2011年2月アーカイブ

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 関西学院大学で表題の特別講義をやってきました。

 関学の心理学は実験と応用・臨床がうまく融合されたカリキュラムをもち、優秀な研究者や実践家を輩出しているという点で、お手本にしたい大学の一つです。

 キャンパス(西宮上ケ原)の中央には写真のような広場があり、私が訪れるたびになぜか晴天に恵まれ、パロアルト(スタンフォード大学)を連想させられることもあり、正直、うらやましい研究環境です。

 講義ではブランドづくり(ブランディング)に関する行動分析学からの研究の動向と、うちのゼミ生たちの研究を紹介しました。土曜日にも関わらず、集まってくれた先生方、大学院生諸君、ありがとうございました。

 スライド数80枚を1時間半でぶっとばしたので、ちょっと心配でしたが、最後の30分間は期待してた通り、内容の濃い討論ができました。

 お約束の資料はここからダウンロードできます。学部生の卒論が主なのと、公表していない研究成果も多いので、パスワードをかけてあります。パスワードは今回私を招聘してくださったご担当の先生の名字を英数半角で表記した文字列です(敬称略、1文字めも小文字、8文字)。

 すでに講義後にメールでいただいている質問もあるので、後で回答しますね。

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Qualitysafetyedge

 行動分析学にもとづいた安全管理マネジメントプログラム(「Values-Based Safety」)を提供するコンサルティング会社、Quality Safety Edge の webサイトにどこかで見たような顔のキャスターによるビデオクリップが。

 Law & Order (アメリカの人気刑事・法廷ドラマシリーズ)に出演していた Fred Thompsonじゃないですか。この人、テネシー州選出の上院議員もやったんだよね。Quality Safety Edgeって確かテキサス州に本社があったはずだから、南部つながりのお仕事だろうか。

 安全管理のコンサルテーションは行動的プログラムの有効性が確認され、社会的にも受け入れられている領域の一つ。この会社の社長である Terry McSween 氏は自分と同じ、Western Michigan Universityは Dick Malott先生の研究室出身の先輩です。

 この会社のwebサイトには、行動的安全管理プログラムの概要について、ビデオクリップ(大量)による紹介や、ニューズレター、各種資料など、情報が満載なので、興味がある人はぜひ一度チェックしてみて下さい。

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 安全管理に関するインストラクショナルデザインの鉄則:「インストラクションによる行動管理には限界があるので、リスクが大きな場合には誤反応が出現しても取り返しがきくような安全網を用意する」。

 スーパーモーニング(2010/10/20)で紹介されていた「SDAS-II」は、自動車のブレーキとアクセルの踏み間違えに対応するセーフティネットシステムの好例だ。

 運転者が何らかの理由でパニックになったとき、ブレーキの"つもり"で、アクセルを踏んでしまうときは、踏み込みが早く、ベタ踏みする傾向があることを利用し、そのような反応形を検出したら即座にエンジンを停止する仕組みだそうな。

 詳しくは販売元(㈱アールエフビイ)のwebサイトの解説を参照して下さい。

 スパモニでは九州産業大学の松永勝也先生による「脳が慣れている方を選んでしまう」というコメントを紹介していたけど、もちろん、それでは「なぜ、脳が慣れている方を選ぶのか」という説明にはならないし、脳に"主体性"を求めるのは精神論への先祖帰りのようなもの。

 なので、行動分析学から考えてみた。

 アクセルを踏み込む(離す行動が自発されずに)理由は、ブレーキは強く踏み込むほど止まるという随伴性で強化されてきたからであり、また、"パニック"の種類によっては脚を曲げる筋肉がうまく動作しなくなるということもあるだろう(レスポンデントによる過緊張)。止まらなければ止まらないほど、強く踏み込むようになるのはこれで説明できそうだ。

 なぜ、ブレーキではなくアクセルを踏んでしまうのか。これは正直よくわからないが推測してみるに、行動形態が類似していること(どちらも足で踏む行動であり、位置や方向も類似している)が主原因だと思う。最近はオートマ車ばかりだけど、シフト車でブレーキとクラッチを踏み間違えたりするのかどうかを調べればこの仮説の妥当性がある程度検証できそうだ。ただし、クラッチを踏み続けても事故は起こらないから記録に残らない。

