2013年4月アーカイブ

『家庭で無理なく楽しくできる生活・学習課題46―自閉症の子どものためのABA基本プログラム』は低学年の指導(就学前から小学校くらい)、『高機能自閉症・アスペルガー症候群への思春期・青年期支援―Q&Aと事例で理解する』は中学、高校、大学での支援に使えそうな本です。

「家庭でできる」とありますが、学校での指導にも十分使えそうです。保護者と教員が連携しながら、学校で教え、家庭で般化させといった展開に使ってみたらどうでしょうか。領域別の課題、指導のコツなどが豊富です。

発達障害をもった学生への支援について、ようやく大学における取り組みも始まりましたが、本書では、中高、大学でありがちな問題やその対応についてわかりやすく解説してあります。「恋愛支援」とか、とても興味深いですね。

高機能自閉症・アスペルガー症候群への思春期・青年期支援―Q&Aと事例で理解する 高機能自閉症・アスペルガー症候群への思春期・青年期支援―Q&Aと事例で理解する
井上 雅彦 井澤 信三

明治図書出版  2012-01
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それにしてもめちゃくちゃ仕事してますよね、井上先生。 ご自愛下さい。

不思議本です。

著者のプロフィールには「ABAセラピー」とあるし、第5章「困りごとへの対応法」には、機能的アセスメントの話とか、代替行動の強化について書いてあるし、トイレットトレーニング(本書では「トイレトレーニング」となっています)や共同注視の指導にもふれているのだけれど、そうかと思えば、以下のような意外な展開もみせてくれます。

「瞳はこころの窓だから、瞳を見ていれば、お子さんが今どんな気持ちなのかが伝わってくるんです」(p. 36)

「まだ一語文の段階のお子さんの場合、単語一語ずつ、ゆっくり丁寧に伝えて、言われたことの意味をはっと気づけるようにします」(p. 46)

「ことばはなんのためにあるのでしょう? (中略) たとえ発音ができて、なにかフレーズを発することができても、そこに伝えたい気持ちがなければ、ことばはことばとしての本当の意味はないのではと思うのです」(p. 117)

行動分析家だったら、まず書かないと思うのですね、こういうことって(苦笑)。

米国では"Let me hear your voice"でロバースのプログラムが世に知られるようになり、一躍"ABA"セラピストがひっぱりだこになりました。ところが大学でいくつか授業をとっただけのような人まで"ABA"の名を語るようになってしまいました。フロリダ州で始まったBACBという資格認定システムが全米に広まって行ったのには、悪貨が良貨を駆逐するような事態にならないようにという配慮もあってのことでした。

とはいえ、BACBも、所詮は実習を含む修士課程修了+筆記試験で取得できる資格です。療法として行動分析学的な手法を学んだだけの人—元々の意味とはちょっと違いますが、いわゆる“方法論的行動主義”の人—でも取得できる資格です。もっといえば、BACB取得者=徹底的行動主義ではありません。

もちろん、徹底的行動主義者のセラピストの方が方法論的行動主義のセラピストよりも、セラピストとしての腕がいいということを示すようなエビデンス(RCT的な)はありませんが、私が知っている凄腕のセラピストは、全員、徹底的行動主義者です。「主義者」というのが語弊があるなら、クライアントの行動すべてを機能的に分析し、環境を変えることで行動を変える方法をみつけることにコミットしている人たちです。つまり、クライアントのためにも、精神主義に陥ることを徹底的に排している人たちです。

教育、療育、臨床サービスの全体的な底上げや、最低限の質の保証には資格システムが役に立つ可能性がありますが、理想解ではない。そのことを認識しておく必要があると思います。

などなど。 色々、考えさせられました。

ポジティブ子育て 12のこころえ―発達凸凹の子のこころとことばを育む ポジティブ子育て 12のこころえ―発達凸凹の子のこころとことばを育む
ますなが りさ

主婦の友社  2013-01-28
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応用行動分析学に基づいた療育プログラムに関する訳書を2冊(偶然か?どちらも明石書店から)。

『親と教師が今日からできる 家庭・社会生活のためのABA指導プログラム―特別なニーズをもつ子どもの身辺自立から問題行動への対処まで―』は、題目にもあるように、身辺自立やトイレ、家事手伝い、遊びなど、生活重視の包括的なガイドブックです。わかりやすく、事細かにプログラムが書かれている良書で、訳も読みやすいです。

親と教師が今日からできる 家庭・社会生活のためのABA指導プログラム―特別なニーズをもつ子どもの身辺自立から問題行動への対処まで― 親と教師が今日からできる 家庭・社会生活のためのABA指導プログラム―特別なニーズをもつ子どもの身辺自立から問題行動への対処まで―
ブルース・L ベイカー アラン・J ブライトマン 井上 雅彦監訳

明石書店  2011-07-28
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『ABAプログラムハンドブック―自閉症を抱える子どものための体系的療育法―』は、先日紹介した「スクールシャドー」のようなインクルージョンプログラムについても書かれている本です。そういう意味では貴重な本なのですが、翻訳が弱い。誤訳もあります(致命的な誤訳も)。原著は悪くない本だと思うので残念です。元々の内容をかなり正確に推測しながら読まないと厳しいかも(でもそういう人なら最初から原著を読むよね)。

ABAプログラムハンドブック―自閉症を抱える子どものための体系的療育法― ABAプログラムハンドブック―自閉症を抱える子どものための体系的療育法―
J.タイラー フォーベル 平岩 幹男

明石書店  2012-03-06
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Ginger_2

Gingerは、独自にオンライン上でネイティブが使う5億もの英語のフレーズを解析。解析に基づき、ネイティブのような英文にリフレージング(英文の最適化)を行い、シノニム(同義語)を文脈から正しいものを判断できるシステムを開発しました。このため、通常の英文法やスペルをチェックする単なる英文チェッカーとは異なる、文脈解析に基づくチェックが提供できるのです。

ということで、7月の日本行動分析学会で発表予定の英文題目をチェックしてみたら、「Try Another」だと。

え? 門前払い??

Wordの文章校正ツールでさえ「Fragment」とは指摘してくれるのに。

変だと思って、入力する文章を色々変えてみてわかった。

修正の有無に関係なく「Try Another」と言われるんだ。「No Need to Change!」くらい言って欲しいぜ。

それに明らかに間違った前置詞とかで入力したら、明らかに間違った修正をしてきたぞ。

Fragmentな文章だと直しにくいのかもと、わざわざ主語と述語を足して書いてみたけど一緒だぞ。

どうやら、たいしたことない、という結論。

ところで、Wordの文章校正ツールで「Fragment」と言われるのは「要検討」じゃないと思うよ(←ネットで検索するとやたら、こういう解釈がでてくる)。Fragmentは主語に対応する述語がなかったりして、文が文として形になっていないことだと思う。ポエムならともなく、という話。

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Gigazinより拝借した仙石原中学校の写真です)

深夜にすごいニュースが飛び込んできました。

この4月から杉山尚子先生が星槎大学に着任されました(ちなみに、杉山先生には今年度、サバティカル中の私の替わりに法政大学にて「行動分析学」と「行動分析学特講」をお願いしています。法政の受講生はめちゃラッキーですね;あんまり自覚がないかもしれませんが)。

星槎大学は、故佐藤方哉先生が最後にお務めになられ(学長も務められた)大学で、佐藤先生と共に日本行動分析学会を設立された山口薫先生が中心となり、特別支援教育に関わる現職教員に向けた通信制の大学院修士課程を提供しています。

事故でお亡くなりになる前の数年間、佐藤方哉先生は「共生」をテーマにした論文をいくつか書かれていますが、この「共生」は星槎大学の理念の一つになっています。

佐藤方哉 (2010) 共生思想家としてのB.F.スキナー 共生科学, 1, 34-41.
佐藤方哉 (2009) 共生思想家としてのザメンホフ 共生科学研究, 5, 52-58.
佐藤方哉 (2008) 行動分析学は共生科学にどのような貢献ができるか 共生科学研究, 4, 1-9.

