2013年7月アーカイブ

我が家の排泄訓練については以前この記事に書きましたが、今日は言葉掛けでしてもらうことについて。うまくいってるんだか、うまくいっていないんだか、よくわからないケースです。

ところで、犬に対して「おすわり」とか「待て」と指示する言葉のことを「コマンド」というそうです。犬のしつけ業界用語っぽいですよね。日本語だと「命令」だけど、命令だとあまりに高圧的だからカタカナ英語にするのでしょうか。「餌」じゃなくて「フード」と言うのと同じノリなのかな。

うちでは散歩のときに、おしっこは「ワンツー、ワンツー」、うんちは「ツーツー、ツーツー」とおまじないのように声かけをし、した直後にフードをあげています。

おしっこについては、散歩に出て直後の最初の1-2回だけこうしています。その後も公園などではおしっこをさせますが、匂いをかいでちょぴっとするだけの、いわゆるマーキングみたいなので、そのときには、原則、声かけをしていません。

公園以外でのマーキングは一応禁止しています。匂いはかがせますが、しようとしたら「だめ」と言って、その場から離れます。匂いをかがせる前に離れようとすると脚を踏ん張って抵抗しますが、匂いを嗅いだあとならほとんど抵抗しません。でも、このタイミングが少し遅れてしまって、路上でしちゃうこともたまにあります(ごめんなさい)。それでも匂いを嗅がせているのは、散歩中にリードの引っぱり合いをする機会、そんでもって犬の方が引っぱり合いに勝つ可能性を極力減らしたいからです。

ちなみにマーキングは一切なしが正しい飼い方のようです。山本先生によれば、マーキングはさせなければ、しないようになるそうです。

うちの場合、今は散歩に行く前にうちのトイレでおしっこをしていることが多いので、散歩直後のワンツーは、なんというか、形だけみたいなところがあります。尿の量がそんなに出ないし、した後に自分からおやつをもらいにくることも少ないです。

うんちは、散歩で歩き出してから、だいたい5-10分くらいの範囲に、3-4箇所、決まったスポットがあります。そこに近づくと声をかけます。1箇所めでしてくれることもあれば、スルーが続き、4箇所めまで持ちこすこともあります。十回に一回くらいはそこもスルーしてしまい、仕方なく、その後に便意が生じた場所でしてしまうこともあります(二週間に一回くらいはうんちをしないで帰宅することもあります)。山本先生からは、最初、うんちをしてから散歩を始めるようにご指導いただいていたのですが、その場に10分以上留まっていても一向にしてくれなかったので、このように落ち着きました。

散歩に行く前にうちのトイレでうんちを済ませることもあります。昨年の12月くらいから、今年の5月くらいまではほぼそういうパターンが出来上がっていたのですが、5月に久しぶりにお腹をこわして下痢が続いたのを境に、うちのトイレではうんちをしなくなっています。原因は不明です。

さて、うまくいっているんだか、うまくいっていないんだか、よくわからないのは、「ワンツー、ワンツー」と「ツーツー、ツーツー」のコマンドの機能です。散歩時の排泄では、時間(食事をしてからの時間経過や朝起きてしばらくしてからとか、夕方私が帰宅してしばらくしてからとか)、場所(公園の決まった場所)とかが排泄のきっかけになっているようで、コマンドは何の機能も持っていないように感じています。コマンドかけなくてもしますし、逆に、命令されれば必ずしてくれるわけでもなく、決まった場所をスルーすることもあるからです。

夕方や夜の散歩でうんちがでなかったときには、夜寝る前に家のトイレに連れて行き、コマンドをかけてみますが、それでしてくれたことは今までに1、2回しかありません。そのくせ、その後、夜中に自分からトイレに行きを要求し、したことは何回もあります。若干、迷惑なのですが、何しろお腹が弱い子なので、下痢のときにはむしろ起こしてもらった方がいいと判断し、こうしています。

うまくいっているように見えるときもあります。どしゃ降りの中、散歩に出ると、コマンドでほとんど確実に一箇所めでしてくれるのです。どしゃ降りのときには排泄したら即帰宅します。どしゃぶりがさっさと排泄をすませることを誘発し、どしゃぶりからの逃避が強化しているのでしょうか。

もう一つの例外は旅行中です。宿に併設されたドッグランなどに就寝前に連れて行ってコマンドをかけると、大抵はさっくりとしてくれます。ただ、これは単純に他の犬の排泄の匂いが残っているからかもしれません。

擬人的に考えると、おしっこやうんちが溜まっていて(ある程度我慢しているような状態で)「ここでやっていいよ」という“許可”の機能と、おしっこやうんちがそれほど溜まっていないけど「あるものだけでもしぼりだしちゃいなさい」という“強制”の機能の二つがあって、二つの異なる機能を一つのコマンドで教えようとしてごっちゃになっているのかなぁとも思います。

そして、“許可”の方は、コマンドよりも、散歩の時間的スケジュールと場所がむしろ明確な手がかり刺激になっているような気がします。“強制”の方をしっかり教えるなら、むしろ、決まった排泄場所以外で、すでにおしっこをかなりした後で練習したり、いつもより早い時刻に散歩に行き(たとえば、夜7時くらいなのを夕方4時とか)、いつもとは違う場所でうんちを促す「ツーツー、ツーツー」をかけて、してくれたら特別なご褒美で強化するとか、そういう練習が必要なのかもしれません。

