2013年12月アーカイブ

Applestore_2

奥田先生のブログで知りました。数ヶ月前に出版社から承諾書が送られてきていて、返信はしていたものの、その後は音沙汰なしだったので、今年最後のサプライズ的なご褒美になった感じです。

だって、あのiTunesStoreで自分の名前で検索するとヒットするんですから!!  Apple大好きで、Steve Jobsを大尊敬している私にとっては、ものごっつー嬉しゅうプレゼントでごぜえます。

ただし、電子書籍はKindleに集中させているので、Kindle版を購入しました。この本には随伴性ダイアグラムが山とでてくるので、それがiPhoneでどのように表示されるかが心配だったのですが、Kindle版ではピンチアウトで拡大できます。画面の方向が縦置きで固定されてしまっているのが残念です。横置きに回転できて拡大できれば見やすそうなのですが。

iBook版は無料のサンプルをダウンロードしました。最初の30頁が読めますが、そこには図が含まれていないので回転や拡大については未確認です(奥田先生のブログでは拡大できないと報告されていますね )。

追記:自分でもiBook版を購入してみたところ、拡大、回転可能でした。画像を一度タップすると、画像モード(?)になります。こうなると拡大、回転が可能です。それから、Kindle版は本文中の文字列検索ができませんが、iBook版は検索可能でした。Kindle版だとMac用Kindleアプリでは「互換性がありません」と言われてしまいますが、iBook版だとMac用iBookアプリでも読めます。ということで全体的にはiBook版の方が優れていると思いました

Amazon.comやAmazon.co.ukでも検索してみましたがヒットしませんでした。iTunesStoreの米国版でもnot foundでした。日本のAmazonでは洋書のKindle版も購入できるので、できれば逆方向もお願いしたいですね。売れるとは思いませんが、世界デビューみたいで話のネタになるから。

来年の4月発売に向けて準備している次の本も電子書籍になるのかな。編集者と相談してみようっと。

それでは皆さま、よいお年を。来年もよろしくお願いします。

人は、なぜ約束の時間に遅れるのか〜素朴な疑問から考える「行動の原因」〜 (光文社新書) 人は、なぜ約束の時間に遅れるのか〜素朴な疑問から考える「行動の原因」〜 (光文社新書)
島宗 理

光文社  2010-08-20
売り上げランキング : 27392

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 

 

去る12/14に慶應義塾大学で開催されたミニ・レクチャー「健康と行動的意思決定」は衝撃的に面白かったです。それまで常識だと思っていたことが次々と覆されました。既存の知識との落差があまりに大きかったので、紹介された論文をいくつか読んでからブログの記事を書こうと思っていたのですが、どうやらそういう時間がとれそうにありません。でも、記事を書く価値は十分にありそうなので、孫引き的「伝聞」になってしまいますが、報告しておきます。

伊藤正人先生(大阪市立大学)、高田孝二先生(帝京大学)、アラン・シルバーバーグ先生(アメリカン大学)がお話をされたのですが、どなたが何を語ったかがメモから不明確になってしまったので、とにかく印象に残ったことの羅列になってしまいますがご勘弁を。

