暗唱のすすめ?!-教授法としての暗唱-

ただいま,暗唱効果の研究中です。そのための論文を漁っていたら,以下の論文にヒットしました。

Guetzkow,H, Kelly, E.L., & McKeachie,W.J.(1954). An experimantal comparison of recitation, discussion, and tutorial methods in college teaching. The Journal of educationa pyschology,45,193-207.

1954年の論文を研究室に居ながら読める,これはまさに情報化の恩恵ですね。

さて,内容を簡単にまとめると,心理学概論の授業(大学生)を次の3つの教授法で教えるとどれが一番効果があるか?の実験的検討です。教授法は1学期にわたって続けられています。各群のクラスサイズは25-35名です。事前にクラスの等質性は担保されています。

暗唱&ドリル群とグループ&討論群,チューター&自習群の三つです。2つの観点(教師主導vs学習者主導,浅い学習vs深い学習)から三つの群をみると,暗唱&ドリル群は教師主導,かつ浅い学習,グループ&討論群とチューター&自習群は学習者主導,かつ深い学習となります。よって,著者らも先行研究の結果からでも結果の予測はグループ&討論群≒チューター&自習群>暗唱&ドリル群です。

だがしかし,なんと,

(1)期末テストの得点(再認問題50点,応用問題50点の100点満点)では,

   暗唱&ドリル群97.7>グループ&討論群96.5>チューター&自習群95.8 で,暗唱&ドリル群の勝ち!

(2)心理学に対する態度得点では

   グループ&討論群21.9>チューター&自習群20.8のみに有意差有り。

   暗唱&ドリル群は21.3で他の2つの群とは有意差無し

(3)取りたいと思う心理学の専門科目数

  暗唱&ドリル群4.3>グループ&討論群3.9≒チューター&自習群3.6 で,またまた暗唱&ドリル群!

この結果に,著者らは戸惑っています。それはそうでしょう。(1)の結果は,暗唱&ドリル群の方法がテストに有利な方法であることを示しています。しかも,テスト内容は応用問題も含まれています。単なる再認だけではなく,この学習方法は応用にも通用することを示しています。

また,(2),(3)は学習者の学習内容に対する態度を示しています。暗唱&ドリルをすればテストの成績は良くなるだろうけど,そんなやり方で教わったら,その科目を嫌いになるだろう。それでは,生涯学習には繋がらないだろう。どう?という意見を真っ向から否定しています。暗唱&ドリル群で教わった学生さんは,心理学が好きだし,もっと心理学を勉強したいと思っているのですから…

他にも測定されていますが,言いたいことは上記の3つの変数で十分でしょう。興味ある人は原典に当たってくださいませ。

さて,上記のような結果に困った?著者らはどうしたか。

*有意差はあるけど,数値を見たら分かるようにそれはちょっとした違いである, とか

*この実験の教師が大学院生によって行われたため,技術や熱意に差があった,とか方法論自体の不備を考察しています。

研究者といえども,自分の考えていた枠組みから外れる場合は,データを鵜呑みにできないわけですね。とは,いえ(1)は天井効果が出ていますね。ということは,この3つの群には差がない!暗唱が悪いわけではないということになります。これもやはり著者らには,都合が悪そうです。

しかし,このインパクトのある?論文は,その後,この手の研究に引き継がれています。

一つは,もちろん協同学習流れ。この論文にもあるように,グループにわかれて討論すれば,それだけで効果があるわけではありません。いくつかの条件を整えないとうまくいきません。昨今の協同学習ブームはちょっと安易な気がします。詳しくは,小著「集団において思考は発展するか 指導と評価 2011年11月号8-11頁」をどうぞ。

二つ目は,学習方略の話。っと,そういえば,第三著者であるMcKeachie,W.J.さんは自己調整学習の分野にでてくる研究者?うんうん,確かに彼は,大学生用の学習の動機づけ方略質問紙(Motivated Strategies
for Learning Questionnaire,1993)を作成した人ですね。1954年の結果と自己調整学習にはギャップがあるような気がしますが…。皆さんはどう考えますか?この続きはまた今度。では

 

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このページは、福田 由紀が2012年9月 6日 15:32に書いたブログ記事です。

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