"すごい"ニュースというのは、星槎大学が、仙石原中学校を買取り(訂正:賃借だそうです)、これまで北海道は芦別にあったメインキャンパスをこの箱根の地に移したとのことです(教授会から帰ってきたばかりの杉山先生のメールで知りました)。

「仙石原中学校」と言えば..... そう、第3新東京市にある中学校で、ヱヴァンゲリオンの登場人物が通学していた中学校です。ミサトさんが深紅のスポーツカーで校庭に乗り付け、鈴原トウジが「わしはお前を殴らなあかん。殴らな気がすまんのや」と言ってシンジを殴った、あの中学です。

Gigazinによれば、仙石原中学校の校庭でiPhoneのARアプリを使うと初号機が出現するそうです。

Dsc_8551_m

これは一度出かけてみないと。

もちろん、ヱヴァファンでなくても、特別支援教育に行動分析学から挑もうとする現職教員の皆さまには、星槎大学の通信制大学院をぜひ選択肢としてご検討下さい(その次の次くらいには法政大学で)。

 

「スクールシャドー」という言葉を、私はこの本で知りました。特別な支援が必要なお子さんに付き添って学校に行き、学習支援や生活支援をするサービス形態です。出口は計画的フェードアウト。

モデルとしては、いわゆる「支援付きインクルージョン関連記事)」と同じようです。

ただ、支援付きインクルージョン("assisted inclusion")をPsycINFO/PsycARTICLESで検索しても、ほとんどヒットする文献がありません。スクールシャドー("school shadow")に至っては探しても文献が見つかりません(もしかして吉野先生の造語なのでしょうか?)

上記の関連記事にあるように、何年か前のABAIでは事例の発表があったので、研究というよりは実践が先に進んでいるのかもしれませんね。

日本でどのように浸透していくか、楽しみです。


自閉症児の親御さんが執筆された本を2冊紹介します。

『「ママ」と呼んでくれてありがとう』はまさに日本版の『Let me hear your voice』(わが子よ、声を聞かせて―自閉症と闘った母と子)です。お子さんが自閉症であるとわかったときから、ABAに出会い、療育を進めていくお母さん(と家族)の姿が描かれています。

診断や療育支援機関の不備や周囲の無理解や誤解、障害を受容することの難しさなど、同じ環境にいるお母さんたちにとって、共感できることがいっぱいあるのではないかと推測します。

あとがき的解説で井上雅彦先生が書かれているように、所々、え、大丈夫かなというところもあり、専門家のスーパーバイズなしに療育が進められていくときの危険信号も感じながら、それでも、お母さんが療育ママとして育っていく様子が目に浮かぶようで、感動しました。

こちらはお父さんが書かれた本です。かなり不思議な本。特に前半と最後はよくわかりませんでした。でも、私が個人的に知っている療育パパに共通する雰囲気は感じます。それは、とにかくよく調べ、勉強し、納得しながらでないと療育も進めないというところです。それが良いか悪いは別にして、療育パパにとっては(あるいは旦那さんが療育にまったく非協力的で日頃から不満がたまっている療育ママにとっても?)一読の価値があると思います。

リカと3つのルール: 自閉症の少女がことばを話すまで リカと3つのルール: 自閉症の少女がことばを話すまで
東条 健一

新潮社  2013-02-18
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Hitohanaze2

おかげさまで、非常にスローなペースで、でも継続的に売れてはいるそうで、このたび増刷となりました。お買い上げいただいた読者の皆さんに感謝致します。

編集者のKさんから「増刷出来」というキーワードをいただいたときに、「出来ました」の「ました」を省略した若者語かと、またもや語彙のなさをさらけだしそうになり、でも寸前で辞書を調べ、「出来」は「しゅつらい(or しゅったい)」と読み、「物事ができあがること」を意味することを学んでことなきを得ました。

増刷が決まってから入稿まで数日しかなかったので、手直しは少々です(相関係数のところは直しました)。

地震、津波、避難について書いてあるのですが、3.11の後では、やはりそのことに触れないと不自然だとは思いつつ、今回は時間がなくてそのままです。次回、また増刷の機会があれば、なんとか対応しようと思います。

ちなみに、この本、大学受験の国語の試験で何回か使われています。著作権がらみで使用許諾願いというのが来るんです。そういうのは初めてだったので最初はちょっと戸惑いました。問題を読むのも怖かったです(とんでもない勘違いされていたらどうしようと...)。これも新書の特性でしょうか。

本屋さんでピンクの帯をみたら、ぜひどうぞ(笑)。


イメーションのDEFENDER F200+BIOがMountain Lionに対応していないせいでLionにとどまっていましたが、久しぶりに検索したら、どうやらこの問題の対策が見つかったようです。

製品ページ

※MacOS 10.8 は対応しておりません。対応については検討中です。
※但し、指紋認証については、Windows上で指紋登録しておけば、MacOS 10.8でもデバイス接続後に認証可能です。

という注意書きが追加されていました。

これだけだといまいち意味不明ですが、とりあえず、テストしてみました。

  1. Windows8でツールを起動し、二本登録していた指紋の一つを消去、新たに一つ追加登録(指紋は指2本ぶんしか登録できません)。
  2. MacのOSをMountain Lionに更新。
  3. Mountain Lionで指紋認証。

すると、新規に登録した指紋だけではなく、以前から登録してあった指紋でも認証されました。

これでいいのでしょうか??  若干の謎が残ります。

こんな単純な情報ならもっと早くわかったはずだろうとか、何度もメールで問い合わせていたんだから、わかった時点でメールで教えてくれればいいのにとか、ぐちゃぐちゃ言いたくもなりますが....