  • 最新のDSM-Vからは「ニコチン関連障害(Nicotine-related disorders)」という用語がなくなり、「タバコ関連障害」(Tobacco-Related Disorders)という用語に変わったそうです。
  • これまで信じられていたような“依存性”(addiction)がどうもニコチンにはないのではないかというデータが増えてきているからだそうです。
  • しかも、そもそも“addiction”には定訳がないし、それどころか定義も曖昧で、これまで何回も改訂されてきているとのことです。ちなみに“中毒”と訳すのは間違いだそうです(確かに、たとえば「鉛中毒」のような話とは違うわけですよね)。
  • ニコチンがそれほど強い好子として機能しないというデータがあるそうです(行動薬理の実験からも、あるいはたとえば低ニコチンのタバコが売れているというデータからも)。常識的な話でわかりやすかったのは、禁煙に使うニコチンパッチやガムです。もしニコチンに“依存性”があるなら、ニコチンパッチやガムを求めてさまよう人がでてこないとおかしいですが、そんな人は見当たらないわけです。
  • ニコチンどころかヘロインやコカインなどの薬物でさえ、それほど強い“addiction”があるわけではないそうです。映画やドラマでは薬がきれたジャンキーが狂ったようになるシーンがでてきますが、実際の症状は風邪をひいたときの感じに近いそうです。こうした薬物を摂取したときにドーパミンのレベルが上昇するようなことを示す研究はたくさんありますが、他の報酬提示と比較した研究はないそうです。つまり、どんな報酬でも同じようにドーパミンが放出される可能性があるということです。
  • 食餌を遮断化していけばコカインよりも食餌を選択するし、“薬物中毒者”と言われている人たちが、薬物とポップコーンの交換に応じるというデータもあるそうです。また、米国には「heroin chipper」という人たちがいるそうで、彼らは週末にちょっと嗜む程度に薬物を摂取するそうです。映画やドラマにあるように、どんどんと薬物にはまっていき、まともな日常生活が営めなくなっていくというのが薬物使用者の常道のように思っていましたが、そうならずに崖っぷち(?)で留まっている人もたくさんいるそうです。このことは、だから薬物は意外にも安全だという意味ではありません。危険の原因は、これまで考えられていたような薬物の成分による効果だけではないようだということです。
  • ニコチンやヘロインやコカインなど、薬物そのものが摂取する行動をそれほど強化しているのでなければ、何が好子になっているのでしょうか?
  • タバコに関しては、口腔内への感覚刺激や視覚刺激も無視できないそうです。たとえば米国ではeタバコの売上げが増加していますが、この装置ではタバコの煙と同じサイズの粒子が噴出し、口の中を刺激するように設計されているそうです。視覚に関しては、暗闇ではタバコを吸う行動の自発頻度が下がるというデータがあるそうです。
  • そして、こうした刺激が、何よりも行動の直後に出現するという「即時性」が行動を強く制御しているのではないかというのがシルバーバーグ先生の主張でした。
  • 確かに、食べる、飲むなどの行動には、触覚や味覚、嗅覚など、様々な刺激提示が随伴します。時差はほとんどなく「即時」です。テレビゲームやスマホなども同様で「即時性」がキーになっているように思えます。
  • いわゆる“依存性”と言われていた現象が、薬物や依存する対象の内容など(だけ)ではなく、強化随伴性の即時性による強い行動制御の結果として見直される可能性があるということだと思います。

ね、面白いでしょ。

総武線で飯田橋に向かう電車に、五人の子どもと三人のお母さんが乗ってきました。

いきなり、そのうち三人の子どもが靴をはいたまま椅子に飛び乗りました。窓にむかって膝を立てて座り、騒ぎだします。座っている私の真横でです。

二人のお母さんがつり革につかまり、瞬間、靴を脱がせようとしますが、子どもたちは無視。お母さんは早々とあきらめ、お母さん同士でおしゃべりを始めます。子どもの靴が度々私の膝にぶつかってきますが、子どももお母さんも気にしません。

残り二人の子どもは入ってきたのと反対側のドアに立ち、やはり何やら窓の外を指差し、大声で騒いでいます。残り一人のお母さんがこの二人の近くで「そうそう、よく知っているね」なんて言ってますが、子どもは知らんぷりです。

車内の視線がこの集団に集まります。私も含め何人かの乗客が明らかに迷惑そうに顔をしかめていますが、お母さんたちはそれに気づく様子もありません。

ここは怒るおじさんに徹して文句を言ってみようか、でもそれも恥ずかしいな、誰か私よも適任者はいないかな、なんて思い戸惑ううちに電車が飯田橋について下車しました。

「褒めて育てる」ことはいいことだと思いますが、それはやってはいけないことを放任することではありません。やってはいけないことをしたら、叱るべきです。叱るといっても、大声で怒鳴ったり、罵ったり、叩いたり、殴ったりするということではありません。それは暴力です。やるべきではないことをしていることを指摘し、なぜやるべきではないかを説明し、やるべきことをできれば複数提示すべきです。そして、やるべきことをせず、やるべきではないことをやりつづけるなら、それなりの結果を伴うことを知らせ、そうするなら結果を伴わせるべきです。

「褒める」と「おだてる」も区別すべきです。望ましい行動に対して、やるべきことをやっていると知らせるなら「褒める」ですが、やるべきことをやっていないときに“褒めて”言うことを聞いてもらおうとするのでは、まるで太鼓持ちですし、それで子どもが言うことを聞くはずもありません。

奥田先生の『叱りゼロで「自分からやる子」に育てる本』が相変わらず売れているそうです。この本には、電車ではしゃぐ子どもに「やっちゃだめよ」を守れるようにする方法も書かれています。でも、同時に、奥田先生が最善とする策は、ほとんどの親御さんが実行しないとも書かれています(具体策を知りたい人は本を買って勉強して下さい)。

親御さんにとっては、子どもが泣いたり、わめいたり、悲しがったり、不機嫌がったりする様子が、とても強い嫌子として機能するようです。だから、子どもをそのようにさせる行動は弱化されますし(「だめ」とは言うけど、ゲームを取り上げることはしなくなる)、こうなる状況を回避できる行動は強化されます(子どもが行きたい場所に親があわせて行くようになる)。「おだてる」ことで回避するのは、体罰などで回避するよりは暴力を使わないぶんマシですが、本来子どもが身につけるべき行動を身につけることができずに育ってしまうという意味では同じです。

