2019年4月アーカイブ

以下,転載します。

第2回行動ウェルネス研究会のお知らせ

開催日時:2019年6月8日(土)14時~19時(第1部・2部)
会 場:慶應義塾大学三田キャンパス 南館・地下4階ディスタンスラーニング室
定 員:100名
参加費:無料 ※19時からキャンパス内の学食にて懇親会(第3部)を開催します。立食形式として自由な討議ができる場として準備しますので1部2部と一緒にご検討ください。懇親会は4,000円(学生3,000円)の事前申し込み制です。

REONカウンセリング/高井クリニックの仁藤と申します。
標記の研究会のお知らせです。

1月19日に開催された初回に続き、第2回目を企画しました。
2回目からは本格的に研究会の特色である①精神臨床領域における事例検討、②論文投稿(現場からのエビデンスの発信)を実践するプログラムとします(添付ファイル)。

それぞれの発表に対して、特色の一つである山本淳一先生と奥田健次先生のコメントやミニレクチャーが随伴します。

さらに事例検討とは別枠で弁護士の清水元貴先生に臨床実践において直面する問題について20分のミニレクチャーをしていただけることになりました。実践家とそれに関わる法律の問題を解説していただきます。

プログラム(第1部)
・ 清水元貴(弁護士:宏和弁護士事務所)
演題:公認心理師時代における臨床家のための法律相談(臨床上の問題を法律家と考える)
・ 石川菜津美(東京大学附属病院こころの発達診療部)
演題:大学病院における早期療育支援の実際
・ 谷川智宏(品川区台場在宅介護支援センター)
演題:パニック障害のある高齢者へのエクスポージャー
・ 瀬口篤史(犬山病院/立命館大学大学院人間科学研究科)
演題:加害恐怖により買い物ができない高齢女性に対する介入と行動指標の活用
・ 仁藤二郎(REONカウンセリング・高井クリニック)
演題:査読者の"気持ちを理解する"-行動分析学研究への投稿を通して

この分野でご活躍の行動分析家の皆様、是非ご参加ください。
また職場の同僚の方などにお知らせいただければ幸いです。

申し込み先

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 畿央大学の大久保賢一先生による『3ステップで行動問題を解決するハンドブック』。4/25(木)に刊行予定ですが,さきほどAmazonをのぞいたら「Amazon 売れ筋ランキング: 本 - 1,357位」となっていました。なかなかの注目が集まっています(笑)。

 本書では,応用行動分析学の研究で効果が確認されているシェイピングやチェイニングなどの技法が,学校ですぐに使える手順として解説されています。単なるハウツー本ではありません。なぜ,どういうときに,どの技法を使うべきかを判断するための課題分析やABC分析の方法も,イラストやダイアグラムを交えて,わかりやすく示されています。

 小中学校(だけではなく,幼稚園や高校でも)で働く先生方が,子どもや親を責めず,そして自分も責めず(つまり,個人攻撃の罠から抜け出て),指導方法を見直し,改善していくのに便利そうです。

 それにしても行動分析学関係の出版が続いていますね。Amazon(日本)で「行動分析学」を検索すると,509件がヒットします(もちろん内容がかけはなれた本もひっかかってきます)。これは Amazon.comで "applied behavior analysis"を検索したときの807件にはかないませんが("behavior analysis"だと色々ひっかかりすぎて "over 3,000 results"),Amazon(ブラジル)で"Análise do Comportamento"を検索したときの171件を凌駕します。

 英語以外の言語で,しかも翻訳ではなく原著として出版されている文献の件数は,日本語がトップなのではないでしょうか(根拠はないです。誰かスペイン語とかノルウェー語とかで調べたら結果を教えて下さい)。

 著者の大久保先生ですが,ここ数年の間に,徳島県やその他の地域でスクールワイドPBSを普及させてきた立役者のうちの一人です。子どもたちの学習と成長を重んじ,現場の先生たちと一緒に汗を流し,苦労と喜びを分かち合うことができ,かつ,研究もしっかりできる,頼りがいのある仲間です。学校に違いをつくる仕事は簡単ではありませんが,あきらめず,少しずつでも前に進むことができることを身をもって示されています。そういう建設的な取り組みがさらに広がるのに本書もきっと役立つことでしょう。