うちの場合、家での排泄は、トイレのドアをかりかりすることでドアをあけてもらえ、私が在宅中ならいつでも排泄できるようになっています。ただし、留守中はそれができず、かつ、留守か在宅かはそのときにしかわからない(定時ではないので時間的な弁別がきかない)という条件が実は事態を複雑にしています。ですが、複雑だと思っているのは当然私だけで、犬は何も考えず、行動だけが適応していくわけですから、ここも面白いですよね。

ポスター発表はA4がいいのだ(の理由)ではA0(やB0)ポスターのデメリットしか書きませんでしたが、昨日のポスター発表会場では、こういう大型ポスターの利点を発見しました。

関西学院大学の風早さんによる米山先生との共同研究のポスター(「ファーストフード店におえる接客行動のパフォーマンス・マネジメント」)は逸品でした。研究も面白かったし、説明も上手でした。

そこで感じた大型ポスターのメリット:

  • 図をA4よりもはるかに大きく印刷できること。
  • 実験研究の発表では図が命です。でも、A4だと、どうしても小さくなってしまって、特にポスターのパネルにはると、見にくい。せっかくのデータなのにインパクトが弱まる。
  • それが大型ポスターだと、図を40インチのテレビ画面くらいの大きさで印刷できる。
  • そして、これくらい大きく図を印刷できれば、通常の図には書込めない情報(例:介入条件の詳細とか細かな条件変更とか)も読める大きさの文字で書込めます。これは大きなメリットです。
  • 特に、行動分析学における研究のように、データを代表値で表すよりも、できるだけローデータを情報を損ねることなく(かつ、変数の効果がわかりやすく)プレゼンしないとならない場合には有利かも。

日心のポスター発表で試してみようかな....

日本行動分析学会三十周年大会の記念グッズのお知らせです。担当常任理事の杉山尚子先生からのメッセージを転載します。

今週末、岐阜大学で開催される創立30年記念の年次大会におきまして、下記の記念グッズを販売致します。

1.ロゴ入りワイングラス(価格は1500円/懇親会場でのみ20個限定で販売)

 高さ235m/容量628ccの大型ワイングラス。

 懇親会出席者160名には、懇親会時に使用、そのままお持ち帰りいただけます。当日参加の残余席数は30席だけです! まだ申し込んでいない方は、当日会場ではやめの予約が肝要です。なお、ペアグラスなど、2個以上お求めになりたい方は、懇親会場で20個限定で販売します。

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2.ロゴ入りUSB(2000円/限定130個)
 4G/3年保証。The Non-punitive societyの論文がインストールれています。学会カラーのストラップ付き。

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3.ロゴ入りTシャツ(1500円/限定200枚)
 黒、白、グレー、キウイ、ショッキングピンクの5色を展開。

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いずれに数に限りがございますので、おはやめにお求め下さい。
会場でお目にかかれますのを楽しみにしております。

記念グッズ部会
杉山尚子


明日は名古屋で記念式典とシンポジウムが開催され、明後日から岐阜大学で年次大会が開催されます。

Tシャツは各色200枚あるのかな? 各色40枚でサイズがあると、欲しい色とサイズはすぐになくなるかもしれませんね。

ロゴ入りワイングラスでの乾杯も楽しみです。

以下、ここからの引用。

他人の欠点やあら捜しばかりして他人を窮地に落とし込もうとする人の意味です。

「です」だって。断言しちゃってるよ。

もっとわかりやすく和訳すると「へそ曲がり」。手元に辞書がないのでわからないが

辞書、調べろっつ〜の。

「わざと異を唱える人」とかかなと思います。

「思います」って感想みたいに書いてあるけど、これって他のサイトからの引用だぞ(「かかな」はスルーするとして)

「知恵袋」という名称に値しない書込みが多いし、サイト管理側もそのことは気にしていないようだ。学生の皆さん、基本的に、Yahoo!知恵袋などは引用しないようにね。

devil's advocateとは、議論を深めるために、相手の主張と反する意見をあえてぶつける役割のことだぞ。お互い反論することを納得し、自分たちの主張や論拠を精錬し、弱みをつぶすために話し合うときの仮想敵のようなものだが、敵ではなく実は仲間なのだ。

茂木健一郎氏のブログで紹介されていた戸田山和久氏(名古屋大学)のコラムがわかりやすいから、読みなさい。

「悪魔の使途」って訳している人もいたが、ピンとこない。

「議論を深めるために、あえてこんな質問をさせて下さい」くらいに意訳するしかないか。

定義:
 「人は他人に対していろいろな期待をもっている。意識すると否とにかかわらずこの期待が成就されるように機能すること」(『心理学辞典』(有斐閣), p. 715)。

 この現象については、ローゼンソールとジェイコブソン(1968)の、教師を対象に生徒たちに対する期待(成績が上がりそうな生徒とそうでない生徒との情報提供、ただし嘘)が、生徒たちの後の成績に影響することを明らかにした実験がよく知られていているが、その再現性や一貫性、効果の大きさについては疑問も呈されていて、追試やメタ分析が多数、行われている。
 ローゼンソールはラットを使った実験実習場面で実験者効果を検討する研究も行っており(Rosenthal & Lawson, 1964)、自分たちにあてがわれたラットが"Skinner-Box Bright"と言われた実験者チームと、"Skinner-Box Dull"と言われた実験者チームとでは、マガジントレーニング、シェイピング、消去と自発的回復などの7つの実験において、被験体であるラットの学習の速さにおいても、実験者によるいくつかの評価においても、群間で差があったことが報告されている。
 ここではそうした違いが生じるかどうかではなく、生じたとしたら、それはどのような変数によるものなのかを推測して解釈する。