実はこの一週間、子育てをしている友達のうちに泊まって四六時中生活を共にしていたのですが、そこであらためて、上述のような家族内のダイナミックな随伴性を目にしました。子どもたちが冬休み入っていることもあり、クリスマスでもあったので、子ども二人に夫婦二人、それに私や友達の親戚を含めて、いつも十人くらいで過ごしていました。子どもは何かを欲しくて(テレビがみたい、ゲームをしたい、アイスが食べたい、などなど)色々な行動を仕掛けてきます。親も、諭したり、別案を提案したりと色々と対抗しますが、やはり最も有効なのは無視のようです(消去)です。とはいっても完全に黙りこむわけではなく、別のことを話したりはします。子ども側は不機嫌な表情をみせ、泣いたりもしますが、そのうち(長いときでは一時間くらいして)収まります。これが一日に何十回もおこります。

かっこよく、ナイスなおじさんでいたい私は、ついつい子どもの不機嫌さに付き合ってしまって、「大丈夫?」とか「何が欲しいの?」とか、まさに「おだて」系の行動にでてしまいました(だから、そうなる気持ちはよくわかります)。でも、友達(心理学者でも教育学者でもない、ただの外資系銀行マンです)はびくともせずにバーストを乗り過ごしていました。偉かったなぁ。

子どもからの愛情を失わず(子どもから嫌われずに)、暴力も使わずに、やってはいけないことをやらないように教えることは可能です。奥田先生のご著書にはそういう考え方や具体策がたくさん書かれています。全国のお母さん、お父さん、ぜひ、購入し、読んで、実行して下さい。

クリスマスの朝は友達の教会のミサについていきました。子どもたちは嫌がっていました。おそらく千人近い人が集まった、ざわつく会場で、一時間くらい、神父さんのお話をきき、賛美歌をうたい、祈り、座り、立ちを繰り返しました。会場のそこら中で子どもたちが泣いたり、わめいたり、ミニカーで遊んだり、どうしようもなくなった大人が子どもを抱きかかえて出て行ったりしていましたが、友達の子どもはずっと静かにしていられました。なぜかとても誇らしい気持ちになりました。

叱りゼロで「自分からやる子」に育てる本 叱りゼロで「自分からやる子」に育てる本
奥田 健次

大和書房  2011-12-24
売り上げランキング : 3285

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 大掃除の季節ですね。

 自分は大掃除が面倒なので、日頃からこまめに片づけたり、汚さないようにして(うちの台所では油を使う料理は禁止です)、そもそも大掃除する必要がないようにしているのですが、唯一の例外が窓ふきです。

 窓ふき(洗車も同じ)には、せっかく綺麗にしても次の日に雨が降ったりすると一挙に汚れてしまって元も子もなくなるという随伴性があります。汚れていた窓が暴風雨で一挙に綺麗になるという、行動と無関係で生じる環境変化もあります。専門的にはNCR(Non-Contingent Reinforcement:非随伴強化)ですが、これは概念分析が間違っていて実際には強化ではなく消去です。

 というわけで、降水確率が高い時期は低い時期に比べて窓ふき行動の頻度が下がるというのが持論なのですが、日本(少なくとも関東地方)だと、降水確率が低い時期は気温が低い時期とかぶるので、いよいよ一年を通して窓ふき行動の自発頻度が下がり、それゆえ、「大掃除」というお題で別のルール支配でも組み込まないと、窓ふきなんてなかなかできないということではないのかと考えるわけです。

 窓ふきしない=窓が汚れていても何とも思わない というわけではありません。

 ケルヒャーの窓用バキュームクリーナーが売れているようです。うちも買いました。でも使っていません。

 モチベーションはあるのに(好子、嫌子、随伴性はわかっているのに)、ベストなソリューションがない(行動レパートリー、オペランダムがない)という状況なので、イノベーションのチャンスです。

 ということで、窓ふきロボット、ガンバくん。

 お察しの通り、名前はiRobot社のルンバくんからいただきました。兄弟分です(ガンバ大阪とは無関係ですよ)。

 どうすればいいのかはわかりませんが、とにかく吸盤(おそらくは窓の面と吸盤との間の空気を吸い出して真空的な状態を作る技術)を使って窓に吸い付き、窓掃除をしてくれるロボットです。落ちないように一生懸命窓にはりついている様子を見ていると、頑張って!と応援したくなるからガンバくん。