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 今月は行動分析学関係の出版が続いています。日本大学の眞邊一近先生による『ポテンシャル学習心理学』は,学習心理学の基礎をまとめた教科書です。同じサイエンス社からは,恩師である実森正子先生と,同窓の中島定彦先生の共著『学習の心理』が出版されていて,私も自著でよく引用,参照させていただいています。そちらも改訂版がそろそろ出るという嬉しい噂を聞いています。
 本書は図表が多く,色使いがシンプルかつ明瞭で,とても見やすいです。図だけを眺めていても楽しく学べそうなくらいです。学習心理学の基礎を,授業でいえば導入のための概論から,実験計画を立てるための発展的科目まで使えるくらい,広く,丁寧に網羅されています。
 「はしがき」にもうたわれているように,もうすぐ刊行される『行動分析学事典』で整理された専門用語に準拠していて,"提示型強化"や"除去型強化"という表記が使われています。ちなみに,自著『WM(ワードマップ):応用行動分析学』でも『行動分析学事典』の推奨用語のいくつかは採用させていただきました(索引では複数の訳語を相互参照できるようにしました)。が,"提示型強化"や"除去型強化"は個人的には非採用です。理由はおいおい。なお,WMでは,こういう手続きの違いの記述より,手続きにどのような作用があるかを記述することに注力すべきと考え,そのような枠組みを提案させていただいています。
 本書を読んで最も驚いたのが学習の種類の分類です(図1.6, p. 11)。この図がそのまま章立てになっているのですが,この分類は眞邊先生オリジナルでしょうか。少なくとも私にとっては初見。詳しくは本書をお読みください。
 "連合学習"の位置づけについて,たとえば澤先生なんかはどう反応するだろうと興味津々だし,個人的には「観察学習やルール支配行動もオペラントではないのですか?」と眞邊先生にツッコミたいところです(笑)。

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 徳島県の教採応募要領が公開されています。

 応用行動分析学を学び,児童生徒の指導にすぐにでも活用したいと意気込む志望者の皆さま,ぜひとも阿波の国,徳島での受験をご検討下さい。

その理由

  • 徳島県の特別支援学校では十年以上前から応用行動分析学にもとづいた事例研究や指導が行われています。
  • 県外から応用行動分析学の専門家がアドバイザーとして派遣され,コンサルテーションをうける機会が提供されています。
  • 先の知事選で飯泉氏が再選され,今後,少なくとも4年間は,公約にもうたわれていたSWPBSの全県的展開が期待できるからです。これは小中学校の話です。

もちろん,その他にも(11年間徳島で暮らした個人的な経験から)

  • 東側はマリンスポーツし放題(波にのったり,潜ったり),西側には山あり,川あり(ホワイトウォーターカヤックできます)。
  • 去年は色々あった阿波踊りですが,ぜひ踊ってみて下さい。同じ阿呆なら踊りゃなそんそんです。
  • 東京だと公営テニスコートはそうそうと予約さえできませんが,徳島ならやろうと思えばほぼほぼ毎日テニスできます。
  • 魚は旨いし,仲間で飲む酒も美味しいです(大都市より人と人との結びつきが強いと感じます)。

上記の公式サイトから

  • 「教育への熱い思いと,子どもたちへの愛情あふれる皆さんのご応募をお待ちしています」

移住に関する情報はこちらから

 抗インフルエンザウイルス剤「ゾフルーザ」で株を上げたシオノギ製薬が,発達障害をゲームで"治療"する「デジタル薬」に関して,米国,Akili Interactive Labsと提携したというニュース(日本経済新聞, 2019, 3月7日)。

 "治療"は日経記者の解釈だから脇においておくとして,色々と興味深いので,ちょこちょこ文献を調べていた。でも,結局,よくわからないところが多い。検索しきれていないからなのか,特許に関わる重要な点はそもそも公開されないのか,そもそもが市場に向けた探索気球なのか。

 実はこの話,ずいぶん前に米国の友人から聞いていた。元はこのweb記事(Robbins, 2017)だったと思う。どうやらその後,Scientific American に転載されていたようだ(ここ)。飲みの席だったこともあり,そのときは「怪しいよね,でも全くない話でもないよね,万が一化けるかもね」くらいの酒の肴だった。