とりあえず、友達と共有できるフォトストリームがMac本体からも操作できるようになったのと、AppleTVに画面を出力できるようになったのが嬉しいです。

読もう読もうと思いながら先延ばししていた本を読むのもこの一年間の目標の一つ。『日本語で読める行動分析学』も更新していきます。

まずは谷晋二先生の『はじめはみんな話せない-行動分析学と障がい児の言語指導』。一般読者にもわかりやすく書かれてはいますが、内容は専門書です。行動分析学における言語指導の研究を振り返ってまとめてあります。具体的な指導プログラムも豊富です。

HIROCo法という、日本で独自に開発された、今から考えるとPRTとも共通する指導法の紹介があると思えば、ACTを家族支援に使うという、新しめのアプローチも提案されています。

応用行動分析学で言語指導をする人たちにとっては必読書の一つになると思います。

はじめはみんな話せない-行動分析学と障がい児の言語指導 はじめはみんな話せない-行動分析学と障がい児の言語指導
谷 晋二

金剛出版  2012-09-28
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「はるちゃん、いい子ですね。おとなしいし、かわいいし」と、あちこちで言われます。めちゃ、嬉しいです(←親バカ  笑)。

散歩中、他の犬や人に吠えることはまずないですし、犬を散歩させている飼い主さんには安心して近寄って行って愛想を振りまきます。病院やトリミング(シャンプー)で体に触られてもじっとしているので、落ち着いた、静かな性格の犬だと思われるのかもしれません。

そもそも佐良先生や山本先生がはるを勧めて下さったのも、元々持っているそういう特性によるものだそうです。他の犬が吠えていても吠えない。人に触られても嫌がらない。飼いやすい犬です。

でもそれは、そういう特性があるから「吠えない」というわけではありません。

うちに来てから一ヶ月くらいは、ほんとうに大変でした。最初は私がトイレに行くのに一瞬姿を消しただけでも吠えてましたし、宅配や来客にも当然のように吠えていました(関連記事)。

自分がいなくなったときの吠え方は尋常ではありませんでした。背中を反らせ、遠吠えのように鳴くのです。近所の皆さまへご迷惑をおかえしてしまうという心配もありました。さっそく菓子折りをもってお詫びに回りましたが、冬ということもあって皆さん窓を閉めておられるせいか「聞こえないですよ」と言われ、安心しました。

それよりなにより、はるの鳴き声を聞くと、胸が痛むのです。初めての体験でした。犬の鳴き声で、まるで棒のようなものをぎゅっと押し付けられたような感触を胸のあたりに覚えるのです。

辛くて反応してしまいそうになります。サークルの中のはるを見たり、可哀想だからとサークルからだして、抱きかかえてあげたくなります。

でも、それをやったら鳴きを強化してしまうのが目に見えています。

ここは山本先生ご指導どおり「消去」を徹底するしかない。そう頭でわかってはいても、辛い。ほんとうに辛かったです。

とにかく、4月の新学期までにお留守番ができるようにする必要がありました。

当時のビデオが残っていますので、ここに公開します(留守中のことが心配だったので、USBカメラで留守中の家の様子をずっと録画していました)。

まずは、うちにきてすぐの頃。この頃はずっとサークルの中で過ごさせていました。私がいなくなると絶叫マシーンと化していた頃です。

完全な消去、つまり、いくら鳴こうが放っておくという作戦は犬にも厳しい介入ですが、それ以上に飼い主にとって我慢が必要になる介入です。その辛さに耐えられなかった私は、もしかしたら余計なことを、色々とやってみました。

・着替えて/鍵をもって/鞄をもって(つまり外出するときの刺激要素を加えて)、一瞬だけ居間をでて、すぐに戻る。
・戻るときに鳴いていたら、鳴き止んでからしばらくするまで(当然60秒ルールにもとづいて1分は待って)から戻る。
・少しずつその時間を長くしていく。
・トイレ/風呂/ゴミ捨て/買物などで、本当に留守にするときには、玄関や居間に入る前に、はるが鳴いているかどうかを確認して(上記のUSBカメラを家の中のLANに接続し、リアルタイムで見て聞けるようにしました)、鳴いていないときに入室する。

などなどです。

それでもやはり、外出すると、遠吠え状態になります。遠吠えは最長で4時間くらい続いていました。ビデオを見ることで、私の胸はいよいよ痛みました。

ある日、玄関の外でライブ映像を見ていると、興奮したはるがサークル内で暴れ回り、クレートの屋根に飛び乗り、その反動でサークルを飛び越えてしまいました。

このときばかりは急いで部屋に入り、怪我していないかどうかを確認しました。

完全「消去」の放置状態が許されるのは、そうしても危険がないときだけです。

安全確保のため、クレート上部にサークルの柵を付けたしました。下は1週間ちょっと経ったときの映像ですが、まだ吠えています。

2週間経つと、遠吠えはかなり減りました。下の画像をみるとわかるように、出かけてもすぐに吠えだすことはなくなりました。それでも、サークルの中で居間のドアの方をずっと見ています(擬人的に言えば「早く帰ってこないかぁ〜」でしょうか)、それに、留守中に宅配の人がピンポンと呼び鈴を押すとそれに対して吠え始め、それが延々と1時間以上続きます。つまり、吠えは減ったけども、まだ安心してお留守番できるところまでは達していません。

1ヶ月経つと、呼び鈴さえなければ吠えないでいられるようになりました。下の動画ではわかりにくいのですが、サークルの中のクレートで寝て過ごす時間も増えました(擬人的に言えば「そのうち帰ってくるから寝て待とう〜」でしょうか)。

犬のしつけ本の多くには、出かけるときにやたら可愛がったり、挨拶したり、でかけるということが犬にわかるようなキューをだしたりしてはいけないと書いてあります。

だから最初は私も無言で、できるだけ気づかれないようにささっと出かけていました。それが、はるも落ち着いて、私も留守の間にはるが鳴いている様子を想い出したり、思い浮かべたりして胸が痛むことも少なくなってきたこともあってか、「言ってくるよ」とか「お留守番よろしく」とか言いながらでかけるようになりました。もちろん、帰ってからビデオを確認し、それでも大丈夫だとわかったからです。

「言ってくるよ」と言わなくても、鞄を持ったり着替えたりすることで、どうせはるにはそれがわかるとわかったということもあります。それから、これは何となくで、何も証拠はないのですが、たとえば、居間からではなく寝室からでかけてみると(つまり、でかけることがはるにわからないようにしてでかけると)、帰ってきたときに怒っているような気がするのですね(笑)。いつもは帰宅すると尻尾どころか腰全体を左右に振って喜んで出迎えてくれるのですが、そういうときには前脚で私を突き飛ばすような動きをすることがある、そんな気がするのですよ(笑)。

そういうこともあって、今では出かけるときには歯磨きガムをあげています。そのときにしかあげないので、わざわざお留守番のキューをだしていることになります。食べ始めたところを確認してから「行ってくるよ」と声をかけています。1−2時間のお留守番のときと、5−6時間以上のお留守番のときではガムの種類を変えています。大好きなガム(グリニーズ)は長い時間のお留守番のときです。

いざ出かけるとき(鞄を持って居間の奥の書斎をでるとき)には、今でも時々「きゅーん」と寂しそうな声をだすときがありますが、それでもグリニーズをだすと、そっちに気を取られ、欲しがり、お座り、伏せ、まってをさせると、もうお留守番ことは気になっていないようです(さすが犬です 笑)。

以下が最新の画像です。去年の7月くらいにサークルは撤去し、クレートだけ残してあります。在宅中も留守中も、居間・書斎は自由に動けるようになっています。ガムを食べたあと、少し部屋の中を散歩したりしていますが、そのうち座椅子やクッションの上や、陽がさしてぽかぽかする床の上とかに移動しては寝ています。今では宅配のピンポンの音に吠えることもありません(これについてはまた別途書きます)。

結論。うちの場合(あくまでうちの場合です)、お留守番の練習は、鳴きや吠えを消去すること、留守番の時間を徐々に長くすることで、うまくいったと思います。消去をするときにはバーストがでますから、騒音対策(もしくは近所へのお詫び)、暴れても怪我をしないような配慮(うちの場合、興奮してもサークルからは出られないようにしたこと)、外出のときだけではなく、家の中で移動するときにも、はるの視線から自分がいなくなって鳴いているときには絶対に強化しないようにすることが重要だったと考えます。

逆に言えば、そうした手続きを踏まなければ、今でもはるは遠吠えし、今でも私は外出するたびに胸を痛めていることになったと思います。偶発的に吠えを強化してしまいそうな瞬間は山ほどありましたから。

Photo

2009年から内閣府が3年間行った「国民生活選好度調査」。

3年間の報告書、ずっと「10段階評価」って書いてあるんだが、「とても幸せ」を10点、「とても不幸」が0点なので、どう考えても「1011段階評価」です。

引用しにくいじゃないかい(つか、どうやって引用しようか??)