 記録に残らないという意味では、実は、ブレーキとアクセルの踏み間違いは、それほど珍しいことではないのでは?という気もする。友達の車やレンタカーを運転するとき、最初は誰でもブレーキとアクセルの位置を確認すると思うが、そのとき、一発めから正しいペダルに足を乗せられるとは限らない。自分の車でも、発進時などにときどき間違えて足を置いたりしていないだろうか。事故になっていないだけで(つまり記録に残らないだけで)、パニック時かどうかに関わらず、踏み間違いそのものはそれほど珍しいものではないのではないだろうか(上述の主原因のためである)。

 話を元に戻す。

 踏み間違いの原因を分析し、踏み間違いを減らすインストラクション(例:ブレーキペダルの位置や大きさ、踏んだときの感触、もしかしたらそもそも足を使わないとか)を開発することは可能かもしれない。それでも踏み間違いが起こる確率をゼロにできない限り、安全網の導入が望ましい。

 事故が起きてからかかるお金を確保するために保険の仕組みを使うというのも一手だが、このSDAS-IIのような装置に投資するというのもまた一手である。お金だけではなく、貴重な人命を救えることからすると、コストにかなりの差があっても、本来は後者が採用されるべきだろう。

 今回の免許証更新は、後でTwitterでつぶやこうとメモしていたので、とても有効に過ごせました。 「ワイドミラー」をつけるのが楽しみです。

日本の針路:マネックス証券社長松本大氏先日あるフォーラムで会場に対して「デフレはいいか悪いか」を尋ねてみた。実に7〜8割の方が「デフレはいい」と挙手された。これにはさすがにびっくりした。私は「デフレは社会の病気」だと考えている。デフレの中では、モノを今日買うよりも明日買う方が得である。だから今日判断しないで明日判断することに慣れ、何事にも対応のスピードが遅れていく。「今あるものを守る」「今あるものを食いつなぐ」戦略の中では「デフレはいい」ことになってしまう。これは縮小均衡的な発想であり、未来は尻すぼみである(日本経済新聞, 2011/01/10, 朝刊, p.18)。

 ほんの十年くらい前までは、日本は物価がとても高い国だった。特に住まい。食品も高かった。外国からの客人は苦労していたし、外国に旅行すると、いろいろなものが安くて驚いたものだ。

 あの頃、みんな「もっと物価が安くなるように」と願っていた。

 「デフレはいい」と挙手した人たちは、「物価が安くなってよかった」と言っているのだと思う。

 物価の水準の国際比較というのはけっこう難しいらしい。為替水準の適正さは、たとえばマクドナルドのビックマックなど、複数の国で販売される同じ商品の値段を使って判断するという。たとえば、米国との比較では、ビックマックだと1ドル=85.79円、iPodナノ(16GB)だと93.85円、スタバのトールラテだと148円となる(日経プラスワン, 2010/10/16, p.2)。こうしたデータを見る限り、日本の物価水準は現状でも必ずしも低くはないということになると思う。

 松本大氏の懸念は、むしろ、物価の限りない低下傾向が弁別刺激もしくは確立操作として働き、消費の先延ばしが生じてしまっている可能性、そしてこれが“デフレスパイラル”を生みだしているという現状であろう。

 つまり、物価の絶対的な水準(物価が低くなったこと)と、底が見えない減少傾向(物価がずっと低くなっていく傾向)は区別すべきであるということだ。

 「物価水準が先進他国に比べて同じくらいになって欲しい人?」と言われて手を上げる人も、「このまま物価がさらに低下して給与も下がり、結局は欲しいものが妥当な価格で買えなくなってもいい人?」と問われれば手を上げないのではないだろうか?

 そして、消費行動を引き出して、“デフレスパイラル”から脱却するためには、物価は下げ止まったという弁別刺激を明確に提示する必要がある。あるいは、モノやサービスによっては物価が上昇するかもしれないという刺激が提示されれば、確立操作として、価格が上がる前に購入しようという動機づけとして機能するはず。だから、日銀がインフレターゲットを設定することにはそういう意味はある。

 ただし、インフレターゲットを設定しても実際に価格が上昇しなければ、インフレターゲットそのものの刺激性制御が失われる。おそらく日銀はそこを懸念しているのだろう。そしてその懸念も行動分析学からすればもっともな話だ。

 では、どうすればよいのか。

 自分は個人的には小さな政府指向だが、今の日本には増税もやむをえないと思う。無駄な支出を削るのはもちろん前提条件で、まだまだ足りないと思うけど、わが国の莫大な借金を考えると、緊縮財政だけでは不十分であることこともまた明らかだ。しかし、いきなり消費税を上げたら、購買行動が弱化されるわけで、消費が“冷え込む”のも間違いない。だから、消費税の増税は漸次的に段階的に行う。たとえば、15年かけて年1%ずつとか。こうすれば、税込みの商品価格は固定されるか、あるいは徐々に上がっていく。実質、インフレターゲットをコントロールでき、価格が上がらないうちにものを買う行動の確立操作になって、強化随伴性も設定できる。