 コリン・アングルCEOさま、あるいはロボット掃除機で一歩遅れた日本の家電メーカーの開発者さま、ぜひとも開発をお願いします。2万円だしても買います。

Th_scan

本日(12/18)発売の『PHPくらしク〜る♪』1月号に記事を書いています。

「行動分析学から学ぶ やりたいことができる人になるヒント」という題目で、セルフマネジメントの考え方やコツを紹介した記事です。

PHPというと、近所のスーパーのレジ手前のコーナーでよくお見かけしていた雑誌ですが、まさか自分が記事を書くことになろうとは。

編集担当者さんから「普段先生が書かれている媒体より平易な文章でご執筆いただけますと、ありがたく存じます」と釘をさされていたので、できるだけそうしてみたのですが、まだまだ難しめだったようで、とても丁寧に校正していただきました。素敵なイラストもバッチリ入れていただき、プロらしい仕上がりになりました。

これまでも何度か一般誌に記事を書いたことがありますが、今回の編集担当者さんとスタッフの皆さまはその中でもピカイチでした。この場を借りて、感謝いたします。

名言〔第9位〕:「真摯さこそ不可欠」

解釈:

(ドラッカーはこれから成長していこうとする部下にとっての管理職に必要な素養として、管理職としての様々なスキルだけではなく、「尊敬できる人となり(原文は"integrity of character")」を持っていることが不可欠だと述べています。この名言集ではそれを「真摯さ」と訳しています。ドラッカーは「人格」なるものは仕事のスキルとは違って教えられるものではないと考えていたようです。このあたりの見解は、行動分析学の考え方とは若干相容れないところもあるので、ドラッカーの考え方を解釈するというよりも、「人格」なるものを行動分析学からどのように解釈できるかを考えて書きました)

 誰でも管理職の仕事をこなして、部下が成長し、満足してやりがいのある仕事に取り組めるように、企業はそれに必要で有効な随伴性を整え、必要で有効なスキルを管理職、部下ともに教えるべきである。
 しかし、どれだけ随伴性を整備し、行動レパートリーを充実させる研修やトレーニングを行っても、部下が上司の「性格」や「能力」に、上司が部下の「性格」や「能力」に不満をもつことはある。
 企業として整備すべき随伴性は、それをそれぞれの「人格」に帰属させる行動の強化随伴性ではなく、何が欠けていてどうすれば改善できるのかを話し合い、試行し、評価して、成果を喜びあう行動を強化する随伴性である。
 その上で、強化随伴性をすべて完全に整備できることもないことは現実として共有し、随伴性の設定や研修や改善努力でまかないきれない問題については、配置転換や設定目標を下げるなど、企業側の処置で対応し、あくまで個人の「人格」なるものを攻撃対象としないようにすべきである。

本シリーズの過去記事一覧:

Th_scan

 水曜日には法政心理でPaul Chance先生の特別講義がありました。

 Psychology Today などの一般誌に心理学に関する記事を書かれてきたChance先生は、ロバースの自閉症児に対する早期集中行動訓練の研究を世に広めた功績に対し、国際行動分析学会からメディア賞を受賞されました。Chance先生が書かれた記事を読んだキャサリン・モリスさんが自らのお子さんにロバースプログラムで療育したドキュメント本『我が子よ、声を聞かせて(Let me hear your voice)』がベストセラーになり、これが自閉症児の療育に行動分析学にもとづいて開発されたプログラムを導入する保護者や学校が爆発的に増加したきっかけとなったのです。

 Chance先生はロバースだけではなく、スキナーへのインタビュー記事も書かれています。また、Psychology Todayに掲載された記事をまとめた本を編集し、出版されています。その『The Best of Psychology Today』が、日本語に訳され、出版されていたこと、そしてなんと訳者の一人が法政心理の渡辺弥生先生だったことを、講演直前に知りました(奇妙なご縁ですね)。残念ながらすでに絶版となっていますが、Amazonで古本が買えます(さっそくゲットしましたよ〜)

 ちなみに、この本--『心の働きを科学する―感情・性格・心理療法』(マグロウヒル, 1991)--には、日本ではおそらくほとんど知られてない(と思う)Goldiamond先生のセルフマネジメントに関する記事も掲載されています。行動分析学にもとづいて一般臨床の仕事を始めた草分け的な人です。前著には"ゴルディアモンド"と綴られていますが、私の印象ではそのまま"ゴールダイアモンド"と発音されていたように思います。

 他の記事も心理学の様々な領域の代表的な研究者によって書かれた記事がわかりやすく編集、校正されていますから、おすすめです(ただし、日本語版はまだ読んでません)。

 Chance先生には他にも著作がありますが、中でも『Learning & Behavior』 は米国の大学学習心理学の授業で長年数多く採用されている教科書です(2013年に最新7版がでました)。私はたまたまどこかの古本屋で入手した第2版を読んで感動しました。この手の教科書は動物実験のことが堅苦しく書いてあるのが常ですが、この本では日常生活への応用例が数多く紹介されていて、しかも英語が読みやすいのです(後年、佐藤方哉先生が同じような評価をされていたことを杉山尚子先生からお聞きしました)。

