただき、研究会では、その経過や成果を発表し合いながら人を動かすスキルを深めていただきます。集合研修への参加は必須ですが、研究会への参加は任意です(毎回参加できなくてもokです)。インターネットの掲示板などを駆使し、参加者間の情報のやり取りや講師とのQ&Aの機会も設けます。

「職場でパフォーマンスマネジメントを実践してみたい」、「本で読んでやってみたけど、うまくいかない」、「人を動かす科学的な方法について学びたい」という社会人の方々、どうぞ奮ってご参加下さい。

 お申込みやお問い合わせは法政大学エクステンションカレッジからどうぞ。

【題目】
 法政大学エクステンションカレッジ特別セミナー:パフォーマンスマネジメント−人を動かす行動分析学ー

【日時】
 第1回:集合研修 2009年5月9日(土)9:00-17:00(必須です)。
 第2回-第10回:研究会 下記の日程の10:00-12:00(すべて土曜日。参加は任意です):2009年6月13日、7月25日、8月22日、9月12日、10月10日、11月14日、12月19日、2010年2月20日、3月27日

【場所】
 法政大学市ヶ谷キャンパスボアソナードタワー11F心理学実験室。

【講師】
 島宗 理(法政大学文学部心理学科教授)および大学院生のスタッフ。

【参加費】
 ¥50,000。

【定員】
 先着15名。

【事前課題】
 集合研修の前に取り組んでいただく事前課題があります(4/10前後にここに掲示します)。

今年の抱負2009

明けましておめでとうございます。

昨年の抱負で「ブログ更新はそこそこに」と宣言したとおり、ほぼ放置状態だったこのブログですが、4月には復帰します。とにかく、3月末に学科主任の任期をまっとうするまで、もう少しの我慢。

さて、昨年の抱負を振り返ると...

(1) 心理学科の仕事
 前任者のT嶋先生には、平均すると週に10時間くらいの仕事量と申し送りされましたが、ほぼその通りでした。忙しいときには、ほぼ毎日2-3時間は学科の仕事に追われたかな。仕方ないです、これは。あと、もうちょっと、頑張ります。

(2) 研究教育体制の改善
 授業改善はどの授業でも少しずつ進めました。受講生が30名以上いる授業ではマークシートによるミニクイズを導入したのが大きな改善点です。出席をとるより合理的だし(出席しても内職したり、寝たり、携帯してたら意味ないし)、教育的だと思います(受講生たちは、かなり勉強してくれています)。

(3) 著書の執筆(1冊)
 ごめんなさい。

(4) 論文の執筆(1本)
 なんとか達成。

(5) 学会の仕事
 日本行動分析学会、年次大会でのワークショップを学校心理士の継続ポイント対象とするなど、研究教育推進委員会で仕事をさせていただきました。査読もずいぶんやったなぁ〜。

そして、2009年の抱負です。

(1)  著書の執筆(2冊)
 編集者の方々に謝り続けて早○年(←怖くて○が埋められない)。
 今年は書きます。優先順位第一位にします。

(2) 研究教育体制の改善
 学部生も院生も、卒論・修論への取り組みがものすご〜く遅れました。課題リストやチェックリスト、各種の課題は準備できていて、提供しているので、それで安心していたのがまずかったのかな。ゼミ生が、こうした教材を使って、自分で研究や執筆を進める行動はなかなか自発されませんでした。
 いよいよ登場してくる本格的ゆとり世代を迎え、こんな状態では学生にとっても、私にとってもストレスがたまる一方で、ちっとも楽しくありません。研究とはそもそも楽しいことなのに....  よって来年度は大きな改善を計画します。場合によっては「要求水準を下げる」という禁断の一手にも踏み込むかも。

(3) 論文の執筆(2本)
 (1)とあわせ、今年は自分の執筆行動を増加させます。

(4) ライフスキル教育研究所の仕事http://psy.i.hosei.ac.jp/modules/menu/index.php?id=17
 教員対象のサマースクール(徳島のサマースクールの法政バージョン)と、企業向けのパフォーマンスマネジメントの講座を実施します。

 以上。

 さて、このブログについて。

 このブログは主に行動分析学に関する情報を広めるために始めたものですが、だんだんとゆるめな記事も増えました。自己観察するに、行動分析学に関することは、授業やプロジェクトの掲示板などで内々に書いて、ここではもっと一般的なこと(くだらないこと、信頼性の低いこと、根拠のない主観的な意見も含めて)を書くように、執筆行動が分化しているようです。

 今年はこの自覚を元に、さらにゆるめに更新していきます(内容も、頻度も)。

 

学部の「行動分析学」という授業では受講生にセルフマネジメントの実習をしてもらっています。

今年は自分も一緒にセルフマネジメント。テーマは「目指せ、印税生活!」。

今週から
○早起きして通常の仕事を始める前に執筆する(執筆→仕事のプレマック的強化)。
○blogMeterで執筆文字数を表示する(社会的強化)。
という介入を開始しました。

ブログの執筆はカウントしません。論文と著書のみ。

なのでブログの更新回数は(たぶん)増えないと思います。


Kzkokuhachikara

株式会社キー・プランニングのダイエット支援システム"Kzoku"(ケーゾク)のβ版が公開されました。

新規ユーザー登録・ログインはこちらから。

このシステムにはセルフマネジメントに関する行動分析学のノウハウがたくさん組み込まれています。達成目標と行動目標の明確化、記録の視覚化、自己強化や社会的強化などなど.... 共同研究の成果が活かされています。

うちの研究室では、今年度ゼミ生2名がこのシステムを使った卒論研究に、3年生5名が演習でのプロジェクトに取り組んでいます。

β版の公開とともに、一般ユーザーのご意見やご感想を活かした、さらなる改善を進めていく予定です。

なお、私は、ダイエットではなく腰痛予防にこのシステムを利用しています。毎日、(1) 起床時のストレッチ、(2) 腹筋100回、(3) ジムやテニスなどの有酸素運動、(4) 運動後のストレッチとアイシングを「やること」として設定し、その日の腰の痛みを10段階で評定しています。

5月の終わりに強度のぎっくり腰をやってしまい、その後、痛み評定が6-8の日々を送っていました。上記の「やること」のマネジメントがうまくいくようになってからは、痛み評定が2-3の範囲に収まってきています。

今後が楽しみなツールです。

皆さんも、ぜひ使ってみて下さいね(あ、いまのところはすべて無料のサービスです!)