 というわけで、消費税の漸次的増税によるインフレターゲットのコントロールを提案します。

定義
 “自分自身を全体として肯定的に評価することであり、人間が心理的に充分に機能するための基盤を支えるもの”(『心理学』(有斐閣), p. 330)。
 “自己に対する評価感情で、自分自身を基本的に価値あるものとする感覚。(中略)自尊感情は、その人自身に常に意識されているわけではないが、その人の意識態度を基本的に方向づける”(『心理学辞典』(有斐閣), p. 343)。

注記:
 心理学研究にはよく登場する概念であるが、上の引用からもわかるように定義は抽象的で、これを測定するためだけに開発された各種の尺度(質問紙)で測定される(or 測定されていると定義される)心的概念である。何だかよくわからないものを解釈するというのも非常に困難であり、ほぼ不可能なようにも思えるので、ここでは“自尊感情”と言われている構成概念の一部分を拾い上げて、行動分析学から解釈することにした。

行動分析学からの解釈
 自分に関するタクトとそれがもらたらす情動レスポンデントである。自分に関するタクトは、表現上、能力や性格に関するタクトが多い(例:「自分は何でもうまくやれる方だ」や「自分は役に立たない人間だ」)。直接の弁別刺激は実際に何かに成功したり、達成したときや、失敗したり、やりたいことができなかったという成功や失敗であるが、そのさいに提示される他者の評価(例:「お前はこんなこともできないのか」)や自分の評価(例:「また失敗した」)のエコーイックや、他者からの賞賛を求めたり、次回の失敗による評価の低下を回避するマンド、こうした言語刺激からさらに派生していくイントラバーバル(例:「こんなこともできるなら次にはあれに挑戦してみよう」や「身の程知らずだった。俺なんかは静かにしていればいいんだ」)と、制御変数は多重である。そして、自らのこうした言語行動(内言であっても、外言であっても)が条件刺激として作用し、自分自身に情動反応(気分の高揚や抑うつ感)をもたらし、さらに条件性抑制(や確立操作)として他のオペラントに影響するとき、これを“自尊感情”と呼んでいるようである。抑うつ感をもたらす言語行動(いわゆる“マイナス思考”)は、上述のような強化随伴性があれば、抑うつ感という嫌子出現だけで弱化されることはなく、自発が続く。そして、このマイナスの連鎖によって不適応を起こすこともあるだろう。ちなみに、ACT(Acceptance and Commitment Therapy)の面白いところはRFT(Relational Frame Theory)の考え方を臨床に持ち込んだ点にではなく、オペラントであるタクトも、レスポンデントである否定的感情も、本人の“意志”ではどうしようもない、強化随伴性によるものであること。そして、そこから、だから無理矢理に気持ちを変えようとはせずに、それでもそうした状況を少しずつ変えていくという臨床のテクニックとして技法化した点にあると私は考える。いずれにしても、行動分析学からこのように解釈するなら、“自尊感情”は環境によって(本人が取り組むさまざまな課題とその達成の如何、回りの人の評価、本人の評価)、変容可能性のあるものと捉えられる。

本シリーズの過去記事一覧:

名言〔第27位〕:「組織は戦略に従う」

解釈:組織の構造は組織の機能が効率よく果たせるように変形できるように設計すべきである。いわゆる「べき論」や流行で組織の構造をつくっていくと失敗することが多い(たとえば「組織はフラットであるべき」とか「ピラミッド型であるべき」などの固定的な組織観にもとづいた組織改革は弊害をもらたすことがある)。こうした設計は、組織レベルの強化随伴性が、組織の内部にも整合するように組織をつくることで実現できる。組織レベルの強化随伴性というのは、組織が生みだす商品やサービスの受け手(顧客や他会社、地域社会や株主など)が、そうした商品やサービスを生みだす活動をどのように強化するかということであり、これがすなわち組織の目的や機能の分析となる。組織内の構造的な仕組み(部署の構造や役割分担など)は、この強化を最大化し、弱化(たとえば、顧客の信頼を失うリスク行動など)を最小化するように、課題分析、職務分析をした上で、強化随伴性を設定するのに適した構造を考え、さらに成果によって継続的に修正していくべき事柄である。そのような仕組みができれば、組織の構造は自然と、組織の目的にそった戦略に柔軟性をもって従うようになるのだ。