行動分析学的解釈:
 他者の行動傾向に関する教示は、ルール(随伴性を記述した刺激)として機能する可能性がある。たとえば、初対面の人を事前に「怒りっぽい人ですよ」と言って紹介され、怒られることが嫌子であるなら、他者を怒らせたことがある様々な行動群の自発頻度は下がり、微笑むなど、他者が怒ることを阻止する機能をもつ行動群の自発頻度があがるだろう(そして、それが成功すれば強化される)。
 同様に、生徒の学習傾向に関する教示も、ルール(随伴性を記述した刺激)として機能する可能性がある。たとえば、「この子はとても賢く、将来有望です」と言われ、将来有望な子どもの成長が好子であるなら、その子を見たり、話しかけたり、質問したり、ヒントをだしたり、正解を褒めたり、誤答に対して解説したりといった、子どもの学習を促したことがある様々な行動群の自発頻度があがるかもしれない。反対に、「この子はあまり賢くありません。将来、期待できません」と言われたら(こんな実験、現代の倫理委員会は通らない可能性が高いですが)、そのような行動群の自発頻度が下がるかもしれない。
 つまり、生徒の行動を変えているのは、教師の行動(生徒にとっては随伴性)の変化であり、教師の行動を変えているのが、教師の生徒に対する行動の強化に関するルールである。「期待」という媒介変数/仮説的構成体がなくても解釈できるし、この場合、「期待」という媒介変数の設定は、重要な制御変数の特定に妨害的に働きそうでもある。
 なぜなら、上述のようなルールによって教師からどのような行動が引き出されるかは、教師がどのような強化履歴をもっているかどうか、何が確立操作として機能するかに依存するのであり、それを調べないと、それこそ「期待」がどのような行動変化につながり、どのような効果をもらたすのかわからないからである。
 数多くの追試実験が行われても結果に一貫性がないのは、こうした重要な制御変数を統制せずに実験をしているからではないだろうか。たとえば、教師によっては「この子はあまり賢くありません。将来、期待できません」という教示が、逆に、その子に注目し、より丁寧な説明をしたり、特別に教材をつくったりするなどの行動を引き出す可能性もあるからである。
 なお、ローゼンソールらが考察しているように、上記のラットを使った実験実習では、出来の悪いラットをあてがわれたと言われたチームの方が、より多くラットに話しかけていたことがわかっていて、これが実験中の妨害刺激としてラットの学習を阻害した可能性がある。出来が悪いゆえに「頑張れ〜、そこだ〜」など、本来すべきではない行動が“善意”から自発されてしまうこともあるわけであり、同じような行動変化が教師対象の実験で生起している可能性もある。

Rosenthal, R., & Jacobson, L. (1968). Pygmalion in the classroom: Teacher expectation and pupils' intellectual development. New York: Holt, Rinehart & Winston.

Rosenthal, R., & Lawson, R. (1964). A longitudinal study of the effects of experimenter bias on the operant learning of laboratory rats. Journal of Psychiatric Research, 2(2), 61-72.

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週末は行動分析学会の年次大会ということで、法政ABA研究会のメンバーが発表するポスターの最終チェック中です。

今や世の中はA0(ゼロ)印刷したポスターが標準的になっていて、うちのゼミや研究会のように、未だにA4で印刷したものをピンでちまちまボードに留めていると、ちょっと恥ずかしいというか肩身の狭いような気持ちになることがあります。

でも、これには理由があります。

A0で何回も印刷し直す予算はないので、ポスターを印刷して、読者の立ち位置から読んでみて、読みにくいところを直してまた印刷して、それを確認してまた読んでみて...という改訂がしにくい(というかできない)のが一番の理由です。

予算があったとしても、A0印刷するために情報センターのメディアうんたら室とか近所のKinkosにその度に走っていては、この作業も停滞します。

というか、A0印刷している人のほとんどはこういう改訂作業をしていないのではないかと疑ってもいます(だって、小さい文字で、論文集の原稿をそのまま印刷したような、酷いポスターをけっこう見るからねぇ〜)。

自分もかつてA0印刷に挑戦したことがあります。そのときにはA3印刷でテストし、改訂したものを最終的にA0で印刷しましたが、サイズ感の予測がかなり難しかったです。

ゼミなどで院生に「指導」することを考えると、学会でのポスター発表は、プレゼンの仕方の指導の機会でもあるので、上記のような改訂作業をゼミ生と一緒にやることは欠かせません。ベースラインでは、ほとんどの院生がテスト印刷したポスターを2, 3m離れたところから眺めるなんてことをしませんから。学習機会の確保という意味でも、A0よりA4だと思うわけです。

最後は個人的な理由。旅行するときにはできるだけ荷物を小さくまとめたい私としては、A0印刷したポスターを運ぶ、あの筒のようなケースはもうそれだけでNGです。A4で作ったポスターなら、発表が終わったら廃棄できまうすが、筒のようなケースは持ち帰らなくちゃならないですよね。

結論:会場で、ちまちまとA4ポスターを貼っている人を馬鹿にしてはいけません(笑)。

名言〔第16位〕:「部下の強みを活かす責任」

解釈:
 上司の仕事は部下の行動を支援して結果をだすことにある。したがって、上司の行動の強化随伴性は、部下の成功にもとづいて設計すべきである。

(追加の解釈)
 部下の行動マネジメントをしていない/できない上司を責めるのも同様にナンセンスであり、上司が部下の行動を上手く支援できるように支援するのが、その上の上司や、最終的な経営者の仕事になる。

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エリクソンの"Deliberate practice"について調べていたら、こんなQ&Aが掲載されたサイトを発見した。