Drunksaver

年末年始に飲み過ぎて胃の調子が悪くなったので、少しお酒を控えることにした。

飲み会で飲まないのは男の恥という文化で育った世代にとっては「ウーロン茶」は当然NG。

そこで、一回の飲み会で飲んでもよしとする酒の量の最大値を決めることにした。

いつもなら中ジョッキ7-8杯。んでもって悪のりすると、そこから焼酎とかを3-4杯頼んでしまう。悪のりする手前でストップできるように最大値を5杯とした。

これを守るための支援ツールが“ドランクセーバー”(仮称)。使い方は簡単で、酒を1杯頼むたびに、シールを1枚はがして箸袋などに貼っていく。シールがなくなったら終わり(TEACCH的構造化ですね)。

今のところ二勝一敗。その一敗も+1杯の超過で済んだ。胃の調子も上向き。

ただし、社会的妥当性は低い。たくさん飲んで盛り上がりたい人にとっては、しらけグッズになりかねない(自分は量を飲まなくても盛り上がれるから問題なしなんだけど)。

自分にとっては視覚的に提示しつつ、回りの人にはばれないように改良する余地あり。

看護士を対象としてリーダーシップ研修をやってきました。愛知県看護協会が認定している「摂食・嚥下障害看護」に特化したプログラムの一部として協力させていただいている授業で、自著『パフォーマンスマネジメント』を教科書に、職場でパフォーマンスマネジメントのプロジェクトをリーダーとして実施できるようになるというのが最終目標です。

授業時間数は3コマぶんなので時間的には厳しいのですが、受講生の皆さんがとても熱心で、事前課題(用語の定義を書き出したり、強化や弱化の例を職場で見つけたり、パフォーマンスマネジメントが必要と思われる問題について分析したり)はほぼ完璧にやってこられます。そのせいか、教員対象のサマースクールでもやってる用語ゲームでは、最初のパフォーマンス(1分間あたりの正反応数)にすでに大きな差があったりします。

正月太りからのリカバリプロジェクトが完了した。

目標体重に達していないと飲み会で飲めないという行動契約の効果が示され、体重はほぼ目標通りに減少した(機会あたりの目標達成率は9/10=90%)。

Diet2006weightresults

日々の運動量と余分なカロリー摂取量は、3月の最終週から4月前半にかけての引越期間ではさすがに乱れたけど、目標体重を設定していない4月になってからは(フォローアップ期)、運動量が減り、余分なカロリーの摂取量も増えているのに体重は安定している。3月前半までのトレーニングで基礎代謝が上がったのかな。

Diet2006behavioralresults

今後は体重だけ測定し、危険区域(70.0kgに設定)を超えたら元に戻るまで酒・間食をストップするという単純な随伴性で維持を狙おう。

大成功ですぞ! \(^o^)/

研究室と実験室の荷造りを2日間かけてようやく完了した。11年の年月はさすがに長く、出てきた資源ゴミの量は笑えないほど大量だった。

今回の教訓

・クリアファイルはできるだけ使わない:
 研究会やプロジェクトの資料などを保存していたのだが、ファイルして数年たっても再利用しない資料がいっぱい(ほとんど?)だったので、今回すべて処分した。そのとき、フォルダーから書類をいちいち抜き出す作業がとてもたいへんで、結局、バイトを雇った(さんきゅう、まなぶ)。
 今後はクリアフォルダは定期的に閲覧して、入れ替えるような資料(住所録とか連絡先一覧など)に限定しよう。

・クリップもできるだけ使わない:
 会議資料など、ことごとくクリップ留めしていたので、これをはずす作業もたいへんだった(さんきゅう、まなぶ)。会議資料などは後から読み直すことも少ないので、最初からクリップをはずして箱に地層式に積み重ね、日付を示す仕切りだけを紙で挟み、数年後に必要がなくなったらそのまま廃棄できるうようにしよう。

・論文にならないデータ:
 三年以上論文にならないデータはきっといつまでたっても論文にならない。思いきりよく捨てよう。

・論文につながらない文献のコピー:
 いつか役に立つだろうと思ってコピーした文献も堆積していた。今は電子ジャーナルも充実し、研究室のどこかに埋まっているコピーを発掘するよりオンライン検索した方が圧倒的に速いはず。文献コピーは執筆中の原稿に使うものにできるだけ限り、その他の文献は読み終わって、使い終ったら迷わず廃棄しよう。


以上。

GDP(国内総生産)などのマクロな経済指標を国の成長の目安とするのは果たして適切なのだろうか?

日経新聞(2006.3.11)の「大機・小機」という囲み記事に興味深い指摘があったので、そのまま引用する。
内外の経済学者の研究によれば、1970年代前半ころまではGDPの拡大と人々が実感する「幸福度」の間には密接な関係が見られたようだ。しかし、その後は環境破壊や犯罪、事故などの「社会的費用」を考慮すると、少なくとも先進国ではGDPと社会的な厚生(幸福度)の間に乖離が生じ始めているという。

たとえ自然破壊が続いてもGDPは上昇するし、ボランティアする人や家庭での団らんが増えてもGDPには影響しない。そういう幸福度と関係が薄い指標を国の施策の中心に置くことは再検討する必要があるという主張だ。

パフォーマンスマネジメントでは何を指標とするかという焦点化(pinpoint)が最も重要だとも言われている。それは国政でも同じだろう。

国政に使えるレベルの幸福度の指標の開発は、まさに心理学者に期待されている仕事のような気がする。

正月太りから回復するためのパフォーマンスマネジメント。この期間(1〜3月)は季節的にまだまだ太りやすい時期だし、今年は送別会などのヘビィな飲み会がたてこんでいる。ダイエットにとっては、まさに二重苦。そんな悪環境を敢えて乗り越えるために、次のプログラムを導入中。

(1) 体重を測定(できるだけ毎日)。

(2) 通常の食事以外に摂取した間食やお酒の量をポイント数で毎日記録。

(3) 毎日の運動量を記録。

(4) 次の飲み会までの目標体重を設定し、達成しなければその飲み会ではお酒が飲まないという自分への約束。

(5) (1)から(3)までをグラフにして経過を見る。

飲み会で酒が飲めないなんて、自分にとっては地獄のような状況。これを回避するために飲み会の日以外はほとんど間食をやめられている。下のグラフの赤い線が運動量で、黄色い線が間食量だ(飲み会の日は無制限勝負なので記録はなし)。

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そして、そのせいで体重も減少中。下のグラフの赤い線が体重で、黄色い線が目標体重である。

pm-diet-weight-0603

テニスやクライミングするにも、カラダが軽くなってきて、とても動きやすくなっている。いいカンジ。このまま理想体重まで落とし、維持プログラムへ移行するのがもくろみです。

「片づけられない女性たち」(日経新聞 2006.2.16)仕事に追われるうちに机の上は書類の山。「いつか整理を」と思いつつ、乱雑さはひどくなるばかり。こんな「片づけられない女性」がオフィスで目に付く。