 さてさて、特別講義の内容です。テーマは「普及」。ただし、Chance先生は辞書的に「情報伝達」と捉えるのではなく、「普及とは行動変容」であるとし、そのために何ができるかを話してくださいました。特に、一般読者にもわかるように学術研究について書く技術については、具体的なコツを教えていただきました。残念ながら、日本には Psychology Today (ただし、現在の経営グループに買収されてから編集方針が変わり、今では女性雑誌みたいになってしまっています。私も講読を打ち切りました)や、Scientific American: Mind(こちらはより専門誌に近いですが、記事がしっかりしているので講読を続けています)のような、一般向けの心理学雑誌がありません。心理学に長けたジャーナリストも(私が知る限りですが)いないように思います。テレビなどで心理学が取り上げられるときは、ほとんどが娯楽番組で、事実は歪曲され、科学とは無関係で根拠のない話が、あたかも学問にもとづいているかのように語られます。

 こうした日本の残念な実情を伝えると、まずは、新聞に投稿するところから始めたらどうだろう?という提案をして下さいました。アメリカの新聞には「op-ed」という仕組みがあり、新聞社の社説に反対する意見を投稿できて、新聞社はそれを掲載するそうです。日本の新聞では見たことも聞いたこともなかったので、ちょっと調べてみましたが、やはりないようです(日本語wikiに解説があるので、日本で全く知られていないということではなさそうです)。

 一つの可能性は、日本心理学会が出版している『心理学ワールド』を、さらに一般向けにして、誰でも買えるようにすることでしょうか。私もそうですが、ときどき、一般雑誌に依頼記事を書いたり、インタビューが掲載されたりする心理学者は多いと思います。版権の問題がクリアできれば、そうした記事をみつくろい、再構成・編集して出版するというのも手かもしれません。

 心理学の研究と一般読者を結ぶ、なんらかの方法が、インチキな娯楽番組よりも収益が上がることがわかれば、メディアもそちらを選択するはずです。よくよく考えてみる価値のある課題だと思いました。

 毎年、研究費の精算と確定申告をする時期は、領収書の整理に追われます。

 百枚近くなる領収書を分類し、金額の合計を電卓で計算するのですが、検算するたびに違う結果がでてしまいます。

 この作業はとても苦手です。

 電卓ではなくExcelを使ったこともありましたが、領収書を整理するにはパソコン机は狭すぎるとの、打ち込んだ数字を確かめる手間がかかるのは同じなので、劇的な改善には至りません。

 今年は、サバティカルということもあり、時間的余裕もあるので、再び余裕がなくなる来年度以降にむけて改善投資するいい機会だと思い、今から作業を始めました。そして、作業をしながら何か便利なツールや方法がないか、探すことにしました。

 まず、やはり電卓ではなく、パソコンを使うことにしました。

 そして、入力した数値の確認には、Macの読み上げ機能を使うことにしました。

 ただし、Mac版Excelにはこの機能がないので(Windows版にはあるらしいです)、MacOSの読み上げ機能を使います。このために必要な作業は以下の通りです。

  1. 入力した数値を、Excelから読み上げ機能が使えるソフトへコピーする(私の場合はJ-Editへ)。
  2. 日本語の読み上げ機能をオンにする。これ、けっこうトリッキーです。システム環境設定 > 音声入力と読み上げ > テキスト読み上げ  > システムの声 > の後、「カスタマイズ」を選び、日本語の「Kyoto」または「Otoya」を選んで、音声データをダウンロードする必要があるのです。操作についてはこの記事が参考になります。ちなみにOSX10.9のデフォルトは英語での読み上げとなっていました。
  3. テキストファイルで行間を数行にする。そうしないと数値と数値の間隔がほとんどなくなり、作業しにくいです。テキストエディターの検索置換で「改行」を「改行 改行 改行 改行」くらいに置換してやるとちょうどよかったです。
  4. あとは範囲指定して(あるいはカーソルを文頭に持って行き)テキストの読み上げを選べば読んでくれますので、領収書の束をめくりながら確認できます。

☆ Mac版Excelでこの作業がすべて済むようなプラグインがあれば二千円だしても買います。どなたか作りませんか?

