2004年6月アーカイブ

見えるものと見えざるもの無論、結果が最優先される勝負の世界だから、こうした「勘」などには頼れないという現実もうなずけるのだが、こうした「勘」がぴったりあてはまったり、外れたりすることが、運動の世界を限りなく深遠かつ開示している理由でもある。こうした「勘」を働かせることで、子どもたちの運動が一気に血の気を持ったもの、「いきいき」とした子供特有の「とんぼとり、今日はどこまでいったやら」のような終わりのないものとして、運動が拡大しだす・・・。

『勘』というと非科学的にも聞こえるが、もちろん、他の行動と同じように科学の対象になる。
行動分析学では intuitive control と言ったりするが、要は、どうしてそれが分かるのか分からないのに分かってしまうということだ。

少し前の日経新聞に、スポーツの練習には同じ動きを反復するより不規則な動きをした方が効果的なことが明らかにされたというような記事がのっていた。元論文はたぶんこれ。 たとえば「サッカーのゴールキーパーが球を補足する練習を右方向、左方向と分けて練習するより、不規則に練習したほうがよいことになる」そうである。

あたりまえのことのようだが、おそらく、これまで、統制された実験の結果として明らかにされたことがなかったということだろう。

ゴールキーパーが「球を補足する」という行動がうまく遂行されるためには、飛んできたボールをキャッチするという運動の前に、シュートを蹴る選手の体の動き、脚の角度、視線、ボールとの位置関係など、さまざまな刺激を観察する行動が自発されなくてはならない。

いつも同じ方向から同じ方向に跳んでくるボールをキャッチする練習では、補足行動は身に付いても、その前の段階の観察行動は身に付きにくい。観察行動と結果に随伴関係がないからだ。

シュートをランダムに蹴ることによって、ゴールキーパーの観察行動は意味を持つことになる(しっかり観察すれば、より高い確率でキャッチできるようになる)。したがってトレーニングも進むはずである。

上田先生がvon Dionysos bis Physis, und...で指摘していることで面白いのは、こうした、観察行動(予測行動)が強化されるような環境で、子どもたちが(たぶん、大人でも)「いきいき」としてくるところだと思う。

同じことはスポーツ以外でも言えるのではないだろうか? 結果が同じような問いかけや問題は「いきいき」させるような緊張感を生まない。「次はなんだろう?」「あれかな」「これかな」みたいな問いかけで、予測行動を引き出し、強化するような学習環境が、子どもに学ぶことの楽しさを教えるのかもしれない。

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サマースクールで使う教材ビデオを作成するために、先の日曜、附属養護学校でロケを行った。

この日のために、徳島のこどもミュージカルWITHの公演を見に行き、子役さんをスカウト。ゼミ生さんたちの協力のもとシナリオを書いて、撮影にのぞんだ。

子役さんたちには、自閉症のことを理解してもらうため、ちょうど放映されていた『光とともに』(日テレ)を観てもらった。自分はまとめて観ようと週間予約しておいたんだけど、野球中継の延長で半分くらいしか観られなかった(涙)。

本番では、カメラを持つ手も震えんばかり(?)の演技力に圧倒。さすがでした。
先生役および助監督として協力していただいた附属養護の先生方もなかなかの演技力。
仕上がりが楽しみです。

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国際行動分析学会の最終日に、ボストン郊外にある自閉症児のための学校 The New England Center for Childrenの見学ツアーに参加した。

 この学校は設立してから30年近い“老舗”の学校。設立以来、シドマン博士など、行動分析学の研究者との連携で、科学的な研究成果に基づいたカリキュラムを提供して、高い教育サービスを提供してきている(米国だけでなく、世界中から入学希望者が訪れるそうだ)。

 見学ツアーは1時間半くらいで、少しだけど授業も観察できた。教室内はフツーに構造化されているし(パーティションはもちろん段ボールじゃなくてきれいな既製品)、児童・生徒と教師の比率は1:1以上。IEPから指導目標とする標的行動を決めて、そのほとんどが日々、記録されている。教師は行動分析学関係の修士課程を修了しているか、あるいは近隣の大学で取得中だそうだ。教師の専門性育成、研修システムに対し、国から表彰を受けたこともあるそうだ(私立の学校でそのような表彰を受けたのはこの学校が初めてらしい)。

 とにかく、カリキュラムや指導方法が素晴らしいということよりも、あまりに潤沢な財政的環境に圧倒された。詳しくは徳島ABA研究会で報告しようと思うので、そのときの資料をいずれコラボネットにアップしよう。

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シアトルの教材開発会社HeadSproutが行動分析学に基づいて開発した Early Reading Program は、週に1回、 20分のレッスンを40ユニットこなすだけで、小学校高学年レベルの物語を読みこなせるようになるというweb教材だ(アメリカは今でも識字率が低い国の一つで、この会社は識字率を上げることにコミットしている)。

 緻密なインストラクショナルデザインとデータによる改善を繰り返して開発されたこのプログラムは、教育省が実施する大規模な評価プロジェクトにも選ばれて、今、まさにフィールドテストの真っ最中である。

 今回は、ニューヨークのPS106という公立小学校でのレッスンを見学することができた。HeadSproutの教材をテストするということで、なんとAppleから64台のeMacとXServerが寄付された。幼稚園(K)と小学校1年生のクラスをそれぞれ実験群(Early Reading Programを使う児童)と統制群(これまで通りの指導をする児童)にランダムに分け、事前・事後に標準化されたテスト(Iowa Standard Testなど3種類+NY市が使っているテスト)を実施して、プログラムの効果を検証しようとしている。

 子どもたちがeMacの前に座ってヘッドセットをつけ、それぞれのペースでweb教材に取り組む姿は圧巻だった(残念ながら、写真撮影は許可をとるのがめんどうなのでナシ)。

 HeadSproutのこの評価プロジェクトに関しては、後でもっと詳細なレポートを書くつもりだ。

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今年のABA(国際行動分析学会)ではシンポジウムの司会(Chair)と指定討論(Discussant)を務めた。どちらも初めての経験だった。

 司会の方は、当日よりもそれまでのマネジメント(企画を打ち立て、発表者を募り、企画書を書いて申し込み、当日までに発表者の資料が指定討論者に届くようするなど)の方がたいへんだった。と、当日までは思っていたが、いざフタを開けてみると、発表者の一人が持参したパソコンがすぐにプロジェクターに映らなかったり、その間、フロアーの友人から「何かジョークを言って間をもたせろ」とつっこまれ、即興でジョークを言うなど、けっこうたいへんだった(楽しかったけど)。

 指定討論は、マサチューセッツ医科大学のリック・フレミングやBrowns Groupのベス・サルザーアザロフらが中心になって開発している、応用行動分析をベースに自閉症教育を教える遠隔教育プログラムのシンポジウムを頼まれた。発表の前日、ホテルに着いてから最後の資料が届き、それから準備をして臨んだのだが、用意した原稿を読むつもりが、発表者とのやり取り中心の会話型で進んだ。

国際学会での司会や指定討論の役割は、いかに場を和ませ、発表者を引き立たせ、その上で、聴衆も納得するような鋭いコメントをいくつか投げ込むことだと思う。コメントの鋭さはさておき、笑いはとれたから、自己評価は80点。

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