さやか星小学校は長野県に開校予定の小学校です。
教育のあたりまえを見直し,変えていくと宣言し,ひとりひとりの子どもの個性を伸ばすことにコミットする,まったく新しい小学校が誕生します。学校の理念や奥田健次理事長の所信など,詳しくは動画やクラウドファンディングサイトの情報をご覧ください。
2018年にはやはり長野県の軽井沢に日本初のインクルーシブ幼稚園が生まれています。行動分析学を活用した教育を実践するサムエル幼稚園です。以前のブログ記事をご参照ください。その後も大きな成果を確実にあげてきています。
私はこれまでサムエル幼稚園における教育情報システムの構築などで微力ながらお手伝いをしてきました。今後はさやか星小学校も応援し,支援します。
さやか星小学校の開校準備と開校後の運営に,私は以下のプロジェクトを通してかかわります。
- 小学校における学習目標をすべて教えられる行動として定義します。学習指導要領を完全行動化することになります。
- 生活や遊び,コミュニケーション,暮らしや仕事など,教科以外の学習目標も同じようにすべで行動として定義します。
- 学習目標の構造を整理し,関連づけたデータベースを作ります。
- さやか星小学校ではすべての児童に個別の指導計画を作ることになっています。完全行動化した学習目標のデータベースを使って,先生方がひとりひとりの児童にあった指導計画を作成できるシステムを構築します。
- 行動分析学の知見と情報技術を組み合わせたこうしたシステムにより,たとえば教科間で学習目標を連携させて教えたり,子どもの得意を伸ばし,苦手を克服する授業や指導,教材などを先生方と一緒に次々と開発していけるようになります。
子どもたちを健やかに育てるためには,そこで働く教職員の皆さんがやりがいを持って,楽しく,心身ともに健康に働ける環境づくりも重要です。小学校開校後は教職員のためのポジティブな行動支援にも助力する所存です。
さやか星小学校で開発することになるこうした様々な仕組みやシステムは,できる限り他の学校でも使っていただけるようにする方針であることを奥田理事長から伺っています。
みなさまからのご支援が,さやか星小学校のみならず,日本の教育を変えていくことにつながるよう,精一杯,努めます。
クラウドファンディングの受付は11/7(月)から開始されます。千円から寄付できます。返礼品も用意されていますので,ぜひ一度,クラファンサイトをご覧ください。この情報を拡散していただくだけでも大きな貢献です。
クラウドファンディングサイト:「教育の「あたりまえ」に一石を投じ、多様な子どもたちが共生する新しい小学校をつくる」
よろしくお願いします。
新曜社の編集担当者さんにお願いして『WM(ワードマップ)応用行動分析学』の正誤表を作成していただきました。
PDFはここからダウンロードできます。
発見した間違いを読者カードやメール,授業のコメントなどでお知らせいただいた,すべての皆さまに感謝いたします。
学会企画シンポジウム 行動分析学は日本の大学でどのように教えられているか
企画・司会:中島 定彦(企画委員会; 関西学院大学)
話題提供:
吉野 智富美 (ABAサービス&コンサルティング)
山岸 直基 (流通経済大学)
島宗 理 (法政大学)
杉山 尚子 (星槎大学)
こちらも内容が盛り沢山でした。講義vs演習で議論を白熱させたら面白いのではと思っていましたが,講義中心(のようにみえたの)は山岸先生しかいなかったのでそれは難しかったかな。
でも大学の授業や色々な職種で提供されている研修も講義が中心だと思うし,演習というと,アイスブレーキングやロールプレイや隣の人と話すみたいな,形式的には演習だけどそれと学習目標がどう結びついているのかようわからない教え方も多いので,いかに行動分析学の行動を強化するというところに焦点を絞ってもよかったような気もします。行動分析学は行動分析学で教えようよ!というメッセージは届いたのではないかと思いますが,戦術論も展開できるとよかったですね。
