『刑務所のいま-受刑者の処遇と更生-』 我が国の現在の刑務所の現状と課題がよくわかりました。

来月の日本行動分析学会年次大会で「『罰なき社会』を再考する」自主シンポをやります。その準備で色々な本を読んだり、資料を集めているのですが、この本は中でも勉強になりました。シンポでは紹介できないことも多いので、せっかくなのでシェアします(つか、知らないことばかりだった)。

刑務所や少年院での「暴力」(体罰など)について知りたかったのですが、本書はそういうルール違反については言及なく(そういうことがないとも書いてありませんが)、むしろ刑務所の「あるべき姿」と現状を比較して、システムとしての改善点を提案しています。

付箋をつけた数はこの5倍くらい。もっと知りたい人はぜひ本を読んで下さい。

  • 刑罰には罪に対して応報し「応報刑」、社会に知らせて予防効果を期待する側面と、その人の再犯を予防するための「教育刑」という側面があるが、裁判官は前者を重視する傾向があるが、裁判員制度が始まってからは裁判員は後者を重視する傾向があることがわかってきている。
  • 出所後5年以内の再犯率は50%で、窃盗と覚せい剤が大半を占める(←予想はしていましたが、これほどとは)。
  • 約30%の再犯者によって60%の犯罪が行われている。
  • 刑務所内で職業訓練を受けた受刑者は全体の6.64%(←これには驚きました。もっと多くの人が出所後の自立を目指した訓練を受けているのかと思っていました)。
  • 職業訓練の内容は実際に社会に復帰してから就ける仕事とマッチしていない。
  • 受刑者の半数近くがIQ80未満(←知的障害や発達障害、精神障害をもっている人がたくさん含まれているが、障がい特性に配慮した処遇はほとんどなされていないそうです)。
  • 障がいをもった人が出所後、地域で生活できるように支援する「地域生活支援センター」が設置されるようになった。
  • 某医療刑務所では(←本書には名前がでています)、最近までカレーライスをはしで食べさせていた。
  • “軍隊的行進”の強制は減ったが、まだ残っている。
  • 許可されなければトイレに行けない。許可されず、失禁したとして5万円の慰謝料が認められた事案がある。
  • 刑務所での懲罰に関する規則はかなり細かく決められ、文章化もされているが、所内で行われる懲罰委員会は弁護側も刑務官によって構成される。
  • 釈放の前には、社会により近い環境で「釈放前指導」が行われるが期間は1-2週間と短く制限も多い。携帯電話も使えない(←一応、仕組みはあるけど機能しないままという印象です)。
  • 出所後「帰住先」があるかどうかが再犯率に大きく影響する。家族などがいない人のためには「厚生保護施設」という受入先があるが圧倒的に不足している。
  • 「凶悪犯罪をした無期受刑者も十年すれば仮釈放となり自由の身になる」は間違った認識である。仮釈放される受刑者は減少傾向にあり、条件も厳しくなってきている。
  • 日本も批准している国際人権規約の精神は、刑務所の役割は罪を犯した人を社会へと再統合することを目指すことにある。
  • 受刑者の特性にあわせた「改善指導」が行われている。薬物依存離脱、暴力団離脱、性犯罪防止、交通安全指導、就労支援指導など。だが、これらを受講できる受刑者の数は少ない。予算が不足していて、専門家の数も少なく、プログラムの質も確保できているかどうかわからない。プログラムは認知行動療法的なものが多い。心理学の専門家がもっと必要であると、本書では繰り返し、指摘されている(←これも同じで、一応、仕組みはあるけど機能しないままという印象です)。
  • 受刑者には健康保険が適用されないため、医療費は国庫からの全額支出となる。
  • 刑務所の運営を民間に委託するPFI施設が設置されるようになり、そこでは既存の刑務所にはない様々な試みが行われている(←再犯率の比較などができるようになるのはまだ先のことかもしれませんが、そういう希望がもてる話だと思いました)。
刑務所のいま-受刑者の処遇と更生- 刑務所のいま-受刑者の処遇と更生-
日本弁護士連合会 刑事拘禁制度改革実現本部

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