怒濤の春学期,ほとんど学会活動でつぶれてしまった夏休みを経て,気がつけば今日からは本学の市ケ谷キャンパスの学祭です。
この7ヶ月,法政に奉職してから,授業・公務共に最も充実した期間だったかもしれません。
 
ということで,ブログもなかなか更新できずにいましたが,ようやく少し時間がとれたので(気持ちに余裕が出来たので?)久々に更新します。
 
 
もうかなりの時間が過ぎてしまいましたが,春学期の末に本学が誇る野上記念法政大学能楽研究所の山中先生からのご紹介で,あるプロジェクトの研究会に参加させて頂き,非常に興味深いお話を伺うことが出来ました。
 
能に関しては以前からお話を伺っていて非常に興味があったのですが,特にこの所,僕自身が興味を持っている身体動作に関する「主観と客観」に関する種々の話題が提供されました。
 
 
個人的に興味深かったのは,能における「型(かた)」の修得過程でした。
 
能の稽古においては,基本的に,自らの動作に関しての「分析」はしないというコメントが聞かれましたが,「舞」という決まっている動作の自動化を目指す意味では合理的かもしれません。
 
しかし,「何も考えずに体が動く」というのは,「形(かたち)」の修得にはなっても,「動きの本質」を含んだ概念である(と僕は捉えたのですが・・・)「型(かた)」を修得するという観点から見ると,あまりに非効率ではないか,というディスカッションも為されました。もちろん,個々人によって様々な考えがあると思いますが,「沢山稽古し,既定の動き(つまり形)を修得することを通じて,本質である型を理解できる」という考え方が主流であるように感じました。
 
これは,おそらく「舞」という既定の動きを完全に継承することが必要な「能」の世界において,最もシンプルにその事項を遵守できる方法だったのではないか,と思います。
 
 
一方で,能の稽古場面において,お弟子さん(習得者)は「同じようにやっているのに,昨日は動きが速いといわれ,今日は遅いと言われる。お師匠は日によって言うことが違う」などと思う事があるそうですが,これはどちらも主観的な判断に基づいているので,厳密に言うとどちらが客観からズレているか解りませんよね。
 
まあ,通常は師匠の見る目(客観的評価)の方が動作の質的の評価としては正しく,習得者が同じようにやっている「つもり(perception)」と実際の「動き(performance)」が客観的に合致していない可能性の方が高いとは思いますけど・・・。
 
 
 
世阿弥は「花鏡」の中で,客観的な自分の姿を想定する事が重要であり,「自らの見る目と観客の見る目が一致する事が重要である」という「離見の見(りけんのけん)」について述べていますが,これはまさに,身体の種々の体性感覚からの情報を集約し,イメージ通りの動作を発現できることが重要であることを示していると思います。
 
主観的なイメージ通りに身体を操作できることは,以外と難しい一方,様々な日常生活やスポーツの実践場面で適切な動作を行う上では非常に重要な事項です。
 
今のところ僕は能については素人で,あちこち解釈が間違っているところもあるかもしれませんが,奈良・平安時代から続く舞の継承過程における様々な事象から,主観(perception)と実際の動き(performance)との関係に有益な示唆を与えてくれる興味深い知見・ヒントがあるのではないか,と強く感じた研究会でした。
気がつけば,もう3月に入っていました。
授業期間が終わって時間がありそうですが,やはり年度末だけにもろもろの会議などで休みらしい日々は過ごせていません。
 
 
さて,前回に引き続き,本年度の僕が担当したゼミ生の卒論内容をご紹介したいと思います。
 
「アーチェリー上級者における内省感覚が初級者のフォロースルー技術改善に及ぼす影響」というタイトルの卒論です。アーチェリー上級者が行射(矢を放つこと)する際に感じている身体感覚(内省感覚),つまり「肘を現在の位置から○cm上げる」などという具体的な指示では無く,「肩と肘の中間部分が外側に引かれる感じで」などのように感覚的なイメージを初級者に教示して弓を放った場合に,実際のパフォーマンスが変化するかを検討したものです。
 