 でも,その後,ヘビなどに対する不安反応をヘビは見せずに消去するといった論文とかがでてくると(Taschereau-Dumouchel, 2018),何かしらの神経活動(行動)を,それを引き起こす他の行動を自発させることで変更させることが可能かもしれないと考えるようになり,「まさかね」が「ありかも」に変わってきた。

 公開されている情報(Davis et al., 2018; Kollins et al., 2018)によると,

  1. 介入はAkiliによって開発されたゲーム(AKL-T01),
  2. 統制群には類似のゲームを用い,
  3. 無作為化比較試験を行った。
  4. 実験群,統制群ともに,一日25分,1週間に5日,4週間にわたってゲームをしてその前後に事前事後テストを実施。
  5. 主たる従属変数はADHDの中核的症状といわれる注意や制御を測定するアセスメント(PCによるもの,だと思う),
  6. 他にも,より一般的で標準的な行動観察による評価指標(ADHD-RSなど複数)を副次的変数としてとっている。
  7. 群間で有意差が認められたのは主たる従属変数の方で,副次的変数の方には群間で差がない。

といったあたり。

今のところ怪しいなと思う点は,

  1. AKL-T01の仕様が不明(静止画は公開され,説明もあるけど,独立変数は実際のところわからない)。
  2. 統制群で使われたゲームの仕様が不明(アクションゲームとしか記述がないのでAKL-T01とどこが違うのかわからない)。
  3. 主たる従属変数で使われた課題と,AKL-T01,統制群で使われたゲームとの関係性が不明(当然,類似度が高ければ事後の得点は上がる)。
  4. "実行機能"といわれている神経生理学的なメカニズムに影響していると主張しているけど,神経生理学的なデータは出されていない。

 ADHDや自閉症の診断が出ているお子さん(に限らないけど)がゲームにはとても集中できるということは,保護者も教員も,関わっている人にはよくわかっていることだし,文献も多くある。ゲームを使って何を教えるという介入もたくさん行われている。

 ルールが明確で即時かつ高確率に強化される環境を用意すればゲームに"集中"して取り組める。そのような環境なら,文字を読んだり,記号を弁別したり,ルールの変化や条件性制御(「〜のときには〜だが,〜のときには〜」)への対応も学びやすくなる。逆にいえば,ADHDや自閉症と診断されるお子さんの中には,他のお子さんに比べて強化遅延や確率が行動に大きく影響してしまう特性を持っている子がいるということかもしれない(遅延による価値割引が急激に起こるということ,確かそういう実験もあったような...)。
"集中"して取り組める環境が見つかれば,その結果,ゲームをしていないときに(ルールが不明確で強化は遅延し,低確率になる環境で)問題行動が自発され,偶発的に,あるいは必然に強化されてしまう機会を減らせる。つまり,二次障害を発生させるリスクを低下させられる(個人的にはこの副次的効果には意味があると思う)。

 また,ゲームをする機会を好子として使い,そういう構造化された環境へのアクセスを,そこにもゲームのような随伴性を適用することで(例:トークンエコノミーや活動スケジュール,例:「宿題のドリル1ページ終えたらゲーム10分できるよ」),日常行動もマネジメントしやすくなる。