質問 (Question)    精神分析学者、E.H.エリクソンが、スポーツや芸術などの熟達過程において「注意深く組み立てられた練習:Deliberate practice」を「その練習を1万時間以上やることで、誰でも、どんな領域においてもエキスパートになることは可能」と言っている。エリクソンの出典・著作などが知りたい。

回答 (Answer)    著者はErikson,Erik Homburger(エリクソン E.H.)ではなくEricsson K.A.と考えられる。「The Role of Deliberate Practice in the Acquisition of Expert Performance.」が出典の論文と思われる。質問者に連絡すると、これでよいとのことだったので、調査を終了する。

これは国立国会図書館が中心となって運営している「レファレンス協同データベース事業」で、参加する図書館で利用者から受けて回答した質問について公開している。加盟図書館しか閲覧できないもの、入力した図書館しか閲覧できないもの、一般にも公開されているもの、があるようだ。

昨年12月時点で「データ総数10万件を突破しました!」とあり、相当数の蓄積だ。

NDC分類なので「心理学」は「哲学」の小分類となり、現時点で231件の登録がある。「社会科学」の下位の「教育」や「言語」にも関連情報がありそうだ。

「心理学」の質問を少し読んでみたら、「波多野ナントカ余夫の本はあるか?」とか「以前図書館で読んだ、職業の適性検査のようなことについて書かれた本をもう一度見たい」とか、あぁ、司書の人たちもご苦労だなぁと、ちょっと同情してしまった。「癖(くせ)についてのレポートを書く。参考になる資料はあるか?」は4月17日に更新されていて、ちょっとドキっとした。「心が変われば行動が変わる 行動が変われば習慣が変わる 習慣が変われば人格が変わる 人格が変われば運命が変わる」は、松井秀喜選手の座右の銘であるが、もともとウィリアム・ジェイムズ(心理学者、哲学者)の言葉らしい。出典を知りたい」は私も知りたかったが、回答は色々調べた結果、出典が特定できないとのことだった。

こんなサービスがあるならもっと図書館を利用すべきと考えて、学生にももっと図書館のリファレンスサービスを活用すべきと教えるべきか、このくらいの出典調査なら自分でできるように教えるべきか、ちょっと迷う。

 関東では観測史上一位を更新し続ける暑さが続いています。「観測史上」というのがいつからのことなのか気になったので、気象庁のHPの「過去の気象データ・ダウンロード」をみたら、東京の気温は1872年から遡ってダウンロードできるみたいです。

 1872年といったら、明治5年。日本史の教科書的には岩倉使節団の年です。行動分析学で記録する行動の定点観測はせいぜい半年とか1年とかなので、こういう時系列的に長い期間のデータはただそれだけでなんだか興奮してしまいます。

 夕方、雷雨があった後で散歩をすると、出会う散歩仲間の皆さんの話題もそれに集中するようです。「うちの子、雷、怖がって吠えてしまって」とよく言われます。

 うちの子も去年がそうでした。どかんと来ると、びくっとし、あたりを見回し、背中を丸め、背中の毛は逆立って、尻尾は丸まって股の下、しまいにはぎゃんぎゃん鳴き出してしまっていました。

 留守中のそんな様子を後からビデオで観たときには、余計に可哀想になりました。

 そこで去年は、ネットから雷の効果音をダウンロードして、iPhoneに保存し、iPhoneをステレオのAUXにつないで、ステレオから雷の音を流して馴化させる練習をしました。
 拮抗条件づけをするためフードをあげながら、最初は小さな音で。怯えていないことを確認しながらボリュームを上げていき、最終的にはけっこうの大音響で提示しました。

 うちのステレオはホームシアター用5.1CHで、サブウーハーもあり、かなり響きます。雷の音源も複数パターン用意して、無作為な順序で使いました。

 ただ、昨年は、この練習をやった後には小さな雷が数回なっただけだったので、練習の効果がはっきりと確認できませんでした。

 それがどうやら、今年は大丈夫のようです。先週、はるが寝ているときに雷がなりました。最初の「ドカン」で頭をあげ、周りを見回しましたが、吠えることも、立ち上がることもなく、しばらくすると、また寝てしまいました。その後も、私の留守中に夕立があったときがありましたが、ビデオを観る限り、雷の音に反応してはいませんでした。

 去年の拮抗条件づけの手続きがどれくらい効いているのかは正直わかりません。生活全般が安定してきているという影響もありそうだし、今年はまだ地響きがあるほどの雷がなっていないからかもしれません。

 雷に対し、不安反応がでて、吠えるようになったら、また拮抗条件づけをやってみようと思います。

名言〔第17位〕:「優先順位を決める原則」

解釈:

 優先順位の決定(すなわち選択反応)に及ぼす変数のうち、過去の成功(強化履歴)、目の前にある問題を解決すること(確立操作+逃避による強化随伴性)、他の会社や製品・サービスの成功を追うこと(モデリング、ルール)、新しい試みをすることで生じる抵抗や失敗の回避(反応コストによる弱化、回逃避・回避による強化随伴性)は、将来の成功につながる選択肢とは異なる反応を引き出し、強化してしまう可能性がある。市場や経営に関わる随伴性は常に変動していて、過去に強化された行動が将来にわたって強化され続けるという保証はないからである。

 このため、経営に関する意思決定をするときには、優先順位を決めるときに自らの判断に及ぼすこうしたバイアスを知り、過去や現在の随伴性では強化されていない選択肢を敢えて選ぶ必要があることがある。つまり、未来の、不確定な強化随伴性を記述したルールに従う選択反応を「勇気ある選択」とタクトし、社会的承認の随伴性を追加しておくことが重要になる。

