第一種の過誤と第二種の過誤,どっちがどっちだか自分もいつもわからなくなるので,このさい改訂案をつくってみた。

 第一種の過誤と第二種の過誤,混乱するのは初学者だけではない。自分もいつもどっちがどっちだかわからなくなる。
名称と内容の関係が恣意的なのだから仕方ない。

 誰が"Type I Error","Type II Error"と命名したのかは存じ上げないが,教育的配慮のかけらもない(各々の確率はαとβで示される。数式に組み込むにはアルファベット一文字の変数に決めざるを得ないのでここは仕方ないが,逆に言うと立式のときに付記っすればいいことなので,"Type I Error"=α,"Type II Error"=βと暗記を必須とする必然性はない)。

 悪影響は統計だけにとどまらず,行動分析家の中にはこれを真似て(たぶん),嫌子出現による弱化を「タイプIの罰」,好子消失による弱化を「タイプIIの罰」と呼ぶ人までいた。

 名称が覚えにくいと,覚えようとしても覚えにくくなる。教科書や論文を読んでいて,いちいち「あれ,どっちだっけ?」となれば,文章理解にも影響する。テストの得点が悪ければ,「統計難しい」,「統計苦手」と決めつけてしまう学生があらわれる。

 表1は統計の教科書によく掲載される,帰無仮説の採択/棄却に関する2x2の場合分けである。

 信号検出理論の場合分けも同様の表で表現される。可能な限りカタカナ表記は避けるべきというのが個人的信条。ヒット,ミス,フォールスアラームまではまだ許せるが,さすがに「コレクトリジェクション」はそのままじゃだめでしょ。

 そこで改訂案。表3はシンプルに採択と棄却に正誤をつけただけ。第一種の過誤は誤棄却で,αは誤棄却率,第二種の過誤は誤採択,βは誤採択率となる。帰無仮説の場合は,そもそも帰無仮説を立てる段階でロジックが反転しているので,「帰無仮説が誤棄却される」,「帰無仮説が誤採択される」が何を意味するのかは一旦止まって考えてもらわないとならないが,それは現在の用語でも同じこと。帰無仮説のわかりやすい説明方法もあるのだが,これはまた別の機会に。

 表4は信号検出に近い日常語に置き換えた改訂案。「コレクトリジェクション」は「(正)回避」だが,他の用語と文字数を揃えることを優先して「回避」としてみた。ここは暫定案。他に適切な漢字二文字があれば教えて下さい。

 用語の選択は学問の学習の礎となる重要事項である。輸入学問だからといって英単語をそのまま訳せばいいという話ではないと思う。幸い自分は統計の専門家でも,信号検出理論の専門家でもない。ただ,信号検出は心理学(行動分析学でも)の実験では頻出する課題である(記憶の実験の再認課題のように)。なので,学生さんには表3や表4を使って教えていこうと思う。

第一種の過誤と第二種の過誤と改訂案.jpg

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