収納カウンセラー(面白い仕事があるものだ)の飯田久恵さんによればオフィスが片づかない主な原因は以下の通り。

▽ソフト面

・整理法など片づけ方が不明確

・物が増え、片づけられる範囲を超えた

・仕事が多忙で片づけに時間が割けない

▽ハード面

・収納スペースが絶対的に不足

・収納用品のサイズが合わず使いにくい

・収納場所が席から遠く行きにくい

大学院の演習では3人の女性が「片づけ」のセルフマネジメントに取り組んだ。たとえばMZさんは食後すぐに食器を片づける行動を標的行動にし、片づける場所を確保し、旦那さんからの声かけをしてもらうことで目標を達成。しかも旦那さんの声かけをフェイドアウトしても片づけ行動は維持された。

pm_kataduke1

MGさんは郵便物の整理に取り組み、やはりゴミ箱の位置を変えるなど、片づけ行動が簡単にできるように環境を整備することで成功した。

pm-kataduke2

“片づけられる女性たち”とは、片づけ行動が強化されるように環境を設定できる女性--ということでしょうか。

shogatubutori

今学期、障害児教育臨床演習という大学院の授業では、

(1) 解決したい問題を行動として定義し、
(2) 原因と解決策をABC分析し、
(3) 実際に行動を測定しながら、
(4) 解決策を実施して、
(5) その効果をグラフとして視覚化して評価し、
(6) 改善していく。

という問題解決のための科学的手法を、受講生がそれぞれ興味のあるプロジェクトを進めることで演習している。

次々と目標達成を報告をする受講生を見ていて若干羨ましくなり、自分も体重と体脂肪率のマネジメントをすることにした。

12月にベースラインの測定を始め、そのまま正月に突入(正月は測定もしない無法期間)。

本日、今年初めて体重計に乗ったら、がび〜ん。風呂に入るたびに、うすうす気づいてはいたものの、まさに正月ぶとりである。

今週いっぱい我慢して、来週から介入を始めようっと。

bigbillp

中国の人は細身の人が多い。これに比べると米国人は肥満だらけ。日本人も気をつけないとたいへんなことになる。
(ちなみに自分は出張中毎晩のように飲んで食べていたのに体重を3kg落とし、帰国後すでに2kgリバウンドした。中国4000年の歴史は奥深い)

なんて話を旧友のBill Potterとしていた。あまりにしつこく感じたのか、そんなに言うならダイエットするから協力しろということになった。

帰ってからすぐにメールが届いた。本気らしい。

Hi Satoru! Hope the trip back was a good one - mine was long but
uneventful, except for some turbulence. So, I have weighed myself, and it
comes out to 210.6 lbs, or 95.53 Kg. Yikes! I should probably weigh in the
area of 190, so about 20 lbs overweight. I will check in occasionally and
you can prompt me. I am trying to incorporate a bit of exercise in my daily
schedule, and to cut out the sweet stuff.

海を越えてのセルフマネジメントサポート。はたしてうまくいくかどうか。

とりあえずベースラインです。

ちょっとした工夫で行動がガラっと変わるローテクが好きだ。

井上雅彦先生(兵庫教育大学)のブログにもある“結構笑える工夫だが意外と効果有り”っていうやつ。

この手のローテクはセルフマネジメントにも使える。

たとえば、これ。

coffe_prompt

自分の場合、毎朝、研究室で仕事を始める前に美味しい珈琲を飲むのが日課。これがないと一日調子が悪く、不機嫌になる。

ところが豆がきれても、夜、買い物に行くときになると忘れてしまうことがある。翌朝、研究室に着くと豆がない。珈琲が飲めないことに加え、こんな大事なことさえ忘れてしまう自分に腹を立て、不機嫌度は数倍に。

そんなときには、クルマのスピードメーターのところにこんな付箋をプロンプトとして貼っておく。

「コーヒー買いに行くこと」。

これだけで問題解決。

Enjoy Old Age的なハウツーだが、これで快適な一日が過ごせる。

discretionaryeffort-ADI

去る7月の日本行動分析学会で開催された、ダーネル・ラッタル(Darnell Lattal)先生の公開講座で話題になった『自発的努力(Discretionary Effort)』 についてのフォローアップ。

『自発的努力』とは、いわゆる正の強化には「やりたいから自分から進んでどんどんする」というプラスの効果があるが、負の強化には「やりたくないけど、最低限必要なことだけをする」というマイナスの効果があるという考え方だ。

公開講座のときにフロアからの質問にラッタル先生が答えていたように、科学的に証明された厳格な法則というよりは、経営者や管理職などに正の強化の大切さを伝えるためのプレゼンツールであると考えた方がいいだろう。

この図はわかりやすくてインパクトがあると思ったので、引用できる文献について後でラッタル先生に質問したのだ。

そこで判明したこと。

『自発的努力』の考え方やこの図は、オーブリーダニエルズ・インターナショナル社(以下、ADIと略記)が著作権と商標を獲得しており、ADIに無断で商用利用することはできないようになっている(ライバルのコンサルティング会社がたびたび同社の知的財産権を侵害することをしたためこのような措置をとったらしい)。

ADIは行動分析学やパフォーマンスマネジメントの考え方が世の中に広まっていくことにはもちろん積極的である。ラッタル先生のご好意で、以下の情報をいただいた。『自発的努力』の概念や図を引用する場合には参考にしていただきたい。

一人あたりの年間医療費。最も高い北海道赤平市が69万円。これに対し、同じように高齢化農村である長野県泰阜村は45万円(全国平均の約6割)。

全国の高齢者一人あたりの医療費を泰阜村レベルに抑えられれば、年間4兆円の医療費削減につながるという(日経新聞, 2005.9.6)。

まさにこれがギルバートが Human Competence (T. F. Gilbert, 1978, McGraw-Hill)で提唱したPIP(Performance Improvement Potential:業績改善可能性)の考え方だ(日本語では『経営革命大全』という本の中で紹介されています。日経新聞社)。

まずは組織にとって重要なパフォーマンスの指標を選び、次に中でもばらつきの大きい(個人差、チーム間の差、そして地域差など)ものを見つける。

そして、ばらつきの原因を分析し、優れたパフォーマンスを示しているところの条件や方法をそれ以外のところに適用すれば、PIPとして見積もった業績改善が期待できるというわけだ。

去年の夏のプロジェクトの成果を竹田さんが地域に展開中! エアロビのクラスのメンバーに呼びかけ、記録を取り、公表し合って、ダイエットのパフォーマンスマネジメントに挑戦している。

竹田さんが気がついたように、セルフマネジメントの難しさは、セルフマネジメントを続ける行動をどうやって強化するか、にある。

友達や同僚など、同じ目標を持った“仲間”を強化のリソースとして使うというアイディアは、実は、グループセラピ−とかソーシャルサポートという形で、伝統的なカウンセリングでもよく使われるテクニックだ。