 果たしてこの「AKL-T01」にはそういう既存の介入を越えた効果があるのか。期待しながら経緯をみたい。

引用文献

  • Anguera, J. A., Boccanfuso, J., Rintoul, J. L., Al-Hashimi, O., Faraji, F., Janowich, J., ... & Gazzaley, A. (2013). Video game training enhances cognitive control in older adults. Nature, 501(7465), 97.
  • Davis, N.O., Bower, J., Kollins, S. H. (2018). Proof-of-concept study of an at-home, engaging, digital intervention for pediatric ADHD. PLOS ONE 13(1): e0189749. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0189749
  • Kollins, S. H., Bower, J., Findling, R. L., Keefe, R., Epstein, J., Cutler, A. J., ... & Faraone, S. V. (2018). 2.40 A Multicenter, Randomized, Active-Control Registration Trial of Software Treatment for Actively Reducing Severity of ADHD (Stars-Adhd) to Assess the Efficacy and Safety of a Novel, Home-Based, Digital Treatment for Pediatric ADHD. Journal of the American Academy of Child & Adolescent Psychiatry, 57(10), S172.
  • 日本経済新聞(2019, 3月7日). 発達障害をゲームで治療 塩野義、「デジタル薬」で米社と提携 Retrieved from https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42160300X00C19A3TJ2000/ (2019年3月30日)
  • Robbins, R. (2017). Could this be the first prescription video game? New data show it helps kids with ADHD. statnews. Retrieved from https://www.statnews.com/2017/12/04/first-prescription-video-game-for-adhd-from-akili (2019年4月6日)
  • Taschereau-Dumouchel, V., Cortese, A., Chiba, T., Knotts, J. D., Kawato, M., Lau, H. (2018). Towards an unconscious neural reinforcement intervention for common fears. Proceedings of the National Academy of Sciences, 115, 3470-3475; DOI: 10.1073/pnas.

 Any MotionはNTTPCコミュニケーションズが開発した,人物の動画から骨格データを検出し,モデル(見本)との一致度を計算してくれるシステムです。

今なら無料で体験できるということで,さっそく試してみました。
 iPhoneでスクワットを自撮りし,クラウドにアップ,提供されている見本と比較させます。
動画の解析とデータの比較には20~30分かかりました。サーバーが混雑しているからなのか,やはりそのくらいの時間はかかってしまう負荷がかかる処理なのかは不明です。
 結果が上の画像。しっかり骨格が検出できています。技術革新に『下町ロケット』的な感動をおぼえます。
 解析結果を詳しくみていくと,左側からの撮影ですが,「部位別の一致度合い」のグラフには,右肘,右手首,右目のデータはないのに,右肩,右腰のデータがあります。見え隠れするごくわずかな画像を使っているのでしょうか。ちなみに,棒グラフってこういうときデータが欠損しているのか,0なのかわかりにくいのが欠点ですね。
 「部位別の一致度合い」に示されているデータの算出方法もわかりませんが,割合データをそのまま表示しているため,これだと,結局全部意識すべきとなってしまいますね。コーチングに使うなら工夫が必要そうです。
コーチングに関しては,「1回の動作が早すぎます。もう少しゆっくりと行いましょう」というコメントがついています。何かしらのAI("計算","プログラム"という意味での)によるものか,まさかの人力(?)によるものかは不明ですが,スクワットでよく注意される,膝が出過ぎている動作が視認できるので,この場合は,たぶんこっちの方が優先順位が高い標的行動となるでしょう。
 このシステムが凄いところは,動画の撮影だけで動作解析ができるところです。これまでは被撮影者の関節部位などにシステムが検知できるマーカーをつけて撮影しなければならず,かつ,そういうシステム自体がたいへん高価で使いにくかったわけですが,iPhoneの撮影だけで済むのなら,スポーツやダンスなど,動作のコーチングをする指導者には便利な道具になるはずです。
 あとは解析にかかる時間と価格ですね。
 いつまで無料で使えるかわかりませんが,卒論などで行動コーチングの実験に使っても面白い研究ができそうです。

 昨年度「実験レポートの書き方に関する研究」にご協力いただいた皆さまにお知らせです。

 おかげさまで実験レポート執筆時によくある間違いを整理することができました。また,その分析を元に,実験レポートの作成に関する知識や作文技術を学習できるweb学習プログラムを,まだすべてではありませんが,いくつか作成いたしました。

 参加者の皆さまには,このプログラムをご利用いただけるよう,「ネットで学ぶ行動分析学:法政大学 学びオンライン」にてご提供していますので,ぜひご活用下さい。授業等でもお知らせしますが,参加者の方は,私までメールで直接お問い合わせ下さればアクセスキーをお知らせします。

 研究へのご協力に重ね重ね感謝致します。

研究代表者 島宗 理


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 心理三田会が開催している心理学カフェで,中野泰志先生が講演されたタイトルが気になっていたのだけど(参加できなかった),たまたまTwitterのタイムラインでみかけたので調べてみました。

 視覚に障がいがある人たちにも(そして障がいがない人たちにも),読みやすいフォントを開発しようと始まった研究プロジェクト。エビデンスを元に改善を重ね,最終的に,デジタルデバイス上でも,印刷しても読みやすいフォントが出来上がったとのことです。詳しくはこちらの資料で。

 しかも,なんと,Windows10にはアップデートで追加されていたのですね。無料で!

