2014年2月アーカイブ

長らくブログの方は更新をせずに(出来ずに?)いましたが,久々に。
 
 
昨年度から指導していた僕のゼミ生が無事に卒業論文を提出しました。僕にとっては,初めての卒論生となります。論文を提出し,先月末の発表会を終えての感想は,感慨深さよりも疲労感の方が強い,でしょうか(笑)。
 
自分の中で,「何を教育して,そのために何をサポートすべきなのか」,という点で明確な基準が作りにくかったのが原因かもしれません。学生の能力における個人差(学力ではなく,卒論執筆に関する能力)にはどうしても個人差が生じてしまいますので,ある程度は致し方ないかもしれません。ただ,卒論は基準を設定して評価されるものですので,指導上の大きな課題として解決に向けた取り組みをして行きたいと思います。
 
 
 
さて,今年度の卒論のうちの一つは,成人女性の痩身志向について客観的な体型評価や社会心理的な指標との関係から検討したものでした。 
 
女性における「理想」もしくは「適切」と思う体型が, 医学的に適切である体型と比較して「痩せ」に傾きすぎていることは,今日では常識的なものとなっていますし,多くの人が実感していると思います。これに反して,今回の卒論の結果では,本人が望む体形や「最適」と感じる体形に自分の体形が近づいても(または該当していても),痩身思考は低減しませんでした。つまり,「外見的な体形評価」の軸と「痩身志向の強弱」の軸における値は,パラレルではなく,独立した変化を示す,という結果でした。 
 
従来から,自尊心や公的自己意識などの社会心理的要因が痩身思考へ影響することが報告されています。
そのため,「体形評価そのものは痩身志向そのものに大きく影響しない」という今回の結果は,ある程度予想できたものでもあります。
 
しかし,自らの体形が「個人が理想」と思う体形に近づいているまたは該当しているにもかかわらず,痩身志向が減衰しなかったという結果は,単に「痩せたい」とか「理想の体形になりたい」という一般に痩身志向の原因と思われている要因の影響が実はあまり大きくないことを示しています。
 
このことは,以前ヨーロッパで話題になった,やせ過ぎのモデルをファッションショーで使わないなどという「ビジュアル的な要因」を排除する対策だけでは痩身志向の減衰に効果が期待できないことも示唆しています。 確かに,メディアにおける女性タレントやモデルの痩せた体形は,現代の女性における痩身志向の一要因として大きな影響を有していると思います。「あんな素敵なスタイルになりたい」という願望は確かに痩身志向を強めるでしょう。
 
ただ,自分自身とタレントやモデルの骨格的な差異(身長や四肢の長さ)はおそらく十分に認識されているでしょうし,全く同じ体形になりたいと望む(なれると思う)女性はそう多くないでしょう。 そのため,メディアからの情報が女性の痩身志向に及ぼす影響は,単に「痩せたスタイル」のステレオタイプを提供しているところにあるのではなく,人気のある(社会的に価値の高いような)女性の多くが痩身である,という認識を(結果として)提供するものになっているところにあると思います。 
 
 
では,実際に自らが理想または適切と思う体形になっても痩身志向が低減しない理由はどこにあるのか,というと,先行研究では,個人の自尊心や公的自己意識,称賛獲得欲求,拒否回避欲求などの社会的要因の影響が示唆されています。今回の卒論でも,結果としてこういった社会的要因の方が,個人の痩身志向には大きく影響しているということが確認されました。
 
一方で,「どのレベルまで自尊心が高まれば(称賛が獲得されれば)痩身志向は低減するのか」という点については,現状では全然わかりません。それぞれの社会的要因の関与の程度も研究ごとに異なっていて,本人が置かれている社会的状況によって大きく変化すると予想されます。
 
論文としては未発表なのですが,男性が非常に多い中での少数の女性よりも,女性が非常に多い集団(または女性のみの集団)に属している女性の方が,「自身の身体的特徴(つまり体形)を気にする」,そして「自身の体形が他人からどのように見られているかを気にする」程度が高いというデータあります。もしかすると, 女性においては,異性から魅力的にみられるという要因よりも,同性の中で自身がどう見られているのかという社会的な位置の方が痩身志向に強く影響するのかもしれません。
 
ちなみに男性では,男性が多い中では体形を気にする人は少なく,女性が多い中では体形を気にする人が多いという,予想通り(?)の結果でした。男性の痩身志向については,その主たる要因が先行研究で示唆されていますが,こちらも面白い課題になるかもしれません。
 
もちろん,社会的要因は年代・時代によって異なるでしょうし,それに応じて痩身志向にかかわる諸要因の影響度も異なるとは思いますが,今後の痩身志向に関する検討は,肥満以上に重要視されていく可能性があるでしょう。
 
 
この痩身志向に関する研究は,4年生が引き続いて様々な始点から検討してくれる予定です。
僕自身も色々と研究を進めて行く予定なので, 成果が出れば,また紹介する機会を設けたいと思います。 

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