 次は入力です。今回はBluetoothでMacに接続できる電卓を購入して試してみました。思惑通り、これで食卓に拡げた領収書の束の横で(Macからは離れたところで)、入力できます。

 想定外だったのは、Bluetooth接続して使っているときには液晶に入力した数値が表示されないということです。電卓モードでは液晶に文字が表示されますし、それをPCに送信することもできるのですが、このモードでは「改行」が送れません。だから、数値を入力し、「send」を叩き、モードを切り替えて、「enter」を叩き、再度モードを切り替えるという手間になり、現実的ではありません。

 結局、文字を確認せずに領収書十数枚ぶんの数値を打ち込んでから、確認作業をすることになりました。入力ミスは2-3件(多い ^^;;)。入力しながら文字が表示される通常の電卓での入力と比べてもミスが若干多いような気もしますが、自分の場合はいずれにしても打ち間違いがあるから再度確認しないとならないことに違いはないので、まぁ、これでもいいのかなと思います。

☆ PCに接続された状態でも本体の液晶に入力された文字が表示されるネットワーク電卓があれば7千円だしても買っていたと思います。どなたか作っていただけませんか?

追記:使ってたら鬼のように発熱。電池の部分が溶け始めていました。電池のせいかと思い、新品の電池に取り替えたら問題なし。条件を反転して確かめてませんが、付属の電池の問題かもしれません。....と思いながらそのまま使っていたら、今度は電池が急激に消耗。電源スイッチをオフにしておいても一昼夜で電池切れするようになったので、取扱店に連絡、初期不良で返品させていただきました(新品との交換をリクエストしたのですが品切れとのこと)。来年に向けて別の製品を試しておこうかなぁ。

SMK-Link Bluetooth Calculator Keypad for Mac & PC [輸入品] SMK-Link Bluetooth Calculator Keypad for Mac & PC [輸入品]

SMK-Link 
売り上げランキング : 9840

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

名言〔第10位〕:「顧客の創造に不可欠な二つの機能」

解釈:

(ドラッカーは企業の目的を「顧客の創造」とし、そのために必要で、それだけあればいいのが、マーケティングとイノベーションであるとしています)

 「組織の存在意義」でも定義したように、企業の存在意義は、社会や消費者にとっての好子や嫌子、それらによって強化される行動と随伴性を明らかにして、それを実現する商品やサービスを提供することにある。
 このうち、既存の好子、嫌子、随伴性について調べてそれに見合った商品やサービスを開発するのがマーケティングの基本的な役割であり、新しい好子や嫌子、新しい随伴性を見つけるのがイノベーションである。

本シリーズの過去記事一覧:

 行動随伴性を机上分析してみると、クレジットカード破綻を起しやすいのは「リボ払い」という仕組みであると、以前このブログで書いていたのにも関わらず、不覚にも、自分もその罠にはまってしまっていたのに気づきました。

 先月、とあるクレジットカードの明細に、身に覚えのない巨額の残高(といっても6万円くらいですが)があることに気づきました。

 このカードはコンビニなどで小銭入れがわりに使うため、バッグの中の取り出しやすいところに入れてあり、それゆえ盗まれやすくもあるので、安全のため利用限度額を三千円に設定していたのです。だからそもそも6万円なんて買物はできるはずはなく、不思議に思ってカスタマーサービスに電話して、ようやく問題が発覚した次第です。

 どうやらカード作成時に、限度額とリボ払い額を同時に三千円に設定していた模様です。その結果、毎月三千円しか支払われず、それを超過したぶんが2008年から積算し、未払い額が6万円にもなってしまったというわけです。当然、それに応じた利子も支払っているわけで、ちょっとしたミスで大損した気分になりました。

 そこで一つ気づきました。リボ払いというのはカード会社にとってはとても割のいい商売だということです。

 私はカードでの支払はすべて一括にしているので手数料(利子)は払っていません。ところが、リボ払いというのは黙っていればどんどん手数料が入ってくる(それもカードを使い続ける限りずっと)、錬金術のような仕組みなのです。カード破綻を引き起こしやすいと、仮にカード会社が認識していたとしても、自主的にこのサービスをやめることはなさそうです。

 自分ではリボ払いにした記憶はないし、わざわざそんな設定をするはずもないとカスタマーサービスには申立てたのですが、契約がそうなっていると言われ、諦めました。さっそく、このカードもリボ払い設定を切ってもらったのが言うまでもありません。