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インストラクショナルデザインの基礎の基礎である「RULEG」の考え方を使って作られた教材には中々出会わないものなのだが、たまたま見つけたこのテニスのレッスンビデオのサンプルはかなりイケてる。

具体的な課題分析で標的行動の属性を明記し、特定の属性について最小差異例をつくってモデリングしている(上記のページでは「姿勢を起こす」「ラケットは身体の前方に準備」「軸足を決める」)。

教えようとする属性だけが違うように、望ましい行動と望ましくない行動を組み合わせてビデオ提示しているところが素晴らしい。

「脱力」を中核にした標的行動の設定がどのくらい妥当なのか、ビデオを観ただけで行動に違いが生まれるのかどうかはやってみないとわからないけど、こういうビデオ教材なら試してみたいと思った(DVDを注文したので成果がでればそのうち報告します)。

体罰も精神主義もいりません。スポーツのコーチや指導者を目指す人、レッスン教材を開発しようとする人は、ぜひとも学んで下さい。

昨年はゲスト講師として参加させていただいた、奥田健次先生の 『行動分析学道場』に、今年は講師として参加することになりました。

 日 時:  2012年8月20日(火)〜22日(木)
 会 場:  行動コーチングアカデミー(長野県北佐久郡)

 詳 細:  こちらのサイトを参照して下さい

なにしろ「道場」ということで、ふだん自分がやる授業や研修とは真逆のつくりのイベントとなります。インストラクショナルデザインでいうところの「(緻密な)デザイン」も、本番前の「ユーザーテスト」もほぼ皆無だからです。

ただし、奥田先生はじめ講師・スタッフ一同が、参加者の学びにコミットしているところ、ここは間違いのないところです。

昨年は「ゲスト」しかも「飼い犬、初心者」という立場だったので、こんなことしたり、

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こんなことしたり、

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こんなことしていればよかったのですが(笑)、今年は担当の時間割もあり、しっかり仕事をさせていただく所存です(ただ、せっかくの軽井沢なので愛犬は同伴させていただきます)。

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講師と参加者の生(ナマ)の真剣勝負がリアルタイムで繰り広げられるのではないかと、今から期待に胸を躍らせてドキドキしています。ちなみに「道場」なので講師ではなく「師範」と言ったらどうだろう?という私の提案が採用され、案内でも一部そうなっています。

参加者の方には、ぜひとも道場破りをするような気持ちで「師範」に向かってきていただければと思います。教える方、学ぶ方が、共に学びにコミットしたときの楽しさ、興奮、そして(きっと)地団駄踏むような焦燥感などもまとめて一緒に味わいましょう。☆ただし生半可な、たとえば言葉の遊びのような問答だと、怪我をします(笑)。ギター侍に「残念!」と一刀両断にされるかもしれませんので、あくまで真剣勝負でお願いします。

なお、私が担当する時間に何をするかは、参加者からの申込みが完了してから決めることになります。申込書に各師範から何を学びたいかを書いていただくことになっていますので、できるだけ詳しく、希望する内容を書いて下さい。

奥田先生からのメッセージにあるように、参加者それぞれの仕事に活かせる、それも単にノウハウ的なことではなく、仕事や生活全体にインパクトがある内容を提供できるよう務めますので、我こそはという方はぜひどうぞ。

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いよいよネット選挙解禁。Yahoo! Japan みんなの政治 参議院選挙2013 「相性診断」をさっそく試してみました。

憲法、経済、TPP、原発、税、くらしに関する計11問の質問に、賛成から反対の5件法で回答すると、自分の考えに近い政党と候補者を教えてくれます(教育、福祉に関する設問はありません。争点とはみなされていないのかな)。

各政党、各候補者から得られた回答との一致度を算出し、並び替えているのだと思われますが、計算式は公開されていないようです。

自分の場合、政党は民主、公明、みんなが64%-70%で高位、社民、自民が下位になっているので、ま、これは予想通りの結果(計算が妥当そうな感じ)。

候補者についても同様です。当確と噂の高い丸川氏との一致度が17%というのが、さっそく残念感を盛り上げてくれました(^^;;)。

選挙期間中、相当数の人がこの相性診断をするでしょうから、母集団に対してかなりのバイアスはあるにしろ、きっと面白いデータが収集できるに違いありません。自民と公明という連立が、あくまで数合わせであって、政策の一致度も低ければ、それぞれの政策を支持する有権者も異なるということがおそらく数字で明らかになるでしょうし、もしかしたら、私の結果からも推測されるように、いわゆる無党派層がほんとうは支持したい政策群を打ち出す政党がないこと、逆にいえば、そういう政党をつくるなり、そういう政策群(おそらく一貫した理念にもとづいた)をうちだせば、相当数の支持が得られることも多変量解析すればすぐにわかるはずです。

こういうデータをYahoo! Japanの関係者がどのように扱うのかも興味深いです。各政党に選挙コンサルとして入り込み、データや解析を売ったりもしているのでしょうか。

なお、「ランキング」のページには候補者のパフォーマンスに関する種々の指標が提供されています。「Twitterつぶやかれ数」や「Twitterリツイート数」のように、それだけだと評価しようのない指標もありますが、「国会質問回数」や「議員立法提出数」「質問主意書提出数」など、議員の仕事に直結する指標もあります(現職優位になるからか、国会や委員会への出席/欠席回数などのデータはないですね)。