行動分析学からアプローチすると、記録のフォーマットとか、報告の仕方とか、社会的強化の工夫とか、かなり構造化したプログラムが組めるはず。

仲間からの承認が好子として機能するのか、それとも目標を達成できなくて“恥”をかくのを避けるように随伴性が作用するのかはよくわからない。そうした違いを生む変数がわかると、ドロップアウトも減らせるだろうし、参加した人たちが別のグループで同じような取り組みをするようになる確率も増やせるかもしれない(竹田さんがゼミの課題から自分の生活へとプロジェクトを自主的に展開したように)。

竹田さんのダイエットプロジェクト。今後もいよいよ見逃せない(^^)。

パフォーマンスマネジメントのコンサルテーション会社の老舗である Aubrey Daniels International の Darnell Lattal博士による講演会が開かれます。

 日時:2005年7月29日(金) 16:40-18:10
 場所:ホテルレイクビュー水戸
    常磐大学(茨城県水戸市見和1-430-1)
    【訂正】29日の会場は上記ホテルになります。

日本行動分析学会第23回年次大会の公開講座として予定されている企画です。学会の会員以外でも参加できますので興味のある方は、大会のHPをご参照下さい。

プログラムには「通訳:島宗理」とありますが、これは手違いで、実際には通訳ではなく「解説」を担当します。

今朝、発表用のパワポが届きました。パフォーマンスマネジメントを使ったコンサルテーションがどのように行われるか、また現在の課題はどこにあるのかが話題になるようです。

乞うご期待。


DarnellLattal

システム手帳を使い始めて20年。A4の自家製版を作ってみたり、ザウルスやシグマリオンなどのPDAに浮気したこともあったけど、結局、バイブルサイズの手帳が収まりがいいようだ。

リフィルで使っているのは見開きの月間カレンダーのみ。あとは白紙を日別の行動計画表や月間目標、年間目標、プロジェクトごとのメモなどに使っている。

困ってしまうのが、下の「見開き月間カレンダー」。たいていは1月始まりで売っているので、2005年は12月までしかない。

re_diary34


仕事のスケジュールって年度毎にたてるわけで、来年1〜3月の予定を書き込みたくてもカレンダーがない。まだ売り出してもいないみたい。

Bindexさん、なんとかして下さいな。

元記事(忘れることの対策@応用行動分析学&特別支援教育探求道)。

30代半ばをちょっと越えたあたりから、物忘れがひどくなってきた。

“老化”ではない!と声を大にして言いたいが、「否定(denial)は老化の初期症状」と誰かさんに指摘されそうなので、控えめに。

自分の場合、まず人の名前がでてこなくなった。仕事の性格上、これはとても失礼にあたったりする可能性があるので、なんとかしたいところだ(「あいうえおかきくけこ....と小声で唱えているときは、なんとか名前を自発しようとして補助的刺激を与えているときです」)。

まずは“老化”以外の解釈:

 仕事でも趣味でも新しく知り合う人が急増した。日常的にコミュニケーションをとる人が100人以上になったくらいから、新しく知り合う人の名前を“自然に”は覚えられなくなり、かつ、すでに覚えていたはずの人の名前が顔を見てもでてこなくなった。

 → 知り合いの数が増えるにつれて、一人あたりのコミュニケーション回数や時間は反比例して減少した。つまり、名前を自発して強化される(タクト)機会が少なくなった。

 → 「田中さん」「鈴木さん」「山本さん」など、名前のダブりが増えてきた。一対一対応していないと刺激性制御がつきにくい?

 → 電話の時代には「○○さんいらっしゃいますか?」とマンドとして名前を言って強化されることがあったが、メールによるコミュニケーションが増えるとこの機会も減る。


対 策:

・直接会って話をするときには、アメリカ人のように、頻繁に名前を呼ぶようにする。

・このために研究会の前とかには参加者の名簿に目を通しておく。

・メールを書くときには単に「返信」をクリックして本文を書き出さずに、相手の名前だけは自分で打ち込むようにする。

・苗字が重なるときにはファーストネームかニックネームを使う。

・カテゴリーごとに覚えるようにする(「国府のダン坂口」とか「天水の森くん」とか)。つまりイントラバーバルのコントロールを利用する。

以上。

悪あがきかな?

琴平バスはタクシー運転手が同社の決めた「5つの約束」を守らなかった場合、運賃を返金するサービスを始めた(日経新聞、2005.4.13, p.35)。

客からのクレームがあれば“事実確認”して、後日運賃を返すと言うが、どうやって“事実確認”するんだろう? 水掛け論にならないんだろうか?

5つの約束が実行できたかどうか丸付けして、運転手は開けられない鍵付きの箱に入れるようにして、得点の高い運転手にボーナスを支払うというような、好子出現による強化の仕組みの方がうまくいきそうな気もします。

9たての0投稿

3/18から投稿0の日が9日も続き、10日ぶりのblog記事になった。

先週は土曜から水曜まで休みをとって北海道でボード(スノー&クライミング)をして遊んでいた。そのせいで書き込む時間がなったこともある。でも、もっと大きな要因は、毎週月曜か火曜にやっていた、書き込み数とアクセス数の集計をしなかったことかもしれない(木曜から日曜まで、じゅうぶん時間はあったので)。

ちなみにアクセス数は、ココログのアクセス解析の機能を使って、累積数などをグラフにしているのだが、サーバーの不調やメンテナンスなどが多くて、データが欠損することが多く、信頼できそうもない。

余分にお金を払っているのにたいへん不満である。  (−−”)

blog_cum_050328

インストラクショナルデザイン』を出版してから、この本を読んで行動分析学に興味を持ち『パフォーマンスマネジメント』も読みましたという、たいへんありがたい読者からのメールを何通もいただいている。

行動分析学Q&A掲示板ではマコトさんより以下のような質問をいただいた。実は他の人からも同様の質問をされることが多いので、この際、掲示板での私の回答をここでも引用しておきたい。

マコトさんからの質問日本企業へのパフォーマンスマネジメントの展開についての先生のお考えやご活動について教えていただければうれしいです。
私の回答マコトさん、はじめまして。

拙著をご購入、ご拝読いただき、誠にありがとうございます。

「日本企業へのパフォーマンスマネジメントの展開についての先生のお考えやご活動について教えていただければうれしいです」というご質問ですが、そんなだいそれた話はできませんので、個人的な印象というか、感想だけ書かせていただきます。

今から10年ちょっと前、私が米国の大学院でパフォーマンスマネジメントを学んで帰国した当時の印象は「日本の企業はよくやっている!」でした。その頃、学術雑誌に報告されているパフォーマンスマネジメントの研究事例はアメリカで行なわれたものが多かったのですが、介入によって生産性が2倍とか3倍になるようなケースがざらにありました。ということは元々、ベースラインでは本来できることの1/2とか1/3しかやっていなかったってことなんですね。

