みなさん、今年度もよろしくお願いします。さっそくですが、以下の論文が刊行されました。

荒井弘和・深町花子・鈴木郁弥・榎本恭介 (2018). 大学生アスリートのスポーツ・ライフ・バランスに関連する要因―デュアルキャリアの実現に向けて― スポーツ産業学研究, 28, 149-161.

私たちの研究室では、2013年に発表した論文を端緒に、「スポーツ・ライフ・バランス」という考え方を提唱しています。スポーツ・ライフ・バランスとは、ワーク・ライフ・バランスを援用した考え方で「競技とそれ以外の生活とのバランス (調和)」のことです。

私たちは、このスポーツ・ライフ・バランスが、アスリートにとって大切ではないかと考えています。そこで、大学生アスリートのスポーツ・ライフ・バランスの実現に関連する要因を明らかにしました。

その結果、大学生アスリートがスポーツ・ライフ・バランスを実現するためには、競技に関連する要因だけでなく、競技に関連しない要因と、アスリート・アントラージュ (アスリートのパフォーマンス発揮のために連携協力する関係者のこと) も、大きな影響を与えることがわかりました。

私たちがこの研究の成果で最も強調したいのは、スポーツ・ライフ・バランスの実現のためには、「文武不岐」が重要であるという結果です。

「文武両道」は、よく使われている一般的な言葉ですが、私は、軽々しく「文武両道」という言葉が使われている現状を苦々しく思っています。

私がそう思っている理由は、この言葉を使っている人たちの頭の中には、「文と武は別物であり、文武両道を実現している人は、それぞれに対して別々に精進している」という状態がイメージされているという印象があるためです。

一方で、文武不岐とは、水戸学の綱領の1つである「文武不岐」という言葉は、ほとんど使われていません。アスリートにおける「文武不岐」とは、単に2つのキャリア (競技とそれ以外) を両立すると考えるのではなく、2つの根本は一つであるということを強調した考え方だと言えます。

わが国では、中世において、文と武は世襲的に分かれていましたが、現代のスポーツ界では、まさにその状況が復古しているとも思えます。私はその原因が「文武両道」という言葉が誤って認識されていることにあると思っています。

「文武不岐」という考えに基いて考えると、アスリートは、競技に真摯に取り組めば、結果として文の水準も高めることができるのではないでしょうか。

「文武不岐」が足りないために、昨今アスリートの周りで生じているスポーツ・インテグリティ (高潔さ) に関する問題が生じているとも考えられます。わが国のスポーツ界に、「文武不岐」という考え方が浸透することを期待しています。

そして、「文武不岐」という言葉を教えてくださった、私の武道の先生である故・堀辺正史先生に、心より感謝申し上げます。

この春、修士課程を修了する額賀將さんが書いた論文が掲載されました。

額賀將・鈴木郁弥・秋葉茂季・飯田麻紗子・荒井弘和 (2018). 大学生アスリートが考えるメンターと競技・日常生活で求めるメンタリング スポーツ産業学研究, 28, 75-84.

この論文は彼の修論のテーマではありません。しかし、パワフルな彼は、熱意を持ってこのテーマに取り組み、しっかり論文に仕上げてくれました。

今後、彼は自分の修士論文のテーマも論文化することでしょう。今から、額賀さんのさらなる活躍が楽しみです。

以下に、額賀さんにこの論文のポイントを抜粋してもらいましたので、こちらも合わせてご覧ください↓

・大学生アスリートを支えるには物的支援だけでなく,アスリートを取り巻く人的支援,つまり,アスリート・アントラージュの存在が重要であると考えられる.

・競技活動だけに熱心に取り組み,卒業さえできれば,大学での成績は悪くてもかまわないと考える者もいるかもしれないが,大学生アスリートは学習環境が確保されていない現状に不満を抱いている可能性がある.

・また,自由な時間が確保されていないことを考えると,部活動の練習時間や期間も考慮するなど,いっそうスポーツ・ライフ・バランスを充実させることが必要であると示唆された.

・大学生アスリートは,自らのメンターについて,必ずしも競技に関する知識を持っていなくても良いと考えていることがうかがえる.

・大学生アスリートは大学生としての日常生活場面,アスリートとしての競技活動場面それぞれに適したメンターや,そのどちらも兼ね備えたメンターを採用している可能性が考えられる.

報告しようと思いつつ、一年経ってしまいましたが、修士課程の修了生である鈴木郁弥さんが書いた論文が掲載されました。

アスリートは怪我などの受傷にともなって、様々な自動思考を生起させます。そして、いろいろな感情を抱きます。そこには、チームメイトとの関係性が関わってきます。

そのこと自体は言い古されたことだと思います。しかし、このテーマにじっくりと向き合って、きちんとデータを取って論文化したことは意義深いと考えます。

関心のある方は、以下からご覧になってください。

鈴木郁弥・荒井弘和 (2017). 受傷アスリートとそのチームメイトが持つ認識の明確化 スポーツ産業学研究, 27, 37-47.