今回は中島先生の人選方法が「教科書を使っている人」だったので,話題提供者は全員教科書を使って授業をしていたわけですが,これも世の中の大学の授業としては典型的ではなく,教科書を使わずに授業をしている人も多いわけで,なぜ教科書を使うのかについて議論しても良かったかもしれません。教科書を指定し,教科書を読んで予習する行動を自発させるのは,もちろん授業時間に演習を中心にするためには必要という事情もあるのですが,その他にも学習を自己ペースで進められるようにするという大きな利点があるわけです。講義を聞くスピードは調節できないし,聞き返すこともできないけど,読むスピードは読み手が自在に変えられるし,読み返すのもフリーオペラント。講義が動画として提供されるようになって,講義も自己ペースで学習できるようになったのはコロナ禍の功名ですね。あと,学生からは時々「授業で使わないのに教科書を買わされる」という苦情を聞きますが(たぶん今の時代ではレアケースだと思うけど),自分の場合(行動分析学の授業以外でも),全頁の8割以上を授業で使わないなら教科書指定はしないです。あ,これは蛇足です。
時勢的には対面/オンラインという二分法は意味ないよという議論をもっと明確にやってもよかったかもしれません。杉山先生はコメントされていましたね。学習行動に随伴性を設定するために何をどのように使うか(使えるか)を考えるのが教え手の仕事であって,それは対面でもオンラインでも同じで,対面授業でもwebクイズなどは使えるわけだし,オンラインだからといって学生同士で学習行動を強化し合うような随伴性を設定できないわけではないという点も,行動分析学<で>授業を教えることの特徴だと思います。
個人的にもっと議論したかったことの一つは教材や指導方法の評価方法やデータに基づいた授業改善です。何を測るか(クイズ/テスト,課題,アンケートなど),どのように集計し,評価するかについて話し合えればよかったかなと。うちの学科だと,他の先生は授業終わりに「リアクションペーパー」を書かせていることが多いようで,そしてこの方法は結構一般的になってきているようで,自分も他の学科の先生と共同で教える授業で使った(使わされた ^^)ことがありましたが,学びのデータとしても授業改善のための手がかりとしても役立ちませんでした。そういう話もできたらよかったかもしれません。
もう一つは学び手の個人差に関わる問題です。もしかしたら自分の状況に特異的な話かもしれません。授業で学習目標を課題分析し,標的行動として定義して,それに随伴性を設定すると「課題をする」がほぼ「学ぶ」とイコールになります。と同時に「してもできない」課題や学び手も明確になります。これは印象論でしかないのですが,読み書き計算やいわゆる"論理的思考"など,授業内では教えることが難しい下位行動レパートリーの個人差が年々大きくなってきているように感じています。いまのところこのことについては解が一つも見えてきていないので,他の先生方(壇上でもフロアでも)のご意見をお聞きしたかったです。
徹底的行動主義については,試験勉強的な知識として教えることと,徹底的行動主義的に物事を考えるられるように(考えるように)なることとは別物で,後者は随伴性形成の結果でしかないという杉山先生のご意見に私も賛成です。どのような行動の随伴形成が成立要件なのかは要検討課題だと思います。授業では時々「行動分析学家として考える」という演習をすることがあって,それは行動の原因を認知論的,あるいは精神論的に作文した文章を行動分析学的に翻訳する(たいていは複数の制御変数が推測できるから一対多の翻訳課題になる)わけですが,それができるようになったからといって,日常的にそう考えるようになるわけではないです。一方で,毎年1-2人は授業改善アンケートに「世界の見方が変わりました」と書いてくれる学生さんがいて,たぶんそういう行動変容(価値変容?)が生じているのではないかと希望的観測と伴に推察しています(この手の感想が一番嬉しいです)。行動分析学の用語や概念に関する言語行動を形成するより,誰かしらの(ヒトでもハトでも)行動を変容した体験の方が重要ではないかとは考えていますが,認定行動分析士(BCBA)として毎日のように行動変容の仕事をしていても根っからの?精神主義の人もいますから,決定要因ではないと思います。なお,主義は随伴性形成される行動という話は,いずれ機関誌に徹底的行動主義特集のコメント論文として掲載される予定です(原稿は2月に提出済みですから,たぶん次号かな)。