 残念ながらMacではそのような恩恵にあずかれそうにないので,開発元のモリサワが提供しているMORISAWA PASSPORT(Bizバージョン)をサブスクしました。

 いきなりすべては難しいですが,今年度から授業で使うスライドや配付資料,ワークシートなどの書体を,徐々にこのフォントに変えていきます。

 さて,運用上の課題が一つ。

 MORISAWA PASSPORTで使えるようになるフォントは,Macのフォント管理アプリ(Font Book.app)からはアクセスできません(モリサワのサポートで確認済み)。なので,よく使うフォントとして登録しておけず,たとえばWordでフォントを選ぼうとすると,ものすごい数のフォントからスクロールして探さなくてはなりません(「最近使ったフォント」には残りますが,これって時々消えちゃうんだよね)。
今のところ,このフォントをスタイルとして登録しておくことで対応しています。

 これまで授業や講演会などのスライドには「しねきゃぷしょん」など,一風変わったフォントを使っていました。授業アンケートなどに「フォントがきれい」という感想があったりしていい気になっていましたが(^^;;),読みやすさに関する配慮が完全に欠落していました。

 書体によって読みやすに大きな違いがあるということすら知らなかったので,ご勘弁。でも,こういう改善がまさにエビデンスにもとづいた前進ですよね。


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図1. 収録環境が「お前が〜するんかい」に与える影響

 4月3日に放送された『水曜日のダウンタウン』,「ツッコミ芸人ならどんな状況でも一発でツッコめる説」の検証シリーズ。

 前回は『ダウンタウンのごっつええ感じ』のコントへのオマージュで,浜ちゃんの「お前が歌うんかい!」というツッコミを本人が再現に失敗。残念ながら録画が残っておらず,誰がツッコめたかわからない(確かフジモンはツッコめていたような気がする)。

 今回の結果は図1に示した通り。銀シャリの橋本は寿司屋で板前さんが寿司を食べてしまうきっかけでツッコめず(×),次長課長の河本は草サッカー試合で審判がフリーキックを蹴ってしまうきっかけでツッコめなかった(×)。

 続く陣内はハイキングフォーキングのゲップネタでアシスタントの女子アナが先にゲップするとすかさずツッコみ(○)。

 ところがタカアンドトシのトシはフラッシュモブのプロポーズで困惑し,時間がかかってのゆるいツッコみ(△),バイキングの小峠はバンジージャンプでスタッフが飛び込むのにツッコめなかった(×)。

 「お前が〜するんかい!」というツッコミは,その場で段取りのない人が何かすること("ボケ")を弁別刺激としたタクトであるが,実はそのボケとツッコミの関係性を笑う聞き手の制御を受けているマンドの機能もあるため(つまり多重制御),聞き手の存在という予告性確立操作がないと喚起されにくいと考えられる(図2)。

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図2. 「お前が〜するんかい」の多重制御

 芸人のネタ番組をスタジオ撮影していた陣内の優位性はそこにある。ロケ,しかもプロポーズという感動系コンテンツ収録だったトシにはこれが不利だった。前回の浜ちゃん,今回の橋本,河本はそもそも撮影現場ではないので予告性確立操作がまったくない状況だった。小峠はそもそもツッコミのベースライン水準が極めて高い芸人だけに期待できたが,高所であり,これから飛び降りるという状況が強い不安反応や緊張反応を誘発して(無条件刺激),拮抗反応となり,また,おそらくこれまで何回もバンジーロケはやらされていることだろうから,飛び降り地点の各種刺激は条件刺激,習得性確立操作として作用し,本人が後に語っているように,全体的なオペラント水準を下げていたのだろう(条件性抑制)。

 以上,半分本気,半分冗談でした。


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 法政心理では卒論や修論の実験用にSuperLabのライセンスを購入し,実験実習のカリキュラムにも組み込んでいます。コード書かなくてもいいし,慣れていて,刺激を呈示して再認させるような簡単な実験なら,ものの1時間もあれば完成させられるところがメリットです。

