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「心の理論」はいらない

Okudaskypezemi20070126

奥田健次先生 (桜花学園大学)に「心の理論」に関する特別講義をお願いしました。

すでに授業期間が終了していたにも関わらず、学内からも、学外からもたくさんの学生さん、院生さん、教員さん、保護者の皆さまが参加してくれました(参加者数およそ80名)。

特別講義の直前までは前任校のゼミ生たちのスカイプゼミにも付き合っていただき、いつもながらの人使いの荒さにもめげず、ありがとうございました(特別講義のときは写真撮影をまたまた失念)。

自閉症をもった人ともっていない人を見分けるスクリーニングための「心の理論」のようにとかくとられがちですが、奥田先生のお話からは、何が弁別刺激になっているかが異なるだけであって、確かに自閉症児特有の行動特性はあるけれど、いわゆる“健常”の人たちには絶対に見られないかというとそんなことはないのでは?と思いました。試しに、翌日、この講義を聞きに来ていなかった大学生に、視線を追わせて「どこみてる?」と質問する課題をやらせたら、奥田先生の実験に参加した自閉症児とまったく同じ反応パターンをしたので面白かったです。

もちろん、ちょっとしたトリックあって、質問形態をあえて「どっち?」じゃなくて「どこを?」にしてみたんですけどね。

奥田先生からいただいた引用文献リストをアップしておきます。興味がある人はぜひどうぞ。

奥田健次.「心の理論」:発達と認知のセレナーデの行動分析.法政大学特別講義(2007年1月26日).

【文献リスト】

Baron-Cohen, S.(1989a). The autistic child's theory of mind: A case of specific developmental delay. Journal of Child Psychology and Psychiatry, 30, 285-297.

Baron-Cohen, S.(1989b). Are autistic children “Behaviorists”? : an examination of their mental-physical and appearance-reality distinctions. Journal of Autism and Developmental Disorders, 19, 579-600.

Baron-Cohen, S(1995). Mindblindness: An essay on autism and theory  of mind. Cambridge, MA: The MIT Press. 長野敬・長畑正道・今野義孝(訳)(1997). 自閉症とマインド・ブラインドネス. 青土社.

Baron-Cohen, S., Leslie, A. M., & Frith, U.(1985). Does the autistic child have a “theory of mind”? Cognition, 21, 37-46.

Hadwin, J. A., Baron-Cohen, S., Howlin, P., & Hill, K.(1996). Can we teach children with autism to understand emotion, belief or pretence?  Development and Psychopathology, 8, 345-365.

Hadwin, J. A., Baron-Cohen, S., Howlin, P., & Hill, K.(1997). Does teaching theory of mind have an effect on the ability to develop conversation in children with autism? Journal of Autism and       Developmental Disorders, 27, 519-537.

井上雅彦・村川佳子・奥田健次(2000)自閉症児における心的動詞の確実性に基づく理解と表出(2).日本行動分析学会第18回年次大会発表論文集, 120-121.

村川佳子・奥田健次・井上雅彦・成田滋(2000)自閉症児における心的動詞の確実性に基づく理解(1).日本特殊教育学会第38回大会発表論文集, 559.

奥田健次(2001) 認知発達と言語行動:「心の理論」研究から. 日本行動分析学会(編), 浅野俊夫・山本淳一(編), ことばと行動:言語の基礎から臨床まで(pp. 189-210). ブレーン出版.

奥田健次(2003)通常学級における自閉症児に対する挙手行動の指導プログラム.日本行動分析学会第21回年次大会発表論文集, 67.

奥田健次(2004)「心の理論」、なにができるのか.吉備国際大学臨床心理相談研究所紀要, 1, 17-23.

Okuda, K.(2005)Assessment of “Eye Gaze” Discrimination Skills in Children with Autism. Association for Behavior Analysis (May 30th, 2005).

奥田健次・井上雅彦(1999)自閉症児における対人関係の改善と遊びの変化 −フリー・オペラント技法を適用した事例の検討−.特殊教育学研究,37,   69-79.

奥田健次・井上雅彦(2000) 自閉症児への「心の理論」指導研究に関する行動分析学的検討−誤信課題の刺激性制御と般化−. 心理学評論, 43, 427-442.

奥田健次・井上雅彦(2002) 自閉症児における自己/他者知識に関する状況弁別の獲得と般化. 発達心理学研究, 13(1), 51-62.

Okuda, K., and Inoue, M.(2003)Behavior Analysis of Teaching "Theory of Mind" to Children with Autism. Association for Behavior Analysis 29th Annual Convention, 177.

奥田健次・井上雅彦・山口俊郎(2000)自閉症児における視点取得課題に関する検討−空間的視点取得と認知的視点取得のパフォーマンスについて−.教育実践学研究, 2, 21-31.

奥田健次・井上雅彦・山本淳一(1999)発達障害児における文章理解の指導 —情緒状態の「原因」を推論する行動の獲得—.行動療法研究, 25, 7-22.

奥田健次・村川佳子・井上雅彦(2000)自閉症児における心的動詞の確実性に基づく理解と表出(1).日本行動分析学会第18回年次大会発表論文集, 118-119.

奥田健次・村川佳子・井上雅彦・成田滋(2000)自閉症児における心的動詞の確実性に基づく理解(2).日本特殊教育学会第38回大会発表論文集, 560.

Premack, D., & Woodruff, G.(1978). Does the chimpanzee have a theory of mind? . The Behavioral and Brain Sciences, 1, 515-526.

Spradlin, J. E., & Brady, N. C.(1999). Early childhood autism and stimulus control. In P. M. Ghezzi, W. L. Williams & J. E. Carr (Eds.), Autism: Behavior-Analytic Perspectives (pp. 49-65). Reno, NV:    Context Press.

Swettenham, J.(1996). Can children with autism be taught to understand false belief using computers? Journal of Child Psychology and Psychiatry, 37, 157-165.

Wimmer, H., & Perner, J. (1983). Beliefs about beliefs: Representation and constraining function of wrong beliefs in young children's understanding of deception. Cognition, 13, 103-128.

コメント(2)

島宗先生

先日のセレナーデ、こちらこそありがとうございました。遅い時間にもかかわらず、色んな方にお越しいただき、盛り上がったのが何よりです。あんな「心の理論」のテーマでも、やりようによっては盛り上がりますね。

大学生を対象に試してみられたんですね。興味深い結果です。私がやったように、文脈を強調されましたか? 私がやったのは、2つの物品をしつこく命名を繰り返させて、「何をみてる?」です。

「どこを?」だと同じ現象ってのが興味深いですね。疑問詞応答を苦手としている段階の自閉症幼児たちは、そこでつまずいていた可能性も考えられます。

夜の懇親会も楽しかったです。私の好みをアセスメントしていて下さって、なんと「心の理論」に満ちた方々なんでしょう!(ただし、私がタクラーという部分は伝わっていなかったようですけど)。あの距離、あの雨なら絶対タクシーですよお。法政大学の院生、学部生のみなさん、また学会でお会いしましょう。

それと、鳴門のスカイプゼミも初体験させてもらいました。自分、写真のように宇宙の旅をしている猿のようでした(笑)。徳島の先生方も、また再会を楽しみにしています。

奥田健次

> 2つの物品をしつこく命名を繰り返させて、「何をみてる?」です。

そうそう、これもやってみたんですよ。ところが、できない。「どこをみてる?」を「どっちをみてる?」に変えて、「な〜んだ」と正解するようになりました。

S+とSdの違いというか、教え手と学び手のギャップというか、この意味では確かに「異文化コミュニケ−ション」にたとえるのも間違ってはいないかもしれませんね。

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