最後に。今後,このテーマで学会員の皆さまからの成功例や失敗例をニューズレターで募集していくそうなので(突如決まっていましたよね,素晴らしい展開!),そういう形でアイディアやコツやツールが共有されていくといいですね。
公募企画シンポジウム⑤ 行動記録と情報共有システムの利点と課題
企画・司会 奥田健次(学校法人西軽井沢学園)
話題提供 佐々木銀河(筑波大学)
話題提供 笹田夕美子(行動コーチングアカデミー)
話題提供 中谷啓太・井上雅彦(鳥取大学)
指定討論 島宗理(法政大学)
テーマとしてはとても広い範囲の話で時間が足らなかったです。後で奥田先生も感想を述べられていましたが,技術的な話は参加者の多くにとってはわかりにくかったですね。とはいえ,そういう仕事が必要とされる時代に突入してきているということではあるので,行動分析学 ∩ 情報技術 という,いまのところ人数が限られている,もしかしたらちょっとヲタクな集団でサーバーやIOTや画像認識なんかの話を徹底的に繰り広げる機会が別途あってもいいのかもしれません。参加者10人くらいだとしても(笑)。
指定討論としては,アプリ開発や外部からのコンサルサービスという視点で議論を展開しようとしていて,それはそれで狙い通りに進んだし,今後の展開も見えてきたと思いますが,それはそれでやっぱりちょっとテーマとしては広すぎたかもしれません。
もしかしたら,行動を記録する装置や方法,データを共有する手段として,現在可能な技術やアプリ,システム,そしれそれぞれの使い所や課題を一覧表にするみたいなところに着地点を作った方が,まとまりとしてはよかったかもしれないと後から考えました。
そこで,以下,こんな視点でもう一度まとめてみたらどうだろうと,シンポジウムが終わってから考えたことを羅列しておきます。
今回話題提供してくださった先生方の他にも日本の行動分析家で記録のシステムを開発しておられる先生方もおられます。そういう開発側の先生方と,それを導入する側の先生方が協力して,できればそれを仲介し,検証することをテーマに修論でも書く院生さんでもいれば,行動分析学的な消費者リサーチみたいな研究もできるのではないかと思います。現場にあるこういうニーズにはこういうアプリは使いにくいけど,こういうアプリは使いやすいとか,こういうニーズをみたすアプリやシステムがまだないなどの成果をまとめると,このあたりの研究や実践がぐぐっと進展しそうです。
記録装置:どういうときにどういう装置を使うと便利か,それはなぜか。
- 紙
- 紙+アプリでデータ化
- 最初からアプリ
- アプリ以外の記録装置(例:IOTスイッチなど)
- 自動(例:ICタグ検出や画像解析)
記録装置の選択に影響しそうな要因としては,
観察対象者(利用者や園児/児童/生徒):
- 同時には一人
- 同時に複数人
観察者/記録者(スタッフ/教員):
- 同時には一人
- 同時に複数人
観察時間帯:
- 観察者が決められる(せーので始めて,一定時間後に終了)
- 観察者が決められない(オープンな環境で一定時間中に)
*アプリは観察時間帯が決められていてその間起動しておけばよいときには使いやすいけど,そうではないときには起動という行動コストがかかるのが大きそうという印象があります。
観察場所:
- 観察者が決められる(机上,プレイルームなど)
- 観察者が決められない(観察対象者があちこち移動する)
記録方法:
- 生起/非生起や正誤で記録できる(1/0記録)。
- どのような行動が自発されたか,どのような条件で自発されたかを(も)記録する必要がある(付帯条件メモ記録)。
- 付帯条件をあらかじめコード化できる(付帯条件コード式記録)。
データの共有システムにもいくつかの方法があり,選択に影響する要因がありそうです。
共有形式:どういうときにどういう形式を用いると便利か,それはなぜか。
- ノート(紙)
- 表
- グラフ(折れ線)
- グラフ(その他?)