 皆さんも気をつけてくださいね。

定義:
 「特定の情報に選択的に注意を向け、他の情報を無視することができるという現象」(『心理学辞典』(有斐閣), p. 114)。

行動分析学的解釈:
 ざわつくパーティー会場のどこかで自分の名前が会話に登場すると、それに気づき、その会話だけがよく聞こえてくるという現象を例に考える。
 まず、ある方向や位置から提示されている音を聞こうとする行動を定位反応と呼ぶ。原始的な反応形態としては、そちらの方向に顔や耳を向けるといった身体的な動作が含まれることが考えられるが、たとえばあからさまに耳をそばだてていることが他者に気づかれるのを回避する理由があるような場面で弱化され、そうした動作を含まずに同じ効果を得られるような学習が進むと考えられる。
 この反応クラスは特定の聴覚刺激を弁別刺激としたその他のオペラントが自発されやすくなるという行動内在的随伴性で強化されていると考える。おそらくは乳幼児期に母親の声を弁別刺激にした視線移動や手を伸ばす行動が母親との接触や授乳などで強化されることで獲得されていくのではないだろうか。
 定位反応が自発された後、定位した刺激が弁別刺激となり他の反応系列が自発されれば(例:噂話をしている人の名前をタクトするとか、噂話についてイントラバーバルとして考えるとか)、こうした反応と両立しにくい、別の音源に定位する反応の自発頻度が下がり、従って周囲の他の音を弁別刺激とした反応も自発されにくくなる。
 原始的な定位反応は、たとえば大きな物音への反応のような定位反射である可能性も大きい。物音がしてそちらに視線を向けたら(レスポンデント)、母親の声がして(オペラント的強化)、その後の反応はオペラントとして強化、維持されるという過程を辿るのではないだろうか。
 オペラントとしての定位反応には、どこに定位するかを制御する弁別刺激が必要であり、どこに定位するかはその選択による強化率によって決まってくると推定される(ハトの選択的注意を一般対応法則から検討した実験については以下を参照)。

Shahan, T. A., & Podlesnik, C. A. (2006). Divided attention performance and the matching law. Learning & Behavior, 34(3), 255-261. doi:10.3758/BF03192881

本シリーズの過去記事一覧:

Swpbs

 久しぶりに大学に行ったら、二瓶社さんから献本が届いておりました(有り難うございます)。

 我が国初のスクールワイドPBSの(翻訳)本です。

 前半が機能分析や指導計画の立案など、後半がスクールワイド体制の築き方についての解説となっています。チェックリストもついているので使いやすそうですよ。

 今年の夏に法政大学で開催された教育心理学会の総会では、スクールワイドPBSの第一人者、G. スガイ先生による講演がありました(関連記事はここここ、講演資料はこちらからダウンロードできます)。そのときには日本語の文献をご紹介できなかったのですが、こういう本がでてくることで、日本でも本格的な導入が始まるかもしれませんね。

 楽しみです。

 Amazonに表紙画像が用意されていないようなのでスキャンして掲載しました。封を開けた瞬間はこの色に驚かされました(ドドメ色?)。増版のさいにはぜひとももう少し薄めで明るい色への変更をご検討下さい(^^)。

スクールワイドPBS―学校全体で取り組むポジティブな行動支援 スクールワイドPBS―学校全体で取り組むポジティブな行動支援
ディアンヌ A.クローン ロバート H.ホーナー 野呂文行

二瓶社  2013-11-22
売り上げランキング : 30494

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

名言〔第11位〕:「マーケティングは販売を不要にする」

解釈:

 もしかするとこれも誤訳かもしれません。引用元はこうなっています。

Indeed, selling and marketing are antithetical rather than synonymous or even complementary. There will always, one can assume, be need for some selling. But the aim of marketing is to make selling superfluous. The aim of marketing is to know and understand the customer so well that the product or serice fits him and sells itself.  (Management, p.64)

 ここでの selling は「販売」ではなく、売り込みという意味での「営業」です。マーケティングが十分にできていれば、無理に売り込まなくてもその商品は売れて行くという意味ですから。

 もしそうなら、行動分析学からの解釈は以下のようになると思います。

 マーケティングとは、1) 顧客とって何が好子なのか、何が嫌子なのか、2) それらの好子や嫌子によってどのような行動が強化されるのか、3) 他に同じ機能をもたらす好子や嫌子はないか、4) そのような好子や嫌子の価値を高める確立操作は何か、5) 製品やサービスにどのようにこれらの好子や嫌子、もしくは機能を組み込めるか、6) 製品やサービスを入手する行動の随伴性は最適化されているか、などを調べ、7) 顧客の購買行動や商品、サービスの使用・利用行動が強化される随伴性を設定する仕事である。そして、これらの環境設定が十分にできていれば、顧客の購買行動は自発され、無理に売り込むという意味での営業行動はほとんど必要がなくなるのである。

本シリーズの過去記事一覧:




 とても面白い辞典がでました。

 序にあるように、行動生物学は動物の行動を研究対象とする生物学の総称で、動物行動学、応用動物行動学、動物心理学、行動分析学、比較認知科学、神経行動学、行動薬理学、行動遺伝学、人と動物の関係学などを含む学際領域です。こうした諸学問(諸学会)の“横のつながり”によって生まれた、我が国初の成果だそうです。