本日、スポーツキャリアアドバイザー育成 国内研修コアプログラムの「コーチング・メンタリング」の講義を行いました。

この事業は、日本スポーツ振興センターが、スポーツ庁委託事業「スポーツキャリアサポート推進戦略」の中で行っている事業です。

ここでいうコーチングは、スポーツコーチングというよりもビジネスコーチングであり、認知行動療法をベースにプログラムを組み立てました。

経験豊富な参加者の方々と、アスリート・コーチのキャリア支援について、議論を深めることができました。

参加者の皆さんと、日本スポーツ振興センターの皆さんに感謝いたします。

北大路書房より、中込四郎先生が編集してくださった「シリーズ心理学と仕事13 スポーツ心理学」が刊行されました。

私も「第7章 健康づくりの現場とスポーツ心理学」を執筆しています。心理学部や心理学科でスポーツ心理学を学びたいという人には、ぜひ読んでほしい内容です。

【以下、荒井の執筆箇所です】

第7章 健康づくりの現場とスポーツ心理学
1節 スポーツ心理学と健康づくり
2節 スポーツ心理学者が取り組む健康づくりの仕事

現場の声4 従業員の心の健康をつくる仕事
現場の声5 チーム医療の一員としてのスポーツ心理学者

本日開催された、2018シーズン JFA 1級審判員開幕前研修会で、大学院生の榎本くんに手伝ってもらいながら、「コミュニケーション」のセッションの講師を担当しました。

このセッションは、認知行動療法の考え方に基づいて実施しています。具体的には、審判員の方々の頭に勝手に浮かんでしまう考え(自動思考)に注目して、グループワークを行いました。

どんな自動思考が生じるのか?そして、その自動思考に対する対処方法にはどんなものがあるのか?について、考えていただきました。私が想像もしなかった考えをいくつも聞かせていただけて、大変興味深かったです。

「見えないところでそういう工夫をなさっているのか」「そうか、そうすればみんなが丸く収まるだろうな」などなど、私自身がとっても勉強になりました。

審判員の方々は、皆さんすばらしい方々ばかりで、ご一緒できて幸せでした。心の洗濯をしてもらった、そんな気持ちです。

もうすぐJリーグが開幕しますね。審判員の方々のご尽力に敬意を表しつつ、私もサッカーを楽しみたいと思います。

学会発表での座長の役割を考える

最近、学会に参加していて、学会発表の口頭発表のセッションについて考えることがありました。

口頭発表のセッションでは、意見や質問を述べる時間が設けられています。会場の参加者から意見や質問が出ないとき、座長が予定調和的に「発言がありませんので、それでは座長から...」と発言するケースが散見されます。

私は、このことは好ましくないと考えています。

座長の役割は、質問や意見を言うことではありません。座長の役割は、発表を聞いている参加者から質問や意見が出やすい場をつくり、論点を明確にして、議論を組み立てることです。

私たちのようなベテランになれば、意見や質問の一つや二つはすぐに言えてしまうものです。そして、参加者も座長からの意見や質問を期待してしまったりします。正直に告白すれば、会場に沈黙が訪れるとき、私も座長が何とかしてくれるだろうと期待してしまっています。

しかし座長は、そういう時こそ我慢して、会場を沈黙が包み込む状況に負けてはならないのだと思います。座長はプレゼンターではなくファシリテーターであると肝に銘じ、笑顔で沈黙に耐えて、場づくりに務めるべきなのでしょう。

とは言いながらも、残念ながら私は、修行が足りずに、上手に座長を務めることができません(ごめんなさい...涙)。

みなさん、口頭発表の際は、演者の発表内容だけでなく、(セッション後に)座長の運営についても意見を出し合いましょう。

そして、あちこちで、洗練されたセッションが運営されるように、みんなで力を合わせましょう。

日本体育学会@静岡大学で発表しました

9月8~10日に静岡大学ほかで開催された日本体育学会第68回大会に参加しました。行き届いた大会運営をしてくださった関係者の皆様に感謝申し上げます。それにしても、スタッフの方の人数の多さに驚きました。

私は「武道種目に取り組む者は対戦相手との握手行動を実施しない」という研究を発表しました。ポスターをアップロードしますので、お時間と関心のある方は、以下からご覧ください。

2017体育学会ポスタ_荒井弘和.pdf

発表を聞きに来てくださった皆様、どうもありがとうございました。

健康心理学会@明治大学で発表しました

9月2~3日に明治大学駿河台キャンパスで開催された日本健康心理学会第30回記念大会に参加しました。とても快適な大会運営をしてくださった関係者の皆様に感謝申し上げます。

私は「女子大学生アスリートは化粧行動を行っているのか?」という研究を発表しました。ポスターをアップロードしますので、お時間と関心のある方は、以下からご覧ください。

2017健康心理学会ポスタ_荒井弘和.pdf

発表を聞きに来てくださった皆様、どうもありがとうございました。

恋人のいる大学生アスリートは幸せか?

Arai, H. (2017). The effect of romantic relationships on collegiate athletes' lives with special attention to gender differences. European Journal of Physical Education and Sport Science, 3(7), 38-50. (本文)

という論文を発表しました(全文英語)。

「アスリートは恋愛せず、競技に集中すべきだ」という人もいますし、「恋愛しているときの方がパフォーマンスは良い」という人もいます。スポーツ雑誌やドキュメンタリー番組のテーマとして、アスリートの恋愛は扱われることがあります。

そこで、わが国の大学生アスリートを対象として研究を行いました。分析の結果、交際相手がいる方が、主観的幸福度は高いことがわかりました。さらに、男子アスリートにおいては、交際相手がいる方が、競技生活と日常生活間がポジティブに影響し合っていることがわかりました。女子アスリートでは、交際相手との関係に満足しているほど、主観的な幸福度が高いと示されました。

端的に言えば...男子アスリートは、交際相手がいること自体が幸福度と関連しており、女子アスリートは、交際相手との関係性が幸福度と関連しているということになります。

今後も私たちの研究室では、アスリートの人生を総合的・全体的に考えて研究を行い、その成果を国内外に発表していくつもりです。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

カテゴリ

ウェブページ

Powered by Movable Type 6.3.7