*目視分析の訓練をしなくても実践家にとって読み取りやすいグラフ形式が生み出せればブレークスルーになることでしょう。
共有媒体
- 印刷
- web
共有目的:
- 現状報告
- 説明責任
- 介入計画立案と評価
共有対象:
- 個人(共有しない)
- 職員間(組織内)
- 職員間+保護者,連携外部組織,外部専門家など
データの保管方法:
- 紙(ノート,絵巻?,バインダーなどなど)
- 特定個人のPCやHDD
- 共有HDD(NASなど)
- クラウド
指定討論では投資を回収できない動かないアプリの話をしましたが,そういうもったいない状況を回避するには,何のための記録で,誰とどのように共有して,どのように活用するのかを明確にしておき,まずはすでにあるものを使い(英語でいう"Don't reinvent the wheel"),新しいシステムは少しずつ導入し,改善を繰り返すことです。このあたりはシングルケースデザイン法の基本と同じなので,行動分析学との相性はいいはずです。いきなり参加者間多層ベースライン法で実験しないじゃないですか。まずはAB(CDE...)法で1-2人を対象に実験や実践をして,うまくいく介入をみつけてから,もっと多くの人を対象にその介入を使い,さらに改善を続けていきますよね。あれと同じです。
技術革新は進んでいますが,画像解析でどんな行動でも自動記録という将来はまだ先みたいです。しばらくはアナログとデジタルをうまく活用していくことが求められそうです。この分野を牽引していく「新世代」の活躍を期待しています。
『調査月報』2021年5月号(5月5日発行)に掲載された「行動分析学―効率的な時間の使い方―」の補足資料です。本文は日本政策金融公庫のサイトを参照してください。
「時間を効率的に使う」をテーマに行われたじぶん実験や私が関わった企業における事例から,よくある問題と解決策をまとめて示そう。
仕事が不明確
何を,どれだけ,どのように,いつまでにすべきかが決まっていないと,仕事に取り掛かる行動が自発されにくく,先延ばしされたり,逆に必要以上に時間をかけたりすることになる。
上司として部下に仕事を依頼するときに,期待する成果をこのように明示するだけで,仕事にかける時間とタイミングが最適化されやすくなる。島宗(2015)ではこれを「成果のコミュニケーション公式」と呼んでいる(p. 52)。指示をし直したり,仕事をやり直したり,個人攻撃の罠に陥って部下に延々と説教をするという無駄な時間も削減できるし,部下が仕事に取り組む行動を感謝や承認の声かけで強化しやすくなる。
部下として上司から仕事を依頼されたときに指示の内容が不明確であれば,期待する成果をこのように説明することを求めるとよい。自分で自分の仕事を決められるときにも同じである。
仕事のまとまりが大きすぎる
仕事が明確になると,仕事に取り組み,完了することがそれだけでも強化として作用するようになる。ただし完了までにかかる時間と手間が大きすぎると行動は持続されない。そこで大きな仕事は小さく分割する。経験則だが,30分から長くても1時間で終わるくらいの量を目安に分割すると行動は持続されやすくなる。上司として部下に仕事を依頼するときには,この点も配慮し,部下が自ら分割できそうなら任せ,分割できていなさそうなら分割の仕方を教えると良い。分割すれば仕事の途中経過を,やはり感謝や承認の声かけよって強化できるようになるし,そうした機会を増やせる。強化率は仕事のやりがいに直結するし,"集中"した状態もつくりやすくなる。
仕事のやり方や取り組む順序が不自由である
仕事は成果を定義し,やり方は担当者に任せる。やり方を指導するのは,期待した成果があがってこないときだけにする。取り組む順序も「いつまでに」が満たされている限り,担当者任せにする。期待した成果があがってきたときに,感謝し,承認することで,パート職員を対象とした事例からもわかるように,やり方は担当者が工夫するようになる。やり方や順序を強制すると,担当者が得意とする行動や工夫をする行動を強化する機会を逸してしまうし,不必要で無駄な工程も省かれない。反感も生じやすくなる。
仕事を思うように進められない
仕事を分割した上で,自分のペースで進められる作業と他者のペースに依存する作業に分け,ある時点で取り組み可能な作業一覧を常時保有しておくようにすると,上司や同僚,顧客待ちで仕事を先に進められないという事態を回避できる。昨今そのような余裕がある企業も少なくなっているが,自己研鑽のための学習課題も自分のペースで進められる作業として用意しておくと無駄な空き時間をつくらなくて済む。作業一覧には自分から進んで取り組みたいと思うものもあれば,そうではないものもあるだろう。後者を一つ完了させたら前者の一つに取り組めるというルールを決めると,これも強化になり,作業が進みやすくなることも知っていて損はないだろう。