ネット視聴者からの公開質問に候補者がリアルタイムで答えるようなネット公開討論会とかしないのかな。そういうのを楽しみにしています。

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大阪府教育委員会の【体罰防止マニュアル】を読んでいたら、随伴性ダイアグラムを発見。

自傷や他傷をする子どもが、なぜそうするのかを理解するための研修になっているようだ。

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子どもが言うことをきかなかったり、わけがわからないことをやり続けることに"腹を立て"、体罰をする教員がいる限り、子どもの行動の原因を理解する方法を教えるこういう研修は重要だと思う。

ただ、研修で学んだことと、それを実際に現場で使うことには、大きな違いがある。

学校で体罰をなくそうとするなら、現場の随伴性を整えることも同時にやっていくべきだろう。

Swinglabo

 ダンロップとエプソンが共同開発したという「スウィング・ラボ(Swing Labo)」を受診(?)してきました。

 テニスラケットのグリップに測定装置(おそらくは加速度とジャイロセンサー?)をつけ、球出しマシンからでてくるボールを打ち、録画したビデオと共に、データを解析して、フォームにマッチしたラケットを選ぶサービスです。

 自前のラケットに加え、「スイング・ドクター」と呼ばれる専門家(コーチ)が、データと録画した動画をみながら試打用ラケットを変えていき、データを比較します。

 集計されるデータは、グリップとヘッドの最大速度、ラケット振り出しの角度を、フラット、スピン、サイドスピンにベクトル分解したものです。ここからスイングタイプが、フラット、スライス、ドライブ、トップスピンに分類されます(角度の連続量をカテゴリカルに分類)。

 ラケット一本につき、練習(キャリブレーション?)5打、本番5打ずつ打ちました。そのたびにラケットをノートPCに近づけ、データを読み込みます(Bluetoothによる通信のようです)。

結果は...

  • グリップ速度が速いわりに、ヘッド速度が遅く、サイドスピン量が多いことから、「ラケットの違いを手をつかって修正し、コートにいれようとしていましたね」と言い当てられました(というか、そういうふうに打つべきだと思っていたところもありました)。
  • ラケットを重めにしていくと(自前ラケットは軽めです)、テイクバックが大きめになり、角度やスイングスピードも安定してくることがデータからわかりました。以前から課題になっている前方へのフォロースルー不足も、重いラケットの方が振れているという結果が示されました。

 ノートPCで、各種データと共に、録画したフォームをスロー再生で見せてくれますが、データを見てからビデオを見ると、それはもう明らかでした。

 一応、お奨めのラケットは提案されましたが(SRIXON NEW REVO X2.0)、スイング・ドクターからは「まずはフォームを修正した方がいいですね」と言われました。ずっと前から同じ指摘をコーチからも受けているので、これはまったくその通りなのです。

 そういう意味では、ラケットの買換えを促すような営業トークもなく、とても正直に、とても親切に教えていただき、感謝しました。

 さて、いくつかの疑問点です。

  • ほとんどアップをせず、すぐに打ち出しても、素人にはなかなか、いつものようには打てません。普段通りに打った方がいいのか、試打用ラケットにあわせて打った方がよかったのか(どちらの方が正確に測定できるのか、そのくらいの違いはカバーできるくらいロバストなのか)最後までよくわからなったです。スイング・ドクターの説明は「どう打ってもわかることはわかる」でしたが、それが正確な評価なのかなぜわかるのかについての説明はありませんでした。
  • 今回は5本のラケットを継時的に試打して比較しましたが、1本あたり5球という試行数は少ないような気がしました(一打ごとのデータも見れるので分散がわかりますが、ラケットの差に比べるとけっこう大きかったです)。練習効果(ふだん機械の球出しを受けていないと、ずいぶん変な感じですね)、リラックス効果(「評価される」ことへの緊張感の減衰)、その他の剰余変数(たとえば自分はラケットエンドをかなり長く持つ方なのですが、それだと測定装置に手がかかりうまく測れないのでラケットを短く持つように教示されました。これに馴れるのにしばらくかかりました)などがあり、これで本当に妥当な分析ができるだけのデータ量が集められているのかどうかはかなり疑問でした。

 全体としては、ラケット診断よりも、フォーム改善のためのフィードバックシステムと用いれば、かなり役に立つのではないかと思われます。できれば、今より更に小型化、軽量化、耐震化し(今は、ボールを打った後にラケットをくるっと回したり、振ったりすると誤作動してしまう)、フォア/バック、ストローク/ボレー、サーブなどを自動判定できるようにして、1-2時間の練習中連続着用して、練習後や休憩中にデータを自分でみてそれをヒントに次の練習に向かうことができれば、かなり効率的な練習が可能になるのはないかと思われます。

 今後に期待します。

Keys_to_win

今年の全仏でその存在に気づいたのだが、時間がなくてアクセスしたことがなかった IBM SlamTrackerを覗いてみた(解説はこちら)。

プレー中の試合をポイント毎に記録し(これは手動のようだ)、すぐに各種指標に反映させて(1st.、2nd.サービスが入った確率、ダブルフォルトの数、1st.、2nd.での得点確率、アンフォーストエラーの数など)、リアルタイムに表示を更新する。

それだけではない。過去8年間のグランドスラムのデータから(「41 million data points」だってさ)、対戦相手に勝つためのキーポイントを3つずつ選び出し(これも多分手動ではないかと推測する)、その達成度がリアルタイムで更新されていく。

たとえば、男子準々決勝のジョコビッチ vs ベルディヒ戦だと、ベルディヒがジョコビッチに勝つには、

  • 4-9球からなるラリーの56%以上でポイントする。
  • アンフォーストエラーによる失点の割合を4-15%に抑える。
  • 相手のセカンドサービスの47%以上で得点する。