 ただ,けっこう高価なので,ここ1-2年,無料のPsychoPy Builder(Peirce et al., 2019)に切り替えられないかどうか検討を重ねてきました。PsychoPyがちょうどver2からver3への大幅リニューアルを迎えていて,テストはver2で実施していました。PsychoPy Builderのver2については,愛媛大学の十河先生が日本語のマニュアルをwebで公開して下さっていて(PsychoPy Builderで作る心理学実験),Coderについては解説書も出版されています(十河, 2017)。ぐぐるとわかりますが,他にもこれを使っている心理学研究室も多く,日本語の情報は豊富です。無料なので,学生が自分のPCにインストールして使えるところも大きなメリットです。今回,この記事を書くのにあらためてアクセスしたら,十河先生のマニュアルがv3に対応していました(素晴らしい!)。

 ver2に関しては,結論として,シンプルな実験であれば,SuperLabと同等に使えるし,拡張性はむしろPsychoPyに分がある,でも安定性としてはSuperLabが勝るということになりました。

 自分もPsychoPyを使っていくつか実験プログラムを書きました。音声ファイル,画像ファイルなどを使い,コードもけっこう書いていくと,原因を特定しにくいエラーが生じることがあります。その多くは,PsychoPyが使うPygameなどのモジュールのバージョンやOSとそのバージョンの組合せに起因していると考えられるのですが,原因を特定したとしても解決策がなかったり,そもそも原因を特定することが難しかったり,どうやらモジュール以外の問題もありそうだったりしました。PsychoPy Builder は基本的にコードレスで部品をグラフィカルに組み立て,それをpythonのコードに書き直してくれる仕組みです。でも,そのコーディングのどこかにバグがあると,結局,pythonのコードを読まなくてはならず,かつ,それは自分で書いたコードではないので,デバックはかなり困難となるのです。

 幸いにも予算が確保できたため,心理学科ではSuperLabを継続して使うことになりました。

 ただ,SuperLabでは実施できる実験に限界があります。行動分析学でいうと,単純な見本合わせ訓練くらいなら可能ですが,強化スケジュールを組み込んだり,セッション内で条件移行しようとすると,もうお手上げです。ちなみに,行動分析学の実験はVisualBasicで書く人も多いです。学会から教科書もでています(中鹿ら, 2011)。ただ,VisualBasicは有料で,かつ(私の嫌いな)MS社のやっていることがよくわからず,現時点でどういうライセンス形態がどのように使えるのか不明です。

 というわけで,自分や自分のゼミ生の実験に使えるシステムを引き続き探索してきました。個人的には,大昔のHyperCard,その次のRealBasicを継承しているxojoに気持ちが動いていました。WindowsでもMacでも使え,iOSやhtml5にも展開できます。コンパイルしなければ無料だし(そうコンパイルできるのです),企業が開発しているのでお金さえ払えば丁寧なサポートも受けられます(実際,1年間契約してみましたがサポートは親切丁寧で確実でした)。いくつかプログラムも組んでみましたが,動作も安定しています。日本語マニュアルもあります。

 でも,いかんせんユーザーが少なすぎで,ぐぐっても一般ユーザーによる情報提供がほとんど見つかりません。いずれ書きますが,自分がプログラミングを勉強していた数十年前とはプログラミング事情が様変わりしていて,今では学習材料はほぼネットで入手可能だし,入手すべきです。また,xojoの言語体系はかなり特殊で,現在主流となっている,python,ruby,Swiftなどとは,随分と距離があります。学生さんにとってみると,ここに学習リソースを投入しても,他の言語を学習することになったさいには,転移による利が見込めそうにないです。

 本学科でPsychoPyの講習会を開催して下さった大正大学の井関先生が,ちょっと複雑な実験になったら,無理にPsychoPy Builder を使わず,Coderを使って書いちゃった方が結局楽ですよとおっしゃっていたこともあり,コードを書くことにしました。

 かつ,PsychoPy v2の開発が終わり,v3の安定まではしばらくかかりそうで,また,安定するといっても,結局は,上記と同じ問題を抱えそうだったので,PsychoPy Coderには頼らず,pythonでそのままコードを書くことにしました。