結果としては,初級者に上級者の感覚的なイメージを伝えても,動作を発現している骨格筋の活動に有意な変化は生じていませんでしたし,実際に行射して的に刺さった矢の得点も際はありませんでした。ただ,的に刺さった矢の集合の程度(矢が刺さった点を結んだ図形の面積を計算)は,教示を受けた場合に小さくなっていました。今回は映像を用いた動作分析自体を行っていないため,動き自体が変化しなかったのかどうかは不明です。しかし,骨格筋活動には有意な変化が生じていなかったにも関わらず,より小さい面積に矢が集中して刺さるようになったことは,アーチェリーのパフォーマンスを考えると,悪くない結果かな,と考えています。
 
 
僕の博士論文のテーマでもある,「身体感覚と生理的状態の対応」という課題にも共通するのですが,本人が思うとおりの動きを「行っているつもり」であっても,実際の動きは全然思うような状態になっていなかったり,動作ができていなかったりすることは意外とよくあります。このような感覚と身体状体の差異は,スポーツ場面でのパフォーマンス低下や日常生活における不都合を生じ,酷い場合には種々の障害に繋がる場合もあります。
 
 
実際に「発揮されている相対的な力(最大の何%にあたるか)」と出力に際しての主観的な努力度との関係はベキ関数関係であるという報告が見られる一方で,出力の高まりに比例して主観的な努力度はS字状の関係(低強度と高強度では客観的な強度の変化が主観的に関知しにくい)を示すという報告もあり,少なくともヒトの出力における主観と客観の関係については現在も不明瞭な部分が多いです。
 
 
現在,このテーマに関係した論文を執筆中なので,この論文が上手くどこかの学会誌にアクセプトされた暁には,このブログでも内容を紹介させて頂きたいと思います。

 

 

長らくブログの方は更新をせずに(出来ずに?)いましたが,久々に。
 
 
昨年度から指導していた僕のゼミ生が無事に卒業論文を提出しました。僕にとっては,初めての卒論生となります。論文を提出し,先月末の発表会を終えての感想は,感慨深さよりも疲労感の方が強い,でしょうか(笑)。
 
自分の中で,「何を教育して,そのために何をサポートすべきなのか」,という点で明確な基準が作りにくかったのが原因かもしれません。学生の能力における個人差(学力ではなく,卒論執筆に関する能力)にはどうしても個人差が生じてしまいますので,ある程度は致し方ないかもしれません。ただ,卒論は基準を設定して評価されるものですので,指導上の大きな課題として解決に向けた取り組みをして行きたいと思います。
 
 
 
さて,今年度の卒論のうちの一つは,成人女性の痩身志向について客観的な体型評価や社会心理的な指標との関係から検討したものでした。 
 
女性における「理想」もしくは「適切」と思う体型が, 医学的に適切である体型と比較して「痩せ」に傾きすぎていることは,今日では常識的なものとなっていますし,多くの人が実感していると思います。これに反して,今回の卒論の結果では,本人が望む体形や「最適」と感じる体形に自分の体形が近づいても(または該当していても),痩身思考は低減しませんでした。つまり,「外見的な体形評価」の軸と「痩身志向の強弱」の軸における値は,パラレルではなく,独立した変化を示す,という結果でした。 
 
従来から,自尊心や公的自己意識などの社会心理的要因が痩身思考へ影響することが報告されています。
そのため,「体形評価そのものは痩身志向そのものに大きく影響しない」という今回の結果は,ある程度予想できたものでもあります。
 
しかし,自らの体形が「個人が理想」と思う体形に近づいているまたは該当しているにもかかわらず,痩身志向が減衰しなかったという結果は,単に「痩せたい」とか「理想の体形になりたい」という一般に痩身志向の原因と思われている要因の影響が実はあまり大きくないことを示しています。
 