同じような仕事なのにはかどらない
毎日何回もする作業と違い,数ヶ月や一年に一度しかしない作業は,慣れているつもりでも時間がかかったり,ミスが生じてやり直したりすることがある。そのような作業については一度時間をかけてマニュアルを作ると良い。自分用のマニュアルを同じ仕事をするたびに改訂していき,職場で共有すると,標的行動を支援する環境として機能するようになる。こうした行動支援システムとしてのマニュアル活用は無印良品の実践が参考になる(松井, 2013)。
引用文献
- 松井忠三 (2013). 無印良品は仕組みが9割―仕事はシンプルにやりなさい― 角川書店
- 島宗 理 (1999). 組織行動マネジメントの歴史と現状とこれからの課題 行動分析学研究, 14, 4-14. https://doi.org/10.24456/jjba.14.1_4
- 島宗 理 (2000). パフォーマンス・マネジメント--問題解決のための行動分析学-- 米田出版
- 島宗 理 (2014). 使える行動分析学--じぶん実験のすすめ-- 筑摩書房
- 島宗 理 (2015). リーダーのための行動分析学入門―部下を育てる! 強いチームをつくる! ― 日本実業出版社
- 島宗 理・若松克則 (2016). 会計事務所で働くパート従業員を対象とした参加型マネジメント 行動分析学研究, 31, 2-14. https://doi.org/10.24456/jjba.31.1_2
- 島宗 理 (2019). ワードマップ 応用行動分析学--ヒューマンサービスを改善する行動科学-- 新曜社
- Wilk, L. A., & Redmon, W. K. (1998). The Effects of feedback and goal setting on the productivity and satisfaction of university admissions staff. Journal of Organizational Behavior Management, 18, 45-68.
山本央子先生のWEBセミナーです。
案内の写真(左側)はおかげさまで理想的な家庭犬に育ったうちの子です。右側は昨年天命を全うされた山本先生の察子さん。この写真はたぶんもう8年くらい前のもので,うちの子ももうすぐ10歳。いまでは毛色が薄くなり(下),甲状腺ホルモンも必要になったり,豚の耳をかじらせると胃の調子を崩したりするようになりましたが,いまだにドッグランではボールを追って元気よく走り回ります。今日は家に工事の人がやってきましたが,最初少しくんくんしただけで,あとはずっと日だまりで昼寝していました。犬は元々吠える動物ではないということを山本先生の指導のもと,はるが教えてくれました。
WEBセミナーは好評ですぐに席が埋まってしまうそうですが,これから犬を飼うことを考えている人はぜひ参加してみてはいかがでしょうか。案内は以下からダウンロードできます。
徳島県の教育実践研究報告会,コロナ禍の今年度は,なんと3日間のオンライン(Zoom)開催です。
第一部は1/25(月),第二部は2/18(木),第三部は3/4(木)で,行動分析家だけでも,奥田健次先生,庭山和貴先生,大久保賢一先生,野田航先生,大対香奈子先生,田中善大先生と,年次大会のシンポジウム3つぶんくらいのコンテンツです。
さらに,今年度県内で行われた実践については現場の先生方からのレポートが期間限定で公開されるそうです。
参加には事前申込みが必要です。下記の申込書をダウンロードしてお使いください。
私も視聴する予定です(オンライン開催はここが便利ですね)。
注記:以前配布していた案内に誤った連絡先が掲載されていたそうです。差し替えておきました。正しくは
- Psychopy3は最新版を。単純な実験でローカルではまったく問題ないのにサーバーにあげてwebブラウザーで動かそうとしても動かない問題。妙だと思ったら,ローカルのPsychopyが3.XX.XXと一世代前のものでした。Mac用Standalone最新版は現時点(2020/05/09)で2020.1.3ですが,これさえも数週間前は2020.1.2でした。自分がこけた理由はPsychopyの更新通知を信じていたことです。メインメニューに Tools > Psychopy Updates...があるのですが,手動で試すとproxyエラー。確かに設定画面にproxy入力欄があるけど,何を入力すればよいかわかりません。更新のメール配信を受け取るか,何かあったら最新版がでていないかどうかまず確認した方が無難そうです。
