平成26―28年度科学研究費補助金 基盤研究(C) の研究成果として、「大学生アスリートを対象としたメンタリング」をリーフレットにまとめました。ちらからご覧ください。

わかりやすさ重視で作成しています。さらに研究成果が得られたら改訂したいと思っていますが、3年間の研究期間終了時点の成果となります。

世界中見渡しても、アスリートのメンタリングについてはほとんど資料がなく、困っていました。端的に言うと、みんな「メンタリングした方がいい」って言っておしまいみたいな感じです(汗)。

今後、メンタリングに関する研究がさらに進み、アスリートに対するメンタリングが普及することを願っています。

先週末は、スポーツメンタルトレーニング指導士会の全国研修会があり、私も参加してきました。兄井彰先生(福岡教育大学)はじめ、主催してくださった九州・沖縄支部のみなさま、ありがとうございました。

その際、私たちスポーツメンタルトレーニング指導士が、試合・大会に帯同する意義について議論がありました。たしかに、帯同する必要がない試合・大会も多いと思いますが、国際大会となると、帯同が強く期待される場合もあると思います。この点は、土屋裕睦先生(大阪体育大学)も、みなさんと共有しておきたいと強調されていました。

ところで、もう1年前になりますが、2016年3月9日に、国立スポーツ科学センター(JISS)で「JISS医科学セミナー」の講師を担当させてもらいました。その際、「スポーツメンタルトレーニング指導士は国際大会に帯同するべきか?」という今回の問いに関連するプレゼンも行いました。

そこで、プレゼン資料の一部を添付しておきます。こちらからご覧ください。

昨年末に、大学生アスリートを対象としたメンタリングの論文を発表しました。

Arai, H., Suzuki, F., & Akiba, S. (2016). Perception of Japanese collegiate athletes about the factors related to mentoring support. Journal of Physical Education Research, 3(4), 12-24.

この目的は、大学生競技者を対象として、メンタリングの関連要因を検討することでした。わが国における大学生競技者205名を対象として、インターネット調査を実施した結果、以下のことが明らかとなりました。

1) 「メンターがいる」大学生競技者は多い (205名中182名)。

2) 関連要因との関係はメンタリングの要素によって異なる。

3) メンタリングとその関連要因との関係は性によって異なる。

本研究の具体的な内容は、以前のブログを参照していただけるとわかりやすいかと思います。この学会発表が、今回の論文の元になっています。

スポーツの文脈におけるメンター・メンタリングについては、「スポーツ指導者の資質能力向上のための有識者会議」などで課題として提示されているものの、わが国における研究は全く進んでいないと言って良いでしょう。

共著者として尽力してくださった鈴木郁弥さん、秋葉茂季先生、どうもありがとうございました(^-^ゞ

昨年夏のことになりますが、2本の卒論が「地域イノベーション」に発表されました。2本とも、荒井ゼミの卒論をブラッシュアップした論文です。

佐野萌子・鈴木郁弥・佐野信・荒井弘和 (2016). 親が子どものスポーツ活動に参加することと地域におけるソーシャル・キャピタルとの関連―NPO法人川崎市法政トマホークス倶楽部の事例― 地域イノベーション, 8, 47-59.

本論文の目的は、NPO法人川崎市法政トマホークス倶楽部に子どもを通わせている親を対象に、子どものスポーツ活動への参加度合いと地域コミュニティにおけるソーシャル・キャピタルとの関連を検討することでした。本研究によって、子どものスポーツ活動に参加することで得られる、地域を含む家族外の人々との交流にメリットを感じている人ほど、人への信頼が高いことなどが示唆されました。

島村亜弓・鈴木郁弥・荒井弘和 (2016). 大学生を対象としたお土産購入に関連する要因の検討 地域イノベーション, 8, 61-73.

この研究では、研究Ⅰとして、大学生を対象とした半構造化面接を行い、お土産に対する認知を明らかにし、得られた結果から尺度を作成しました。つづく研究Ⅱで、大学生を対象とした質問紙調査によって、お土産購入頻度に関連する要因を検討しました。その結果、お土産の購買行動には、トポフィリアやコミュニティ・アイデンティティが関与している可能性が示されました。

私のゼミには、スポーツ心理学以外の研究を行う学生もいます。最近では、コミュニティ心理学の研究を行う学生が定期的に在籍してくれていて、佐野さんや島村さんのように、すばらしい研究を仕上げてくれています。

ちなみに私は、前任の大阪人間科学大学で「コミュニティ心理学」の授業を担当していました。当時はむしろ、スポーツ心理学が副業で、コミュニティ心理学や健康心理学が本業でした。

これからは副業として、コミュニティ心理学や健康心理学と付き合って行けたらと思っています。

佐野さん、島村さん、あらためて掲載おめでとうございます( ^ー^)ノ

共同研究者として、スポーツを対象としたアクセプタンス&コミットメントセラピー (ACT) の論文を「行動療法研究」に2本発表しました。

深町花子・荒井弘和・石井香織・岡浩一朗 (印刷中). スポーツパフォーマンス向上のためのアクセプタンスおよびマインドフルネスに基づいた介入研究のシステマティックレビュー 行動療法研究

本研究の目的は、アクセプタンスおよびマインドフルネスに基づいた介入のスポーツパフォーマンス向上への効果について、 系統的に概観することでした。国内外の複数のデータベースにて、 「マインドフルネス」や「パフォーマンス」などの関連する検索語を用いて検索を行いました。その結果、11件の研究を採択し、本研究ではそれらをレビューしています。しかし、日本では該当する研究は見られませんでした。

深町花子・石井香織・荒井弘和・岡浩一朗 (2016). 大学生アーチェリー選手のパフォーマンス向上へのアクセプタンス&コミットメントセラピーの適用事例 行動療法研究, 42, 413-423.