となっていた。

試合中は、ジョコビッチの達成度が0/3で、ベルディヒの達成度が2/3のときもあったけど、最終的には3-0でジョコビッチの勝利。となると、まさに今流行の「ビッグデータ」の活用例とはいえ、どこまで予測の精度があるのかは、かなり疑問になる(なんとなく、カーナビの到着予測時刻がどんどん更新されて、最終的には予測と現実がマッチするのに似ているような気もする)。

Momentumというグラフでは、どちらに試合の「流れ」がきているかが折れ線グラフで表示される。その昔、うちのゼミで野球とテニスでそれぞれ卒論を書いたゼミ生がいたテーマなのでとても興味があるのだけれど、Momentumをどのように計算しているのか解説がないのが残念。うちのゼミ生の卒論では単位時間あたりの強化率で集計したのだけれど、「強化」に何を算出するのかがけっこうやっかいだった(たとえば、相手のアンフォーストエラーをこちらの「強化」にカウントすべきかどうかなど)。

Social Sentimentのグラフでは、TwitterやFacebookの書込み数から、観客の「盛上り」を、やはりリアルタイムで計測、表示しているらしいのだけど、これはファンの絶対数とかにも左右されるだろうから、どれだけ意味があることやら。ただ、たとえば伊達とセリーナの試合とかみたいに、もしかしたら試合での得点差ほどSocialが離れてなかったりする事例もでてきて、それはそれなりに面白いかもしれない。

最近アナウンサーや解説者がやたら細かなスタッツを、それも試合中にタイムリーに引用しているのは、きっとこのシステムを活用しているのに違いない。プロ向きだな。

一般のテニスファンとしては、数値よりもプレーを観ていた方がはるかに楽しい。もしかしてテレビ画面の横とか下とかに常時表示される形で(地デジの情報表示みたいに)表示してくれれば、たまには見るかも。PCの画面とテレビを行ったり来たりするほど強化的ではないというのが、とりあえずの結論です。

決勝戦(はNHKでも放映するはず)で試してみたい人はWinmledonのHPから「SCORES&SCHEDULE」の「IBM SLAM TRACKER」を選んで下さい。ただし、生中継時に。

このシリーズにちょくちょく登場する山本先生こと山本央子先生は、米国で家庭犬育成の仕事に取り組まれてきた専門家の先生で、はると私はクライアントとしてお世話になっています。

私たちの場合、ご縁があって山本先生からご指導を受けることができ、叱ることもせず、吠えたり、噛みついたりすることもなく、幸せな日々を送ることができています。山本先生との出会いがなく、ペットショップで可愛いと思った子犬を、なんとなく飼い始めていたら、きっと大変な苦労をしただろうなと思うと、山本先生に脚を向けては寝られません(とはいってもお忙しい先生なので、毎晩、どちらの方向にいらっしゃるのかわかりません。きっと何度も失礼していることでしょう)。

米国では、今から十数年前に、それまでの嫌悪刺激を使ったしつけや訓練から、フードなどを使った強化中心の指導に大きな「転換」があったそうです。山本先生はそのときちょうどニューヨークでお仕事をされていたので、そんなムーブメントのど真ん中にいらしゃったとのことです。

ところが帰国してみると、日本ではかけ声だけの「褒めて伸ばす」や、それどころか嫌悪刺激を使った訓練への逆転現象さえ起きているようで、これはなんとかしないとあかんと毎日頑張っておられます(元々は大阪のご出身です)。

そんな山本先生が後進を育てるキャンプを、それも奥田先生主催の行動コーチングアカデミーで開催されるそうです。実際に犬を使った(参加者の飼い犬ではなく他の犬)、本格的なキャンプだそうです。

若干の追加募集枠があると聞いたのがすでに数日前ですから、すでに埋まってしまっているかもしれませんが、犬を相手にした臨床の力をつけ、本当のプロになろう、腕一本で食べていこうという肝の据わった方は、奥田先生のブログに案内がありますので、チャレンジしてみて下さい。

山本先生のような専門家が増えて、はると私のように幸せに暮らせる犬と人が増えることを念じて、陰ながら応援します。

刑務所や拘置所で働いていた著者による解説書。この本でもたくさんのことを学びました。

以下、無知をさらすことを覚悟で、この本から学んだことを羅列します。

  • 少年院は「保護処分」(罪名も刑期もない)、少年刑務所は「刑罰」。
  • 少年刑務所に「少年」はほとんどいない。全国に7つある少年刑務所に収容されている「少年」の総数は100人程度(刑務所内で成人していくから)。
  • (これは『刑務所のいま-受刑者の処遇と更生-』にも書いてあったけど)、死刑囚は刑務所ではなく拘置所に拘留される。そのため、罰としての作業も、再教育としての訓練も受けない。
  • 逮捕・補導された総数の8-9割は制裁的処置なく無罪放免となっている。
  • 少年院に収容されることになった犯行は窃盗がおよそ3割、傷害暴行、強盗、恐喝、強姦・強制わいせつ、覚せい剤、道交法がそれに続く。
  • 少年院は全寮制で、軍隊的な集団生活を強いられる(「集団行動訓練」、「体育」など)。
  • 他にも、ロールレタリング、内観法、SST、サイコドラマなどの心理療法、教育プログラムも提供されている。
  • 職業訓練の一貫として、資格試験(溶接、パソコン、簿記、自動車整備など様々)などの準備指導も行われている。