- 1に関連する話。バージョンが2020.XX.XXになってから,pythonで書いたコードを自動的にjavascriptに変換してくれるようになりました。これまではネット検索しながら,自分で変換してたのですが,その必要がなくなった,とここまではいいのですが,この自動変換では動かないこともあるのです。そして,そうなるとやはり手動でjavascriptを書かないとならず,でも手動で書いたあとに自動モードにすると手動で書いたコードが上書きされてしまうなど,とても慎重に作業を進める必要があります。デバッグは夜遅く,疲れたときにするものではないとつくづく思い知らされました。
- 2に関連する話。うまくいかなかったところの一つがpython用の外部ライブラリ(math)を使っていたことです。まったく同等のライブラリがjavascript側にあるわけではないので,そこは手動で書き直しました。
- そしてそもそも欲張って失敗こいたのが,スマホやタブレットに対応しようとしたことです。新入生には自宅にPCない学生もいるだろうという想定で用意したのですが,結局,そういう学生はいなかった(新入生,すげ〜)。そしてwebサイト開発者泣かせが,OS,ブラウザー,ブラウザーのバージョン違いであることをすっかり忘れて,素人が無理しようとしたのが過ちでした。Psychopy3には画面の座標指定にいくつかの方法があって,自分はheight(画面中央が0,0で縦が-.5から+.5,横がモニターの解像度によって変わる設定)を使っていたのですが,やはりそれですべての環境に対応することは難しいらしく(当然だよね〜),何回やってもローカルで設定した画面とテスト環境(iPhone, iPadなどなど)が揃いません。そかも,そのズレに法則性をみつけることができません(できてたらアプリが補正するよね)。結局,ちょっと変な見え方しても気にしないでねと学生さんに了解してもらい,うまく刺激が提示されない人用にはYouTube動画で刺激だけ提示して記録は手元で印刷した記録用紙にしてもらい,あとでGoogleフォームに入力してもらうという荒業を使うことにしました。
- なんか悪いことばかりのようですが,以前使っていたPsychopy2に比べると,Psychopy3も2020.1.2もローカルではめちゃくちゃ安定しています。実験室で実験ができる状況であれば,お勧めのアプリであることに間違いなしです。
- さて,Psychopy3ではビルダーが生成するpythonのコードをjavascriptに変換してくれるわけですが,このときに使われているのがpsychojsライブラリです。そして,これをPavloviaというGitを使ってソース管理でき,実験を配信するサーバーにあげることで,参加者が各自webブラウザーから実験に参加できるようになるわけです。このあたりの仕組みも当初さっぱりわからず,苦労しました。特に,PavloviaとPavlovia用のGitHubが別サーバーでそれぞれ別にアカウントが必要なことがわからず右往左往しました。簡単にいうと,Pavloviaでは実験に使うクレジット(参加者が1回実験に参加するたびに課金される従量制)を購入したり,それを各実験に割り当てたりするサイトです。GitHubはソフトウエアやアプリ開発をするためのクラウドで,ここにソースコードや刺激ファイル,データファイルが蓄積されていきます。他の開発者のコードをシェアすることもできます。ソフトウエア開発界隈ではいまや常識的なことみたいですが,自分のような新参者にはpushだのpullだの未だに未開地です。
- ローカルのPsychopy3で作成したコードをGitHubのコードと同期させることになりますが,ここでもいくつかつまづきがありました。自分はMacのローカルHDDに,実験1つにつきPsychopy用のフォルダーを一つずつ作成しています。でも,上に書いたように,スマホやタブレットにも対応しようとしていたので,キーボードで反応をとるバージョンとマウスで反応をとるバージョンの2つのメインプログラムを同じフォルダーに名前をかえて保存していました。これをGitHubと同期させてPavloviaで(サーバー経由,webブラウザーで)テストすると,いくらローカルで修正してもそれが反映されないという妙な現象が起こります。わかったのは,実験ごとに一つのindex.htmlファイルがつくられ,そこからは一つの実験のスクリプトしか呼べないので,もう一方のスクリプトを変えても修正が反映されないということです。つまり,ローカルもGitHubも一つのフォルダーには一つの実験プログラムしか保存してはいけませんよということです。
