水曜日のダウンタウンにみる新元号のシェイピング

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 5月8日放送の『水曜日のダウンタウン』,改元特別企画はキングオブコント2016年で決勝進出をはたした"ななまがり"をゆるやかに拉致し,世間との接触が一切ないように監禁。新元号が発表された後,5分に一回,新元号を推測して習字し,当たるまで脱出できないという,新元号をネタにしたまさかの言語行動シェイピングゲームでした。

 最初はヒントもフィードバック(強化)もないベースライン条件。スタジオでは2136ある常用漢字2文字の組合せは456万2496通りあるという解説が流される中,イニシャルT,S,Hを避けるくらいしか戦術がないななまがりは絶望状態。
 そこへ,指定された読みで画数の多い漢字を回答すれば,その画数に応じた得点が与えられ,得点に応じた様々な物品と交換できるというボーナスゲームとトークンエコノミーによる介入が開始されます。
 そしてトークンと交換できるアイテムには,梅・竹・松の三段階のヒントも!
 元号発表から5日が経過してようやく入手した「松」の中身は電球でした。最初はそれが一体何なのか,ななまがりの二人もスタジオゲストにもわからないまま新元号当てゲームは進行していきます。そして,「世京」を発表した後に,電球が少しだけ点灯。ざわつく二人が考えた次の回答は「寛京」。でも光らない。
 少し後になってわかるのですが,電球が光るルール,すなわち強化基準は,a) 正解である「令和」と総画数が同じ, b) 頭文字(R)が同じ, c) 一文字が一致の3つでした。そして,この順に電球が光るときの明るさが大きくなるのです(そうすると,複数条件適合したときに明るさの弁別が難しくならないか?と思ってみていたら,そのときには複数回点灯させていた模様)。
 電球の登場でようやく言語行動を分化強化する随伴性が設定され,行動はここから急速に変わっていきます。開始から98時間40分,921回目の回答で見事「令和」の文字が発表され,"平成"からの脱出に成功。瞬間,あわや泣きそうになりました。この番組ではたまにある,まさかの感動回でした。
 電球の点灯で強化されたのは,「令和」と書く行動ではなく,電球点灯に関する正しいルールのタクトです。授業や研修会などでシェイピングゲームをすると,"ハト役"と言っても正解を考えながらやっているのだから,ハトとは違いますよねという感想をもらうことがあります。ハトやネズミは,人のように随伴性をタクトしてそれも弁別刺激にしながら行動することはありませんから,これはこれでその通りなのですが,一方で,実はその"正解を考えながら"という行動もシェイピングされているというところに気づいて欲しいわけです。
 今回の新元号あてゲームは,回答機会が5分に一回と制限されていたこと(完全なフリーオペラントではなかったこと),電球を光らせる強化基準が固定されていて,行動に即して変えていかなかったことが,通常のシェイピングの手続きとは異なります。回答機会を制限せず,強化率が8割以上になるように,その時点時点での行動に即して強化基準をスライドさせていけばもっと早く脱出できたはずですが,それではバラエティ番組としては成立しないのかもしれません。
 ところで,電球による強化随伴性が投入される前と後では,ななまがりの様子が異なっていましたよね。ベースラインはほぼ消去です。表情は疲れて,活気がなく,落ち込んでいるように見えました。奇声さえ自発していました。強化随伴性が導入されると,二人の会話もはずみ,表情も生き生きしているように見えました。あれが強化の副作用です。逆にいえば,疲れて,沈んでいるのは消去の副作用です。トークンをタバコと交換する頻度が,電球システムの導入前後で変わったかどうか調べたら面白かったかもしれません。
BPO的に何かと物議をかもす番組ですが,もしかすると制作スタッフの中に行動分析学を勉強した人がいるのかもしれません。
 ななまがりのお二人,お疲れさまでした。これをきっかけに売れるといいね。

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