この本の圧巻は、全国に52ある少年院すべてが紹介されているところ。まるで専門学校のガイドブックのように、教育課程や定数(収容人数)、特徴的なプログラムなどが記載されています。ただし、これを読んでも、希望する少年院に選択して入所できるわけではないので、なんだか不思議な感じはしましたが。

著者は「少年院ほど確実に進歩してきた教育施設はない」と少年院(と地元の協力)を評価しています。また、少年院で指導すれば再犯の可能性が低くなるだろうに、そのようにしない家裁の方針に異を唱えています。

自分としては、たとえば少年院に送られた子どもと、送られなかった子どもとで、その後の犯罪傾向に違いがあるのかどうかをデータとして知りたかったですが、残念ながら本書にはそうした数字はありません。

また、各少年院が提供するプログラムの効果についてもデータがありません。たとえば、資格の取得率とか、学力テストの成績向上率とか、そういう単純な指標でもいいので公表されていれば、「確実に進歩」してきているという主張の根拠になるのではないでしょうか。

法を犯した少年がどのように裁かれるのか、こういうことは中学や高校で、しっかりと正確に教えた方がいいのではないでしょうか。成人する前に悪いことをしてもたいしたことにはならないなんて考えている子どもいると思います。少年法による保護という意味で、それは必ずしも間違いではないようですが、その一方で、少年鑑別所、少年院、少年刑務所に送られ、そしてその後も再犯して刑務所で人生の重要な時間を送ることになるケースも確実にあるわけですから。

実録!少年院・少年刑務所 実録!少年院・少年刑務所
坂本 敏夫

二見書房  2010-01-18
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来月の日本行動分析学会年次大会で「『罰なき社会』を再考する」自主シンポをやります。その準備で色々な本を読んだり、資料を集めているのですが、この本は中でも勉強になりました。シンポでは紹介できないことも多いので、せっかくなのでシェアします(つか、知らないことばかりだった)。

刑務所や少年院での「暴力」(体罰など)について知りたかったのですが、本書はそういうルール違反については言及なく(そういうことがないとも書いてありませんが)、むしろ刑務所の「あるべき姿」と現状を比較して、システムとしての改善点を提案しています。

付箋をつけた数はこの5倍くらい。もっと知りたい人はぜひ本を読んで下さい。

  • 刑罰には罪に対して応報し「応報刑」、社会に知らせて予防効果を期待する側面と、その人の再犯を予防するための「教育刑」という側面があるが、裁判官は前者を重視する傾向があるが、裁判員制度が始まってからは裁判員は後者を重視する傾向があることがわかってきている。
  • 出所後5年以内の再犯率は50%で、窃盗と覚せい剤が大半を占める(←予想はしていましたが、これほどとは)。
  • 約30%の再犯者によって60%の犯罪が行われている。
  • 刑務所内で職業訓練を受けた受刑者は全体の6.64%(←これには驚きました。もっと多くの人が出所後の自立を目指した訓練を受けているのかと思っていました)。
  • 職業訓練の内容は実際に社会に復帰してから就ける仕事とマッチしていない。
  • 受刑者の半数近くがIQ80未満(←知的障害や発達障害、精神障害をもっている人がたくさん含まれているが、障がい特性に配慮した処遇はほとんどなされていないそうです)。
  • 障がいをもった人が出所後、地域で生活できるように支援する「地域生活支援センター」が設置されるようになった。
  • 某医療刑務所では(←本書には名前がでています)、最近までカレーライスをはしで食べさせていた。
  • “軍隊的行進”の強制は減ったが、まだ残っている。
  • 許可されなければトイレに行けない。許可されず、失禁したとして5万円の慰謝料が認められた事案がある。
  • 刑務所での懲罰に関する規則はかなり細かく決められ、文章化もされているが、所内で行われる懲罰委員会は弁護側も刑務官によって構成される。
  • 釈放の前には、社会により近い環境で「釈放前指導」が行われるが期間は1-2週間と短く制限も多い。携帯電話も使えない(←一応、仕組みはあるけど機能しないままという印象です)。
  • 出所後「帰住先」があるかどうかが再犯率に大きく影響する。家族などがいない人のためには「厚生保護施設」という受入先があるが圧倒的に不足している。
  • 「凶悪犯罪をした無期受刑者も十年すれば仮釈放となり自由の身になる」は間違った認識である。仮釈放される受刑者は減少傾向にあり、条件も厳しくなってきている。
  • 日本も批准している国際人権規約の精神は、刑務所の役割は罪を犯した人を社会へと再統合することを目指すことにある。
  • 受刑者の特性にあわせた「改善指導」が行われている。薬物依存離脱、暴力団離脱、性犯罪防止、交通安全指導、就労支援指導など。だが、これらを受講できる受刑者の数は少ない。予算が不足していて、専門家の数も少なく、プログラムの質も確保できているかどうかわからない。プログラムは認知行動療法的なものが多い。心理学の専門家がもっと必要であると、本書では繰り返し、指摘されている(←これも同じで、一応、仕組みはあるけど機能しないままという印象です)。
  • 受刑者には健康保険が適用されないため、医療費は国庫からの全額支出となる。
  • 刑務所の運営を民間に委託するPFI施設が設置されるようになり、そこでは既存の刑務所にはない様々な試みが行われている(←再犯率の比較などができるようになるのはまだ先のことかもしれませんが、そういう希望がもてる話だと思いました)。
刑務所のいま-受刑者の処遇と更生- 刑務所のいま-受刑者の処遇と更生-
日本弁護士連合会 刑事拘禁制度改革実現本部

ぎょうせい  2011-05-10
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