- そんでもって,ではキーボード,マウス,2つのバージョンを別々のフォルダーに保存しようってことになりますね。なので,ローカルでフォルダーをコピーし,各々から余計なファイルを削除し,GitHubにも新しいフォルダーを作り,同期させます。これでうまくいくと思うじゃないですか。だめなんだな,これが。丸一日時間を浪費しました。最終的にPsychopyのコミュニティ掲示板で質問したら,親切な人が教えてくれました。ローカルフォルダーとGitHubを同期させると,ローカルフォルダーにGitHubの情報が自動的に書き込まれる。ただ,それは不可視ファイルになっているのでみえない。そいつらを削除してから同期しないと正常に同期できないっすよ〜 だそうです。ありがたや。速攻で問題解決。やっぱこういう問題は人に聞いた方が早いですね。Psychopyのコミュニティ掲示板はけっこう活発で,開発者のJon Peirce先生が回答してくれることもあります。ざざっと見ていると「なんだ,こんなことも質問しちゃうの?」みたいな書き込みもあります。でも日本の掲示板のように「ザコは来るな」とか「過去ログ読め」みたいなキツい人はいないようです。あ,日本の掲示板うんうんはあくまで個人の印象です。
- 上述のようにローカルのpsychopyビルダーはpythonのコードを書き出してくれ,Pavlovia用にはそれをjsのコードににしてくれるわけですが,必ずしも1対1対応ではなく,そもそも挙動が違うところもあります。自分がはまったのは,ルーチンを終了するコード。pythonなら break, jsだとcontinueRoutine = False;にするのですが,breakは end routineのタブに書けば処理されるのに,jsでは無視されてしまいます。ループの判定タイミングが違うみたいで,上述の掲示板では jsの場合,each frameのタブに書いてねと教わりました。
- javascriptはり勉強したことがないので,そのせいかもしれませんが,なんにせよデバッグが大変という印象です。PyCharmとかVSCなどでコーディングしながらデバックできるわけではなくて,ローカルのpsychopyでコードをいじり,GitHubと同期して,ブラウザーで実行しながらブラウザーのモニターでエラーコードをみていかないとなりません。手間で時間がかります。かつ,スクリプトは自分で組んだわけではなく,Psychopyが自動的に生成したものですので,ソースを追うのも一苦労です。そして,なんといってもpsychojsのライブラリ仕様がわかっていないとデバッグにも限界があります。時間をかけて,javascriptも,psychojsも勉強しようと覚悟しない限り,触らぬ神に祟りなしだと感じました。
- なので,目指すは,とにかくローカルのpsychopyでいかにコードをかかずに走るようにするかです。そうすれば,画面レイアウトの不自由さはあるにせよ,なんとかweb実験できるようになります。の,はずなのですが... 比較的単純な(でも刺激数が多い。そのせいかも),コードコンポーネントのない実験もうまく動作せず,謎のjsエラーがでてしまって解決せず,時間もないのでお蔵入りさせた幻の実験4もできてしまいました。今はとにかくコロナ対応で余裕がないのでペンディングし,時間ができたら再挑戦しようと思っています。
- psychopy3にはデモプログラムがたくさんついてきて,そのなかのいくつかがPavloviaにもあがっています。自分は日本語の教示をつけたり,刺激に漢字を使ったり,マウス入力をさせたかったりと欲張ったせで時間をかけてしまいましたが,そういうこだわりを捨てれば,すでに利用可能な実験を使わせてもらうのが手軽さとしては一番だと思います。
以上,めちゃくちゃ勘違いしているところもおそらく多々あり,恥の上塗りになる可能性もありますが,同じところでつまづいて時間浪費してしまう人もいるかもしれないので公開しました。
参考までに。
