行動分析学から心理学の基礎概念を解釈する(その5):展望(的)記憶

定義
 “今より先の時点で、あるアクションを起こしたり‘プラン’を実行することを覚えている記憶”(『心理学辞典』(有斐閣), p. 619)。

行動分析学からの解釈
 「駅までの道のりの途中にある郵便ポストで葉書を投函しよう」というようなルール(「A:後でポストを横切るときに、B: 葉書を投函すれば、C: あさってには相手に到着する」と等価な省略形)には、今はここにないが将来提示される郵便ポストに投函行動の弁別刺激としての機能(行動喚起)を付加する機能がある。これはルールの機能変容作用(function-altering effects)の一つと考えられる(Schlinger, & Blakely, 1987など)。行動が遂行されるためには、弁別刺激が提示されなくてはならない。たとえば、駅まで歩いているときに考え事をしたり、他の刺激を注視(カラスがゴミを喰い散らかしているのを見たり)していると(つまり、郵便ポストを見る行動と両立しない/しにくい行動が自発され強化されていると)、行動が自発されない(「〜し忘れる」)。将来の行動の遂行率を上げるためには、様々な方法で(例:玄関を出るときに葉書を鞄に入れずに手に持ったままにして、「ポスト、ポスト」と言い続けるなど) 弁別刺激が確実に提示されるように工夫する必要がある(旅行の予定を手帳に書き込んだりするのは。こうしたスキルの一つである)。なお、歯磨きなど日常的にルーチン化した行動は行動連鎖化によって引き起こされているので、そこに関与している制御変数を検討すると、上述のような未来の行動計画とその遂行とは別のものとして捉えるべきであろう。なお、ルールがもつこのような作用については理論的な分析が多く、実験的な検証はまだまだこれからである。

Schlinger, H., and Blakely, E. (1987). Function-altering effects of contingency-specifying stimuli. Behavior Analyst, 10(1), 41–45.

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