本研究はACTのスポーツパフォーマンス向上への効果を検討しています。対象者は 21 歳の大学生アーチェリー選手であり、60分の介入を13セッション実施しました。対象者は、ACTのエクササイズを実施し、 ACTのプロセスの1つである「体験の回避」の問題点を理解し、「価値」に基づいて実際にそれを生起させていくことを確認しています。介入の結果、アーチェリーの得点は向上しました。本研究の結果は、ACT が心理的柔軟性の改善によってパフォーマンスを向上させる可能性を示唆していると考えられます。

ちなみに昨年末は、島宗先生が招聘してくださった、ACTの第一人者でいらっしゃる武藤崇先生(同志社大学)の非常に興味深い講演も聴くことができました。武藤先生、どうもありがとうございました。

今年は、ACTについて学びを深め、実践に活用する年にしたいと思っています(^^)/

渡辺先生が書かれた2本の論文を読んで

みなさん、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

さて先日、渡辺先生から、2本の論文をいただきました。

渡辺弥生 (2016). 予防教育としてのレジリエンスの育成 臨床心理学, 96, 690-694.

渡辺弥生 (2016). 児童の感情リテラシーは教育しうるか―発達のアウトラインと支援のありかた― エモーション・スタディーズ, 2, 16-24.

とても勉強になりましたので、以下に感想を書かせてもらおうと思います。

最大の収穫は、感情教育の重要性を理解できたことです。

感情教育は、「自分の感情に気づく」「相手の感情に気づく」を目指しており、それはつまり、「感情に対して敏感になること」(モニタリングできるようになること)ではないかと思われました。

私は現場と関わるとき、認知行動的なアプローチを採用していますので、「認知」と「行動」に焦点化して、介入を行うクセがついてしまっています。

裏を返せば、「心(感情)と身体の反応」は、外在化はしますが、(誤解を恐れずに言えば)介入する対象ではないと思ってしまっていました。

しかし、それはおそらく誤りだと思わされました。

心と身体の反応にも、もっと敏感になることを促す必要がありそうです。そして、心と身体の反応に敏感になっている状態が「マインドフルネス」なのだろうと思います。

自分が心と身体の反応を軽んじてきたことに反省し、これからそこを改めようと思わされています。

他に勉強になったことは...スクールワイドな予防が重要というお話から、「クラスをどう変えるか」ではなく、「学校をどう変えるか」という視点の重要性を理解しました。また、今までは、「人」に対してのアプローチが主流だったと思うのですが、今は「組織」に対するアプローチが求められているのだと理解できました。

渡辺先生、すばらしい論文をご紹介くださり、ありがとうございました(^^ゞ

「PTGの可能性と課題」が刊行されました

お知らせです。「PTGの可能性と課題」が、金子書房より刊行されました。

本書は、宅香菜子先生(オークランド大学)が精力的に編集され、専門書でありながら、とても読みやすい希有な書となっています。

「PTG」とは、「ポストトラウマティックグロウス」の略語で、「心的外傷をもたらすような非常につらく苦しい出来事をきっかけとした、人間としてのこころの成長」(本書P 2:Tedeschi & Calhoun, 1996)のことです。

PTGは、心理学において近年注目されている概念です。近年、PTGは、出来事が「トラウマティック」かどうかではなく、大きな衝撃を与えるようなものとして経験された全ての出来事を含めた概念として扱われています(本書P 4:宅,2016)。

先生方の文章は、どれもすばらしいものばかりだと感じます。ご自身が車いすユーザーでいらっしゃる開先生の非常にリアルな文章や、コツの獲得とPTGを関連づけた中込先生の文章など、唸らずにいられない珠玉の文章ばかりです。

私も「大きなストレスを経験している人にこそスポーツを」というコラムを書かせてもらっています。最新のスポーツ心理学の研究を引用した後、「スポーツどころではない」と思っている人々にこそ、スポーツを行って欲しいこと。そして、私たちが暮らす社会が、「スポーツどころではない」と思い込んでいる人々にスポーツを促し、「スポーツどころではない」人々こそが、スポーツに親しむことのできる社会であって欲しいというメッセージを書かせてもらっています。