日本の民間企業、特に外部からコンサルタントを雇ってまで経営改善の努力をしているような会社では、こんなことはほとんどなく、みんなそれなり以上に頑張っていますよね。つまり、ベースラインがすでに高く、だから改善の余地もアメリカの企業に比べると少ない−というのが私の印象でした。

民間企業を辞めて大学に移り、学校教育のパフォーマンスを上げる仕事に就くことにしたのも、日本では、民より官、特に教育業界に、大きな改善の余地があると思ったからです。この印象は今でも変わっていません。学校という組織には、ものすごい改善の余地があります。民間企業と同じように予算と人材をかけてしっかり改善努力をすれば、日本全体が変わるのにと思うくらいです。

一方、過去10年間で民間企業の方にも変化があったように思われます。生産性(統計のマジックもありそうですが)では米国に抜かれ、安全管理やコンプライアンスなどで、大きな失点が目立つようになりました。

私は、年に数回、大手の企業さんの管理職を対象にしたパフォーマンスマネジメントの研修をしているのですが、そこで上がってくる問題を見ていると、日本全体の文化的背景の変容が、マネジメントの難しさに影響してきているのかなとも思います。つまり、価値観(好子・嫌子)や行動様式(行動レパートリー)の多様化によって、これまでは何も言わなくてもわかっていたこと、指示や指導しなくてもできていたことが、できなくなっているようです。

先輩や上司の言うことなら無条件で従うという文化が背景にあれば、「向上心」という価値観が根付いていれば、マネジメントは楽ですよね。ところがそうした文化的背景というか前提が崩れてきたので、これまで通りの(無意識的に)文化に頼った手法に限界が生じているのではないでしょうか? 経営者にしても問題は感じていても、どうすればいいかわからないといったところではないでしょうか?

価値観や行動様式の多様化それ自体は悪いことではないので(異論反論もあると思いますが、楽天やライブドアの活躍?に見られるように)、要は、こうした新しい文化的背景でも使える手法や考え方が必要だということですよね。

アメリカという国はもともと価値観や行動様式が多様な国です。日本もこれからますますアメリカ化(というかグローバリゼーション)していくでしょうから、そこで鍛え上げられてきたパフォーマンスマネジメントには期待できると思います。

マネジメント手法にも時代時代で流行があります(たとえば最近ならコンピテンシーマネジメントとかコーチングとか)。それとパフォーマンスマネジメントのどこに違いがあるかと言えば、前者はあくまでハウツーなのに対して、後者は行動分析学という科学を基本にしているので、うまくいかないときにそれがどうしてうまくいかないのかというホワイの分析を可能にするところだと思います。

問題の原因を正しく突き止めないで解決策ばかり追えば、解決策自体は素晴らしくても効果は期待できないことがありますよね。多様化した価値観や行動様式が背景にあると、「これでok」という手法はありえないと思います。ですから、その企業やその職場やその個人にあった手法を考えないといけない。そうした問題解決と目標達成のための「思考方法」として、行動分析学とパフォーマンスマネジメントは有効だと思っています。

というわけで、とりとめがなくなってしまいましたが、以上が私の印象というか感想です。

ここ数年《いかに仕事を断るか》をセルフマネジメントのテーマの一つにしている。

「やります」と引き受ける行動は相手からの感謝などで即座に強化される。特に教育業界ではそれが「人助け」みたいな社会的な善行につながっているところがあるから。心意気のある人ほど、この強化随伴性の餌食になる。「頼まれた仕事は断らない」をポリシーにしている人までいるのも納得できる。

ところが、引き受けた仕事を「最後までやり通す」行動には「引き受ける」行動の1000倍以上の時間と労力を要すものだ。講演ならまだしも(とりあえずは1回で終わるから)、執筆とか論文の査読とか、修論の指導とかになると、引き受けた瞬間に後悔し始める人も少なくないはず。

自分の場合は、引き受けた仕事が約束通りに終わらないことは死ぬほど辛いから、約束通りに終えられるぶんしか引き受けないようにしているわけだが、「言うは易し行うは難し」の典型例みたいなもんで、これを貫き通すのはとても難しい。ときどき衝動的に、後悔しそうな仕事を引き受けてしまうことがある。

今回「しまった!」と思ったのは、ある研究奨励金の審査員を引き受けたこと。研究計画書(英文)を4本査読しなくてはならない。

〆切が近づいてきて、少し悲痛な思いで読み始めたら、これが予想を覆して面白い。4本ともパフォーマンスマネジメントの研究なのだが、テロ対策とか、パソコンを長時間使っても腰痛や腱鞘炎にならないようにする介入とか、リアルタイムのビデオフィードバックとか、面白いアイディアが満載で楽しめる。一気に読んで、一気にコメントを書き終えてしまった。

こういう部分強化モドキがあるから、安易に仕事を引き受ける行動が完全にはなくならないんだろうなぁ。

書き込み件数10で目標達成。うちゼミ日記へは3件で、public commitmentの面目躍如。

今週から、ある企画本の執筆を始めることもあり、冬休みの間は遊びまくることもあり、このプロジェクトに関しては1/10の週まで中断し、目標設定はしないことにします(blogを更新しないというわけではなく)。

一応、ベースラインに戻すことになりますが、両立しない行動へ強度な随伴性がかかることになるので、純粋には反転法とは言えません。

今週は8件書き込んで目標達成です。

ただし、ゼミ日記への書き込みが「0」だったのは、ゼミ生の手前格好悪いです。

今週はゼミ日記を優先します(←public commitment:果たして効果はいかに?)。

今週も11件書き込んで目標達成。....というか、すでに冬。夏秋、そして《冬》まで続くプロジェクトです。

プロジェクトのグラフ(このサイトの左下に表示している折れ線グラフ)は、学校の先生たちの事例研究を支援するのに開発したシステムで作成している。ひとつの事例に半年もかけちゃだめだからと、横軸の最大値は6ヶ月(180日)と設計していた。

このプロジェクトではすでに超過。仕方がないので、今週からは10/1からのデータのみを表示しています。

先週は書込6件でぎりぎりの目標達成。ネタはたまっていくばかりなんだけど....