内閣府さん、修正お願いしますよぉ。

ちなみに、日本人の主観的幸福度が低いことばかりが取り上げられがちだけど、幸せの国「ブータン」の幸福度は、正真正銘の10段階評価らしい。

Tashi Choden, Kusago, Takayoshi, Kokoro Shirai 2007.
"Gross National Happiness and Material Welfare in Bhutan and Japan", Centre for Bhutan Studies. 1-220.          

そもそも信頼性、妥当性をきちんと保証しないとならない尺度で、かつ、文化・言語がたぶんに影響しそうな尺度なのに、こんなところくらい揃えておいた方がいいのではないでしょうか?

「10段階評価」って繰り返し書いてあるところから、きっと本当に10段階評価のつもりで、実際には11段階評価の質問紙を作っちゃったてのが真相かもね。

77

9月の日本心理学会第77回大会にて「チュートリアルワークショップ:日常生活に活かす応用行動分析学」をお引き受けすることになりました。

大会会長の坂野雄二先生ら準備委員会の先生方のご提案で、日心では初となる研修型ワークショップだそうです。

会員の方からご推薦をいただいたということでお引き受けることにしましたが、なにしろ最後に日心に参加したのは、それも久しぶりに参加したのは2008年のことです(ここでも幽霊会員の私です ^^)。このときもワークショップの指定討論のみ。そーいや、たまたまですが、あのときも北海道でした。

「日常生活に活かす応用行動分析学」をテーマに頂きましたが、正直、日心の会員でこういうテーマのワークショップに興味、関心のある人がどれだけいるのか疑問で、お引き受けするには、かなり躊躇した次第です。

第一号通信の「チュートリアルワークショップ」一覧を拝見して、その疑問はますます膨らむばかり。ほとんどが実学というか、これを学んで帰れば、次の日から役に立ちそうな、研究法や統計の研修ではないですか。そーじゃなくちゃね、ワークショップはという納得の気持ちとともに、当初の疑問は疑念へ。そして疑心へ。困ったなぁ。

参加希望の方には「このワークショップで何を学びたいか」を申込みのさいにお知らせいただけるよう、準備委員会にはお願いしてあります。興味をもって参加して下さる希有な方々にご満足いただけるよう、皆さまのご希望にできるだけそえるよう、柔軟に準備したいと考えていますので、参加希望の方は、上記のテーマには必ずしも拘らず、「これを聞きたい!」というご要望をできるだけたくさんお知らせいただくようお願いします。

せっかく日心でやるので、フタをあけてみたらよく知った顔ばかりズムという展開よりは、応用行動分析学なるものに何となく興味があるのだけれど、よくわからないことだらけだから、この機会に全部とはいかないまでも半分以上聞きまくりたい、なんて人たちと、少人数でとことん話し合う時間になればと思っています。

というわけで、宣伝&お願いでした。

(あとは、保険としてポスター発表するかどうか決めないと)

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PR費を除き広告費を一切使わずに会員数10万人突破」というのだからスゴい。

学ぶことへのモチベーションが存在すること、学習支援サービスにニーズがあること、ネットを介した社会的随伴性が学習継続に効果があり、こうしたソーシャルネットワークサービスが機能することが、このベンチャー(挑戦)によって実証されつつある。

今後の展開がいよいよ楽しみです。


日曜、テニス仲間に頼んで、はるとの散歩の様子を録画してもらいました。山本先生に近況をご報告し、フィードバックをいただくためです。この話はまたいずれ。

もう一人の友達には、散歩に行っている間に、洗濯するので座椅子のカバーをとっておくよう頼みました。

うちの座椅子は楽天で購入した「ポーラ」です。3カ所が14段階でリクライニングするという優れものです。

Zaisubefore

はるに齧られても放っておけるように(止めに入って齧りを強化しなくてすむように)、カバーを二重にしています。

なので「カバー2枚かぶせてあるから、よろしくね」と指示しました。

これが私の思い込みで、間違った指示だったことが後に発覚します。

散歩から帰ってくると、出かける前は上の写真のように美しかった座椅子が、2台とも(!)、下の写真のように無惨な姿になっていました。

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これじゃまるで「Air」でエヴァシリーズに逆襲されて倒れた弐号機です。

友達を問いつめると、

  • 「だって2枚って言ったじゃん」
  • 「確かに2枚めはものすごく外しにくかった」

と言います(反論します)。

そう。追加でかぶせていた取り外し可能なカバーは一枚だけで、もう一枚は座椅子本体のカバーだったのです。

なんとか元に戻せないかと奮闘しましたが、カバーと本体が嘘のように複雑な構造になっていて、触れば触るほど、ウレタンが崩れ、フレームが剥き出しになり、いよいよ弐号機状態。目玉が現われても怖いので、そこであきらめ、月曜に家具通販のロウヤ(販売元)に問い合わせることにしました。

電話対応の女性はとても丁寧で、製品開発の部署にも問合せてくれましたが、

  • 構造が複雑なので(お客様の手で)元に戻すのは難しい。
  • 修理は行っていない。
  • (捨ててしまうのももったいないので再利用のために送り返しましょうか?と聞くと)お気持ちはありがたいが、修理後の再販は一切行っていない。

とのことでした。

この座椅子、累計11万台以上が売れているそうですが、このような問合せは初めてだそうです(このとき女性が笑いをこらえていたように感じたのはやはり私の被害妄想でしょうか)。

さて、こうなると、いくら「カバー2枚かぶせてあるから、よろしくね」と言ったからといって、二枚めのカバーが取りにくかった時点でやめておけばよかったのに。あるいは一台めが無惨な姿になったのを見た時点で二台めから取るのは一枚だけにして、そこでやめておけばよかったのに。それが《常識》じゃないか?と思いたくなります。だって1/110,000の確率ですよ。《常識》をゆうに外れて統計的にまったく有意な確率です。

しかし冷静に振り返れば、そしてインストラクショナルデザインの考え方の本道を貫くのなら、やはり「学び手はいつも正しい」です。

そもそも取り外し可能なカバーの枚数を私が確認してからお願いすべきでした。ロウヤさんに、裏面のタグか何かに「このカバーは取り外してはいけません」という注意書きを期待するのは、1/110,000という発生確率からも、そしておそらく小さいタグは見逃され、大きいタグはデザイン上不利であるという事情から無理でしょう。