このようなメッセージを書くことができたのも、ひとえに宅先生の懐の広さによります。宅先生に、心より感謝申し上げます。

日本スポーツ心理学会で発表しました@札幌

また、ひさしぶりにブログを書いています。

昨日まで、日本スポーツ心理学会第43回大会で発表してきました。札幌は季節外れの大雪で、飛行機のダイヤが乱れる中、何とか帰京できました。

今回は「ギャンブルを⾏うアスリートはメンタルが強いのか?」というタイトルで発表させてもらいました。

現在、とても注目を集めているテーマということで、多くの方にお越しいただくことができました。そして、たくさんのご意見・ご質問をいただくことができました。みなさまに感謝申し上げます。

結論だけ申しますと、ギャンブルをやっていても、いわゆるメンタルの強さは、ほとんど変わらないということです。このデータだけを見れば「ギャンブルをすることでメンタルが鍛えられる」という俗説は否定されるべきであると言っていいでしょう。

一方で、ギャンブル経験者は協調性に関する自己効力感が高い可能性も示されました。つまり、チームメイトとコミュニケーションを取る能力が高いアスリートほど、ギャンブルを行っているわけです。これは、「チームメイトに対し過度に従順・依存的になってしまう」可能性を示していると考えられ、「チームメイトによって、ギャンブルに引きずり込まれる」ことを示唆しているかもしれないと、私たちは考えています。

私の研究はほんの小さな一歩に過ぎません。これから、多くの研究者のみなさんが、この研究テーマに取り組み、成果を示してくださることを期待しています。

この研究を発表するにあたり、飯⽥⿇紗⼦先⽣ (秦野市役所⼦ども育成課) から多くの示唆をいただきました。感謝申し上げます。

そして、末筆になりますが、大会運営スタッフのみなさまに、心よりお礼申し上げます。とても充実した3日間でした。

発表スライドを以下に添付しておきます(^^)

2016スポ心口頭発表:荒井弘和.pdf

吉村先生と林先生の論文がすごい

お二人の共著論文「日本で用いられてきた握力計・背筋力計の歴史とその現存品」、とてもおもしろい論文でした。

歴史・変遷を顧みた論文なのですが、原著論文で掲載されているところもすごい。

1933年には、すでに、日本の各学校に握力計が備えられていたこと。

1964年の東京オリンピックで思うような成果が上がらなかったために、早くから潜在能力のある子どもを発掘しトレーニングする方針が打ち出されたこと(やろうとしていることは今と変わらないですね)。

なるほどー、そうなんだーの連続です。

読み物としても大変おもしろく、一気に読んでしまいました。このストーリーで論文を書けるお二人のセンスに脱帽。私には絶対に書けません。

おわりに、「力量計」の話が出てきます。握力計も背筋力計も、いわば力量計なわけですが、心理学の領域でも早くから力量計が導入されていたことが記述されています。

吉村先生(心理学がバックグラウンド)と林先生(体育学がバックグラウンド)というお二人のコラボレーションは、「力量計」がもたらしたものと言えるのでしょう。なんだか、感動的ですね。

吉村先生のホームページから、原文が読めます(^^)

3つの効力感を検討した論文を発表しました

この研究は、大阪府吹田市在住の中高年期または高齢期の方々を対象として、主観的幸福感と夫婦関係との関連を検討しています。

配偶者がいる方々の場合、主観的幸福感を感じるためには、夫婦で支え合うこと、さらにいえば、配偶者を支えることができ、配偶者に支えられ、配偶者とともに支え合えるという感覚が大事でしょう。

この研究は、これらの感覚に、効力感の考え方を適用しています。

まず、自分が配偶者を支えることができるという感覚を、配偶者の支援に関するセルフ・エフィカシー (self-efficacy: 自己効力感) であると設定しています。

つぎに、配偶者が自分のことを支えることができるであろうという感覚を、配偶者による支援に関するアザー・エフィカシー (other-efficacy: 他者効力感) と設定しています。

そして、配偶者とともに支え合えるという感覚は、配偶者との互助支援に関するリレーショナル・エフィカシー (relational efficacy: 関係効力感または関係効力性) と設定しています。

1,646名 (回収率41.1%) から返信が得られ、1,206名を対象として分析を行った結果として、以下のことが分かりました。

1) 性別によって、3つの効力感の得点が異なる

2) セルフ・エフィカシー、アザー・エフィカシー、およびリレーショナル・エフィカシーは、関連している

3) 3つの効力感は、主観的幸福感と関連している

今後は、主観的幸福感と3つの効力感との間に存在するメカニズムの検討を行うことが期待されます。そして、夫婦関係における効力感を向上させるための支援を行うことも望まれます。

ちなみに。「~エフィカシー」という横文字が多くて恐縮しています。これらの研究は、わが国ではほとんど行われておらず、私が日本語に訳してしまうと、その訳がわが国に定着してしまう恐れがあります (それはちょっとコワい、笑)。そこであえて、英語表記を日本語読みした表記にしておきました。

出典は、以下のとおりです。論文を読んでみたい方は、私までご連絡ください。

荒井弘和・中原 純・塩崎麻里子・藤田綾子 (2016). 中高年期・高齢期を対象とした夫婦関係における効力感と主観的幸福感との関連 老年精神医学雑誌, 27, 92-96.