 ざっと項目をみていくと、行動分析学の基本的な概念がかなり網羅されています。行動分析学の辞典がない現状では、本書がその代用になると思いますし、関連諸学問の用語も学べるという意味で(そして関連諸学問の専門家の方々が行動分析学の用語を学んでいただくのにも)ベストチョイスとなるでしょう。

 辞典ですから一頁めから順に読むようなことはないはずなのに、そうしてしまいそうなくらい面白いですし、読みやすいです。「あ」にはいきない犬のあくびの実験の様子を写した写真が掲載されていたりします(犬のあくびの実験についてはこの記事を参照)。

 ここのところ続けて記事を書いてきた「権勢症候群」については、この辞典では「優位性攻撃行動(アルファシンドローム)」となっています。「これまでイヌの飼い主に対する攻撃行動の多くは優位性攻撃行動と診断されていたが、動物種の異なるイヌとヒトの間に社会的順位が成立するかどうかは疑問視されている」(p. 533)と書かれています。

 写真やイラストも多く、閲覧できる動画のURLまで掲載されています。数年先でもいいからiPadなどで読めるカラー、電子版、動画もありといった改訂版がでることを期待します)。

行動生物学辞典 行動生物学辞典
上田 恵介

東京化学同人  2013-11-22
売り上げランキング : 174046

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

Th_

 このところ我が家のルンバくんが連続してピンチに。

 上の画像のように、ドアの向こう側で電池切れし、ドアと家具や荷物の間に挟まって、ドアが開かなくなってしまいました。

 なんとか隙間をこじあけ、棒を突っ込んで移動させましたが、ドアごとはずさないとならないかもと焦りました。

 バーチャルウォールの機能として、その近くの掃除はするけど充電切れしそうなときには近づかないようにするプログラムがあれば回避できると思うのですが、どうでしょう?

 あるいはドアにシールのようなものを貼ってそれを検知させ、その近くでは充電切れで止まらないようにするとか。

 狭い住宅事情の日本ならではのニーズですが、iRobot社 さまには、ぜひとも実現をお願いします。

 『ザ・カリスマドッグトレーナー〜犬の気持ち、わかります〜』のシーザー・ミランと、区の「犬のしつけ教室」で講師をされていた方には動かせない共通点があります。
 それは犬の問題行動の原因を、飼い主の態度(「すぐれたリーダー」としての態度の欠如)や、犬種特性(柴は自由奔放、コーギーは吠えるなど)の“せい”にしているところです。
 これは訓練を仕事にしている人にとっては、とても都合のいい理論です。なぜなら、躾や訓練がうまくいかないときには、飼い主の態度や犬の犬種が言い訳になるからです。犬がリードを引っぱり続ければ「頑固たる態度で!」と飼い主を責め、犬が吠え続ければ「この犬種は吠えるんだよね」と言えばいいのですから。

 プロであるはずの人たちに権勢症候群の考え方が蔓延しているもう一つの理由は、その方が責任逃れしやすいからだと思います。

 そして同じ「罠」は他の理論にもあてはまります。

 子犬の頃の「社会化」がその後の発達にとって重要なのは研究からも明らかなようですが、だからといって「この犬は社会化に失敗しましたね」と言われても、それでは訓練の専門家としては役立たずです。「褒めて育てましょう」と言われてうまくいかないときに「気持ちがこもっていません。ワンちゃんに伝わるように褒めましょう」と言われても、どうしようもありません。

 飼い主が何をどうしたらいいのかわからない、具体性や反証性を欠いた処方箋しか書けない理論というのは、ポジティブ、ネガティブに関わらず、どちらも言い訳の余地を残しているわけで、これこそがこうした理論(言語行動)が生き残る(維持される)原因ではないかと考えます。

 犬と楽しく、幸せに暮らしたい飼い主としての対処法: 躾や訓練の専門家を雇うときには、具体的な助言を求めましょう。「頑固たる態度で」と言われたら、何をどうするのか質問し、実際に見本としてやってもらい、それをまねしてみて、それでいいかどうか確認しましょう。「まだまだリーダーらしからん」などと言われたら、どこが違うのか、どうすれば良いのか、できるようになるまで問いつめましょう。そして、理由を聞きましょう。そのように対応することが、なぜどのように問題行動を減らせるのか。それに答えられず、できるようになるまで教えれないようなら、お引き取り願いましょう。

 結局のところ、こうしたサービスの質が向上するかどうかは消費者がそれを求めるかどうかにかかっています。賢い消費者の行動がすぐれたサービスを育てます。飼い犬とどのように暮らしたいかをイメージし、それを実現してくれる訓練士やトレーナーを選びましょう。

アーカイブ

法政心理ネット