思い込みや《常識》に頼ったことで2万円以上の損失がでましたが、いい勉強になりました。

結論:「学び手はいつも正しい」&「座椅子本体のカバーは決してはずさない」。

さて、春休みの間、けっこう頻繁に更新してきたこのブログですが、いよいよ昨日から新学期が始まったこともあり、この後はスローダウンする予定です。

新学期とはいっても、実は、私、今年はサバティカルで大学はお休みです。授業も会議もない天国のような一年間が待っています(天国には行ったことがないけれども)。とはいえ、通常ならおそらく三年はかかるような仕事量をこの一年でこなすつもりなので(主に執筆です)、それと両立しない行動の頻度は極端に減ることが予想されます。

まぁ、ぼちぼちと。

はるを迎えるために、徳島時代から使っていた巨大な円卓を処分し、長さを変えられる座卓を購入しました。居間にサークルをつくるため、また、一緒に遊べる空間を確保するためです。

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ところがサークルを開放して居間で遊べるようにすると、問題が生じました。

放っておくと座卓の上に上がります。ちょこんとお座りします。寝転がって寝てしまうことさえあります。でも「決して叱らない」方針を貫くため、当初はそのまま放置していました。

食事のときにはサークルに入れておいたので、それ以上の問題はなかったのですが、いよいよサークルを撤去すると、食事のときに食べ物を奪われないようにすることが困難になりました。

クレートは残してあるので、その中に入れておくという手もあったのですが、この段階までクレートは常にオープンで、クレートには自分から入って休んでいましたが、こちらが無理に入れて扉を閉めると吠えだす状態。クレートに入っているときだけフードを与える練習も始めていたのですがうまくいかず(扉を閉めると食べなくなってしまう)、クレート訓練は中断していました。

そこで日曜大工魂を発揮し、座卓に脚をつけ、テーブルにしてしまうという作戦にでました。写真が座卓(改1)です。

2

ちなみに、これより前に、寝室ではるがベッドの上にあがれないようにするために、ホームセンターで大量のコンクリートブロックを買ってきたことがありました。3段重ねで60cm近くかさ上げしました。ところがです。完成した自作"ハイベッド"にドヤ顔ではるを迎え入れたとたん、はるは軽々とジャンプし、ベッドの上にあがってしまったのです。笑うしかなかったです、あのときは。

そういうことがあったので、写真からわかるように、座卓につけた脚はかなり長くなっています。高すぎて、こっちが食事しにくくなるくらい(笑)。

ところが、今度は「噛み」問題が発生します。追加で装着した脚は木製で、ちょうど噛み心地がよいのか、がりがりガリガリ噛みだしました。ビターアップルで対抗しますが、スプレーしても木材が成分を吸込んでしまうのか、しばらくすると無効化してしまいます。

この座卓、重量がかなりあります。ガリガリ噛んでいるうちに脚が折れて崩落なんていう事態は絶対に避けなくてなりません。

そこで再びホームセンターに出かけ、配管工事に使う塩ビの太いパイプを購入してきました。これを切断し、脚に装着。座卓(改2)が完成です。

3

見かけは悪いが、機能はばっちりと思っていたら、これにも食らいついていきます。さすがにいくら噛んでも塩ビが欠けることはないし、味もしないだろうし、この噛みが私の注目によって強化されていることは間違いないのですが(留守のときにはしないし)、完全消去は難しく(ふと見てしまうことがあれば部分強化しちゃうし)、時間もかかり、何より「崩落」が怖いので、せっかく買った座卓はあきらめ、新しくテーブルを購入することにしました。もちろん、脚は鉄製。いくらでも噛んで下さいという製品です。

4

このテーブルが到着した後も、しばらくの間は脚への噛みが自発されていました。「鉄でも噛むのかい!」とツッコミたくなりました。しかし、半年以上経過した現在、テーブルの脚への噛みはまったく自発されていません。味もしないし、何かが剥がれることもなく消去されたのか、どんなに噛んでも心配ないので私も注目しなくなり、消去されたのか、その両方なのかはわかりませんが、こうして、

・座卓/テーブルの上にあがる
・人の食事を食べる
・座卓/テーブルの脚を噛む

といった問題行動を「叱らずに」失くすことができました。

番外編としたのは、しつけや訓練とは異なる方法で解決したからですが、実はこういう環境設定も重要なのではないかと思っています。

Miso

胡麻のふりかけ、鮭フレーク、岩のり(瓶詰め)...スーパーで見かけた瞬間は作用している確立操作(遮断化)が、一、二度、ご飯にかけて食べることで飽和化してしまうケース。次に遮断化が作用してくる前に賞味期限をむかえる。一人暮らしには量が多すぎるって話かも。

しょうが湯...これはもう少しわかりやすい。寒気がしたり、風邪気味で喉ががらがらしているときに買って(痛刺激提示による確立操作)そのとき一度くらいは飲むが、その後、体調が戻ると(痛刺激が消失すると)放置状態。

みそ...なぜか時々「自分でみそ汁をつくる!」と決めるが、実行はまずしない。カップみそ汁の勝ち。味噌にも賞味期限があることを数年後に知る(今日破棄したペットボトル入り味噌の賞味期限は2011年4月だった)。購入時の随伴性と調理時(食事時)の随伴性が異なることによって生じる無駄。

インスタントラーメン...非常時の保存食として大量に買っておくのだが、非常事態がそんなにしょっちゅうあるわけでもなく、そもそもインスタントラーメンは日頃から食べないので、長いはずの賞味期限も気がつけばあっという間。これは「非常食」の宿命かもしれない。賞味期限が切れる前に(それをプロンプトして)消費するための随伴性マネジメントが必要。

電子レンジで簡単調理シリーズ(炊飯、焼肉、焼魚、種々のルクエ)...普段やらない料理もこんな器具があればやるかもと思わされて購入するが、普段料理をしない理由は器具には由来していないため(時間、手間、買物など準備にかかるコストなどなどの弱化随伴性と、出来合いの総菜の方が美味しいという両立しない行動の強化随伴性)、結局、レシピを一読するだけで食器棚のベンチウォーマーに。

果たして、こうした随伴性分析を文書化することで、無駄な買物が抑制できるかどうか。じぶん実験です。

正月に読んだ『ノワール・レヴナント』という作品で気になっていた新人作家の第二弾『フラッガーの方程式』が発売となり、さっそく読んでみました。

没入、他になんもする気なし.... 数時間後、うるうるしながら読了。

周到にはりめぐらされた伏線が次々と回収されていくときの納得感(「やっぱり」「そうだよなぁ」)と血の気がひくような意外性(「 ..... 」「(そうくるか)」)が今回も楽しめました。前作も本作も頁数は相当ありますが(Amazonで注文するときにはわからなかったけど)、物語の展開が速くて次々と読めました。あっという間に読み終わり、ちょっともったいない気がするくらい。

前作にも心理学の用語がちらほらと散見されていたけれど、本作にはなんと物語の核となる「フラッガーシステム」の機能として『確立操作』が登場!用語の使い方には?マークがつくにしてもこれには驚きました。

この著者、いったい....  (笑)

ちなみに、私、西尾維新とか読んだり、アニメ観たりしてます...  ははは。

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4/3(水)のNHK「あさイチ」の「気になる!?"クセ"大研究」で解説した「習慣逆転法」(habit reversal)に関する補足情報です。前半は専門家向け、後半は一般向けです。

 「習慣逆転法」は応用行動分析学の第一世代にあたるAzrinが開発した行動修正のための介入パッケージで、nervous habits(「神経性習癖」)、チック、吃音症、トレットなどの症状が適用対象になります。
 「神経性習癖」は、爪かみや髪ひき、貧乏揺すりなど、同じ形態の行動が繰り返される、いわゆる「クセ」ですが、臨床的に問題になるのは、たとえば出血したり、組織や変形するなど、身体的な損傷が生じたり、社会的に不利になるなど、何かしらの不適用があらわれる場合です。
 チック、吃音症、トレット以外にも、たとえば、顎関節症(temporomandibular disorders)という、医学的診断がついた症状に対する成功例も報告されています。逆に、spasm(けいれん、ひきつけ)、chorea(ハンチントン病からくる舞踏病)、tremors(パーキンソン病やバゼドー病から生じる震せん)などの症状は「適用外」とされています。

Azrin N, Nunn R, Frantz-Renshaw S.  (1982). Habit reversal vs negative practice treatment of self-destructive oral habits (biting, chewing or licking of the lips, cheeks, tongue or palate). Journal of Behavior Therapy and Experimental Psychiatry, 13(1), 49-54.