このことは,以前ヨーロッパで話題になった,やせ過ぎのモデルをファッションショーで使わないなどという「ビジュアル的な要因」を排除する対策だけでは痩身志向の減衰に効果が期待できないことも示唆しています。 確かに,メディアにおける女性タレントやモデルの痩せた体形は,現代の女性における痩身志向の一要因として大きな影響を有していると思います。「あんな素敵なスタイルになりたい」という願望は確かに痩身志向を強めるでしょう。
 
ただ,自分自身とタレントやモデルの骨格的な差異(身長や四肢の長さ)はおそらく十分に認識されているでしょうし,全く同じ体形になりたいと望む(なれると思う)女性はそう多くないでしょう。 そのため,メディアからの情報が女性の痩身志向に及ぼす影響は,単に「痩せたスタイル」のステレオタイプを提供しているところにあるのではなく,人気のある(社会的に価値の高いような)女性の多くが痩身である,という認識を(結果として)提供するものになっているところにあると思います。 
 
 
では,実際に自らが理想または適切と思う体形になっても痩身志向が低減しない理由はどこにあるのか,というと,先行研究では,個人の自尊心や公的自己意識,称賛獲得欲求,拒否回避欲求などの社会的要因の影響が示唆されています。今回の卒論でも,結果としてこういった社会的要因の方が,個人の痩身志向には大きく影響しているということが確認されました。
 
一方で,「どのレベルまで自尊心が高まれば(称賛が獲得されれば)痩身志向は低減するのか」という点については,現状では全然わかりません。それぞれの社会的要因の関与の程度も研究ごとに異なっていて,本人が置かれている社会的状況によって大きく変化すると予想されます。
 
論文としては未発表なのですが,男性が非常に多い中での少数の女性よりも,女性が非常に多い集団(または女性のみの集団)に属している女性の方が,「自身の身体的特徴(つまり体形)を気にする」,そして「自身の体形が他人からどのように見られているかを気にする」程度が高いというデータあります。もしかすると, 女性においては,異性から魅力的にみられるという要因よりも,同性の中で自身がどう見られているのかという社会的な位置の方が痩身志向に強く影響するのかもしれません。
 
ちなみに男性では,男性が多い中では体形を気にする人は少なく,女性が多い中では体形を気にする人が多いという,予想通り(?)の結果でした。男性の痩身志向については,その主たる要因が先行研究で示唆されていますが,こちらも面白い課題になるかもしれません。
 
もちろん,社会的要因は年代・時代によって異なるでしょうし,それに応じて痩身志向にかかわる諸要因の影響度も異なるとは思いますが,今後の痩身志向に関する検討は,肥満以上に重要視されていく可能性があるでしょう。
 
 
この痩身志向に関する研究は,4年生が引き続いて様々な始点から検討してくれる予定です。
僕自身も色々と研究を進めて行く予定なので, 成果が出れば,また紹介する機会を設けたいと思います。 

福島・八王子の子どもたちスポーツ交流。

3/24から,本学多摩キャンパスの施設を利用して,
本学の多摩ボランティアセンターと,
八王子市旭ヶ丘子ども会「福島支援チーム」の共同企画として,
福島市と八王子市の子供達の交流イベントが開催されました。
 
運営等には関与していなかったのですが,
私の実家近くの小学校に通う子供達が来ると言うことで,
どうしても気になってしまい,
一日だけでしたが,多摩キャンパスまで足を運びました。
 
 
 
「今だ屋外での活動が制限されている福島の子供達に
 思い切り外で体を動かしてもらおう」
というのが企画の主旨でしたが,
天候も良く,またボランティアの学生さんや
ラグビー部員の皆さんの優しく,温かな対応で
子供達も楽しい時間を過ごしていたように思います。
 
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引率されてきたご家族ともお話させて頂きましたが,
福島では,今だ外で遊ぶのは一日3時間に制限され,
さらに内部被曝を予防するため,土のグラウンドでは
土埃をたてないように歩く指導がなされているとの事でした。
 