- 講義科目,実習科目は非同期型にして(たぶん)正解。講義動画の再生数は受講生数の120-150%くらい。途中で再生やめたり,あとから見直している学生が相当数いるということ。これは対面授業では実現できない長所。2月にYouTubeで実施した大学院発表会では,自分もほぼ1.7倍で再生し,説明がわからないところだけリピート再生していた。学生個人のペースで講義を聴けて,つまらなければ早送りすることだってできる。
- 1に関連して。リアルな講義だと「もっとゆっくり話してください」と言われることが多いので気を使って話をしているのだが,受講生が再生速度を変えられるのだから,講義動画では遠慮なく早口(自分としては普通の速度)で話していて気持ちがいい。でも,いまこれ書いてて気づいたが,知らない学生もいるかもしれないから再生速度を変える方法は教示しよう。
- 講義はスライド+自分(左下に小さく)の動画と,音声だけの配信の両方を提供しているのだが,学生からのアクセスはほとんど動画。スライドのPDFをダウンロードしてそれを見ながら音声のみ聴いてもいいわけだが,きっと今どこを話しているのか動画の方がわかりすいのだと思う。
- 通信量は音声のみの方がもちろん少なくてすむけど,YouTubeのようなストリーム配信は受信者が画質落とせば節約できるし,ほぼ静止画のスライド映しているだけなら画像情報もたいしたことない。スマホなら通信量も少なくなるように設定されているし。このあたりのことを知らない大学の先生はけっこういそう。
- カメラも使うと,ジェスチャー使ったり,ものを映したりできるのが便利。測定誤差を説明するのに,机から定規だして見せたり,学会誌を説明するのに棚から行動分析学研究や心理学研究だしてきて見せたり。あらかじめスライドに入れ込むのは準備がたいへんだから,その話その場でささっと補足できるのが便利。
- ゼミのみ時間割通りにZoomで開催。実験室実験もフィールドでの実験もとうぶんできないという大問題を除けば,特に問題なく進行中。通常通り,毎回全員が発表しているし,毎回全員が課題を提出している。ブレークアウトでのチーム討論も問題なし。Zoomで顔や部屋が映ることに抵抗があるという学生もおらず(発表や話し合いで忙しいからだと思う),課題は新歓が待ち遠しいくらいか。
- ゼミも授業も,従来から各授業回の資料やスライド,課題などはすべてGoogleドキュメントにまとめていて,そのあたりのオンライン化は完了したから,その点はラッキーだったと思う。
- アンラッキーだったのは"アクティブラーニング"(という言葉は好きじゃないけど)。担当するほぼすべての授業は授業内で学生同士が話し合いながら課題を進める濃厚接触構造になっていたので,この成分をオンラインでどう実現するかが今後の課題。当座は自分からの課題へのコメントを増やすしかないかなと思っている。
- 主に1年生向け心理学実験実習では3つやる実験のうち2つをPsychopy+Pavloviaで作成。もう一つはどうしてもデバッグが進まないのでYouTubeで刺激提示することにした。通常時は受講生が実験者になる機会が設定できるのだが,今回はあきらめ,そのぶん各実験に関する文献調査などの比重を上げることにした。
- 非同期型の授業で驚いたのは,課題を早々に提出してくる学生がかなりいること。たとえば提出期限が十日以上先なのにもう半数近い学生が提出していたりする。期限が過ぎた課題はまだ一つしかないのだが,その提出率が約90%。履修登録した学生が全員受講するわけではないので,この数値はほぼ100%に近い。通常時の授業形態は学生個人のペースにあわせることができていないということが顕になったと思う。
- 10に関連して。つまり,オンライン化というよりも,実は学習の個別化(個人ペース化)の利点が大きいということ。ケーラー先生のPSI(Personalized Systems of Instruction)に時代がようやく追いつく可能性がある。ただ,このままだと課題を提出できない学生もでてくるだろう。大学にきて,友達と一緒に教室にくるという流れで,授業内演習に参加して課題を提出できていた学生たちの行動が,そういう社会的随伴性がないときにどうなるか注意深くみなくてはならない。
- 心理学実験実習に関しては,新入生がお互いを深く知り合う機会の一つになっている科目だと思うので。このあたりのサポートはなんとかしてあげたいと思っている。対面で面識がまったくないところでZoomなんかしてもうまくいきそうにないのだが,どうなんだろう。ここが5-6月の重点課題になりそうな予感。