Glaros, A. G., Kim-Weroha, N., Lausten, L., & Franklin, K. (2007). Comparison of habit reversal and a behaviorally-modified dental treatment for temporomandibular disorders: A pilot investigation. Applied Psychophysiology And Biofeedback, 32(3-4), 149-154.

Peterson, A. L., Dixon, D. C., Talcott, G., & Kelleher, W. J. (1993). Habit reversal treatment of temporomandibular disorders: A pilot investigation. Journal of Behavior Therapy And Experimental Psychiatry, 24(1), 49-55.

 「習慣逆転法」は応用行動分析学のシングルケースデザインを用いた研究のみならず、嫌悪療法やその他の療法(もちろん統制群とも)と治療効果を比較するグループデザインを用いた研究も行われており、上述の標的行動群に対する治療効果には十分なエビデンスがあると言えます。詳しくは下記の展望論文をご参照下さい。

Bate, K. S., Malouff, J. M., Thorsteinsson, E. T., & Bhullar, N. (2011). The efficacy of habit reversal therapy for tics, habit disorders, and stuttering: A meta-analytic review. Clinical Psychology Review, 31(5), 865-871.

Woods, D. W., & Miltenberger, R. G. (1995). Habit reversal: A review of applications and variations. Journal of Behavior Therapy And Experimental Psychiatry, 26(2), 123-131.

Miltenberger, R. G., Fuqua, R. W., & Woods, D. W. (1998). Applying behavior analysis to clinical problems: Review and analysis of habit reversal. Journal of Applied Behavior Analysis, 31, 447-469.

 神経性習癖(以下、より軽度なものも含め、ここでは「クセ」と総称します)一般の研究からは、ストレスがかかったときや活動が拘束されたとき(番組でも紹介されたように、車にのって渋滞に巻き込まれたとき)クセが自発されやすいことはわかっているようですが、その仕組みはまだ解明されていないようです。

 上記の展望論文には、たとえばクセを一種のスケジュール誘導性行動とみなす考え方も紹介されており、私もそれはかなりありそうなことではないかと考えています。強化率が低くなったとき、あるいは嫌子の出現頻度が高まったときに、クセによる自己刺激が好子として確立されるとか、あるいはクセが最初は偶発的に強化され、そのまま誤学習したくせが、スケジュール誘導性行動として自発され、随伴性はないのにもかかわらず(迷信行動的に、あるいは中間的行動として)、維持されてしまっているのではないかという仮説です。

 こうした仮説の検証は実はほとんど行われていません。「習慣逆転法」はとにかくクセを治すことを主眼に開発されてきた手法であり、クセの機能に目をむけた研究はほとんどされてこなかったのです。

 ただし、クセの機能を明らかにしようとする研究も少しずつ出始めているようです。たとえば、以下の論文では、いわゆる機能的分析と同じ手法でクセの機能を推定し、「習慣逆転法」と推定したクセの機能の交互作用について論じています。この論文からはクセに単一の機能があるわけではなく、複数の機能があり、しかも個人差があることがわかります。これからの研究課題といえるでしょう。

Woods, D. W., Fuqua, R., Siah, A., Murray, L. K., Welch, M., Blackman, E., & Seif, T. (2001). Understanding habits: A preliminary investigation of nail biting function in children. Education & Treatment of Children, 24(2), 199-216.


上述の展望論文にまとめられている「習慣逆転法」の構成要素を書き出しておきます。

「習慣逆転法」

癖やチックを意識化させる。
1) 反応を定義する:鏡で自分の行動をみながら癖やチックを具体的に言語化する。
2) 反応を検出する練習:セラピストが「今やっていますよ」と指摘する。クライアントが自分で気づけるようになるまで続ける。
3) 反応を自発する前に検出する練習:癖やチックをする前兆に気づく。
4) 反応が生じる状況を言語化する:癖やチックが生じる場所や状況、一緒にいる人をすべて書き出す。

癖やチックと置き換える拮抗行動を教える。
5) 癖やチックに気づいたら、あらかじめ決めた拮抗行動を2分間行う。
拮抗行動は以下の条件を満たすこと:
a) 癖やチックとは反対方向の動作であること。
b) 数分間保持できる動作であること。
c) その動作によってアイソメトリックな筋肉の緊張が生じること(筋肉の収縮は起こらずに持続的に負荷をかけられる動作であること)。
d) 周りからは目立たずにできて、通常の他の動作に妨げにはならず、でも、それをしている間は癖やチックができないこと。
e) 筋肉のけいれんを生じさせるチックについては、その筋肉と拮抗する筋肉を強化する行動であること。

手続きを維持させる(動機づけの手続き)。
6) 不都合さの振り返り:癖やチックによって生じる問題や不快感、不安などをすべて書き出す。
7) ソーシャルサポート:家族や友人に習慣逆転法について伝え、癖やチックをしていないところを見つけて褒めてもらい、気づかずに癖やチックをしているところを見かけたら拮抗行動をするように声をかけてもらう。
8) 公表:癖やチックについて回りの人に知らせる。

般化させる
9) 想像による予行練習:上記の4) で書き出した場所や状況、人を思い浮かべながら、癖やチックをしそうになるが気がついてやめ、拮抗行動をする自分を想像する。

 このように、習慣逆転法のフルパッケージはかなり手間がかかり、専門家の助言なしで進めるのは困難ですが、実は「2) 反応を検出する練習」と「5) 癖やチックに気づいたら、あらかじめ決めた拮抗行動を2分間行う」だけの『簡易版』でも効果があることを示した研究も複数あります。症状や重篤度にもよりますが、自分で自分の爪かみを治してみたいと思うような場合なら、まずは簡易版をやってみるということもいいのではないかと思われます。ただし、番組でもご紹介したように、拮抗行動に従事する時間はかなり重要です。以下の論文からは、5秒間の拮抗行動では、短期的に成果がでても、数ヶ月後のフォローアップまで効果を維持するためには、やはり数分間の拮抗行動が必要なようです。

Twohig, M. P., & Woods, D. W. (2001). Evaluating the duration of the competing response in habit reversal: A parametric analysis. Journal of Applied Behavior Analysis, 34(4), 517-520.