ちなみに、土曜には楽しい飲み会がありました。

「若い人たちが変わればニッポンも変わる」... 旧態依然とした証券業界に、ネットを活用した個人顧客重視という新たなビジネスモデルを持ち込んで風穴を開けつつある、松井証券の松井道夫社長さんのコトバである。NHK総合、『週刊経済羅針盤:証券界の風雲児登場!』(2004.11.21放送)で特集が組まれていた。

インタビューの中で印象に残ったコトバがもう一つ。いわく、「給料をもらって働く社員はいらないんですね。働いて給料をもらう社員がほしいんです。」

まさに随伴性である。ただ、そういう「意識」を持つ--つまり言語行動の変容だけで--社員のパフォーマンスに影響を及ぼせるものなのか、それとも実際の随伴性(人事考課など)も変えないとならないのかが興味のあるところだ。

カリスマ的で強烈なキャラクターを持つ松井社長さんの存在が、むしろ社員が会社を選択する(そして会社が社員を選抜する)仕組みとして機能している可能性もありそうだ。社長のメッセージだけでパフォーマンスが変わる人--つまり価値観を共有している人--が残り、そうでない人は去っていくということかもしれない。

参考までに、松井社長さんのちょっと変わった語録は松井証券のHPに公開されている。

今週のWeb書込は11件で目標達成。さいさきよいスタート。

それからタイトルやカテゴリー名を日本語にしてみた。今週も継続して、閲覧しやすいようにちょこちょこ改善する予定。

simamune-pm-041108.jpg

Webでの情報発信を活性化する夏のセルフマネジメントプロジェクトを総決算。
グラフから明らかなように、日記での週間報告を中止してから、書込件数が減少した。
もちろん、新学期が始まってより一層忙しくなったという外的な要因が影響しているとも考えられる。
そこで反転法を使ってこの真偽を確かめてみることにする。

ここから先は「秋」のプロジェクトである(あっという間に「冬」になると思うけど)。

今回はグラフを毎週アップしなくてすむように、この日記(トップページ)の左下に自動的にグラフが表示させるように設定してみた。週ごとに累計した上のグラフよりは読み取りにくいけど、傾向はつかめるだろう。

さて、どうなるか。

あんな分析をしておきながら(あるいは分析したからか?)、ETCを取り付けにオー○バッ○スまで行きました。

ところが、

まことに申し訳ございませんが、9月17日から始まった「阪神高速ETC化キャンペーン」のため、阪神高速道路公団のサーバーに申し込みが殺到し、接続できない状態です。キャンペーンが終わるまでは登録もできない状態ですので、現在のところ申し込みをお断りしています。

とのこと。

それなら電話したときにそういって欲しかった...と思いつつ、ここまで遅延されたらもう駄目だな、とあきらめ状態。

何とかしてくれ! 道路公団。

三木谷浩史さん(楽天社長)日経新聞の記事(2004.9.21)・他社が一年かかることを1ヶ月でやる気構え
・ミーティングでは前日の夕方5時までに資料を提出すること
・経営会議での...発言は一人30秒が原則

3つのうち最後の2つを遵守するだけで会議は変わる。たぶん組織も。

大学・学校などの組織をてっとりばやく改善するには、単純さからいっても最適な標的行動だと思う。

tollfreecall.gif

なんでもフリーダイヤルにすればいいってもんじゃない。

いつも話し中で、つながらなかったり。ここみたいに携帯からはかけられなかったり。

せめて「恐れ入りますが、携帯やPHS、一部のIP電話からおかけになる場合にはこちらの番号をご利用下さい」という配慮が欲しい。

pm20040913.jpg

今週も目標達成(11件/週)。

5週間連続して目標が達成できたので、今週からはこのweb日記での公開・報告をやめて、自己記録とグラフ化(とはいってもグラフのありかを告知しているので半分公開みたいなもんだが)だけでパフォーマンスを維持できるかどうかを検討することにする。

pm20040907.gif

先週は金曜から日本行動分析学会の年次大会があって時間がとれなかったけど、ぎりぎり目標達成(6件/週)。

ほんとうは大会期間中に、面白い発表とか情報について書き込もうと思っていたんだけど、久しぶりに会う人たちと話したり、飲んだりするという両立しない行動への強化随伴性が絶大すぎて断念。

フェスティンガーの認知的不協和理論じゃないけど、「早めにホテルに帰ってblogを更新しなくちゃ」っていう内言によって引き起こされる嫌子(不協和)は、「でも、年次大会は1年に1回しかないし、こんなにいろいろな行動分析家と話をできるのは今しかない」という言い訳的な内言を嫌子消失強化するなぁと実感しました。

A:先行条件 B:行 動 C:結 果
「ホテルに帰ってblogを更新しなくちゃ」と思いながら懇親会にいるとき 「こんな機会は1年に1回しかないし」と思う 罪悪感が弱まる(↑)

20040830pmg.gif

介入3週目も絶好調。目標達成!!(9件)。

medal.gif

連日のメダルラッシュで日本中が大騒ぎ。嬉しいことである。

メダルの獲得数。昔は、少なくとも人口一人あたりとかGDPいくらあたりとかに換算しないと、その国がどのくらい頑張っているか分からないよ、なんて言っていたものだが、270億円をかけて建設されたという国立スポーツ科学センターや、柔道の野村選手を擁するミキハウスが運動施設などの維持に年間10億円近くを投じているという記事を読むと、スポーツへの投資いくらあたりなんて考え方もあるなと思った。

イラクサッカーチーム、きっと金も時間も設備もないんだろうけど、よく頑張るな。ハイパフォーマー賞!

pm040824.gif

介入2週めも、目標達成です(7件)。

10_1.gif

介入1週めは、軽く目標達成(9件)。

〆切よりもはるかに早く、週の最初に書き込み件数が増加したのは、木〜日の4日間が阿波踊りだったのと、いわゆる「タイプA」との相乗効果。

このままの調子で頑張ります。

pm_baseline040809.gif

ゼミで夏のプロジェクトとしてパフォーマンスマネジメントをすることになった。

自分のテーマはwebへの書き込み。

このところ忙しくてblogも更新してないし(コメントスパムの削除作業は日課みたいにやっているけど...)、コラボネットや徳島ABA研究会への情報提供も怠りがち。

今週から週に5件以上の書き込みを目指します。

とりあえずベースラインは4週前から0,2,0,1。




プロジェクトの数が増えすぎて収集がつかなくなってきたのでホワイトボードに整理してみた。

横軸に月(4, 5, 6, .... 12, 1, 2, 3月)、縦軸に現在取り組んでいるプロジェクトをマグネットシートで貼り付けて、各プロジェクトの予定(「準備」「実験」「執筆」「発表」など)を配置 した。

まず気づいたのはプロジェクトの多さ。全部で17あった。サマースクール&ケース研究などは大きなプロジェクトだけど、これも1つとしてカウントした。 それで17。間違いなく多すぎ。

そのうち休眠中のものが9。休眠の理由というか状況は以下の通り。
・共同研究者の仕事待ち(5)
・データを収集して執筆待ち(3)
・初稿を書き上げて満足できなくてお蔵入り(1)

また稼働中のプロジェクトも計画通りに進んでいるものと、遅れがちのものがある。

それらをよく眺めてみると、進捗が良好なプロジェクトは、
・共同研究で、
・共同研究者の仕事が早いもの。

逆に遅れ気味のプロジェクトは、
・単著の執筆か、
・共同研究の場合は共同研究者と仕事のペースがあわないもの。

ということがわかった。

また、論文を執筆して投稿する前にプロジェクトが停滞する原因としては、

・執筆行動には弱化がつきもの(論文を書くのはとても億劫な仕事である)。
・それよりも新しいプロジェクトの計画・準備・実施に関わる行動の方が強化されやすい(いろいろなことを思いついたり、プロジェクトが進んだり、新しい人との出会いがあったりするから)。