本シリーズの過去記事一覧:

第28位:「利益とは目的ではなく条件

第29位:「理論は現実に従う

第30位:「総体は部分の集合とは異なる

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 明日は第二の故郷でお仕事です。青年会議所のメンバーからいただいた数々の「素朴な疑問」に行動分析学から回答するという、ちょっと変わった形式の講演会。

 講演するわけじゃないから、正確には公開討論会かなぁ。さんま御殿形式でやりましょうってことになってます(笑)。


 一般の方も参加できるようです。興味のある方はここからどうぞ。

 日時 : 2月5日(土)19:00

 会場 : ホテルサンシャイン徳島アネックス

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 卒論発表会が終わりました。

 いやぁ〜、ほんと、うちの大学の卒論はハイレベルだなぁ。隣の芝生が青くみえることはよくあるけど、卒論に関しては、自分のうちの芝生が青々と輝いて見えました。

 越智先生も書いてるように

犯罪心理学な(?)日々人間をめぐるいろんな心理現象 ....  一見測定が難しそうなものであっても、それを測定するための方法をなんとか考えて、何とか実験に乗せて、仮説通りかどうかはともかくとして結果をちゃんと数値でしめしている

 という法政心理らしさがよく現われていたと思う。それぞれ自分の興味を探求して、苦労しながらも、イッチョマエ以上の論文・発表にまとめあげてきたことがよくわかりました。

 2教室同時進行で二日間、1件15分の発表を全部で30件以上みたわけだけど、飽きるってことがなかった。質疑応答の時間が限られているのが惜しい。ほんとなら、もっと色々討論したい、つまりそれだけ今後の展開が考えられる研究が多かった。Twitterでつぶやこうかなとも思ってたけど、その隙さえない緻密な時間だったよ。

 ゼミの打上げ(4年生を送る会)では飲み過ぎました。翌日は久々の二日酔い。ぐへぐヘ状態で会議の一日を乗りきりました。

 うちのゼミの発表は下記の通り。みんなカッコ良かったぞぉ。自分の研究について、自分で考え、工夫し、調べて、まとめて、自分の言葉で語った、素晴らしい発表でした。

 お疲れさまでした!

○笑いの頻度に及ぼす他者による追従笑いの効果―お笑い番組共同視聴場面を用いて―
○顔文字のタクトにおけるオノマトペの分化強化―チャット内における新しい表現生成の要因の検討―
○プレゼンテーション用スライドの弁別訓練の効果―マトリックス訓練を用いて―
○アロマの香料と画像を使った匂いの条件付け―幻臭の仕組みを探る―
○企業名,企業理念,ロゴマークを用いた見本合わせ訓練 ―ロゴマークの有無が刺激等価性の成立に及ぼす影響―
○刺激等価性におけるブランド効果の検―見本合わせ訓練を使って―
○大学生におけるやりがいタクトの制御変数の探索 ―強化率のブロック内変化パターンによる比較―
○原産地情報が製品評価に与える影響とその改善策の探索的検討― 一対比較法を用いて ―
○商品名の読みやすさが商品種別の判断に及ぼす負の効果 ― 商品名, 商品画像, 商品種別間の刺激等価性成立過程の検討から ―

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日経新聞Web刊、有料会員は過去記事を検索できるのだが、月25件までが無料で、超過分は1件175円もかかる。

実はこれまでは自分が何件検索したのかが表示されず、怖くて検索できなかった。

それが今日お知らせが届いた。

有料会員のみなさまがその月に検索記事本文をどれだけお読みいただいているか、すぐ分かるようにしました。

操作は簡単。

ログイン後、電子版画面の右上にある「有料会員」ボタンをクリックしてください。小さな画面がポップアップ!これまでご利用いただいた件数がひとめで分かります。

う〜ん。クリックしないとみれないの? 検索窓の左側にデフォルトで表示してくれればいいのに。

ま、スモールステップな改善を評価すべきか。

おそらくサーバーへの負担が障壁なのだろうが(該当月の累積検索数をそのたびに計算するロジックなのでは)、プログラミングの工夫で乗り越えられのではないだろうか?

さらなる改善を望みます。

(1) Twitterやブログとのさらなる連携(web版からツイートできるリンクをはって欲しい)

(2) iPhone版であとでじっくり読みたい記事をマークする機能

などなど。

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