 さて、番組でもカミングアウトしていましたが、私自身、爪かみのクセがあります。子どもの頃ですから、もう50年近く噛んでいることになります。小学校の頃は「衛生検査」の時間(机の上にハンカチと手をだして、衛生委員が机間巡視してチェックしていくやつ)が恥ずかしくて恥ずかしくて仕方なかったですし、大学生の頃は友達から「お前、それは子どもの頃の愛情不足だろ」なんてツッこまれていました。

 行動分析学を学んでからは色々試してみました。ちょうど、Western Michigan Universityに留学中、習慣逆転法の研究をやっていたWayne Fuqua先生(やはり、習慣逆転法を研究しているMiltenberger先生のWMUでの指導教官だったはず)の授業で文献を集中して読む機会があり、そこで読んだ論文に書いてあったことを自分の爪噛みに試してみていました。

 マスタードをつけてみたこともありましたし、手首に輪ゴムをつけ、爪を噛んだときにそれで手首をピチッとはじく、なんてこともやってみました。実はこうした方法は「嫌悪療法」(aversion therapy)として堂々と(?)研究されているのです。そして、習慣逆転法に比べて効果がないことは当時もなんとなくわかっていたのですが、簡単なので、とりあえずは自分の体で試してみました。

Davidson, A., Denney, D. R., & Elliott, C. H. (1980). Suppression and substitution in the treatment of nailbiting. Behaviour Research and Therapy, 18(1), 1-9.

Silber, K. P., & Haynes, C. E. (1992). Treating nailbiting: A comparative analysis of mild aversion and competing response therapies. Behaviour Research and Therapy, 30(1), 15-22.

 マスタード作戦はまったくだめ。むしろ、匂いをかぐ行動が増えちゃいました(辛いもの好きだし)。輪ゴム療法はある程度成功したのですが長続きしませんでした。しばらくして(1-2週間)、爪が伸びてくるころには(爪が伸びるほど、噛んでいなかったということもあって)、輪ゴムを手首にしなくなり、あっと思ったときに爪を噛んでしまい、時既に遅しで、輪ゴムでピチッともできず、あとはボリボリとなってしまいました。毎日両手の爪の長さを測定するという「記録療法」もやってみましたが、これはあまりに手間がかかり、途中でやめてしまいました。

 そんなこんなで、自分が試した中では、やはり習慣逆転法(ただし簡易版)が最も有効でした。2ー3週間爪をかまず、爪切りが必要になるところまで伸ばせました。

 しかし、その後が難しい。長い(というか普通の)長さの爪を維持するのが、自分にとっては難しいのです。

 ちょうど、今回の番組にあわせて、3/16から簡易版習慣逆転法を使っています。噛んだのは一度だけです。今では、白い部分が1-3mmまで伸びてきています。親指の爪はは長くなり過ぎたので、一度、爪切りで切りました。

 自分にとっての難関は以下の通りです。

 実は自分のクセは爪かみだけではありません。意識化してみるとわかるのは、噛むだけではなく、というより噛む前に、両手の爪をあわせてこすったり、片方の手の指でもう片方の手の爪をはじいたり、爪と指の隙間に爪を入れたり、爪を押したりと、何種類もの方法で爪をさわり、押すといった行動があるのです。これによって、噛んで短いときでさえ爪の白い部分が少なく、指から浮いています。爪自体も薄くなっています(摩耗?)。爪が伸びてきてもこのままの状態なので、全体的に、薄い爪が浮いている状態になっているのです。だから、服を着替えているときとか、布団の中とかで、すぐに爪が何かにひっかかります。今、こうやってパソコンのキーボードを打っているときも爪がカチャカチャキーにあたって打ちにくいし、ミスタイプも増えます。実際、今回も、左手の中指の爪がこうして一部破損してしまいました。

 上述したように、普通の人の爪よりも白い部分が多いせいもあるかもしれませんが、人生で爪切りを使ったことが数えるほどしかなく、どこまでどうやって爪を切ればいいのかもわかりません。なので、これまでは習慣逆転法を使って爪を伸ばしても(たいていは、とても重要なデートがやってきそうなとき、ですね。 笑)、こんな感じで、伸びてきた爪の扱いに困っているうちに、爪を触っていて(噛むのではなく)、薄くなった白い部分が裂けたり、切れたりして、結局、割れてしまうということの繰り返しでした。

 そこで今回は、爪かみだけではなく、爪いじりにも拮抗行動(拳にぎり)を随伴させています。爪いじりの形態があまりに多様なのですべてに随伴できてはいません(これも難しいところの一つです)。それから、拮抗行動を2-3分間保持するのはやはり困難です。たとえば、こうして文章を入力しているときに2-3分間拳を握るのは仕事からのタイムアウトが自分にとってはあまりに強い弱化となり、実現できません。なので、せいぜい10秒の拳握りで試行中です。もう少し長くなるところまで成功したら、今回はネイルサロンに行ってみようかとも考えています。デコレーションを楽しむためではなく(まさかね)、専門家の人に、このまま維持するのに適当な爪の長さや切り方を教えてもらうためです。

 自分のことはここまで。以下は、番組で伝えられなかったことです(生放送って難しいですね)。

 子どものクセを直そうとするときに叱ることのデメリットは数あれど、叱ることでストレスを与えるというのがクセを直そうとするときの最も大きなデメリットだと思います。ストレスがクセの原因であるとはわかっていませんが、ストレスがかかっているときにクセが出やすいことは間違いありません。クセをしそうなことに自分で気づけても、そこで拮抗行動に切り替えることは、高いストレスがかかっているときの方がより難しいことが予想されます。つまり、最初からハードルをあげずに、まずは簡単なところから練習を始める(成功すれば子どもも喜びます)ためにも、子どもがリラックスしている状態を作り出すことが重要だということです。叱ったり、なじったり、脅したりは、当然、その逆方向に働きます。

 クセは直したいと思っている人でも直しにくいものです。だから、そもそも直したいと思っていない人の行動を他人が変えようとするのは、不可能ではないにしろ、やたらと大変です。最初に書いたように、生活に大きな支障がないのならそのままにしておくというのも一つです。

 ただ、そのときに、直そうと思えばこうして直せるという方法を知っているのと知らないのとでは大違いです。大事なのは、直すこともできるし、あるいは、そのままでもいい、そういう選択肢を用意して、本人が選ぶ機会を確保することです。これは大人でも、子どもでも同じです。誰かから言われて強制的にやらされていることと、自分で選択してやると決めたこととでは、その後の遂行率に差がでるものです。クセを直すには、たとえば拮抗行動を続けるというように、継続が肝心、遂行率が命です。「本人が直したいという方向に持っていく」というのは、つまり、本人に選択させましょうということです。

 自分の場合、大昔は「親の愛情が不足していたからやってることで恥ずかしいけど治らない」から「親の愛情とは無関係な行動で、やると決めて拮抗行動を続ければ、爪が必要なときには伸ばせる。でもそれほど必要でなければ短いままでもOK」という具合に自分の爪かみに対する言語行動が変容しています。後者の方が気持ちもずっと楽です。