が考えられそうだ。

 新しいプロジェクトを考えて、取り掛かり始めることは自分にとってはものすごく強化的で、実は17のプロジェクト以外にもやってみたいなぁと考えているのが5~6はあるという状況だ(困ったもんだ)。

つまり、プロジェクトの生産性を上げていくには、

1.プロジェクトの数をしぼる(プロジェクトを一つ終えたら、新しいプロジェクトを1つ始めてもいいことにする)
2.単著よりも共著になるようなプロジェクトにする。
3.ただし、共同研究者は自分と同じくらいのスピードで仕事をする人に限る。

ということになりそうだ。

限定と即納

MacPower 12月号。宮沢章夫氏の「即納の思想」(p.52-53)から考えたこと。

「限定」モノが人気である。宮沢氏が例にあげているカシオの腕時計G-Schokは昔から限定モノでコレクターの購買意識をあおってきた。ここ数年、「食玩」(お菓子のオマケ)がブームであるが、これも限定した期間中にシリーズすべてのフィギュアを集めようとするコレクターの行動を促す仕組みだ。

コレクターでなくても同じ仕組みは通用する。出張や旅行先で「○○限定ポッキー」とかを見かけるとすかさず買ってしまう人は少なくないと思う。

行動分析学には強化スケジュールのパラメータとしてリミテッドホールド(limited hold)という概念がある。たとえば、最後の強化から1分以上経過した後の初発行動が強化される定時隔(Fixed Interval)スケジュールに5秒間のリミテッドホールドをつける。つまり、5秒間だけ強化され、それを過ぎると、もう1分間待たなくてはならなくなる。こういう強化スケジュールでは反応率が増加することが、人間だけではなく、さまざまな種の動物で確認されている。

つまり《「限定」は行動をあおる》という現象は、ヒトを含めた動物行動全般にあてはまる、かなり普遍的な法則なのだ。

同じことが「即納」にも言える。宮沢氏はなかなか手に入らないApple PowerMac G5を揶揄しながら「即納」の魅力を指摘している。

即納とは、つまり即時強化である。行動は直後の環境変化によって強化されたり弱化されたりする。先日、メディア教育開発センターの望月要先生からうかがった話だと、望月先生たちが最近行っている実験では、環境変化が0.5秒でも遅れると、被験者はそれに気づいていないのに強化の効果が激減するそうである。時間に対する意識性と時間の遅延が行動に及ぼす影響が必ずしも一致しないところが面白い。それに、0.5秒でも強化の力が衰えるのだから、いわんや2〜3週間の納期をやである。

《「即納」は行動をあおる》という現象も、ヒトを含めた動物行動全般にあてはまる、かなり普遍的な法則なのだ。

もちろん、我々のナマの行動環境はもう少し複雑である。たとえば、Appleのオンラインストアには「One-Click」という機能がある。クレジットカード情報や商品の送付先をあらかじめ登録しておけば、まさにボタンを1回クリックするだけで買い物ができてしまう。商品の到着は1週間後になるとしても、クリックの直後に画面は変化し、アイコンが変わり、注文確定の画面が表示される。こうした刺激が習得性の好子として機能するようになれば、商品到着の遅延はカバーできる(もちろん、早く到着することにこしたことはないが)。

日経トレンディなどの「ヒット予測ランキング」とか「ヒット商品ベスト30」などを見ながら、ヒット商品やサービスの持つ、こうした行動的側面を考えるのはかなり楽しい作業である。

このところテニスやクライミングをすると、すぐに腰や背中や膝が痛くなる。

朝から夜まで仕事をした後、23時までテニスしてたりするから過労と言えばそれまでだし、加齢といえばもっとそれまで。

ネットで調べてみると『インナーマッスル』というキーワードが目につく。マシンやウェイトを使って大きくて見える筋肉を鍛えても、小さくて見えない内部の筋肉が弱ければバランスが悪くなって障害を引き起こしやすくなるらしい。

これに違いないと思って、保健体育講座の南先生にいろいろ質問してみた。

南先生によれば....
・一般的に、インナーマッスルは肩や股関節、コアマッスル(っていうのもあるのだ)は体幹で使うことが多い。
・肩のインナーマッスルについては、水泳でも頻繁にトレーニングしている。特に、肩甲骨周りや棘上筋や棘下筋には有効である。
・あまり激しくやらないで、軽い負荷で50回くらいでだるーい感じが出れば良い。
・回数を多くしすぎると、疲労でインナーではなく、他の筋群を使ってしまうことがあるので要注意。
・トレーニングの進行状況は「毎日やった」「肩甲骨の使い方がうまくなった」「痛みの具合が軽くなった」などで確認する。 

とのこと。

 大きな筋肉をトレーニングすれば、すぐに筋肉がパンプする。視覚的にも感覚的にもフィードバックがある。行動分析学から考察すれば、こうしたフィードバックが習得性好子であれば、トレーニングすることが強化されるから、トレーニングの持続は比較的たやすい。

 ところが、小さな筋肉のトレーニングにはどうやらこうしたはっきりとしたフィードバックがなさそうだ。痛みがなくなるとか、体が動かしやすくなるという結果は『塵もつもれば山となる型』であって、トレーニングを強化するようには働かないだろう。腰痛防止のためのストレッチなんかをやり続けるのが難しいのと同じである。

 パフォーマンスマネジメントが必要かもしれない。

safety.jpg

数年前から鳴門市の交通事故原因調査部会の委員というのをやっている。毎年1〜2回、重大事故の発生現場に行き、観察・検証し、事故調書などの資料などを読んで原因を分析し、会議で対策を考え、報告書を提出する仕事だ。

 さながら明智小五郎にでもなったつもりで、「運転者からは信号がどのように見えていたのだろうか」とか「ここで被害者に気づいてブレーキを踏んだとして、それでクルマがここで停車したとすれば、スピードはかなりでていたことになる」とか、現場を見歩きながら考える。デジカメで写真を撮ったりもする。

 事故の当事者にインタビューできるわけではない。警察が用意してくれる資料にこちらの知りたい情報がすべて記載されているわけでもない(たとえば、運転中「被疑者」が携帯メールをしていたかどうかなどの情報さえもなかったりする)。警察がまとめる資料の《原因》欄には、「前方不注意」とか「信号不確認」とか「安全速度不履行」など、死人テストをパスしない項目が並んでいる。

 行動分析家としては「前方不注意」ということなら、なぜ「不注意」だったのかをやはり考えたい。たとえば、前方を見ずにどこを見ていたのか?(対立行動があったのか) あるいは居眠りや目をつぶるなどして何も見ていなかったのか?(行動そのものが生じていなかったのか) それとも視界に歩行者は入っていたけど減速行動を制御しない理由があったのか?(飲酒? 視界中の他の刺激への反応? まさか故意とか?)
 
