2018年4月アーカイブ

みなさん、今年度もよろしくお願いします。さっそくですが、以下の論文が刊行されました。

荒井弘和・深町花子・鈴木郁弥・榎本恭介 (2018). 大学生アスリートのスポーツ・ライフ・バランスに関連する要因―デュアルキャリアの実現に向けて― スポーツ産業学研究, 28, 149-161.

私たちの研究室では、2013年に発表した論文を端緒に、「スポーツ・ライフ・バランス」という考え方を提唱しています。スポーツ・ライフ・バランスとは、ワーク・ライフ・バランスを援用した考え方で「競技とそれ以外の生活とのバランス (調和)」のことです。

私たちは、このスポーツ・ライフ・バランスが、アスリートにとって大切ではないかと考えています。そこで、大学生アスリートのスポーツ・ライフ・バランスの実現に関連する要因を明らかにしました。

その結果、大学生アスリートがスポーツ・ライフ・バランスを実現するためには、競技に関連する要因だけでなく、競技に関連しない要因と、アスリート・アントラージュ (アスリートのパフォーマンス発揮のために連携協力する関係者のこと) も、大きな影響を与えることがわかりました。

私たちがこの研究の成果で最も強調したいのは、スポーツ・ライフ・バランスの実現のためには、「文武不岐」が重要であるという結果です。

「文武両道」は、よく使われている一般的な言葉ですが、私は、軽々しく「文武両道」という言葉が使われている現状を苦々しく思っています。

私がそう思っている理由は、この言葉を使っている人たちの頭の中には、「文と武は別物であり、文武両道を実現している人は、それぞれに対して別々に精進している」という状態がイメージされているという印象があるためです。

一方で、文武不岐とは、水戸学の綱領の1つである「文武不岐」という言葉は、ほとんど使われていません。アスリートにおける「文武不岐」とは、単に2つのキャリア (競技とそれ以外) を両立すると考えるのではなく、2つの根本は一つであるということを強調した考え方だと言えます。

わが国では、中世において、文と武は世襲的に分かれていましたが、現代のスポーツ界では、まさにその状況が復古しているとも思えます。私はその原因が「文武両道」という言葉が誤って認識されていることにあると思っています。

「文武不岐」という考えに基いて考えると、アスリートは、競技に真摯に取り組めば、結果として文の水準も高めることができるのではないでしょうか。

「文武不岐」が足りないために、昨今アスリートの周りで生じているスポーツ・インテグリティ (高潔さ) に関する問題が生じているとも考えられます。わが国のスポーツ界に、「文武不岐」という考え方が浸透することを期待しています。

そして、「文武不岐」という言葉を教えてくださった、私の武道の先生である故・堀辺正史先生に、心より感謝申し上げます。