 どうすれば選択の機会がつくれるか、何を拮抗行動として選べばいいか、どうやって練習すればいいか、どうすれば動機づけできて、継続できるかについては、その人クセや状況などによって変わってきます。ここは一人ひとりのカスタマイズが必須なところです。習慣逆転法や行動分析学を勉強した小児科のお医者さんや行動療法の専門家が近くにいればいいですが、そうではない場合も多いと思います。ただ、重篤ではないクセであれば、ご自分で色々試してみても、大きな副作用はありません(車を運転中に運転と拮抗するような行動をしたりして事故になるなんて無謀なことをしなければ)。ですので、まずはご自分でご自分が直してみたい「小さめ」のクセがあればそれに取り組んでみることをお勧めします。

 まずはご自分のクセを意識化したり、記録をとったり、拮抗行動をやってみて、どこかどんなふうに難しいか(あるいはどこがどんなふうに楽しいかを)を実感すれば、お子さんにもどんなふうに話せばいいかヒントが得られます。あるいは最初から「お母さん(お父さん)も自分のこういうクセを直してみるから、あなたも一緒にやってみない?」と誘いかけて、家族のプロジェクトとしてやってみるのも楽しいかもしれません。そのとき、子どもさんが「ぼく(わたし)はやんない」と言っても、それはそれで選択ですので尊重してあげて下さい。そして、「それならお母さん(お父さん)がクセをしていて、それなのに拮抗行動をしないでいたら「み〜っけ」と言って教えてくれない」と言って、ソーシャルサポートを頼んでみましょう。それなら協力してくれるかもしれません。お母さん、お父さんが果敢にクセ直しに取組み、かつ、成功している姿をみたら、お子さんも「次、やってみる」と選択するかもしれませんよ。

以上。 

附記:イノッチ、顔ちっちぇ〜。さすがジャニーズ、かっこ良かったです。

附記その2:奥田先生の番組終了後の感想はこちらから

附記その3:奥田先生のブログを読むとわかりますが、奥田、杉山、島宗というトリオ出演は今回の番組ディレクター(D)さんが別々にアプローチして実現したもので、我々が仕掛けたわけではありません。Dさんが、我々3人がツーカーの仲だと気づいたのは、かなり後になってからです(笑)。偶然か必然か。そこのところも面白いイベントでした。

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飼い猫の馴化が東大の先生が考えるほど単純ではないように、我々ひとの馴化もよくよく考えるとそう単純ではない。

半年くらい前に自宅のトイレにエステーの「自動でシュパッと消臭プラグ」を導入した。散歩から持ち帰った愛犬はるのうんちがめちゃくちゃ臭かったので、トイレに流した後、自動的に消臭してくれるなら便利だと思ってのこと。

この装置、照明の変化を検知するようになっていて、明るくなると(トイレに人が入ってくると)、緑のLEDが数回、オレンジのLEDが続けて数回点滅してから、シュパッという音と同時に香水が噴射される。

最初の1-2ヶ月はこれ(噴射じゃなくて音だと思う)への驚愕反応が止まらなかった。特に夜中にねぼけまなこで起きてトイレに入ったときには、その後、胸がどきどきしてしばらく寝付けないほど驚いた。

すぐに馴化するだろうとたかをくくっていたが、なかなか落ち着かない。よくよく自分の行動を観察すると、トイレに入ると消臭プラグの方を見るようになっていた。消臭プラグは便器の左側に置いてある。便器の左側を向き、LEDが点灯したのを見て、シュパッでドキッとして、それからおしっこ。この繰り返し。

この観察反応には何の機能があるのだろう? LEDの点灯を見ていたからといって驚きが軽減されたようにも思えないのだ。何かしら危険性のある状態の警告刺激(WS→US/CS)への注視は生得性の確立操作(UEO)になっているのだろうか? それとも日常あちこちにある、こうした随伴性のどこかでは警告刺激の注視が回避行動を引き起こして強化されるので、それが般化しているのだろうか?

などなどと、トイレに行くたびに考えているうちに、馴化が生じ、今ではシュパッっとなっても気づかないほどである。

どちらが先だか不明だが(←もったいないことをした)、LEDへの注視もなくなった。試しに消臭プラグの位置を便器の左側から右側へ移動させてみたが、これだけでは脱馴化は起こらなかった。最長で2泊3日の旅行から帰って来た後でも脱馴化は起きなかった。あまりに不感になって、消臭プラグの中身がきれていてもしばらく気づかないほどである。

ここまで完全に反応が消失すると、果たしてそもそもこの行動変化は馴化だったのだろうかと疑問にも思う。

う〜ん。

毎晩どきどきしていたあの頃は、これじゃ夜びっくりするから、暗→明でシュパッじゃなくて、明→暗でシュパッにすればいい。そうすれば人をむやみに驚かさずにトイレから出た後で消臭できるじゃないですかとエステーさんに提案しようと思っていたが、今ではその動機も薄れました。でも、毎日、シュパッっとされて慣れることができないお客さんのことを考えると、この改善は役に立つのかな。

「ネコは飼い主の声を聞き分ける」 東大調査に「確かに」「犬より律儀」の声

ネットで喧々諤々のこの研究の元論文を読んでみた(どのように喧々諤々かは各自お調べ下さい)。

Saito, A., and Shinozuka, K. (2013, March 26).  Vocal recognition of owners by domestic cats (Felis catus).  Animal Cognition (Online).  DOI 10.1007/s10071-013-0620-4

飼い猫に呼び名を聞かせる。1回目から3回目は見知らぬ人(それぞれ違う人)の声で。4回目に飼い主の声。その後、もう一回、また別の人の声で。

すると、呼び名に反応して頭や耳を動かす反応が1回目から3回目にかけて減少していくのが、4回めで増加する。このことから、飼い猫が自分の飼い主の「声」がわかっているとした研究である。

「馴化-脱馴化」という方法を用いた実験。飼い主の声で脱馴化が生じるので、このような解釈になる。

馴化とは、大きな音や新奇な画像などに対して生じる驚いたような反応や注意を向ける反応が、その刺激を繰り返し提示することで減っていく現象のこと。動物実験だけではなく、たとえば幼児の記憶を研究するときにもよく使われる。

著者も論文で認めているように、この実験だけからは猫が飼い主の「声」のどのような特性に反応しているかはわからない。イントネーションや発音の仕方などの細かな刺激特性が手がかりになっている可能性もある。また、実験計画ということからすると、全被験体に対して同じ試行数の実験となっているところは改善の余地があるかもしれない。

4回目で飼い主の声が提示されたときの反応が、実は1回目の見知らぬ人から呼ばれたときの反応に比べて低いのも面白い。著者は統計的検定をしていないが図から読み取る限り有意差がありそうだ。1回目から飼い主の声で呼ぶ条件でもやってみないと分からないとはいえ、少なくとも飼い主の声も、最初の物音にまさる反応を引き出すほど脱馴化はしないことになる。

それに、ネットで反応している愛猫家の人たちが思い浮かべるであろう猫の反応はおそらく名前を呼んだらよってくるようなオペラントであり、呼称の機能は弁別刺激のそれのはず。

「馴化ー脱馴化」法を使っているということは、この著者たちは無条件反射的な機能を想定しているのだろうから、そこに若干のズレがある。と同時に、飼い主が名前を呼んじゃったら、当然、オペラントの刺激性制御と混交が生じちゃうよねっていう実験計画上の問題もある。

「何でこんな愛猫家なら誰でもわかっていることを、わざわざ東大の先生が研究してるんだ」なんて批判は、このようにして、非常に混みいってはいるが、完全に的をはずしているわけではないと思う。

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