2007年8月アーカイブ

9月末日までこのブログの更新をお休みします。

4年越しの原稿執筆に専念するのと夏休み(← 両立しない行動 ^^;;)。

また会う日まで。

blogの更新

先週の更新回数は{2}回でした。

Octopusdiagramss2007

今年のサマースクールでは初級も中級も問題解決のためのABC分析に全力投球。タコ足ダイアグラム(仮称)を使って,問題行動の原因とそれぞれに一致した解決策をできるけたくさん考える演習をたっぷりやりました。

日和佐の構造化軍団のおかげで,構造化のアイディアもどんどことタコ足ABC分析。これは世界でもここだけのユニットと自画自賛(笑)。

こうやって演習中心の研修を組み,ユーザーテストも積み重ねていくといろんなことがわかってきます。サマースクール実施中には,会場の後ろの方にノートPCが用意され,スタッフが気がついた改善点をその場で書き込めるようになっています。今年はその数が初級73件,中級107件。これに参加者の皆さんにご記入頂いたアンケートの集計結果も加えて,来年度へ向けての準備が始まります。

今年よくわかったことの一つは,問題行動のABC分析は比較的わかりやすいけど,代替行動などの望ましい行動(適切行動とネーミングしようかどうか検討中)のABC分析は苦労する人が多いということ。

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猪子さん曰く「見えない行動」のABC分析。

望ましい行動は自発されていない(見えない)だから,それをまず考える段階でつまづく人がいます。それから,行動を考えてからも,いま見られていない行動なのに,なぜ強化や弱化などの随伴性が考えられるのかがピンとこない人がいます。これは昔,鳴教大のゼミでさんざんやってた,いわゆる「仮定法の思考」が必要になる場面です。

ヒントになるのは,その望ましい行動ができている他の子ども行動を観察して,どのような先行条件や結果があるのか考えること。また,同じ子どもさんでも,他の場面なら望ましい行動ができていることがあるので,その場面の随伴性をABC分析してみることも参考になります。

というような情報を含めた教材を来年度までに準備するのが目標になりそうです。

行動分析学界の大御所カタニア先生による招待講演では,スキナーが一時期考案していたという「オペラント貯蔵」という考え方を修正した《モデル》と,好子出現までの遅延時間による強化力の減衰勾配の違いによって生じる行動パターンによって,様々な行動現象,特にADHDをもった子どもにみられる多動や注意欠陥が説明できるのではないかという提案がなされた。

修正版オペラント貯蔵という《モデル》では,行動は好子が出現するたびに,その直前に自発されていた行動が“貯蔵”され,自発されるたびに“放出”されると考える。そして,行動から好子出現までの時間間隔が短ければ短いほどその行動は多く貯蔵され,長ければ長いほど少なく貯蔵されると考える(遅延時間による強化力の減衰勾配による重みづけ)。

非常に単純な《モデル》ではあるが,これを元にシミュレーションを組むと,いろいろな強化スケジュールにおける行動パターンをうまく予測できるということである(カタニア先生,シュミレーション結果をPC画面上の累積記録としてプレゼンしていただけど,もしかして現在の行動分析学会だと,累積記録の見方がわかる会員の割合ってそうそう高くないかもと少し不安になった)。

強化力の減衰勾配の形によって,高反応率が強化されたり,刺激性制御がうまく形成できなかったりすると考えられ,これがADHDの症状(前者が多動,後者が注意欠陥)と一致するというのがカタニア先生の主張。

感想。

修正版オペラント貯蔵については,単純なモデルで複雑なスケジュールパフォーマンスが再現できるという点は面白いと思う。でも,そういうモデルは他にもあるはずだし(ニューロネットとか),そういうモデルではもっと複雑なパフォーマンス(たとえばMTSとか)も予測できると聞く。

一昔前,情報処理的認知心理学でも,行動がうまく予測できさえすればどんな計算式でもいいのか,それとも最終的には生物学的なメカニズムと対照させるため,神経生理学的な知見とマッチしそうなモデルがいいのかという議論があった。それと同じで,複雑な行動の予測力と生物学的な妥当性という2つの基準を用いたときの,他のモデルとの性能比較を知りたくなった。

ADHDの症状についての再現性については若干の疑問が残った。このモデルだと,行動や好子の種類に関係なく,高反応率の自発や刺激性制御の成立しにくさが適用されなくてはならないけど(そういう説明はなかった),ADHDの子どもたちを観察していると,高反応率の行動にはかなり偏りがある。飛び跳ねたり,きょろきょろしたりする子どもは多いけど,たとえば自閉症をもった一部の子どものように,棚に並べてあるものをさわっていったり,おもちゃを並べたりという行動はあまり見られない。それに,確かに机に向かって書取りに長時間集中するのが苦手な子どもでも,ポケモンならいつまでも遊んでいたりする。