そのため,屋外で長時間(日焼けするほど)運動したのは,
震災後初めてという参加者も多くいるとのことでした。
 
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お邪魔した日の会場が人工芝のラグビー場だったのですが,
「地面に寝転がってるなんて,福島ではあり得ない」
という言葉が印象的でした。
 
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当日はラグビー部の学生さんが補助員を務めくれましたが,
言動が(大きな体格によらず!?)非常に優しく,
参加した福島・八王子の子供達には大人気。
子供達はみんな,絶対に法政のラグビー部のファンになったと思います。
 
福島の子供達にも活躍の様子が届くよう
来シーズンは是非,リーグ・対抗戦で大暴れして欲しいです。
(これは,法政の教員としても相当期待してます)
 
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ちなみに,イベント開始前に,
ボランティアセンターの職員の方が,
「将来法政大学に入りたい人!」と子供達に聞いたところ,
手を挙げたのは約半分ぐらいでした。
 
法政への入学を希望しなかった子達が,
イベント終了後に,“心変わり”していると良いのですが・・・。
 
 
 
今回の交流は,八王子市のある団地の自治会が企画して,
福島県教育委員会に打診し,
応募があった小学校の子供達が参加して実現したものです。
 
今回のようなイベントの企画は非常に苦労があると思いますが,
参加した福島の子供達の笑顔や様子を見ていると,
交流イベントの有益性は高いと感じています。
 
参加する側の子供さんや保護者の方々,
引率される方のご負担もけっして小さくはないと思いますが,
こういう交流活動の開催に手を挙げてくれる自治体や
地域の団体(もちろん個人でも良いのですが)などが
今後どんどん増えてくれればなぁ,と個人的に思います。
 
また,学生さんは,ボランティアセンターに行けば,
もしくはwebを見れば,今回のような企画における
ボランティアの情報は手に入りますので,
「被災地までボランティアに行くのは諸事情でちょっと難しいけど
 何か出来ることがあればしたい」などと思っている方は,
興味のある方は是非チェックしてみてください。

 

2011年度の卒業式・修了式。

24日は,本学の学部・大学院の卒業式・修了式でした。
皆さん,おめでとうございました。
 
心理学科では,武道館での学部卒業式終了後,
改めて学科で集合して学位授与式を行い,
その後祝賀会へ,という流れで進みましたが,
当日は卒業生の皆さんの笑顔が非常に印象的でした。
 
特に祝賀会では,参加しているだけで自然と笑顔になってしまうような,
そんなすばらしい雰囲気だったと思います。
 
私は今年は卒論指導を担当していませんので,
卒業生の皆さんとの接点はほとんど無いままにお別れすることになりますが,
心理学科の先生方から受けた指導や,
仲間と一緒に苦労して達成した作業の経験を胸に,
充実した人生を歩んでいって欲しいな,と思っています。
 

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学科の祝賀会の後は,大学院の修了祝賀会。
 
修士論文や博士論文の中間発表会などでも良く顔を合わせていて,
面識のある院生さんも多いのですが,
何より年明けからの院生バスケット,本当に楽しかった!
 
この1年,本当にお世話になりました。
僕の人生の中で,忘れられない院生になると思います
(研究面ではあまりディスカッションできませんでしたが,笑)。
 
それゆえ,修了して旅立って行くことには一抹の寂しさもありますが,
残っている院生の皆さんに体育館の使用予約してもらってまたバスケしましょう。
 
 
 
本当に修了,おめでとうございました!
 
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ご挨拶:ハヤシです.

このたび心理学科に着任いたしました,林 容市(はやし よういち)です.

地殻・地盤も含めて不安定な社会状況の中,法政での活動をスタートすることになりましたが,

自分の出来ること・やるべき事をしっかりと見据えた仕事をして,

社会に有益な情報を発信していきたいと思います.