夏井先生の"俳句の才能査定ランキング"は課題分析のお手本です。

logo.png 2013年の放送開始から衝撃を受け,言語行動満載の課題分析に取り組むなら,これを見よと学生さんに伝えてきた『プレバト!!』(TBS/MBS系列, 木曜19:00-)。

 音楽にあわせてリズムをとるとか(結局,難しいのは5/4拍子の「テイク・ファイブ」しかなくて終わっちゃった),生け花や料理の盛り付け,書道や水彩画,最近では,脱伝統派(?)のちぎり絵や消しゴムはんこのような,芸術系のお題を取り上げている番組です。

 その中でも人気なのが,そして複雑な言語課題の分析として,お手本になるのが,夏井いつき先生の"俳句の才能査定ランキング"です。

 兼題と呼ばれる俳句のお題に対し,出演者が詠んできた句を夏井先生が採点し,順位をつけて発表するのですが,この評価基準が驚くほど客観的で,行動的なわけです。

 たとえば,「季語を一ついれる」(あたりまえのようですが,季語がなかったり,二つあったりすることもある)とか「自分の体験を具体的に書く」とか「解釈ではなく事実を書く」とか「視覚,聴覚,嗅覚が伝わるように書く」とか「(句の途中で)遠景から近景にズームアップするような語順で書く」とか「冗長な言葉は削除する」とか。"気持ちを込めて"とか"読み手に自分の感動が伝わるように"なんていう教示は一切ないのです。

 番組上,「才能あり」,「凡人」,「才能なし」と判定しているし,夏井先生が"才能"を生まれ持った能力と考えているかどうかは謎ですが,少なくとも適切な指導を受けて練習すれば,誰だって良い俳句が作れるようになると信じておられると思われます。著書を読ませていたただいたところ「俳句は型」とあり,批判されることは覚悟で,初心者にはマニュアル的な作法(たとえば"尻から俳句"法など)から始めることを奨めておられますので(『夏井いつきの世界一わかりやすい俳句の授業』 Kindle版)。

 「夏井先生のご本をたくさん買いました」と言う出演者が「才能なし」になることもあるのですが,きっと買っただけで読んでないのではないでしょうか。あるいは番組の演出かもしれません。間違いだらけの句を夏井先生が"劇的"採点する,というか手直しという校正をすることで,上述のような良い俳句づくりのルールが明確になるからです。

 ゼミでやる論文作成やABC分析の指導と同じで,学び手が誤反応をしてくれるとそれを題材に正反応と誤反応のペアを例示できるので,正誤弁別訓練になるんですね。自分はよく「間違え大歓迎」というのですが,それはこういうメリットがあるからです。いわば機会利用型RULEG訓練ですね。

 番組では「才能あり」を何回もとった人に上級者クラス「特待生」や「名人」を設定していて,このレベルになると初心者向けマニュアルを超えた句が輩出されてくるのですが,それでも,夏井先生は"センスがいい"だけでは終わらせず,「兼題写真を見て思いついたことへ"発想をとばす"」とか「上句で読み手に疑問を持たせ,下句で謎解きをする」というように,他の人でも再現できるようなルールとして解説してくれます。

俳句以外の課題でも,たとえば生け花なら「花瓶を360度回転させてどこから見ても隙間ができないようにいける」とか「剣山が見えないように隠す」とか「不等辺三角形をつくる」,日本料理の盛り付けなら「左右非対称に並べる」とか「あしらいは手前に置く」など,できるだ客観的,行動的な評価をするように努力されているようなのですが,その徹底さ(たぶん課題分析して判明しているルールの数や複雑さ)は,夏井先生に遠く及ばない印象です。

 それもあってか,最近,水彩画,ちぎり絵,消しゴムはんこの課題では,先生方による評価や解説よりも,お手本として作り直した作品のすごさを前面に押し出した演出になっています(なので,課題分析の面白さはありません)。

 この番組が牽引役になった俳句ブームがいつまで続くかわかりませんが,複雑で,"認知的","言語的","芸術的"な課題は,行動的に課題分析できないと思い込んでいる人は,番組が放送されているうちに,ぜひ一度ご覧下さい。

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