カタニア先生が引用していた基礎研究(即時の少量の好子 vs 遅延後の大量の好子の選択場面)でも,最初は遅延時間を同じにして(すると大量の好子を選択する),徐々に遅延時間を延ばしていくと遅延後の大量の好子を選べるようになることがあることがわかっている(セルフコントロールの確立)。その場合,強化力の減衰勾配の形がそのような手続きによって変わったと考えるだろうか。そしてそのような効果はその個体の他の行動や好子に関わる強化力の減衰勾配にどのような影響を与えると考えるのだろうか?

行動や好子の種類による差(があるのかないのか),強化力の減衰勾配の形は可変なのか,可変ならどのような手続きで変わるのか,などが,おそらく臨床場面で欲しい情報だと思う。

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先週の更新回数は{1}回でした。

基礎/応用の若手研究者によるシンポジウム。昨年は変動性に関して同様のシンポジウムが開かれた。今年のテーマは流暢性。応用研究や実践を基礎研究者が見直して提言するという流れであった。

基礎研究における「変化抵抗」に関する研究がレビューされ,反応率の予測にとって重要なのは反応率ではなく強化率であることや,低反応率の方が高反応率より高い変化抵抗を示すこともあることが示された。

方向性として,基礎と応用のこのような連携には大賛成で,実り多きものとなって欲しいと願う。ただ,残念ながら,シンポジウムで紹介されていた基礎研究における行動随伴性と,応用研究・実践における行動随伴性との間には埋めるべきギャップがあるように感じたので,ここに指摘しておきたい。

一つは,流暢性訓練の対象となる行動のほとんどは弁別オペラントであり,fluencyとはそもそも単なる高反応率ではなく,正高反応率であることだ。正反応と誤反応は別々の弁別オペラントである。制御変数が別であることも多い(高正反応率のみに強化随伴性をつけると,誤反応率も増加することがあるが,誤反応にペナルティをかけると減少する,など)。

だから,Precision Teaching ではStandard Cerelation Chartに正反応率と誤反応率を,それぞれ別々にプロットすることが多い(ちなみに「正反応率」とすると,機会あたりの正反応確率と混同しがちなので,私は「正反応スピード」と言うこともある)。

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先週の更新回数は{2}回でした。

サマースクール初級コースが無事終了しました。参加者の皆さま,スタッフの方々,おつかれさまでした。

日本行動分析学会の年次大会をはさんで,来週は中級コースです。息つく暇もない状態かもしれませんが,頑張っていきましょう。

下の図はサマースクール事前学習のためのwebサイトへのアクセス件数のグラフです。コースをオープンした6月初旬からのべ16,448件のアクセスがありました。サマースクールの受付開始時と本番前にアクセスが集中するのは毎度のことですが,それにしても莫大な学習量です。参加者の皆さんの熱心さにはいつも感動します。

2007

今回は同じような図をもう一つ。これはサマースクールを運営しているスタッフの先生方が使っている掲示板や資料へのアクセス数です。同じ期間にのべ9,758件のアクセスがありました。

2007_2

サマースクールの教材は年々改善されています。特に今年度はスタッフの先生方がインストラクショナルデザインの考え方を実践しています。つまり,本番前にユーザーテストを何回か実施し,教材のわかりやすさ,わかりにくさなどを評価,測定し,そうしたデータを元に改善してから本番に挑んでいます。

9,758件のアクセスのほとんどは,そうしたユーザーテストと教材改善に関する情報交換です。なにしろ複数の学校の先生方がスタッフとして参加していますので,一同が同じ時間,同じ場所に会して作業を進めるのはほとんど不可能に近く,このようなネットを活用したコミュニケーションが欠かせないのです。

2003年に第1回のサマースクールを開催したときには,教材のほとんどは私が用意し,講義のほとんどを私が担当しました。それが今では,遠くから見守っているだけで,私一人でやる仕事量や質の十数倍以上のペースで仕事が進んでいきます。

自主自立型研修改善システムが動き出した年と言えると思います。

次は維持ですね。

あまりに仕事量が多いと,それこそ息切れしてしまうと思うので,長期的にこのような活動が維持できるバランスを探していくことが重要になりそうです。

なにはともあれ,来週は私も徳島入りします。リニューアルされた中級コース,楽しみです。

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