2004年3月アーカイブ

英語で「buzzword」とは「実業家・政治家・学者などの使うもったいぶった言葉」(研究社「新英和辞典」)のことだが、最近ブームの「コーチング」は、まさに「buzzword」にあたる。

もともとは主にスポーツの指導を意味していた「コーチング」を、「エンパワメント」とか「ワークアウト」とか「ファシリテーション」など、それっぽいカタカナ用語で武装して、企業におけるリーダーシップ研修としてまとめ上げたものが多い。日本では、欧米のコンサルタントたちがトレーニングプログラムとして開発したものを、輸入したり、フランチャイズしたりしている人が多いのではないだろうか。最近ではそれがさらに派生して「親子関係のコーチング」なるものまで見受けられる。

「コーチングって行動分析学と関係あるんですか?」といった質問を受けることがあるのだが、それは「コーチング」が何を意味しているかによる。

「中学校で運動部の指導をしているのですが、コーチングに行動分析学が活用できますか?」という質問なら、答えはYesである。スポーツ行動分析学という領域があって、研究・実践がなされている。日本語ですぐ読める図書としては、『コーチング−人を育てる心理学』武田建著(誠信書房)がお勧めである。

「いま流行っている“コーチング”って、行動分析学の原理を使っているんですか?」という質問なら、答えはYes/Noだ。そういうふうにプログラムされている研修もあれば、そうでないのもありそうだ。また、行動分析学的なプログラムでも、開発者やトレーナーがそれを自覚しているかどうかは、また別のことである。

『コーチングの技術』は、アメリカやイギリスでコーチングを勉強し、日本でコンサルテーションをしている著者による、とても分かりやすいガイドブックだ。コーチングの技術がとても具体的な行動としてリストアップされている。

実は私も、米国の、行動分析学をベースにしたとあるコンサルティング会社で、3日間にわたるファシリテータートレーニングを受講したことがある。そのときの内容とほぼ同じ標的行動を含んでいる。元になっているプログラムが同じなのかもしれない。

それだけではない。『コーチングの技術』では、『うまくやるための強化の原理』カレン・プライア(二瓶社)が引用されており、「好子」という用語まで使われている。

行動分析学とコーチングの両方に興味を持つ人へお勧めの1冊である。

コーチングの技術―上司と部下の人間学コーチングの技術―上司と部下の人間学
菅原 裕子

講談社 2003-03
売り上げランキング : 4,083
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
菅平・峰の原スキー場でテレマークのコーチングを受けた。講師は「T.M.N.スキースクール」主宰の望月氏。かつて北欧で修行し、テレマーク競技の選手として活躍され、テレマークの教本やビデオにも登場する第一人者だ。幸運にも受講生が私一人だったので、個人レッスンの形をとり、細かなアドバイスやフィードバックをいただけた。

中でも面白かったのがビデオコーチング。望月先生がビデオ撮影しながら、同時にコメントを録音してくれる。レッスンが終わってから宿に持ち帰ってこれを見る。自分の滑りを友達に撮影してもらったことはあったけど、コーチからのコメントつきは初めての経験である。

ビデオコーチングを観る

スポーツのインストラクションで難しいのは、自分の体勢やフォームがどうなっているか、自分では分かりにくいところだ。今回のレッスンでは「両脚同時操作」がキーポイントだった。ターンで右足と左足のエッジと前後の位置を同時に変えることなのだが、滑っている真っ最中には、これができているのかできていないのか、自分でもよく分からない。それがビデオを見ながら、「惜しい」「はい。そうです!その調子」「後ろ足で踏ん張って」などのコメントを聞くことで、自分の体勢や動作がどのようになっていれば「○」で、どのようになっていると「×」なのか、実によく分かった。おそらく、ビデオを見ながら動作の視覚的な弁別学習が進み、その「イメージ」が次に滑ったときの行動制御に役立つのではないだろうか?

[ビデオコーチングを受ける前]

A:先行条件 B:行 動 C:結 果

「両脚を同時に操作して下さい」
(→どうすればよいか分からず、刺激性制御が不十分) 

両脚同時操作に必要な一連の行動

両脚同時操作でターンできる
(→うまくできているかどうか分からず、強化しない)

[ビデオコーチングを受けた後]

A:先行条件 B:行 動 C:結 果

「両脚を同時に操作して下さい」
+ うまくできているときのイメージ

両脚同時操作に必要な一連の行動

両脚同時操作でターンできる
(↑イメージと動作がマッチすることによって強化される)

臨床スキルのトレーニングにも応用可能かもしれない? 来年度ぜひ試行してみようと思う。

アーカイブ

法政心理ネット