 事故の《本当の原因》を見つけることは難しい。しかし「前方不注意」で話を終わらせないことが大切だし、そこから何らかの対策を考え出すところで、行動分析学が貢献できると思う。
 
 実際、この調査部会では、事故を起こしやすくしている環境側の要因が特定できるのであれば、それらをできるだけ排除していこうと積極的に取り組んでいる。会議には国交省の関連部局の担当者も出席し、道路に補足線を引くとか、停止線の位置を変えるとか、かなり具体的な解決策が話し合われる。
 
 惜しむらくは、こうした会議で提案した解決策を最後までフォローアップできないことである。2年前に提案した補足線は確かに引かれていたけど、この会議の成果なのかどうかは知らされていないし、それで事故が減ったかどうかも分からない。そもそも重大事故の件数は市で年数回しかないので、特定地点で一つの解決策を講じても、その効果を重大事故の件数でのみ測定する限り、評価には数年以上かかることになり、あまり有用ではないけれど。
 
 先週の会議では国道11号線の事故多発交差点の現地調査および分析を行った。ここは自分も、同会議に出席しているうちの大学の松井先生も、通勤で行き来する交差点であり、ヒヤリやドキリが多い場所である。会議でもいろいろな対策が話し合われた。
 
 果たして、実際にはどんな対策が講じられることになるのだろう。

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数年前から鳴門市の交通事故原因調査部会の委員というのをやっている。毎年1〜2回、重大事故の発生現場に行き、観察・検証し、事故調書などの資料などを読んで原因を分析し、会議で対策を考え、報告書を提出する仕事だ。

 さながら明智小五郎にでもなったつもりで、「運転者からは信号がどのように見えていたのだろうか」とか「ここで被害者に気づいてブレーキを踏んだとして、それでクルマがここで停車したとすれば、スピードはかなりでていたことになる」とか、現場を見歩きながら考える。デジカメで写真を撮ったりもする。

 事故の当事者にインタビューできるわけではない。警察が用意してくれる資料にこちらの知りたい情報がすべて記載されているわけでもない(たとえば、運転中「被疑者」が携帯メールをしていたかどうかなどの情報さえもなかったりする)。警察がまとめる資料の《原因》欄には、「前方不注意」とか「信号不確認」とか「安全速度不履行」など、死人テストをパスしない項目が並んでいる。

 行動分析家としては「前方不注意」ということなら、なぜ「不注意」だったのかをやはり考えたい。たとえば、前方を見ずにどこを見ていたのか?(対立行動があったのか) あるいは居眠りや目をつぶるなどして何も見ていなかったのか?(行動そのものが生じていなかったのか) それとも視界に歩行者は入っていたけど減速行動を制御しない理由があったのか?(飲酒? 視界中の他の刺激への反応? まさか故意とか?)
 
 事故の《本当の原因》を見つけることは難しい。しかし「前方不注意」で話を終わらせないことが大切だし、そこから何らかの対策を考え出すところで、行動分析学が貢献できると思う。
 
 実際、この調査部会では、事故を起こしやすくしている環境側の要因が特定できるのであれば、それらをできるだけ排除していこうと積極的に取り組んでいる。会議には国交省の関連部局の担当者も出席し、道路に補足線を引くとか、停止線の位置を変えるとか、かなり具体的な解決策が話し合われる。
 
 惜しむらくは、こうした会議で提案した解決策を最後までフォローアップできないことである。2年前に提案した補足線は確かに引かれていたけど、この会議の成果なのかどうかは知らされていないし、それで事故が減ったかどうかも分からない。そもそも重大事故の件数は市で年数回しかないので、特定地点で一つの解決策を講じても、その効果を重大事故の件数でのみ測定する限り、評価には数年以上かかることになり、あまり有用ではないけれど。
 
 先週の会議では国道11号線の事故多発交差点の現地調査および分析を行った。ここは自分も、同会議に出席しているうちの大学の松井先生も、通勤で行き来する交差点であり、ヒヤリやドキリが多い場所である。会議でもいろいろな対策が話し合われた。
 
 果たして、実際にはどんな対策が講じられることになるのだろう。

総選挙

今度の総選挙では各党が《マニフェスト》を提出し、具体的な政策が少なくともこれまでよりは議論されそうだ。

でも、じっさいには分厚く、街頭では配布されない(ネットでは閲覧できるけど)この《マニフェスト》を精読し、理解し、投票のための判断材料にできる有権者がどれくらいいるだろう? 10%? 5%?

具体的な政策というものは、政権を担当してみないとわからないことも多いはずで(これが「大きな政府」をもつツケの一つだ)、野党はわからないぶん大胆な提案をするだろうし、与党はできないぶん逆に野党にはない「実績」を強調するだろう。選挙前には双方とも国民においしい話しかしないから、焦点はぼけるに違いない。

《マニフェスト》を作ることには大賛成だ(できれば安易に外来語を使わずに、《公約》を質的量的に改善し、その実現に責任を持つという態度を政界全体で合意形成して欲しかったけど...)。

しかし、有権者の多くにはもっとわかりやすい投票のための情報があった方がいい。

政党のパフォーマンスとして、たとえばこんな情報が公開されるようになれば比較検討しやすいと思うのだが、どうだろう。

・国会(各種委員会)への出席率。
・委員会での発言数。
・法案の提出数。
・マニフェストにサインしている候補者率。

総選挙

今度の総選挙では各党が《マニフェスト》を提出し、具体的な政策が少なくともこれまでよりは議論されそうだ。

でも、じっさいには分厚く、街頭では配布されない(ネットでは閲覧できるけど)この《マニフェスト》を精読し、理解し、投票のための判断材料にできる有権者がどれくらいいるだろう? 10%? 5%?

具体的な政策というものは、政権を担当してみないとわからないことも多いはずで(これが「大きな政府」をもつツケの一つだ)、野党はわからないぶん大胆な提案をするだろうし、与党はできないぶん逆に野党にはない「実績」を強調するだろう。選挙前には双方とも国民においしい話しかしないから、焦点はぼけるに違いない。

《マニフェスト》を作ることには大賛成だ(できれば安易に外来語を使わずに、《公約》を質的量的に改善し、その実現に責任を持つという態度を政界全体で合意形成して欲しかったけど...)。

しかし、有権者の多くにはもっとわかりやすい投票のための情報があった方がいい。

政党のパフォーマンスとして、たとえばこんな情報が公開されるようになれば比較検討しやすいと思うのだが、どうだろう。

・国会(各種委員会)への出席率。
・委員会での発言数。
・法案の提出数。
・マニフェストにサインしている候補者率。

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