体育の科学「新型コロナウイルスの感染拡大とアスリートセンタード」

「体育の科学」に論考が掲載されました。宅香菜子先生 (オークランド大学) との共著です。

荒井弘和・宅香菜子 (2020). 新型コロナウイルスの感染拡大とアスリートセンタード 体育の科学, 70, 593-597.

見出しは以下のとおりです。

1.新型コロナウイルスの感染拡大がもたらした影響
2.2種類の価値
3.価値のバランス
4.価値の揺らぎ
5.アスリートセンタード
6.価値の転換点としての東京2020大会

新型コロナウイルスの感染拡大によって、これまでに保持していた価値 (価値観と言い換えてもOK) が揺らいだり、複数の価値が葛藤したりすることは避けられないばかりか、むしろ人間としての成長にとって望ましい一面もあると考えます。
しかし、自らの価値の問い直しにはリスクがつきものです。アスリートの指導者や関係者はそれを理解したうえで、アスリートに寄り添って、価値の再構築に向けて辛抱強く援助することが求められます。

この論考で最も行いたかったのは、「誤ったONE TEAM」への警鐘です。

ONE TEAMは素晴らしい価値です。しかし最近は、ONR TEAMを誤用していると考えられるケースが散見されます。ONE TEAMという言葉を嵩に、選手の多様性を認めないというケースです。
ONE TEAMという価値に惹きつけられる理由は、人それぞれのはずです。多国籍の選手がONE TEAMになることに価値を感じる人もいれば、様々なポジションの選手がONE TEAMになることに価値を感じる人もいるでしょう。また、苦境でこそONE TEAMになり、支え合って乗り越えるんだと考える人もいるはずです。もちろんこういった考えは、重なり合ったり、共存したりし得ます。このエピソードから、ONE TEAMがひとつの価値を強制するものではないと理解できるはずです。

ではどうすればよいか?アスリートたちが多様でバラバラな価値を持っていたとしても、指導者は、アスリートたちの多様な価値を認めてほしいと思います。
そして、それをそのまま受け止めるだけでなく、むしろ価値の多様性を活かすことで、チームをさらに飛躍させる可能性を探れるはずです。それこそ、「チームの力が個々人の力の寄せ集めを越える」ということに他なりません。

文末には、骨法會の高山献児師範の言葉を借りて、「勝負や損得を超える価値を、現代に生きる私たちはどれだけ構築できているのか」と問題提起しています。
新型コロナウイルスに直面している私たちは、価値の多様性、そして、アスリートセンタードについて、どう実践に活かすことができるか対話を続けることが重要と考えています。

この論考でも、宅先生には大変お世話になりました。遠隔でのミーティングや日本での対面でのミーティングでご一緒するたび、宅先生は私の価値観を揺さぶってくださいました。宅先生に、心より感謝申し上げます。