 そこで,色々物色していて見つけたのが,Kivyというモジュールです。主に画面レイアウトに重宝します。マニュアルの大部分が有志のユーザーによって翻訳されていて(Kivyマニュアル),小樽商科大学の原口先生がわかりやすい解説書(「Kivyプログラミング--Pythonで作るマルチタッチアプリ--」)を出しておられるだけではなく,ユーザーによる情報も比較的豊富です(「比較的」というのはPsychoPyやxojoに比べてです。昨今の標準からするとKivyの日本語情報は「少ない」と言われています)。

 画面の定義にはKivyを使い,制御の本体はpythonで書くことで,簡単な実験制御なら(学習コストを無視すれば)わりとすぐに書けますし,複雑なプログラムでも問題なく書けます。なにしろ,すべて無料です。

 「学習コストを無視すれば」と書きましたが,言語としてpythonを学んでおいて不利になることはないと思います。モダンな言語の一つですし,ユーザー数が多く,情報も豊富で,使えるモジュールも多いです。流行の機械学習なんかも,使おうと思えばすぐに使えてしまいます。

 導入の手前で終わってしまいました。今日はここまで。

引用文献

  • 中鹿直樹・桑原正修・佐伯大輔 (2011). はじめての行動分析学実験--Visual Basicでまなぶ実験プログラミング-- ナカニシヤ出版
  • Peirce, J. W., Gray, J. R., Simpson, S., MacAskill, M. R., Höchenberger, R., Sogo, H., Kastman, E., Lindeløv, J. (2019). PsychoPy2: experiments in behavior made easy. Behavior Research Methods. 10.3758/s13428-018-01193-y
  • 十河宏行 (2017). 心理学実験プログラミング--Python/PsychoPyによる実験作成・データ処理-- 朝倉書店

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 本日発売開始の『応用行動分析学 --ヒューマンサービスを改善する行動科学--』を書き始めるときに作成した。"ワードマップ"です(クリックすると拡大します)。
 本書は,新曜社から出版されている,その名もズバリ「ワードマップ」シリーズの一冊です。そういうわけで,まずは応用行動分析学の概念や用語を視覚的に整理して,それから体系的に書いていこうと奮起しました。
 この図も本に掲載したかったのですが,それは断念。「ワードマップ」シリーズでは,原則,図は注釈に入れ込むことになっていて,通常の本より広くとってあるとはいえ,さすがにこの大きさの図を注釈欄におさめることはできず,かといって見開き一頁を使ったとしても文字の大きさが判読可能とはならなかったからです。
 他にも掲載を断念した図があります。この本を書くにあたって,日本語で出版された行動分析学関係の図書を調べ,本の題名で累積グラフを作りました。これについて通常の累積グラフは掲載しましたが,元になった書名入りの大きなグラフはすでに公開しています(この記事を参照)。
 体系的に書くべしと意気込んだスタートでしたが,それに拘るととても読みにくい本になることもわかってきました。教科書的な本によくある,最初の数章が一番難しく,初学者にはつまらなくて,読み続ける読者をわざわざ減らしてしまう,あの典型的なパターンにはまってしまうのです。
 そこで,用語解説的な要素は残しつつ,物語的な展開も取り入れて,読み物として成立するように工夫しました。四部構成で,難易度的にハードルの高い「行動の諸原理」は第三部です。場合によってはここを読み飛ばしてもらっても,本書の大枠はつかんでいただけるはずですし,まずは実践の話からという方は,第四部から読んでいただければと思います(編集者のMさんがしっかり索引をつけて下っています)。
 ところで,このブログ,実は本書の執筆のため,2014年から更新を中断していました。その間,世の中にはTwitterやらFacebookやら、最近ではエッセイを記事ごとに課金するシステムまで登場しています。新元号「令和」も発表され,おそらく「ブログ」というコトバそのものが"平成的"と評されることになっていくことでしょう。
 このまま放置しておいても誰も気にはしないとは思いつつ,本の執筆も終わりましたので,更新を再開します。Twitterではつぶやききれなかったこと,最近取り組んでいる研究や実践などについて,ぼちぼち書いていこうと思います。

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